『TDD-1建造』相良宗介、軍曹から提督へ   作:ローファイト

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あけましておめでとうございます。

さらにご無沙汰しております。
漸く、続きが書けそうです。




第十七話 第六駆逐隊、摩耶と鳥海の艤装

「相良提督。まもなく、帰還いたします」

 

「資源回収任務ご苦労だった。テッサ」

 

「ありがとうございます。先般お送りした報告書通り回収任務は滞りなく完了いたしております。また、周囲捜索にて発見いたしました遭難していたと思われる艦娘達の救助の件も完了しております。救助いたしました艦娘のリストを今から送信いたします。対応は如何いたしましょうか?」

 

「うむ、救出した艦娘たちの健康状態は?」

 

「健康状態はいいようです。ダーナを見て少々混乱しているようですが……」

 

「了解した。ダーナ内で会おう」

 

「了解いたしました……提督が来て下さるのは光栄です。常に私は提督のためにシートを温めております。次の任務の際は是非にご同行していただきますよう切に願います」

 

「……うむ」

 

「では、お待ちしております」

凛とした将校服姿のテッサはそう言って通信を切る。

宗介は改めて思う。陸に上がった陽気で明るい迷惑娘テッサとダーナで将校服に身を包み凛としたテッサは、こうして見ると全くの別人の様なのだが…両方の顔のテッサの会話内容がリンクしていることで…やはり同一人物なのだと……

次の任務には流石にテッサと同行しなければならないのではと思ってしまう。

 

 

宗介はテッサから送られてきた救助した艦娘リストをタブレットで確認しながら、神通と共にダーナに向かう。

「彼女らはこう見えても輸送任務のプロフェッショナルです。輸送任務中に、トラック泊地の深海棲艦大侵攻の際に巻き込まれ、身動きが取れなくなったと思われます」

神通が救助した艦娘達の説明を行う。

 

「うむ、それはいいのだが……どう見ても、朝霜達よりも幼い……いや、若く見えるのだが」

 

「提督、艦娘は見た目で判断はできません。基本的には、ありし頃の軍艦の大きさや排水量で見た目がある程度決まる様なのですが、それでもそのカテゴリーから外れている艦娘たちも多々見られます。彼女らは、朝霜達よりも二世代前の歴とした駆逐艦です。朝霜達より幼く見えますが、彼女らは朝霜達よりも経験の長い艦娘です」

 

「……うむ」

宗介はそれでも、タブレットに写るあまりにも幼い容姿の艦娘たちの姿に唸らずにはいられなかった。

 

 

 

「相良提督ようこそ、お越しいただきました」

テッサは艦橋から出迎えていた。

 

「テッサ任務ご苦労だった。よくやってくれた」

 

「お褒めに預かり光栄です……こちらの会議室で彼女らを待機させています。すでにある程度の説明は済ませております」

 

「助かるテッサ」

 

「相良提督のためならば、喜んで」

テッサは眩しいばかりの笑顔を宗介に向ける。

宗介はその笑顔に、無表情だが照れているように見える。

 

その横で神通は、そんな宗介とテッサをみて一瞬眉をひそめ、若干早口で宗介を促す。

「では参りましょう。相良提督」

 

 

 

 

 

「あなたがここの司令官ね。暁型駆逐艦3番艦の雷よ。佐世保鎮守府第六駆逐隊のエースとは私の事よ!そこのところはよろしく頼むわね!」

会議室に入ってきた宗介に、快活そうな少女が指をビシッとさして、自己紹介をする。

 

「なんで雷が先に自己紹介するのよー。お姉ちゃんである私が先にするべきなのよ。佐世保鎮守府第六駆逐隊。暁型駆逐艦1番艦の暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね」

その横の黒髪の少女は、その快活そうな雷と名乗った少女にプンプンと怒りながら、自らをレディーと扱えという自己紹介をする。

 

「響だよ」

アッシュブロンドの髪の少女は眠そうな目をしながら自己紹介を一言ですます。

 

「はわわわわ、響ちゃん。自己紹介をちゃんとしないといけないのです。暁型駆逐艦4番艦の電なのです」

最後の大人しそうな少女は、そんな姉を可愛らしいしぐさで慌てふためきながら注意をし、どこか言葉足らずな自己紹介をする。

 

 

「………メリダ島鎮守府提督の相良宗介だ」

 

 

「相良司令官。助けてくれてありがとね」

雷は屈託の無い笑顔で宗介に助けてくれた事にお礼を言う。

 

「だーかーらー!何で雷が先に言うのよ!」

暁はまたもや、雷に先に言われプンスカと抗議する。

 

「暁がとっととお礼を言わないからよ!」

 

「お、お礼ぐらい言えるし、あ、ありがとう」

暁は上ずった声で宗介にお礼を言う。

 

「助かったよ。スパスィーバ」

響もロシア語混じりでお礼を言う。

 

「あ、ありがとうなのです…なのです」

電は恥ずかしそうにお礼を言う。

 

この4人の艦娘たちからは、まったくもって、戦場や戦争をにおわすような雰囲気は感じられない。

この場はテッサの艤装の中ではあるが、一応軍事施設の一部であり、それ相応の雰囲気を醸し出しているのだが、今はほんわかした空間がこの4人の空気感から広がっている。

 

「うむ、たいしたことはしていない。テッサが君たちを見つけ救出したのだ。ところで、君たちはなぜあのような場所で遭難をしていたのだ?やはり先のトラック泊地鎮守府の襲撃の影響なのか?」

宗介は内心微笑ましいものを見るような感覚で彼女らに宗介流に優しく問いかける。

 

「補給物資をトラック泊地に運ぶ任務で、安全海域だったハズの硫黄島南方航行中に、なぜか深海棲艦が沢山現れて、びっくりして、小さな島に隠れていたら。硫黄島が襲撃されて…」

 

「ぜんぜん、どっか行かないんだもん。出るに出れなくなって……」

 

「ずっと身を隠してた」

 

「トラック泊地が陥落したのを知らなかったのです」

 

雷、暁、響、電は息の合った説明をする。

どうやら、彼女らは深海棲艦の大規模艦隊がトラック泊地を襲撃した後の各所侵攻制圧に巻き込まれた様だ。

 

「そうか、大変な目にあったな、今日はゆっくりと休むといい。ただし、ここは日本国ではないため、君たちの行動は後で案内する宿泊施設内に制限させてもらうことになる」

 

「テッサさんに聞いたのだけど。本当に日本じゃないの?でもなんでここに神通さんが?川内さんも早霜も清霜もいたし……」

雷が宗介と横にいる神通に尋ねる。

 

「暁ちゃん達、私達はメリダ島鎮守府に所属しているの、今は相良提督の艦娘として……」

 

「ええー!」

「驚きだ」

「なのです!」

 

「トラック泊地から命からがら撤退していたところを相良提督に助けていただいて、その後色々あったの……それで、私達からお願いして、提督の麾下に入ったの……あと、朝霜ちゃん、秋月ちゃん。摩耶さんに鳥海さんも居るわ」

 

「ええ!!摩耶さんが?」

「うーん意外だ」

暁と響は摩耶がいる事が意外であったようだ。

 

「し、司令官さん。私たちはどうすれば……その日本に帰してもらえるのでしょうか?」

電は心配そうに宗介に聞く。

 

「ああ、それは心配しなくてもいい。スカウトはするが無理強いするつもりはさらさらない。ただ、この鎮守府はできたばかりで、人手不足は否めない。ゆっくり滞在中に考えてもらえれば助かる」

 

「とりあえずは、お風呂にゆっくり入りたいわ。電、そんな事後でいいじゃない」

暁はこんなことを言ってしまう。

 

「暁はもうちょっとちゃんと考えた方がいいな」

流石に響が暁に注意を入れる。

 

「これはもう私が旗艦になるしかないわね」

雷はうんうんと頷きながら響に同意する。

 

「だって、3か月もお風呂に入っていないのよ!レディーにあるまじき行為よ!」

 

「レディー、レディーって、暁ってそればっかりね」

 

「女の子なんだから当然のたちゅなみ…嗜みよ」

 

(((かんだ)))

 

「はわわわわわ、ケンカはダメなのです」

 

 

 

「……後は川内に頼んでおいた方がいいな」

「はい、姉さんには任務帰還後で申し訳ないですが、適任ですね。伝えておきます」

話がどんどん脱線して行く第六駆逐隊の4人を宗介は川内に任せる事にした。

川内は何だかんだと面倒見がとてもいい。あの、陸のテッサを毎度面倒見てくれるぐらいなのだから……

 

こうして、第六駆逐隊の暁、響、雷、電はテッサに救出され、メリダ島に上陸することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宗介は第六駆逐隊の4人を川内に任せ、テッサには再度労を労った後、継続してダーナからの資材搬入を任せる。同行していた早霜、清霜には休憩を言い渡した。

 

 

宗介と神通は開発室へとそのまま赴く。

「提督、摩耶さんの艤装新調案の打ち合わせの件ですね」

 

「ああ、中尉(開発関係統括の妖精)がひらめいたとか何とか言っていた」

 

「それと、建造装置の復旧が完了したとも報告を受けております」

 

「うむ、資材投入と秘書官については、今度は慎重に行ったほうがよさそうだ」

 

 

 

宗介はそのまま開発室の扉を開き中に入る。

 

「……………」

宗介は何気なし2歩3歩と歩むが、その場で脂汗を一杯にかいて、何故か固まる。

 

 

開発室では丁度、摩耶が何かの検査を中尉と他の妖精たちに受けており、上半身裸の状態だったのだ。

 

「おい、こらっ!デバガメかよ!」

摩耶は固まっている宗介に気がつき、そのままつかつかと近づき、殴りかかろうとする。

 

「摩耶!上、上を隠して!」

立ち会っていた鳥海は上半身を隠さず、見事なバストをさらしたまま宗介に近づく摩耶に、慌ててタオルケットを手に駆け寄ろうとする。

 

「相良提督!見てはいけません」

神通も宗介の後に続き室内に入り、漸く状況がつかめたようで、固まっている宗介の後ろから手を伸ばし目を覆う。

 

「おい!何か言え!おまえもエロ親父か!!」

殴りかかろうとする摩耶を寸でで鳥海が止め、摩耶の上半身にタオルケットを巻くが、摩耶は勢いにまかせ、宗介に詰め寄る。

 

 

神通の手で目隠しされている肝心の宗介はまったく反応が無い。

固まったままのようだ……

 

 

 

 

 

「す…すみませんでした!!」

ようやくフリーズ状態から復帰した宗介は短パンTシャツ姿の摩耶に玉のような汗を顔中に浮かびあがらせ90度直角の見事なお辞儀をする。

昔の宗介ならば、言い訳じみたことをつらつらと語っていただろうが、日本の学校に通う様になってからは、それは逆効果である事を学習している。

 

「摩耶さんすみません。私もうっかりしておりました」

神通もその横で、摩耶にお詫びをする。

神通は宗介がフリーズ中に摩耶と鳥海にここに来たあらましは説明をしていた。

 

「たくっ、わざとじゃ無かったことはわかった。今後、気をつけろよな!」

摩耶は腕を組み若干顔を赤らめながらも、そう言っただけに留めてくれるようだ。

 

「うーん。ここは男の方が司令官さん一人ですし……ノックを必ずしてくださいね」

鳥海は宗介にやんわりと注意した。

 

 

 

 

落ち着いたところで、摩耶の艤装新調について打ち合わせを始める。

 

「せっかく、艤装を新調するんだったら躯体も大きいしエネルギー供給方法も変えようと思ってね。電力を多量に使用できるように。それで全身くまなく見せてもらってたんだ」

開発担当の妖精、中尉は摩耶を裸にして検査していた件を説明をする

 

「エネルギー供給方法?今までも電力は使っていたぞ…たぶん」

摩耶は自分の事なのに何故か自信がなさそうだ。

 

「いや~多量に必要なんだ。今までだと、火薬を使った兵器しかなかったでしょ?じゃなくて、電力そのものを兵器にしちゃうプラン。神通や清霜も、ミサイル制御などで、エネルギー変換を大分いじったけど、今回は根本的にしちゃおうかな~って」

 

「具体的にどういうことだ中尉?」

 

「摩耶って普通の重巡洋艦と違って、防空巡洋艦って呼ばれてたぐらい防空に特化していたからね。対空レーザー兵器を積もうかなと、弾薬の消費もよくなるし、エネルギー供給方法変更によって燃費も良くなるだろうしね……将来的にはレールガンは乗せたいよね。あれって多量に電力消費するし……摩耶ぐらいの躯体じゃないとね」

 

「対空レーザー兵器とレールガンだと!?アル!聞いているか?俺が知る限りでは開発途中だと聞いていたが、レールガンについては、失敗の連続だとか……」

宗介は驚きながら、このことを聞いているだろうAIのアルに確認をとる。

 

「提督、メリダ島でも、レールガンと対空レーザー兵器の開発及び試験を行っておりました。それ以外でもプラズマ兵器やビーム兵器のプランも存在しており、プラズマ兵器は着手にかかっていた状況です。また、対空レーザー兵器については実用レベルまで昇華されておりました」

突如、開発室内のスピーカーから、無機質な男性の声が響く。もちろんAIのアルだ。

 

摩耶と鳥海は1、2度アルと会話しているが、まだ、慣れないようで一瞬驚いたような表情をする。

 

「アルっち、説明ありがとう。そう、この島に残っていたデータを元に開発したんだ」

 

「……さすがだな中尉」

 

「司令官さん、何の話をしているのですか?」

「さっぱりわからん!」

鳥海と摩耶は中尉やアル、宗介の話にまったく理解が及んでいなかった。

 

神通は実際艤装にイージスシステムを搭載し、ミサイル兵器なども積んでおり、電力供給については理解しているようだ。

 

「電力をエネルギーに変換し放射する兵器。または、弾丸の推進力を火薬ではなく電力で行う兵器について話あっている」

宗介は二人にもわかりやすく、簡単に説明する。

 

「なんだ、それ?そんなんでパワーアップするのか?」

 

「対空レーザー兵器については、コストが非常に安価だ。その上、電力供給さえ整えば、弾薬消費なしで、撃ち放題だ」

 

「まじか!?打ち放題!?」

摩耶は打ち放題という言葉に驚きながらも喜びをあらわにする。

 

「既に、レーザー照射一発で、艦載機を落とせるレベルまでになってるよ。しかも自動ロックオンも搭載しているし、何よりスピードが桁違いだよね。なにせ実弾がないんだから。あと、大型ミサイルや弾道ミサイルの迎撃用大型レーザー砲も開発中で一応目処は立ったよ。これに関しては摩耶にも試験してもらおうかなと思ってる」

 

「中尉、さすがにそれはオーバースペックではないか?敵にミサイルは無いぞ」

 

「ロマンだね!……うまくいけば、実弾兵器をまったく所持しない艤装も完成するかもしれないし」

この中尉と呼ばれる妖精は、そう言い切った。

 

「……まあ、いい。では摩耶は対空レーザー兵器などの対空特化型の装備を乗せ防空巡洋艦としながらも、大型レーザー砲及びレールガンなどの試験艦となるのだな」

 

「そう言うこと、緊急時には神通と同じ155mm砲を2門乗せ代えれる様にユニット化しているから大丈夫。レールガンの開発はかなり進んでいるから、そっちになるかもね。あと、摩耶には対空ミサイルはおろかミサイル関連は装備させてないよ。ミサイル関係の制御が摩耶の頭で出来るとは思えないしね」

 

「……なんか、馬鹿にしてねーか?」

 

「そんな事しなくても強いんでしょ?防空巡洋艦って?」

 

「あったりめーだ!なんつったって、あたしは摩耶様だからな!」

摩耶は完全に中尉にいい様に丸め込まれているようだが、本人は気分よさそうに笑っている。

 

「鳥海の艤装改良はどうするのだ?俺の希望としては、今の編成を見るに中遠距離がほしいところだが」

 

「うん、そのつもり。この子は頭よさそうだし、ミサイルユニットを搭載したイージス艦にしようと思う。神通は中距離から近距離を得意としているけど。この子は遠距離、超遠距離に特化するのも良いかなって、だから、艤装を改良ではなくて、最初から作成しようと思ってる」

 

「うむ、確かにな……その件に付随して中尉、川内達の改装も順次行っている所に悪いが、一部変更してもらうかも知れん」

 

「なんで?」

 

「艦娘は基本艦船と同じくし、6隻での運用を念頭においているが、俺としてはどちらかというとASの運用と変わらないのではないかと思っている。ようするにだスリーマンセル、3人での運用を基本とするのがベストではないかと、神通には相談していたが、概ね了解を得ている。他の皆にも所感を後で聞こうと思っているのだがどうだ?」

 

「私も相良提督の計画に賛成です。細かい所は修正が必要ですが新兵装もその方が運用しやすいと思います」

神通も宗介の意見を後押しする。

 

「なるほど……いいんじゃない。という事は、艤装もそれにあわせて、チーム分けによっては遠距離、中距離、近距離、防空、対潜、指揮系の変更をしなくっちゃならないんだね」

 

「さすがだ。理解が早くて助かる」

 

「いっそう、川内達の艤装は改装ではなくて、最初から作成して、ある程度ユニット化し、武装変更できるようにしたほうが良いかもね」

 

「ああ、深海棲艦がおとなしいうちにやってもらえると助かる」

 

 

「あいつら、何言っているのかわかるか鳥海?」

「私も半分くらいは……やはり、かなり進んでいるわね。ここの技術や戦術思想は」

「半分もわかるのか……あたしはちんぷんかんぷんだ」

「摩耶はそれでいいんじゃない?」

「微妙に馬鹿にしてるだろ?」

「いいえ、褒めてるのよ」

摩耶と鳥海は3人の技術的な話や戦術論を聞きながら、この鎮守府に所属した事は正解だったようだと感じていた。




次回、建造!!絶対建造!!
新しい艦ムス登場!!

感想ありがとうございました。
徐々にお返事をさせていただきたくお願いします。

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