オリジナル職業説明有り。
何故かソリュシャン多め。
セバスとプレアデスのソリュシャン・イプシロンを連れ、ナザリック地下大墳墓の外へと足を踏みしめる。
相変わらずセバスは固いなー。
チラリと横目に見るセバス…ギルドメンバーの生活面での最高責任者であり、メイドや男性使用人の纏め役でもある。実際に動くセバスの雰囲気は正に出来る執事であり、信頼に足る物だが。
製作者のたっち・みーの真面目さも受け継いでいると見た。
思考に耽りながら、歩みを進めていく。
大墳墓の表層は直径200m、高さ6mの巨大な壁が墓地を囲んでいる。
墓地の中には乱杭歯のように乱雑に墓石が並ぶ一方、美術的価値の高い彫像も並ぶなど混沌としつつも、非常に薄気味悪い雰囲気となっている。
ゲーム内でも少々怖いと思っていたけど、現実(リアル)だと怖さは倍増するなあ…。
「…これはっ」
「グレート=ウルトラ=マウンテン様!お下がり下さい!」
セバスとソリュシャンの緊迫した声に思考が遮断され、彼らの視線の先を追う。 周囲に広がるのは、青々とした草原であった。
二人の警戒する理由は分かる。何故なら、ナザリックの周りは沼地だった筈だからである。
「…いや、大丈夫だ。」
自分を守ろうと前に立つ二人を安心させる様に落ち着いた声音で語りかけると、その場にしゃがみ草に手で触れた。慌てて名前を呼ばれるが、掌を向けてそれを制する。
「どうやら、本当にただの草原の様だ。」
「まあ…では、ナザリック地下大墳墓は…」
「そう、異常事態に見舞われているといった所か。」
思案するグレートに対し、その言葉に驚き口元に手を充てるソリュシャンだが、セバスと共に周囲の警戒は怠らない。
まだ原作に近い状態なら良いが、どの時間軸か周辺国家の状態も分からない今、下手に動くのは危険だろう。
セバスに1㎞圏内の探索だけに留めて命じ、最初はセバスと共に行けと言ったが「どうか護衛をさせて下さいませ」と言い張ったソリュシャンが後ろに控えるのを確認し、スキルを発動する。
男だったら、ソリュシャンの瞳から溢れる涙でコロッといっただろう。なんたってリアルなら絶世の美女だし。
いや、ちょっとグラッときかけたけども…!
体が魔人となった弊害なのか、元々のグレートの素質なのか性別への忌避が薄くなった様だ。
内心勢い良く頭を振り、自らの能力に集中する。なんたってゲームが現実となった世界だ、上手く能力を扱えるか心配は大きい。
「ソリュシャン…」
「はっ。」
「…これから行う事は他言無用とする、命令だ。」
うう失敗したら恥ずかしいし…
でも、一人に見られてるなら我慢出来る。
「…それは、二人だけの秘密という事でしょうか?」
ん?何か秘密が妙に強調されたように思ったけど、気のせいだよね?
お淑やかに少し目を伏せるソリュシャンの口元が妖しく歪む。綺麗に縦にロールされた金髪と、メイド服の短いスカート丈から見える絶対領域は魅力的と言えるだろう。
ソリュシャンの問い掛けに、グレートは前を向いたまま深く考えず頷いた。
「そうだな、ソリュシャンと私だけの秘密だ。」
一際上げられた口角に気付かず、ゲーム内で行っていた事を思い出す。
コンソールはやはり開けないな。確か、装備、スキル、アイテム、ギルド、クエスト、フレンド、ステータスとか見られたんだけど…困ったな。
仕方ない、感覚で試すしか無いな。
グレートの職業は『魔法剣士』
短期集中の大型イベントで10位までのギルドに贈られる職業だ。剣士か魔導師で迷っていたグレートにとって、天啓にも思えたものだった。他のギルドメンバーは確固としたこだわりがあった為、グレートが魔法剣士になることに不満は出なかった。
『確かにグレートさんて、魔法剣士って感じですよね!』
『ええ~?俺はロリロリな魔女っ子に1票!…でぇ!?』
『アンタは黙ってなさい馬鹿弟!そうよね、グレートに合ってるわ。』
ふと、ギルドマスターと、古参メンバーの姉弟のやり取りを思い浮かべて思わず笑みを溢す。
大丈夫…出来る筈。
魔法剣士のレベル上限まで到達すると会得出来るスキル
【ルーン魔術】は、グレートの肌に合いギルドのクエストでも良く使用されたものだ。
目を閉じて極限まで集中する。アイテムボックスから、俳句に使われる読み札程の一枚の紙を取り出し「不可視」と使い捨てアイテムの羽根ペンで書く。
日本語で描いた筈の文字はラテン語に変化し、文字が赤色に変わっていく。
「よし、成功だな。」
よっし!…やったー!これで魔法は使えるって事ね。
喜びに声を上げそうになるが、背後からのソリュシャンの視線に何とか心を押さえて冷静さを保つ。
さて次は、この発動したルーンを使用出来るかどうか…。
2回深呼吸をし、「不可視」と書かれた紙を真ん中で勢い良く破り捨てる。ソリュシャンの不思議そうな視線に少し笑いそうになりながら「不可視」と書かれた文字を言葉にする。
「…まあ!これは…」
絶句するメイドに賛同する様に大きく頷いておく。
目の前に聳え立つナザリック地下大墳墓は跡形も無く消え去っており、平らの草原があるだけだ。
破くよりも燃やす事が出来ればその方が簡単だと思うけれど。
「発動時間は48時間。これで一先ずの危機は無いと言えるだろう。」
「…流石は至高の御方。お力の一端を見させて頂き光栄の至りでございます。」
触れる事は出来るのに視覚から遮断してしまう力は、ソリュシャンにとってどう映ったのか。輝く瞳と上気した頬を見れば、悪い感情では無いらしいが。
そうしている内に、セバスが戻りグレートの力に驚愕し畏怖と敬意を示してくれる。全く見えないのは不便だろうと思い、不可視を外敵限定としておくと更に誉められるのは悪い気はしない。
「円形闘技場への召集はあと20分程ございますが、休息をお摂りになられますか?」
というか、むしろ休憩しろと言いたげなオーラが怖いが、先にしておきたい事がもう一つある。
ごめん、セバス。
「…いや、その前に宝物庫へ行こうと思う。」
「宝物庫でございますか?」
「ああ、ソリュシャン。」
「っは。」
「プレアデスのシズ・デルタを呼んでくれ。」
「畏まりました。」
グレートの命に何の否も無く直ぐ様行動に移すソリュシャンを見送り、何か言いたげなセバスに視線を戻す。勿論完璧な執事であるセバスの表情は変わらないし、他の者が見ても気づかないと思うが…微妙な表情の変化に気づいてしまう。
無表情だからか余計に分かりやすいんだよね。
「…宝物庫には、私の装備の一部が置いてある。この状況下だ、用心に越した事は無いだろう?」
「なるほど…左様でございましたか。」
グレートの言葉に納得したのか、それ以上の追求は無く歩みを始めたグレートの後ろを見事な姿勢で着き従うのだった。