『TDD-1建造』相良宗介、軍曹から提督へ   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


13話の裏話が今回のお話です。
まあ、ちょっとした番外みたいな感じです。
ストーリー的には飛ばしても問題ないお話です。



第十四話 トゥアハー・デ・ダナン出撃の裏では

テッサがメリダ島を抜錨した頃

 

 

「川内姉!!テッサが居ないんだ」

朝霜は待機中のブリーフィングルームから、発令所の川内に通信で慌てた様に知らせた。

秋月、朝霜、早霜、清霜、そしてテッサは、宗介が鳥海達の救出作戦に出撃後、メリダ島周囲でも雲行きが怪しくなってきた頃、神通から、現状況と警戒態勢を維持するための説明を行うためブリーフィングルームに招集を受けていた。

 

しかし、途中まで食事当番だった朝霜と一緒にブリーフィングルームに向かっていたテッサが、いなくなり、ブリーフィングルームにも一向に来なかったのだ。

 

「……テッサは出撃した」

川内は何時もより低い声でそう答えた。

 

「どういうことだよ川内姉!!テッサが出撃って」

朝霜は川内に声を荒げて、聞き返す。

 

「そっちに行く、説明するから」

川内はそう言って通信を切る。

 

「神通、私はブリーフィングルームに向かうから、現在のメリダ島周囲と提督とテッサの動向映像を送って」

川内は情報解析担当の妖精を一人連れ、発令所からほど近いブリーフィングルームに向かう。

 

「分かったわ、姉さん」

 

 

 

ブリーフィングルームに現れた川内に早速、朝霜が食って掛かる。

「どういうことだよテッサが出撃って!」

 

川内はそんな朝霜に手を振り、席に付くようさせる。前方画面斜め前に立ち、その横で妖精がコンピュータを操作し現在のメリダ島の状況を出す。

「現在、このメリダ島は186隻の深海棲艦に囲まれている」

 

「186隻……相良提督は!?」

秋月は目を大きくして質問をする。

他の駆逐艦たちも驚きの声を上げていた。

それだけの危機なのだ。

 

「提督は先に知らせた通り現在、重巡鳥海及びもう一人の救出に向かったのだけど、やはり罠だった。228隻の空母機動艦隊に取り囲まれているわ」

川内は淡々と説明する。

「なっ、なんだそれ!!なんだそれ!!提督もここも……」

「その数、トラック泊地の敵大規模艦隊と同じ……」

「……もう、逃げ場は……せっかく助かったのに」

朝霜、早霜、清霜三姉妹はそれぞれ、その圧倒的な不利な状況に絶望する。

 

 

「提督は重巡鳥海、そして重巡摩耶の救出を最優先にし、現在孤軍奮闘してるの……そして、テッサは先ほど出撃した。自分から志願したの……それを神通が許可した」

 

「提督もまた無茶を……それに、テッサさんはとても戦闘が出来るようには見えません」

「提督も単独?テッサも潜水艦で単独で?」

「……どう考えても無理だよ」

秋月、早霜、清霜は口々に川内に愚痴ともいえるような事を言う。

普段のテッサは戦闘とは無縁に思えるような性格をしており、自分から志願など考えられない様な行動だったからだ。

 

「自分からって!川内姉は止めなかったのかよ!」

その中で朝霜は語気を強くし、川内を責める。

 

「私だって止めたわよ!!……でもね。何時ものテッサと全く違ったの、その意志が強い目をしてた……神通も言っていた。歴戦の艦長の目をしていたって、それで許可を出した。いざとなったら私が首根っこひっ捕まえて、連れ戻す……でもね。アルと相良提督が前にテッサの事を言っていたの……テッサ、トゥアハー・デ・ダナンは一隻で戦場を覆す程の能力を持っているって……そしてこう言って、出撃したわ。『この島を包囲している敵をすべて駆逐し、提督の援助に向かえる』って」

 

「提督はアルとのコンビで、何とか脱出してくるかもしれない!!でも、テッサは艤装を持っていないんだ!!死にに行くようなもんだ!!」

朝霜はそう川内に反論する。

 

「テッサの艤装は完成していたみたい……でもそれがどんなものか分からない『艤装に乗っている』と言っていた」

川内はそう言いながらも自身でもその意味が分かっていない様だ。

 

「艤装に乗る?」

清霜はその意味が分からず呟く。

他の駆逐艦娘もその意味が分からないでいた。

 

 

そして真正面スクリーンには8分割に区分けされ、メリダ島周囲から深海棲艦8艦隊が迫ってきている様子が映し出されている。さらに、8艦隊はそれぞれ、姫・鬼級に率いられているのだ。

そんな死の宣告に似た絶望的な映像を見せつけられる。

 

「くっ」

「「「……」」」

その情景を無念そうに見ることしかできない。艦娘達

 

 

しかし、スクリーンに映し出されていた迫る深海棲艦の大部隊が突如として激しい光と爆炎で包まれたのだ。

 

「「な??」」

ここに居る5人全員が立ち上がりスクリーンを食い入る様にみるが何が起きたのか分からない。

 

光が収まると深海棲艦が粉砕・轟沈していく様が見える。

 

そして、再び、激しい爆炎が深海棲艦に降り注ぐ、今度は何が起こったか見えた。何かが、魚雷のような物が空から飛び、深海棲艦を追尾して命中、そして大爆発を起こしたのだ。

 

全てのモニターから、深海棲艦がすべて消えたのだ。

 

モニターに映像を流していた情報担当官の妖精が

「メリダ島周囲敵深海棲艦、全て轟沈、オールクリア」

淡々と報告する。

 

「「「「…………」」」」

その光景にこの場に居る誰もが絶句する。

186隻の深海棲艦すべて、一隻でも厄介な姫、鬼級すら一瞬で粉砕したのだ。

姫、鬼級は一隻でもエース級を6隻以上集めても勝てるかどうかわからない相手なのだ。

 

 

「……テッサがやったの?」

川内がようやく口に出す。

 

「トゥアハー・デ・ダナンからの、攻撃です。第一波は、対艦ミサイルアド・ハープーン1152発による波状攻撃、第二波は、最新鋭攻撃機48機による、対艦ミサイル及び爆撃による殲滅攻撃です。トゥアハー・デ・ダナン無傷、艦載機も全機無傷です」

情報担当官の妖精が答える。

 

「「「「…………」」」」

最早声も出ない。呆然とするしかない様相だ。

 

 

そして、全員、ストンと椅子に座る。

 

「「「「…………」」」」

誰も何も声を出さない。今だもって理解が追い付いていない。

10分、いや有に30分は経っているのかもしれない。

 

 

「……私達助かったの?」

清霜が最初に声を上がる。

 

「そ、そうみたいね」

川内もそれに答えるのがやっとだ。

 

「……本当にあのテッサが?」

朝霜はもはや何が何だかわからない様だ。

 

「…て、相良提督は!?」

秋月は思い出したようにもう一つの戦場で孤軍奮闘している宗介の状況を聞く。

 

「現在も提督は孤軍奮闘中です。予想では、救出した艦娘が脱出するまで囮をしているものと思われます。南島からの望遠映像をだします……それと、トゥアハー・デ・ダナンから、無人偵察機の映像が来ています」

情報担当官の妖精が淡々と報告する。

 

 

すると、レーバテインが艦載機相手に立ちまわっているのが見える。損傷も今の所なさそうだ。また、魚雷攻撃を受けている事から敵潜水艦級もいるようだ。

 

「アル、提督……」

早霜が呻くようにそう漏らす。

 

 

しかしそれも一瞬、何かが高速に横切ったと思った瞬間、レーバテインの周囲を飛び回っていた、敵艦載機がすべて爆発したのだ。

 

 

そして、他の映像でも、先ほど同様、ミサイル攻撃と攻撃機の攻撃により、228隻の深海棲艦の空母機動艦隊すべてが轟沈、粉砕したのだった。

 

 

「相良提督を包囲していた、空母機動艦隊すべて、沈黙、轟沈及び粉砕したと判断します。こちらもオールクリアです。対艦ミサイルアド・ハープーン576発による空母への攻撃、第二波は、最新鋭攻撃機62機による、対空ミサイル一部機銃による敵艦載機殲滅後、対艦ミサイル及び対艦魚雷による敵艦殲滅攻撃です」

 

 

「「「「…………」」」」

またもや艦娘達は呆然とその報告を聞いていた。

 

 

 

すると神通が勢いよくブリーフィングルームに入って来た。

「姉さん!!みんな!!助かりました!!相良提督も、救助対象者鳥海さん摩耶さんも無事です。

テッサさんがやってくれました!!相良提督も回収し、戻ってくるそうです!!」

 

 

神通が入って来ても振り返るだけで声が出ないでいた。

「「「「…………」」」」

 

 

神通は興奮した様にそう言ったきり直ぐに部屋から出て行き、発令所に戻って行った。

 

そして、真正面のスクリーンにレーバテインの近くに巨大な何かが浮上してくるのが見えた。そして、上の装甲が開き、レーバテインを乗せ、そのレーバテインの20倍以上ある大きな何かは直ぐに海中に潜っていった。

 

 

「……あれ?なに?」

川内はその謎の物体を見てもごもごと誰と無しに問いかける。

 

「クジラ?」

早霜はそう言う。

 

「……アル、クジラさんに飲まれちゃったね」

清霜である。

 

「……さっき、神通さんが来て言ってたような、相良提督をテッサさんが回収するとか何とか……」

秋月は何気なしにそう言った。

 

 

 

「「「「「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」

 

 

 

 

「あれ!?あれ?てててててててテッサ?????何アレ、めちゃデカいんだけど?めちゃデカいんだけど?何アレ?川内姉ーーーーーーーーーーーーー!!なんだアレ!!」

朝霜は混乱しまくり、手をあちゃこっちゃに振りながら川内に叫ぶように問いかける。

 

「わたしにも分からないわよ!!何アレ?潜水艦って!!普通の潜水艦よりもデカいってもんじゃないわよ!!何よアレ、タンカー??形もおかしいわよ!!乗るって!!あれが艤装なの??」

川内も、腕をブンブン振りながら、叫ぶ。大分混乱している様だ。

 

「クジラさんだ!!テッサさんってクジラさんだったんだ!!」

清霜もクジラの真似事をしながら叫ぶ。相当混乱している様だ。

 

「……………あの、それよりも、本当に潜水艦一隻で敵深海棲艦414隻すべて轟沈させてましたよね…………あり得ない……たった一隻で……日本国の艦娘すべての力を結集してもかなうかどうかわからない戦力を……一瞬で」

秋月は呆然自失のようなていを成していた。

 

「…………テッサさん…一人で世界滅ぼせそうね」

早霜は恐ろしい事をボソっと言っていた。

 

ブリーフィングルームはしばらく、変なテンションでの叫び声やら何やらで、カオスと化していたのだが……

 

急に真正面のスクリーンの映像が切り替わり

「皆さん、要救助者をそちらにお連れします。重巡摩耶さんが重傷です。直ぐに入渠の準備を、また、鳥海さんの案内もよろしくお願いいたします」

カーキ色のミスリル女性将校服を着た、アッシュブロンドの清楚でいかにも淑女といった美少女が画面に映る。

 

喧騒としていたブリーフィングルームは静まり返る。

 

そして

「……あんた誰だ?」

朝霜がポカンとした顔でぶっきら棒に画面の少女に問いかける。

 

「……あの子ね。テッサらしい」

画面の少女の代わりに川内が答えるが、自信がなさそうだ。

 

「「「「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」

駆逐艦娘たちは全員絶叫のような驚きの声を上げるが……

 

そんな事を気にも留めず画面の向こうの美少女、テッサはニコッと笑顔を見せ

「では、よろしくお願いいたします」

そう言って通信を切った。

 

 

「ぶふぉーーーーー!!うそだーーーーー!!変わりすぎだろ!!なに、あいつ変身できるのか!?」

またしても朝霜は大声で叫ぶ。

 

「…………し…信じられません」

秋月は目を大きくしたまま、驚いている。

 

「きっと、何か憑いているの……歴戦の提督の霊とか」

早霜はニヤっとしながら、わけがわからない事を呟く。

 

「……これってもしかしてドラマとかである二重人格ってやつなのかな」

清霜が一番冷静なのかもしれない。

 

「と、とりあえず迎えに行くよ。摩耶さん重傷だって言うし………テッサの事も分かるわよ」

川内は皆に、テッサ達を出迎える様に指示を出す。

 

「おお、おう」

「……はい」

「分かりました」

「本当にクジラさんなのかな」

駆逐艦娘たちはそれぞれ返事をし、ブリーフィングルームを出るのであった。

 

 

 

そして……テッサ、いや、トゥアハー・デ・ダナンは凱旋を果たしたのだった。

後で飛んでもない事実を聞かされるのだ。

 

ハワイ・サイパン・硫黄島という深海棲艦の重要拠点、そして、周囲小規模泊地2か所を帰還する際に粉砕した事を………

 

 

それを聞いた駆逐艦娘達は……

「て……テッサをからかうのやめた方がいいな………」

「あの、一隻でって無敵じゃないでしょうか?」

「きっと憑いている……過去の英霊とかそう言うのが」

「……テッサさん…テッサさんって……」

朝霜、秋月、早霜、清霜はそれぞれ疲れた様に口にしていた。

 





テッサ強し!!
朝霜だったらこれぐらい驚いてくれるだろう!!
早霜だったらこう言ってくれるだろう!!
清霜だったらと、
結構楽しかったです。

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