───勇者サイド───
あの
「ここからなら一番よく花火が見られるわ。穴場よ。」
そう、私たちは祭りの醍醐味である花火を見るためにこの坂を登ってきた。関連するブログを見て回って正解だった。
花火が上がる。
「ありがとう」
少し恥ずかしげな様子でありながらの須美の感謝だった。
「これ」
それは白熊のストラップ、青のマフラーを首に軽く巻きつけたそれはギルガメッシュによって木っ端微塵にされた屋台の中で
「うん!これはミノさんのぶんね」
「あとこれはギルっちの分。後で渡しに行かないとね」
「別にあいつになんか渡さなくていいと思うけど」
「...」
そう言った須美の顔を園子は覗き込む。須美は花火に夢中だったのか園子の覗き込みに気づかなかったが、その顔には花火を楽しむだけではない表情が見られた。
さらに鮮やかな朱色の花火が立て続けに打ちあがる。たまやという声がどこかで響く。
「私もありがとね」
「!?」
須美は唐突に受けた感謝の言葉に思わずその本人を見返す。
花火は多種多様な色彩を見せ、かぎやという掛け声も聞こえる。
「ほら、わたしって変な子じゃない。そんなわたしと、ミノさんとわっしーは友達になってくれた」
「うれしかった、楽しかった。だからありがとね」
「そんな、ちがっ」
思わず否定の言葉を述べそうになる口を閉じ、言葉を飲み込む。私が言いたいのは。
「うんうん、まだこれからよ。よろしくね、そのっち」
と天高くに上がる火花に勝る絢爛な笑顔で返す。
「うん!」
そのっちも負けず奇麗な笑顔で返事をする。
不安も動揺もある、けどそのっちがいる、銀も一緒にいる。なら、怖いことはなにもない。
祭りは終わる
───
警官は英雄王の後を無言で付き従い、そして唐突に英雄王が振りかえる。
「...」
二人が向き合う。
一人は
もう一人は...言うまでもない、信念を表さない者。
その二人の奇縁ゆえ、マスターとサーヴァントの関係であった二人は召喚儀礼以来の再開を果たしたのだ。
「貴様がこの場に来たということは、この我に早急に知らせるべきことができたのであろう。言ってみよ」
「見た目とか、色々と聞くべき───いやもういい。あなたはもうわかってるだろうからな。」
そう言う元召喚者は、いかなる力か、当時とは似てもにつかない、若干チャラいが、健康的な青年の姿に変化していたのだ。服装も考慮に入れれば、さながら新米警官といったところか。明らかに意図的な変化である。
しかし英雄王は含み笑いをするも驚きなどはしなかった。まるで最初から理解してるかのように。その笑いすら
そして、本題への突入を促された青年は、膝を崩し、頭を垂れ、述べる。先ほどとはまるで違う口調で。まるで人格を捨てたかのように。
「王よ、敵が来ます。恐らくこれまでとは比べ物にならないほどの。今の王の力でも勝てるかどうか。今こそ御身の真の力を解放するときです。」
青年が、
「ふむ、この我を越えるものが来るとな。」
「...」
如何なる
英雄王は
「我が宝物の検品などしてる暇はないようだな。ならば───」
「
「貴様も同じ結論か。名残惜しいがどうやら遊びはここまでのようだな。」
「はい。王には大赦本部に来てもらいます。それも一日二日ではなく、数週間の間。今の私では工房や触媒を用意しなければ達成できませんから。」
「当然だ。この我の霊基を変化させるのだ。いくら準備があろうと足りるものではないわ」
とダメ出ししながらも英雄王はほくそ笑みを浮かべる。
「時間がありません。勇者様にお別れのお言葉が無いようでしたら、今から大赦本部に向かいます。」
「構わん。今生の別れでも有るまいしな」
そう言いながらも
「そうだ」
「本来ならばしないが、貴様に一つ忠告をしてやろう。須美と園子に派手な敬称なぞいらん。奴等は、所詮は少女だ。
それは冷徹にして無慈悲な目線、圧倒的な死そのものに近いとすら思えるオーラが
「...肝に銘じておきます。」
それでも汗ひとつ流さず、動じることもなかった
祭りは終わる。
あとがきです
毎回そのエピソードの裏話てきな何かを話してたような気がしますが、実は半分ぐらい1,2年前に書いたものでかなり覚えてないんですよね...なんかすみません。
久しぶりに自分の作品を見返したので色々ギミックを仕込んでて面白いなって思いました。
あとアンケートを見たんですが、早く投稿しろが多かったですね(個人的にはつまらないが少なくて安心しすぎて安心院になってしまったのですが)。
色々久しぶりすぎてなんか忘れてることを忘れてるような気がします。なんか結構重要な設定とかが抜けてたり、矛盾してたりしてると思うと怖いですね。
決戦は近いです。つまり最終話も近いです。走りきれたらいいですね。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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