毎日暑い!雨も降る!テンションも下がる!
だるい・眠い・暑いの三拍子です。
是非最後までお付き合い下さい!
「仁琴さん、全然箸が進んでいませんが、体調でも崩されましたか?」
神谷が仁琴に聞いてくるが、仁琴は無視をしている。箸が進んでいないのは仁琴が少食すぎてあまり食べれないからだ。
「仁琴、そんなに無視することないじゃないか。」
見兼ねた父が仁琴に聞くと、やっと仁琴は顔を上げた。
「別に体調がどうだろうと、貴方に関係ありませんし、一緒に住むと言っても別邸なので私のことには興味関心抱いて頂かなくて結構です。」
仁琴はどこで呼吸した?!と疑問を抱くくらいに早口で一気に言った。それも神谷の顔も見らずに。
「ハハハッ!仁琴さん最高…!」
神谷がいきなり爆笑し始め、右手で腹を抱えて左手では涙を拭っている。一方の仁琴と天晴はドン引きである。
そんな視線に気づいてか、神谷はコホンと1度咳払いわして姿勢を正した。だが、まだ顔は笑っている。
「失礼しました。なかなか仁琴さんみたいにズバっと言ってくださる方がいないし、呼吸のタイミングとか分かんなかったし!大抵の女性はニコッと笑いかければ目をハートにするのに仁琴さんはニコッとしたら逆に嫌そうな顔するしさ。今までにないタイプでなんか笑っちゃったよ。」
仁琴は思った。
─こいつ、バカなのか…?─
そして天晴も思った。
─月を超えるバカっておったんやな…。─
そしてそんなことを思われているなんて知らない神谷は仁琴の父と仁琴のことで盛り上がっている。
─こいつは本当にルークなのか…?だって容姿端麗、コミュ力の化け物だ。でも、この声…ルークの時はワントーン低いが、声質はほぼ一致している。じゃあ私の正体を知ってるのか?偶然か?─
仁琴は考えるが分からなかったようで考えることを放棄した。
「私、気分が悪いので失礼します。」
そう言って仁琴は天晴の腕を掴み、部屋を出ようとすると、
「仁琴、またお父さんと一緒に食べような!」
と父が言ってきたが、仁琴は冷たく「考えておきます」
と言い放った。
そして仁琴は部屋を出る寸前、横目でルーク疑惑の神谷を見て震えそうになった。
だって神谷の口元はいやらしく笑い、目はスナイパーの目だったからだ…。
天晴は部屋に入るとそうそう仁琴に言った。
「なんやあのアホくさいジジイは!!大抵の女性は目をハートにするやと?!そんな訳あるか!仁琴っちと一般人を比較すんなや!あんなイケメン、禿げればええんや!俺よりもイケメンでムカつく!」
褒めてるのか貶してるのかよく分からない…。
「胡散臭いイケメンより天晴みたいなバk……じゃなかった、素直なイケメンの方がいいと思うな。何考えてるのかよくわからん。」
仁琴が天晴にそう告げると、天晴はジトーっという効果音がぴったりの目で言った。
「今、仁琴っちさ、俺の事バカって言いそうになったよな?いや、俺よりもあのクソイケメンの方がバカなんちゃう?!」
そう抗議する天晴を無視して、組織専用の携帯が揺れるのを確認した仁琴は天晴を部屋から追い出し、メールを確認した。
『ノックがいる。誰か探れ。キンダはFSBに潜入させた。 スファレライト』
スファレライト とは、ガレナという鉱物などと見分けがつきにくいことから、ギリシア語のsphaleros(嘘つき・裏切りもの・あてにならない)に由来して名付けられた。
ダイヤモンドに匹敵する高い屈折率で、分散度はダイヤモンドの約4倍で、良質なものからはファイア(虹色の輝き)を見ることができるので、「幻惑の石」とも呼ばれる。しかし、硬度が低いので“宝石”と名乗ることはできず、カットが難しい石。
確かにスファレライトは自分の損得で動くので裏切ることもあるかもしれない。まあ組織No.1の助手なので輝いてはいるが、取っ付き難い。ピッタリなコードネームだ。
さぁ、ノックを探さねばいけないらしい。いつもノック探しは大抵、仁琴に頼んでくる。その度に仁琴は嫌いな組織員をノックと言って証拠を捏造して殺させていた。
だが犯罪者と言っても人間だ。罪悪感がない訳では無い。仁琴は自己嫌悪に近い感情をねじ伏せ、復讐に力を入れているのだった…。