モモンガさんが不在ですって?!   作:琳鈴

3 / 5
主人公の記名はグレートで統一しています。


転移

心なしかゆっくりと、10階層の玉座の間へと向かう。モモンガのログインを待ちながら、グレートの胸中は不安を占める。

 

原作通りとは異なる状況であり、もしやと思う。

もしや、ナザリックは転移せずに最終日を終えるのではないかと。私という異分子のせいで変わるのではと。

 

「考えすぎか…」

 

今まで誰も辿り着いた事の無い、玉座の間への扉の前には執事セバスと戦闘メイド(プレアデス)達が並ぶ。

なるべく原作の流れに沿っておくかとセバス達を連れて、扉をくぐった。

 

「待機しているように。」

そう命じれば、綺麗に揃った動きで頭を下げたまま壁際で控える。早く生き生きと動く彼らを見てみたいと思うが、絶対に一人は嫌だと頭を軽く振る。

奥に存在感を放つ玉座は今は不在だ。視界に映るのは、玉座の隣で美しく佇む守護者統括のアルべド。

何故かワールドアイテムを持っているのは、タブラの仕業なのか。

 

製作者のタブラが色々と設定を話してくれた事があったと思い出すが、ほとんどの内容は勿論覚えていない。

あまりに懲りすぎててドン引きしたっけ…今思うとそれも懐かしいなあ。

 

そういえば…ビッチなんだっけ?

ふと、アルべドの元来の設定が頭を過る。

うーんと、この流れならモモンガがアルべドの設定を開いて、『ちなみにビッチである』を『モモンガを愛している』にするんだよね?

 

やはりモモンガを待つべきだと思い、玉座の一段下に直に座りぼうっと周囲を観察しておく。

 

ユグドラシル最終日に向けて、金貨やアイテムをかき集めた日々…モモンガには「どうして終わるのに、まだ続けるんですか?」と、骸骨顔で小首を傾げられたものだ。…少々可愛いと思ってしまったな。

聞かれる度に、転移したらその後が大変だからだよ!と言いそうになるのを何度も堪えたものだ。

 

コンソールを開き、時間を見返す。

残り、1分?!

え、不味い!1分て…え?

 

慌ててモモンガにメールを送るも、反応は無い。

やっぱり…私が居たから?

オーバーロードは始まらないの?

 

「ごめん…」

 

思わず膝を抱えて俯く。

 

残り…10、9…8、7…6、5、4、3、2…1…

 

さようなら、ユグドラシル。ごめんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……様……グレート=ウルトラ=マウンテン様!」

「…………え?」

 

終わりの余韻に浸りかけている最中、頭上から必死の声がかかり、思わず顔を上げた。

目に映るのは、心配そうに眉を下げるアルべド。目が合うと更に距離を縮め瞳を潤ませている。

 

「先程から踞っていらっしゃいますが、ご気分が優れないのでしょうか?でしたら、直ぐにお休み頂ける手配を致しますが…。」

「…アルべド?」

「っはい!」

「…喋って、る?」

 

働かない頭で相手の動く口許を見つめ、必死で言い募るアルべドに思ったままを口にする。

てか、え?転移しちゃったの?モモンガ不在で?!

 

「…っ申し訳ございません!」

 

混乱するグレートの目の前で、何故か勢いよく額を床に付けるアルべド。不思議そうに視線を向ければ、視界の隅ではセバス達も膝を着いて深く頭を下げていた。

 

「…ん?」

「…真に申し訳ございません!許しも得ずに声を発してしまうなど!…っですが、モモンガ様もいらっしゃらなくなった今…グレート=ウルトラ=マウンテン様はただ御一人の至高の御方。どうか、罰はなんなりとお受け致しますので、ご休息をお摂り下さればとお願い申し上げます。」

 

震える声に胸が締め付けられる。

違うんだよ、モモンガは来るって言ってたんだ。でも、もしかしたらもう…来れないかも。

 

しんみりしてしまう心と共に、急速に現実味を帯びていく状況に気づく。

待て待て?よく考えたらモモンガ不在で転移したって事だよね?て事は、ナザリックの危機は既に始まってる?

 

試しにGMコールを行うも、やはり意味は無かった。

 

「気持ちは嬉しいが、休息を摂っている時間は無い。…アルべド。」

「っは。」

 

スッと立ち上がり、グレートとしての落ち着いた口調を心掛け素早く今後の動きを頭で整理する。真剣なグレートの雰囲気を察し、心配を僅かに残すもアルべドは直ぐ様姿勢を正す。

私はモモンガと違う、だから急がないと。

 

「ナザリックの防衛レベルを一段階引き上げる様、各階層守護者に通達を。それと…一時間後に6階層の円形闘技場に集まるようにと。」

「承知しました。8階層のヴィクティムと4階層のガルガンチュアはどう致しましょうか?」

「…ああ、双方ともには集合せずとも良いと伝えろ。」

「っは。それでは、直ぐに。」

 

玉座の間を出ていくアルべドを見送らないまま、中指に嵌めてあるリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを発動しかけると「お待ち下さい!」と声が掛かった。

まあ、止められると思ったけど。

 

「御一人で何処へ向かわれるつもりですか?どうか、供をお付け下さい!」

「…分かった。」

 

老執事の今にも飛び掛からんばかりの形相に、くしくも1度冷静となった。

グレートとしては、外に出て周囲の確認がてら自らの能力でナザリックの強化と透明化を行おうと思ったのだが。一人の方がむしろ気楽に行えるが、忠誠心の高いだろうNPCの言葉は無視できない。

 

えーと、誰にしようか。まあ適当で良いか。

 

「…では、セバスとソリュシャン着いて来い。他の者は9階層の守護をしろ。」

「「っは!」」

 

残ったプレアデス達が頭を下げるのを視界に入れ、セバスとソリュシャンを連れてナザリックの外へと移動するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。