仁義のルイズ ~漆黒の風~ 作:原作未読の魔改造フェチ(百合脳)
ゼロの使い魔とかよく知らないのにss書くとか言うこの暴挙。でも仕方ないじゃない、書きたいネタを思い付いちゃったんだもの……
とりあえず書きたいものを書きたいように書いてみますか。あ、キャラ崩壊が著しいので注意。
―――最近、隣人の様子がおかしい。
ゲルマニアからの留学生、『微熱』のキュルケが違和感を感じ始めたのは極最近の事だ。
実家の領地も隣同士なら学生寮の私室も隣同士、自他共に認めるライバルたるルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは本来、努力家で理想家でプライドの高い、少し……いや結構、……かなり短気な、感情は豊かで胸は貧相な少女だった。
『ゼロ』の二つ名が示す通り、魔法の成功率は驚異の0%。どんな簡単な呪文でも爆発が起こるだけ。貴族は愚か、時には一部の平民にさえ影で軽んじられる事があるという彼女はしかし、その性格故に決して弱音は吐かず、涙も見せず、ただ愚直にひたむきに努力を繰り返す。それが成果に繋がらずとも、いつか必ず魔法が使えるようになると、一端の貴族として胸を張れる日が来ると信じて、決して諦めず自らの運命に立ち向かう……それがキュルケの知るルイズという少女だった。
だからこそキュルケも、ルイズの事を心の中では好敵手と認め、時に厳しい言葉を浴びせ、時に煽るようにして発破をかけながら、いつか彼女が自分に並び立つ優秀な
……まぁ、ルイズの反応が面白くってついつい弄ってみたくなってしまう、というのも本音ではあるが。むしろそっちがメインだったりするが。
それが、今では。
※ ※ ※
「ルイズ、今日も今日とて魔法は失敗ばかりね! せめてその爆発は何とかならないのかしら?」
「そうね、ごめんなさい」
「ああ、紹介するの忘れてたわね。この子が私の使い魔のフレイムよ! 貴女のはどんな使い魔だったっけ? って、あらごめんなさい! 貴女は召喚に失敗して使い魔呼べなかったのよね!」
「そういえばそうだったわね」
「この学院の規定だと使い魔召喚の儀は生徒全員の義務だった筈よね? 一度失敗したからって
「そのうち山で犬でも捕まえてくるわ」
「……もう、つれない返事ばっかり! こないだまでの元気有り余り過ぎて爆発寸前だった癇癪娘はどこ行っちゃったのよ、このお子様体型!」
「……私を煽って元気付けてるんだか何だか知らないけど、それならもっとハッキリ罵倒した方がいいわよ。『貧乳』とか『ペチャパイ』とか」
万事が万事、この調子である。声は平淡、顔も無表情、感情の発露など露も見られず、ただハイライトの消えた目で淡々と適当な返事を返すのみ。まるでキュルケの親友たる少女、『雪風』のタバサが如き無愛想っぷりだ。
いや、タバサの場合は表面上冷淡に見えるが、あれで結構行動力のある少女である。親友であるキュルケはそれをよく知っている。だが現在のルイズの場合、努力家を通り越して傍迷惑なくらい活動的だった以前の彼女の面影が全く見られない。魔法の練習もしないし、授業も殆ど聞き流している。実技の授業の時は先生に促され、最低限は呪文を唱えていつものような爆発を披露するが、その程度。決して能動的に動こうとはせず、無気力そのものだ。
「……私の事は放っておいてくれないかしら。ちょっと色々燃え尽きてるだけだから」
「ちょっとルイズ! ルイズったら! 貧乳! ペチャパイ! ……もう、行っちゃった」
面倒臭そうに吐き捨てると、キュルケの制止も無視してルイズは歩き去る。その後姿はどこか頼りなく、今にも消えてしまいそうなほど儚く見えた。
※ ※ ※
―――やはり最近、あの子は様子が変だ。
キュルケは改めてそう認識する。というか、コンプレックスだった筈の胸囲の事を自嘲する発言が飛び出してきた時点で、変を通り越して異常である。
(しかも私が発破かけてるって事、気付いてたわね。前まではそんな心の余裕も無かったのに)
キュルケからするとそこもまた異常。今の彼女には何と言うか、『余裕』のようなものが感じられるのだ。使い魔召喚の失敗で心折れてしまったが故の、心の『空虚』がそれを生んだのかもしれなかったが、なんとなくそれは違う気がする、というのがキュルケの所感だった。
しかしルイズが気落ちし塞ぎ込んでいるのは誰の目にも明らかな事実。
(一体何が原因で……いえ、原因なんてハッキリしてるわ、『使い魔召喚の儀』よ。問題は『あの鏡の
そう、使い魔召喚の儀において、ルイズは召喚魔法それ自体には『成功した』のだ。
では何が『失敗だった』のかといえば、魔法によって現れた『召喚の鏡』に引き寄せられるかのように、誤ってルイズの方が『鏡の向こう側』へ『召喚
トリステイン王国に名高いヴァリエール家のご令嬢が何所とも知らぬ地へ飛ばされてしまった、という緊急事態に魔法学院の教師陣は慌てふためき、一時は大騒動になりかかった。しかし翌朝、使い魔召喚を行った広場の、それも彼女が出現させた鏡のあった地点に倒れこんでいるルイズの姿が発見され、経緯はともかく無事に帰ってきたのだからと皆胸を撫で下ろしたのであった。
だが医務室に運び込まれた彼女が目を覚ました時、既に彼女は今の状態に―――無気力で無感動な彼女らしからぬルイズになっていたのである。鏡の向こう側へと消えた後どこに行っていたのか、どうやって帰ってきたのか、などを聞かれても曖昧に暈すのみ。のらりくらりと、決して答えようとはしない。
人は皆「召喚の儀に失敗したショックで一時的にブルーになってるだけだろう」と考え、いつもの調子を取り戻すまでそっとしておこう、という事になったのだが……キュルケだけはそう思えなかった。
彼女は、ルイズの諦めの悪さを知っていた。ルイズの挫けない心を知っていた。だからこそ今更使い魔召喚で盛大に失敗した『程度』の事で落ち込むようなタマじゃあ無いという事も『分かっていた』。
故にこそ、ルイズが今の状態になったのは何か別の
(本当、どうしちゃったのよルイズ……いつまでもそのままだと、張り合いが無いじゃない)
心配そうにルイズの去った方向を見つめつつ佇み続けるキュルケ。いくら彼女の事を案じても、今のキュルケには何ら為す術は無く、ただ偶然でも何でもいいから彼女が立ち直れる『きっかけ』が訪れるのを祈る事しか出来なかった。
※ ※ ※
それはある日の食堂での出来事。
「おいギーシュ、お前結局誰と付き合ってるんだ?」
「ふっ、僕は女性を楽しませる薔薇なのさ。特定の誰かだけを贔屓にするなんて事は無いよ」
気障でヘタレな自称薔薇野郎、ギーシュ・ド・グラモンが今日も友人達と馬鹿な会話をしてるのを聞き流しながら、キュルケは食事中のルイズの様子を伺っていた。今のルイズは普段より元気が無いとはいえ、特に食欲が衰えている訳でもなく、出された食事は問題無く食べきっている。
「あの、ミスタ・グラモン。この小瓶を落とされましたよ」
「な、何を言っているのかな? これは僕の物では無いよ」
「え? でも今確かに……」
……いや、強いて言えば食欲に関してはむしろ増した方だろうか。貴族用の食事は
「その『小瓶』! もしやモンモランシーの『香水瓶』ではッ!?」
「つまりこういう事か? 『ギーシュはモンモランシーと付き合っている!』」
「そんな、ギーシュ様!」
「い、いやケティ、これはだね……」
……彼女らにとっては貴族としての威厳なんかよりも今目の前にあるご馳走の方がよっぽど大事なのだろう。タバサが健啖家である事は承知していたキュルケだが、魔法が使えないからこそ貴族である事に、貴族の誇りに他の誰よりも拘っていたルイズまでもが同等の食欲を見せ、はしたなく見える程の食べ方をするようになった事も違和感として感じていた。
「さようなら!」
パシン、と平手打ちの音。思わずそちらに目を向ければ、赤く腫らした頬を押さえ呆然と立ち竦むギーシュと、涙を零しながら走り去る女子の後姿。そして更に、ギーシュに近付いていく人影。
「ギーシュ……やっぱりあの一年生に手を出してたのね……」
「待ってくれモンモランシー! 誤解だ、彼女とはただ……」
なるほど、ギーシュが二股やらかしたのね、と会話を聞き流していたキュルケも遅れて理解する。というか、ここまで分かり易い
……そんな益体も無い感想を抱きながら事態を傍観するキュルケ。その間にもギーシュはモンモランシーに愛想を尽かされ、ワインを頭からぶっかけられて濡れ鼠。彼女もまた怒りのままにその場を立ち去った後、ギーシュは隣でおろおろしていた黒髪のメイドに向き直る。
「君が軽率に香水瓶を拾った所為で二人のレディが傷ついてしまった。どうしてくれるんだね」
「えっ、あ……も、申し訳ございません!」
途中からしか経過を知らないキュルケでも分かる、いっそ清々しい程の責任転嫁と八つ当たりであった。しかしメイドは平民であり、ギーシュは腐っても貴族。逆らう選択肢などありはしない。内心でどう思っているにしろ、頭を下げ即座に謝罪した彼女の対応は間違いでは無い。
「『申し訳ございません』? 謝罪で済むと思っているのか? いいか、君が余計な事をしたおかげで僕も彼女達も大いに名誉を失うハメになったんだぞ! その無礼に対したった一言謝った程度で許しを乞おうと言うのかッ!」
「い、いえその……」
(うっわー、調子乗ってるわアイツ。自業自得どころか全責任はあんたにあると思うけど……その自覚があるから尚更他人にぶつけずにはいられない、って所かしら)
要するに精神的動揺から情緒不安定になっているのだろう。普段の彼は『全ての女性の為に在る一輪の薔薇』を自称して、貴族だろうが平民だろうが、麗しい女性と見れば気取った態度で接し、蔑ろにはしない男なのだ。そんな彼が責任逃れの為とはいえメイドに当たるなど、余りのショックに我を忘れているとしか思えない。後で思い返したときに黒歴史確定である。……普段ほざいてる『薔薇云々』の時点で黒歴史とか言ってはいけない。彼はきっと死ぬまで薔薇野郎だから、本人的には黒歴史でも何でもないのだ。
「全く、君のような平民がいるから我々貴族が迷惑するのだよ! 特に『メイド』などというものは、貴族に『飼われる』しか能の無い『犬畜生』のようなものだ! それが『飼い主』である僕に対し、よくも『手を噛む』ようなマネをッ!」
「……っ!」
(ギーシュの奴、完全に頭に血が上ってるわね……それはあんまりな言い草だって、気付いて……無さそうね、どう見ても)
キュルケは密かに眉をひそめる。
そう、ギーシュ一人が勝手に暴走した挙句黒歴史が一つ増える程度なら別に構いやしない。ただの笑い話だ。しかし今回は他人を巻き込んでいる。彼女は彼の不貞を意図して暴いた訳ではなく、偶然が重なった結果ギーシュ自身の責任問題が露呈しただけ。確かに平民は貴族に対して絶対的に不利な立場だが、この場合は流石にあの黒髪のメイドを責めるのはお門違いだろう。
「いいか、もう一度言うぞ! 『使われる』分際のメイドが、『使ってやっている』僕に対し! 『許しがたい罪』を犯したのだッ! その『罰』を受ける義務が、君にはある筈だぞッ!!」
ギーシュの口から飛び出たトンデモ理論に、周囲の野次馬からも呆れるような雰囲気が漏れる。だが興奮状態にあるギーシュ本人は全く気付く様子も無い。あの分では恐らく、その場のノリで言っては見たものの『罰』の具体的内容なんて微塵も考えてはいないのだろう。
とはいえ、この勢いのまま碌でもない『罰』を思いついて実行しようとするかもしれない。その時は助け舟を出してやろうと、キュルケは杖に手をかける。ふと隣に目を向ければタバサも同様に動く準備をしており、視線を交わして頷き合う。
「わ、私はっ! 貴方の『飼い犬』などではありませんッ!」
少し震えた、しかし意思が篭り毅然とした声が響き渡ったのはその直後だった。
「なッ、……何だと?」
ギーシュも思わず聞き返す。
ざわつく野次馬達。キュルケもこれには驚いた。先ほどまで縮こまって怯えるだけだった黒髪のメイドが、ギーシュを睨みつけて反抗しているのだ。
「私は確かに平民です、貴族様の八つ当たりや責任転嫁で詰られようとも、ある程度は我慢いたします……でも、ですが! 私は『メイド』として最低限の『誇り』は持っているつもりですし、今回の件について『メイド』としての職務に問題点は『無かった』と自負します! それを『侮辱』されるのだけは、……それだけは、どうしても認められません! 『撤回』して下さい、先ほどの発言をッ!!」
「ぐぬぬ……き、貴族である僕に向かって……何だその態度はッ!?」
手を固く握り締めながら、今にも泣き出しそうな目で、しかしそんな恐怖を意志の力だけで抑え込んでハッキリと自身の意見を語りきったメイド。キュルケもタバサも、その『勇気』には身分の差など忘れてしまう程の『敬意』を抱いた。
しかし平静さを欠いている今のギーシュに対しては、火に油を注いだだけのようだ。遂に後先も考えられなくなったのか、彼の杖である薔薇の造花に手が掛かる。しかしメイドは一瞬体をビクリと震わせたものの、決して目を背ける事無く目の前の貴族を睨み続ける。
それに対しキュルケとタバサが反応し、ギーシュが取り返しの付かない過ちを犯す前にその愚行を止めようと、今正に杖を抜こうとしたその瞬間。
「がふッ……!?」
「……え?」
―――誰かに
気の抜けたような困惑の声は、一体誰のものだったか。野次馬の誰かか、黒髪のメイドか、或いはキュルケかタバサのものだったかもしれないし、全員が一様に同じ反応だったのかもしれない。
とりあえず分かるのは、ギーシュの身に『何か』が起こって彼がダメージを受けた、という事と、あと『もう一つ』。
「……さて。しゃしゃり出るつもりも無かったんだけど……やっちまったモンはしょうがねぇー、なるようになれって所かしらね」
―――ギーシュにその『何か』をしたのは、メイドを庇う様に前に立つルイズなのだという事。
「る、イズ……君が、僕に……何か、いや『何をしたッ!?』」
「とりあえずそこのメイド……えっと、あんた名前は?」
「……え? あっ、その、シエスタと申します……けど」
「そう。ならシエスタ、下がってなさい。この浮気ヤローは私が引き受けるわ」
苦しげに呻きながらも問いかけるギーシュだったが、それを完全に無視するルイズ。その反応にギーシュはますます気を荒くする。
「ルイズッ! 君はその平民の肩を持つと言うのか!? なるほど『ゼロ』のルイズにとって平民はお仲間だもんな、魔法の使えないもの同士で下らない『同族意識』でも湧いたという事かい!」
「は? 何言ってんのあんた、私がそんな『仲良しごっこ』で動く訳無いじゃない」
嘲るようにルイズを挑発するギーシュ。心中で(どんなトリックを使ったのかは知らないが二度は同じ手を食らうものか!)とか思いながら先ほどの『攻撃』の怒りをぶつけるが、食らった攻撃の正体もトリックも想像が付かないのにそんな自信が持てるのは偏に彼が残念な男だからである。
だが彼の挑発もルイズには届かない。心底呆れたような否定の言葉が飛ぶ。
「別に、平民がどれだけ虐げられようが何されようが興味も無いわ。そもそも『貴族』だろうが『平民』だろうが私に関係無いなら勝手にやってて下さい、って感じ?」
「あ、あの……ミス・ヴァリエール? それじゃあ何で私なんかを庇って下さったのですか?」
「ああ、理由は二つよ。一つはこの
メイド―――シエスタの疑問に答えるため、ルイズは振り向く。そしてその時、キュルケは確かに見た……不敵に笑んだその表情を。彼女の瞳が、輝きを取り戻しているのを。何が『きっかけ』だったのかは分からないが、ルイズは遂に『復活』を果たしたのだと、そう確信できたのだ。
そして―――
「そして、もう一つは……シエスタ、
―――そして、その『きっかけ』を与えたのが、黒髪メイドのシエスタだという事も。
……To Be Continued→
ミスタ・チュートリアルことギーシュ君には物語の展開の為に悪役を演じて頂きました。まあ冷静じゃ無かったし多少はね?
どんなssでどんな醜態を晒しても、チュートリアル決闘終了後はそれ以前の遺恨とかすぱっと捨てて友人ポジションに鞍替えできるのがギーシュ君の才能だと思う。