『TDD-1建造』相良宗介、軍曹から提督へ   作:ローファイト

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……では


第十三話 トゥアハー・デ・ダナン真の実力

メリダ島周囲200㎞に包囲するかのように展開している深海棲艦186隻の艦隊は徐々にその包囲の輪を縮めて行った。

 

 

「ダーナ、メリダ島周囲の敵深海棲艦の正確な位置を」

 

「イエス・マム、186隻戦艦級を主体とした打撃部隊です。その内強力な姫・鬼級が8隻を確認。包囲網を築き、徐々にメリダ島に近づいてきております。マップデータを出します」

 

トゥアハー・デ・ダナンは現在メリダ島の地下水路からでて水深100mを航行中である。

 

 

「では、敵殲滅の為、垂直発射管からアド・ハープーン対艦ミサイルを発射後、急速浮上」

カーキ色のミスリル女性将校服に身を包んだアッシュブロンドの髪を持つ少女は艦娘トゥアハー・デ・ダナン、テッサは冷静に目の前の大型スクリーンに映し出される敵情報を見据え、自らの艤装ダーナに命令を下す。

 

「イエス・マム、全ターゲットロック、アド・ハープーンセット、1番から4番連続発射」

無機質な女性の声が艦発令所スピーカーを通し響き、ミサイル発射の報告をする。

この声の主が、トゥアハー・デ・ダナン、テッサの艤装にして、この艦自体の意思(AI)であるダーナである。

 

艦娘のタイプとしては初めてだろう。艦娘トゥアハー・デ・ダナン、テッサは、元となった潜水艦(本来のトゥアハー・デ・ダナン)と同じ大きさの躯体を艤装とし乗り込んでいる。さらにその艤装自身もダーナと言う意思を持っているのだ。

 

 

 

 

そして、スクリーンには発射された対艦ミサイル8発がこの艦を中心に八方に飛翔し、包囲している深海棲艦に向かって進んでいる様子が映し出される。

 

「………急速浮上後、上部甲板を展開し、無人偵察機及び、艦上攻撃機を発進」

 

「イエス・マム」

 

 

 

 

メリダ島を包囲している深海棲艦は姫・鬼級を中心とした大きく8艦隊に分かれ、接近していた。

しかし、突如として、空中から多数の小さなミサイルが降って来たのである。

 

 

トゥアハー・デ・ダナンから垂直発射された対艦ミサイルは、それぞれ深海棲艦を包囲する8艦隊に向かい飛翔する。

発射された対艦ミサイルはただの対艦ミサイルではない。艦娘が深海棲艦と戦うための兵装である。艦娘の兵装は実際に存在した兵器を威力をそのままにし8~16分の1サイズに縮小を実現し運用可能としている。

この艦娘トゥアハー・デ・ダナン…テッサもその例に漏れない。

発射されたミサイルは通常の対艦ミサイルと同じ大きさではあった。しかし、上空へと打ち上げられた対艦ミサイルは、深海棲艦部隊から40㎞と迫ると、空中で分解し、中から、約12分の1サイズの対艦ミサイル(40㎝程)144発が点火し各深海棲艦に向かって行き、次々と襲い掛かった。

 

 

小型の対艦ミサイルの雨が深海棲艦の8艦隊に襲い掛かる。

気が付いた者は退避行動をとる。または、迎撃を行うなどしたが、敵艦載機よりも高速の上、追尾型のミサイル、さらにはダーナとリンクしているため、敵の攻撃の回避行動までとるような代物だ。

殆どの深海棲艦は対処しきれずにまともにミサイルをその身に受け粉砕する。

 

姫・鬼級など耐久力や回避能力の高い深海棲艦は何とか生き延びている様だが、全て中破以上の被害を受けていた。

 

壊滅的なダメージを受けた深海棲艦の部隊は、息つく暇もなく次の攻撃を受けることになる。

超音速で迫る何かに、先ほど同様のミサイル攻撃により追撃を受け全滅したのだ。

 

 

対艦ミサイル発射後、急速浮上したトゥアハー・デ・ダナンは躯体の上部外殻を開口し、上部甲板が現れる。

しかし、本来のトゥアハー・デ・ダナンには無いものが現れる。上部甲板3分の1が下からせり上がり3層の小型の飛行甲板へと変貌したのだ。そこから次々と、最新鋭の戦闘機F―35ライトニングⅡが次々と発艦していくのだ。但し、サイズは実物の8分の1となっているのだが………

さらに言うと、隊長機には妖精が乗っていたが、その他はすべて無人機となっている。

 

F-35の部隊が48機、追撃として、対艦ミサイルなどで生き残った深海棲艦を次々と襲い全滅させたのだ。

 

 

 

「メリダ島周囲深海棲艦全滅を確認いたしました。次のご命令を」

ダーナはテッサに淡々と報告をする。

 

「上々ですね。アド・ハープーン対艦ミサイルを相良提督包囲網の北側及び、西側部隊に発射。

さらにF‐22を発進し空域を支配しなさい。

誰にケンカを売ったのか、誰に牙を向けたのかを海の底で後悔させてあげましょう」

 

 

「イエス・マム」

 

「F‐22発進と同時に無人偵察機も周囲2000㎞圏内に展開。一部はハワイ、そしてF‐35回収後、全速で相良提督の元に……」

 

 

 

 

一方宗介とアルのレーバテインは、包囲され敵の空母機動大規模艦隊の航空戦力と対峙していた。

レーバテインの武装も中尉(妖精)のチューニングにより、対深海棲艦用の弾薬に耐えうるように改良されている。

艦娘の兵装とまでとは行かないが、今までとは、武装の大きさは同じだが命中精度、威力、推進力及び榴弾の細かさなどが圧倒的に上昇していたため、敵航空戦力と対峙出来たと言ってもよいだろう。

 

「軍曹、予備弾倉はすべて使い切り、残弾2割を切りました」

 

「問題ない。ぺイブ・メア輸送ヘリは離脱したか?」

 

「もうまもなく、離脱可能空域に達します」

 

「了解だ。では此方も、撤退するか……」

 

「この場合、撤退ではなく、中央突破でしょう」

 

「そうだな」

攻防のさなか、この二人の会話は余裕すらあるように聞こえる。

 

「軍曹、通信妨害が弱まり、メリダ島周囲の深海棲艦部隊の反応がありません……はて」

アルは宗介にそう報告したのだが、アル自身その状況の正確な情報を手に入れていないため、なぜ、急に反応が無くなったのかについて判断がついていない様だ。

 

 

するとレーバテインに若い女性の声で音声通信が割り込んでくる。

「相良提督、ラムダ・ドライバで防御願います」

 

「誰だ?」

宗介はその女性の声に聞き覚えがあるが誰か分からなかった。

 

「軍曹、ミサイル群が接近、さらに音速飛行体接近します。防御体勢を」

アルは上空からのミサイルと飛行物体の接近を宗介に警告する。

 

「なに!」

宗介はアルの声でラムダ・ドライバを起動し、防御力場を展開する。

宗介は状況を把握できないでいた。ミサイル群が来る等という事は在りえないからだ。敵深海棲艦は所詮WW2時の兵器、またはそれの強化版に過ぎないためミサイルという概念が無い、よって、ミサイルが迫るなどという事態は想定していなかったのだ。

 

小さなミサイルは防御力場を展開しているレーバテインには命中することなく、敵深海棲艦の艦載機に命中し次々と撃墜していき、周囲の敵艦載機は一機残らず駆逐された。そして、最新鋭の戦闘機を模した小型の戦闘機が上空を通過していくのも確認でき、遠方で爆発による発光などが確認される。

 

「アル!!あれは!?」

 

「……F‐22の様ですが、サイズが小さすぎます……」

 

「なぜ、F‐22が?」

 

「周囲の敵深海棲艦も次々と轟沈していってます」

 

「アル、なにが起こっている?」

そんな疑問の声を上げる宗介とアルに先ほど防御体勢を取るように通信してきた女性が再び通信を送って来たのだが、今度は音声だけでなく、映像も映し出される。

 

通信映像にはカーキ色のミスリル女性将校用制服を着こなし、落ち着いた雰囲気の女性が映し出されていた。

「相良提督、お怪我はありませんか?」

 

「??…………た…た大佐殿!?……いえ!!自分は大丈夫であります!!」

そこに映し出されていた女性は、カーキ色の女性将校服を纏い、その落ち着いた物腰に、強い意志を持った瞳、まぎれもなく宗介の元上司、女傑テレサ・テスタロッサ大佐の姿だった。

実際には宗介も将校服姿のテスタロッサ大佐と会う事は少なかった。階級が違う上、基地内でもめったに会う事もなく、トゥアハー・デ・ダナンの作戦中も言うに及ばず、現場の一兵士である宗介と軍の司令官であるテスタロッサ大佐では、直接的な用事が無い限り、まず会う事は無い。

基地内で個人的に会ったとしても、その……この姿のテスタロッサ大佐ではないのだ。

 

それでも宗介は、この姿のミスリル西太平洋戦隊司令官であるテスタロッサ大佐と出会うと、自然と畏怖の念を抱かざるをえないのだ。

 

「大佐ではありません。艦娘トゥアハー・デ・ダナンです。提督にはテッサの愛称で呼んでいただきたいと何度も申しましたのに」

 

「大佐殿ではない?……テッサ?……なぜ、その恰好を?」

 

「提督ご安心を、この海域の深海棲艦をすべて排除いたしました」

 

「全て排除だと!!あの数を!!テッサ!!どういうことだ?」

宗介は状況が分からず、テッサに問いただす。

 

「そちらにお迎えに参ります」

そう言って通信が遮断される

 

「アル!!深海棲艦の状況は!?迎えとはどういうことだ!?……アル!」

 

「………相良提督、この海域での深海棲艦の反応はありません。オールクリアです……」

 

「…………な…」

 

 

 

しばらくすると、レーバテインの目の前に、激しい水しぶきと共に大きな物体が海面に急速浮上し現れる。

宗介が知っているTDD-1トゥアハー・デ・ダナンその物が目の前に現れたのだ。

「なに!!…………アルどういうことだ!!トゥアハー・デ・ダナンは確かにメリダ島決戦の際に沈んだはずだ!!」

 

「相良提督、確認しました。あの船体自体が艦娘テッサの艤装だという事です……」

 

「……艤装だと!?」

 

トゥアハー・デ・ダナンの上部外殻が開き、甲板が現れる。

「相良提督、着艦をお願いします」

 

「…………」

宗介は無言であった。次々と起こる事象に、深海棲艦大規模包囲網の時よりも驚きが大きいのだ。

そして、レーバテインを水上からジャンプし上部甲板に着地し、元の世界で行っていたように帰還時のルーティン通りに、中部機動エレベータにロックさせ、格納庫へと下りて行く。

 

「お帰りなさい提督。そして、ようこそ、私の艤装ダーナに」

レーバテインのコクピット内にテッサの声が響き渡る。

 

「……ああ」

宗介は驚きの表情を隠せないでいた。

 

格納庫にはASは無く、輸送ヘリが数機見られるのみ。その代わり以前にはない数段に分かれた格納スペースが半分を占拠し、小型化の最新鋭戦闘機や無人機が所狭しと収納されている。一体何機あるのかも分からない位である。

しかも、幾人かの妖精が働いているのも見える。

 

宗介はその光景を唖然と見ながら、レーバテインを所定の位置にロックさせ、格納庫に降り立つ。

 

「相良提督。改めて、ようこそダーナへ。歓迎いたします」

カーキ色の女性将校服を着こなし、美しい立ち振る舞いをするテスタロッサ大佐……いやテッサが宗介に優しく微笑みかけるその姿は宗介に纏わりつき、問題行動ばかりとる、あの迷惑娘テッサの姿など微塵も感じさせない。

 

「……大佐殿ではなく……本当にテッサ…なのか?」

 

「はい、私はあなたの艦娘のテッサです」

そう言って優しい笑みを見せる彼女を見れば、誰もがその姿に、その笑顔に心が奪われるだろう。

 

宗介も例外ではない。

宗介も気恥ずかしく、顔を少し赤らめ斜め下を向く。

 

「提督、では発令所にご案内いたします……アルさんはダーナとの情報リンクを許可いたします」

テッサはそう言って、宗介の前を歩みだす。

 

「これが君の艤装……トゥアハー・デ・ダナンそのものではないか」

 

「はい、この艤装は私の元の体と言っていいのでしょうか……メリダ島地下水路に沈んでいたトゥアハー・デ・ダナンそのものを利用し改修したものです」

 

「なるほど……敵を殲滅したのも君なのか?」

 

「はい、メリダ島や提督に仇名す不逞の輩はすべて排除いたしました」

テッサは当然の如くそう言い切る。

 

「…………」

 

「要救助者が乗っているぺイブ・メア輸送ヘリは、途中で回収いたしまして、鳥海さんと摩耶さんは現在入渠施設です。重傷者の摩耶さんは入渠施設の特別カプセル内で欠損した体の復元を行っております」

テッサは沈黙している宗介に続けて報告をするが、これも驚くべき内容が含まれていた。

この艤装内に艦娘専用の入渠施設があったのだ。

 

「そうか、助かる……艤装内に入渠施設……何でもありだな」

 

「はい、弾薬補給施設も備え、移動要塞の体を成しております」

 

「………」

宗介はもう、何を言っていいのやら分からない状況だった。

 

「あっ……」

テッサが起伏も何もない発令所へと続く通路で急に躓いたかのように倒れる。

これも、テスタロッサ大佐の能力?を引き継いでいるのだろうか?極度の運動音痴とドジっ子特性を……

 

宗介はすかさず抱き留める。

 

「…あの…ありがとうございます。提督」

宗介の胸に抱き留められたテッサは顔を赤らめながら弱弱しく、宗介にお礼を言う。

 

「も…問題ない」

そんなテッサの仕草に、宗介も何故か顔を赤らめ、サッとテッサを抱き起し、素早く離れる。

 

その後、お互い一言も話さず、顔を赤らめながら、発令所に黙々と向かう。

 

 

そして発令所扉を開く。

全面には大きなスクリーンと潜水艦にしては広い空間がひろがっている。

宗介はトゥアハー・デ・ダナンの発令所にまともに踏み込むのは初めてだった。一介の軍曹に過ぎない宗介には発令所に入る資格がないためだ。

 

テッサは宗介に中央後方に二つ並んでいる金属性のシートの右手に座るように促し、自分は左手のシートに腰を鎮める。

「相良提督、此方が提督の席になります。今後、私の艤装ダーナを運用し作戦行動をとる際はここにお座りください……それと、提督、あまり自分の身を切るような作戦や行動をとるのはやめて下さい、あなたは私達の司令官で部隊のトップなのですから」

テッサはそう言って宗介に軽く注意をする。

 

「出来るだけ留意をする」

宗介はそう言うにとどめる。宗介の性格上最前線で自分が戦う事を前提に作戦を練る事が多いからだ。

 

「さて、早速ですが提督にここにお越しいただいたのは、今から提案する作戦を即決していただきたいためです」

テッサはそう言って全面スクリーンに大きなマップを映し出す。

 

「作戦?すでに救出作戦は済んだはずだが?」

 

「いえ、私は既に、この海域に集まって来た敵艦隊が出港した敵泊地と思われる場所を、無人偵察機で確認いたしました。ハワイとサイパン大規模泊地、硫黄島には中規模泊地が、その他小規模泊地をメリダ島1500㎞範囲内に2カ所確認いたしました。

巡航ミサイルによりこの太平洋と一番大規模な泊地と思われるハワイに大打撃を与えます。続いてサイパン、そして硫黄島と小規模泊地は敵の資材採掘及び保管を行っているようですので、設備だけを破壊します。これにより、相良提督とメリダ島を付け狙う不逞の輩、深海棲艦共はしばらく手を出せないでしょう。硫黄島と小規模泊地は後日、資源を回収に向かいましょう。

それとハワイ・サイパンは占拠は出来ませんのでご留意を。こちらの人員が圧倒的に足りてません。攻撃手段があったとしても占拠できなければ、今後の展開に大きく支障がでるのは明白です。

硫黄島も占拠したいのですが、やはり、人員が足りません。せめて一艦隊を編成できれば可能なのですが……人員確保は提督には最優先に行っていただきたくお願いいたします」

テッサは何事もないよに、このような作戦を一気に立案した。

 

「ま……まて……それを一気に行うのか?可能なのか?」

 

「はい、今がチャンスです。この機を逃せば、しばらくすれば、敵は戦力を回復するでしょう」

 

「しかし、ハワイとサイパンには人間がいるのではないか?」

 

「人の反応はありませんでした。深海棲艦にやられたのでしょう」

 

「……うむ……了解だ……」

 

「ダーナ、聞いていましたね。提督の許可が下りました。早速トマホーク巡航ミサイルの用意を、

5番・6番から発射……5番はハワイ、6番は1500㎞圏内海域にあるサイパン・硫黄島・その他小規模泊地に照準し上空で分離し攻撃を」

どうやらトマホークも艦娘仕様となっている様だ。

 

「イエス・マム 既に5番・6番発射準備は終了しております……発射」

 

「提督、私たちも戻りましょう、メリダ島へ……どうしましたか相良提督?」

テッサはまるで何もなかったかのようにそう言う。隣でなにやら様子がおかしい宗介に気が付き尋ねた。

 

「……うむ……問題ない」

宗介は顔面全体に汗を浮き上がらせ、滝の様に流していた。

陸のテッサの突拍子もない行動は個人的にとんでもなくはた迷惑ではあったが、今の海の中のテッサは敵に対して全くの容赦が無い上に、この攻撃力に戦略眼。彼女一人で世界を覆す力を持っている。どう扱ったらよいのかわからないような、凄まじい存在だったのだ。

 

 

 

そして、メリダ島地下潜水艦発着場に到着したころには、ハワイ・サイパンの壊滅、硫黄島と小規模泊地の設備及び敵深海棲艦の全滅の報告を受けるのであった。

 

 

 

 

 

 




…………トゥアハー・デ・ダナンやり過ぎか?
始めた当初はこの話で終了するつもりでしたが……しばらく続く予定です。

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