『TDD-1建造』相良宗介、軍曹から提督へ   作:ローファイト

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メリダ島決戦からの異世界転移
第一話は宗介がこの世界で生きて行こうとするお話です。




第一話、宗介転移

メリダ島最終決戦。世界改変を阻止した宗介だったが、運命は残酷にも彼を絶望の淵に立たせる。

核ミサイルがこの島にもう間もなく到達するのだ。

脱出手段もなく、攻撃手段も防御手段も失い半壊した宗介の愛機レーバテイン、その自立型AIであるアルと共に最後の時を待つばかりだった。

 

すでに、恋人の千鳥かなめ及び戦団長テレサ・テスタロッサ率いるミスリル残党兵団の脱出を確認した。ミッションはすべてクリアされた。幼いころから、戦士として生き、戦場で死ぬと漠然と思っていた。もはや、思い残す事はないはずなのだが……

彼は願ってしまった。まだ生きたいと、あの、光のような穏やかな日常に戻りたいと。自然と涙する。

 

核ミサイル着弾まで、後30秒

アルが宗介に問う。

AIであるはずのアルがこの最期に問うてきた質問がこれである。

「軍曹、私は人なのでしょうか?」

ただのAIではない事は宗介も分かっている。時には、冗談を言い、時には、叱咤激励まで……宗介にとっては、ただの機械ではない、もはや命を預ける事ができる長年の相棒として認識していた。

「自分で考えて見ろ」宗介はアルに対して最後の言葉をかける。

 

 

 

 

そして、彼らは光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西太平洋、硫黄島からさらに南…メリダ島鎮守府

 

「アル、基地の修復は状況はどうなっている」

 

「現状ではメリダ島施設全体の約70パーセントまで回復。あと2週間で完全修復可能です」

 

「そうか……俺たちが、元に戻れる手だては見つかったか?」

 

「不明です」

 

「そうか、致し方ないが生きるためにも今を進むしかない。そういうことだな」

 

「肯定です。相良【提督】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さかのぼる事、1か月前

 

ミスリルのエージェント:ウルズ7相良宗介軍曹とその相棒学習するAIアルは、メリダ島で最後の時を待つばかりであったが、AIであるはずのアルが自身の人格を認識し、ラムダ・ドライバを発動したのだ。

しかし、それがきっかけに、メリダ島ごと別次元に飛ばされる結果となる。

 

 

そこは地理上は元いた地球と全く同じ姿をしていたため、別次元に飛ばされた等とは宗介もアルも最初は思いもしなかった。

アルは半壊したレーバテインの生きているセンサー類により、情報収集を行うが、位置情報や日時を計測するが、正常な計測値が算出されない。

無線は磁気嵐のようなジャミングがかかり、軍事衛星通信などを経由しようとするが、さっきまで在ったはずの軍事衛星はその存在すら見当たらない状況であった。

 

その間、宗介はメリダ島に敵の残党、もしくは味方の生き残りがいないか基地内部及び島全体を捜索したが、誰も見つからなかった。それだけではない、そこに在ったはずの敵味方の死体自体がきれいさっぱり消えていた。目の前で息絶えたはずのレナードやカリーニンの死体すらも。しかし、基地の破壊状況、ASの残骸などは宗介が見てきた通りに激戦の傷跡として残ったままである。

 

基地の生きている通信機器を使って周囲に呼びかけるも反応は皆無。

 

 

宗介とアルは状況が分からないまま、しばらく過ごすことになる。

とりあえずは、アルの体ともいえる半壊したレーバテインを基地のドックにかろうじて動く事が可能なASで運び雨曝しを防ぐ。

 

アルは基地内の生きているコンピュータとリンクし、基地のライフラインの復旧とレ―バテインの修理を試みる。

 

宗介はその間も基地内の状況調査や他の生き残りがいないかを詳細に調査をしていった。

すると宗介は基地内のメイン電源ルームで奇妙な光の柱を見つける。

それは半径50センチ高さ2メートルほどの淡い光の柱だ。

 

宗介が近づくと、その中から人影が現れる。

しかし、驚くことにその人影は明らかに人ではない存在だった。

 

それはかろうじて人の形はしているが身長40㎝ほど、体のバランスは2頭身、ぬいぐるみの様な愛らしい容姿をしていた。

宗介は驚きながらも長年戦士として培ってきたその体はとっさに銃を突きつけた。

 

「何者だ!!」

 

「ん?君がここの王様?」

その存在は宗介に首を傾げながら聞いてきた。

 

そう、彼女らはこの世界で言う妖精という存在であった。

 

これが宗介たちのこの世界で初めて会った知的生命体であった。

 

 

 

 

それから宗介はアルとともにこの妖精なる生命体とコンタクトを取り、情報を得ることになる。

総合して考察した結果、元いた世界によく似ているが、別世界だということが分かる。

この妖精もこの地に初めから存在したわけではなく、別世界から呼ばれてきているらしい。

妖精は、この地の王の補助をするために召喚されてきた。その王とはこの地を守護し、深海にすむ悪鬼と戦う使命をまとったものの事を言うそうなのだが、宗介たちにはイマイチぴんと来ない。

妖精たち曰く、宗介はこの島の王の資格があるらしい。そして彼らは、深海の悪鬼どもと戦う王を提督と呼ぶ。

 

宗介はこの世界の情勢を妖精に聞いてみるが、妖精たちもよくわからないらしい。

結局は別世界だということが分かっただけで、現状は何も変わらないと一緒であった。

 

ちなみに、妖精たちとは、最初に出会った妖精から次々と現れ、今では50人もの妖精が召喚されていた。この地の活性化することにより、土地のエネルギーが充実し。妖精を召喚できる人数が増えるらしい。

さらに、過去に失った人の思いが詰まったある特定の兵器を付喪神として現代に呼び起こすことができるというのだが、何のことか今の宗介たちにはわからなかった。

 

とりあえず、宗介はこの妖精たちから提督と呼ばれ、何かをなしたいと要求してくるのだが、

この地を守護し、深海の悪鬼を倒すなどと言われても、その悪鬼どもがどこにいるのか何者なのかもわからないため。実際に何をしたらよいのかもさっぱりわからない状態だ。

宗介はとりあえず、このメリダ島のライフラインの復旧とレーバテインの修復を手伝うように指示をした。妖精たちは初めて見るだろうメリダ島の施設設備を興味深そうに見て、しばらくすると壊れている個所を直そうと働き出す。最初は失敗ばかりしていたが、アルが映像を使って丁寧に説明すると、みるみる知識と技術を吸収し、今では順調に設備が復旧していくのであった。レーバテインについても同じでアルの指示に従い、着実に修理が進んでいく。

 

 

 

宗介とアルがこの世界に飛ばされて、2週間、そして妖精と出会って10日目にあたる。

レーバテインが完全復旧したのだ。元いた世界では、2か月はかかっただろう修理もわずか10日で復旧したのである。これは妖精たちの働きによるものだった。

 

ちょうどそんな時事態が動いた。

宗介はアルからメリダ島から10キロ離れた沖合で、戦闘行為が行われていると報告を受ける。

 

宗介は早速復旧したレーバテインに乗り込み、レーバテインのセンサーを活かし、その戦闘海域の状況を確認した。

各種センサーでは何やら人サイズのものが海上を高速機動し、高熱源体が飛び交っていた。どうやら、本当に戦闘が行われているらしい事が確認できる。

 

しかし、こんなにも小さなものが、海上を高速でしかも、高威力の火力で撃ち合うことができるのものだろうかと宗介は疑問に思う。

 

宗介は望遠モード直接視認する。

そこには驚きが広がっていた。

 

 

「アル、俺は夢でも見ているのだろうか?」

 

「軍曹、私もそう思わずにいられませんが、これはまぎれもなく現実です」

 

 

そこには、うら若き少女たちが海上を駆け回り、何やら薄気味悪い生物らしき物体と激しく砲撃戦を展開していたのだ。

 

 

「………」

 

宗介はしばらくその情景を唖然と見ていたが我に返る。

 

どう考えても、少女たちの方が物量的に不利な状況なうえ、その中にどうやら小学生ぐらいの子供までいるようだ。

情勢は5:1で少女たちが劣勢……少女たちは必死に抵抗しているが……もはや時間の問題だろう。

 

「アル、やるぞ」

 

「どちらに味方を?」

 

「決まっているだろ!!」

 

「了解、ガンハウザーモードに切り替えます」

 

「デモリッションガン、ガン・ハウザーモード、照準は任す、狙いはあの訳が分からん生物兵器だ!!」

 

「了解(ラジャー)、ラムダ・ドライバ起動」

 

「少女たちには当てるなよ」

 

「了解…照準…3・2・1」

 

「ファイヤー!!」

 

ズガーーーーーーーンン!!

 

レーバテイン最大の武器デモリッションガン、ライフル型の165mm破砕榴弾砲。あまりにも高威力のため、ラムダ・ドライバの補助なしでは発射させることもままならない。

 

レーバテインは次々と165mm破砕榴弾を発射させ、一撃の下にその不気味な生体兵器を粉砕していく。明らかにオーバーキルではあるが、レーバテインが現在標準で携行している武装の中で遠距離攻撃が可能な武器はこれだけである。しかも最大射程30㎞まで精密射撃が可能なのだ。あの戦艦大和の46㎝砲より射程が長く、威力は段違いに高い。

補助ユニットとしてロケット砲や、赤外線追尾対空ミサイルなどがあるが現在装備していない。

 

 

そして、不気味な生体兵器群の4割を粉砕したところで、彼らは撤退を開始し、深海へと帰っていった。

 

「なんだったんだアレは?」

宗介はコクピットでAIのアルに話しかける。

 

「データ無し、詳細不明、但し、妖精らが語っていた『深海に住まう鬼』と推測します」

 

「その可能性が高いな、少女たちの方は?」

 

「全員生存しておりますが、生命反応が弱い者もおります」

 

「こちらからの救助は可能か?」

 

「現在は不可能ですが、不明生体兵器撤退後から、無線通信は可能なようです」

 

「呼びかけてみてくれ」

 

「了解、通信来ます」

 

『こちら、日本国横須賀鎮守府所属、トラック鎮守府、第六偵察部隊、旗艦神通。援護感謝いたします』

若いが凛とした口調の女性の声が無線から響いてきた。

 

『……相良宗介軍曹、所属は機密故、黙秘を行使する』

宗介は相変わらずの高圧的な名乗りをあげる。

横須賀鎮守府なるものは元いた世界にはなく、米軍横須賀基地ならば存在したが……やはり、ここは別世界だと改めて思い知らされた。

 

『日本語………軍曹?貴方は友軍なのですか?』

 

「あなたは今はこのメリダ島の司令です。ミスリル所属の軍曹ではありません。妖精からも言われた通り、提督を名乗るべきです」

アルは宗介にそう進言する。

宗介は、人間は存在しないが、AIのアル、それと異世界の妖精達50人のを率いる曲がりなりにもメリダ島の最上位の責任者なのだ。

 

『コホン、いや、失礼しました。自分は現在どこにも属しておりません。仮ではありますがこの島の責任者をしている身。軍曹は忘れてください』

宗介は態度を改め敬語を使うが、どこか偉そうだ。

 

『そうですか……友軍でもないのに、厚かましいのは重々承知なのですが、すでに退路も、物資も尽き、大破……重傷者も出ており、その、貴殿の島に着寄させていただけないでしょうか?お願いいたします』

神通は悲壮な声で訴えかける。

 

「アル……」

宗介はアルに意見を求める。

 

「この世界の住人から情報を得られるいい機会です。流石に基地ドックからは無理ですが、浜から上がって来てもらいましょう」

 

『了承します。島東部にある浜から着岸してください。貴部隊を歓迎します』

 

『ありがとうございます。本当にありがとうございます。感謝いたします』

 

こうして、彼女らにメリダ島上陸許可を出したのだった。

 

 

 

 

 




次は艦娘達との対談です。
レーバテインとアルに驚く艦娘
艦娘に驚く宗介かな?

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