『TDD-1建造』相良宗介、軍曹から提督へ   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。

漸く建造までいけました。
ちょい短めです。


第十八話 新たなる建造

摩耶の艤装開発プランについて打合せを終え、いよいよ建造(顕現)の話に入る。

隣の建造室に宗介は中尉(妖精)と神通と共に移るが、摩耶と鳥海も流れでそのまま後について来ていた。

 

「ようやく、建造装置も復帰だね。前のことがあったから、耐久性をパワーアップさせておいたよ」

中尉は建造装置の前にある専用コンピュータのディスクにちょこんと腰を掛ける。

 

「うむ、いよいよだな。今回は普通にいきたいものだ」

前回は120時間という膨大な時間を要し、テッサを顕現させたのだが、成功だったのか、失敗だったのか……一応成功なのだろう。

 

「で、提督、どんなタイプの艦娘を顕現させたいの?」

中尉は首をかしげながら宗介に聞く。

 

「うむ、空母系だな。この鎮守府には航空戦力はテッサしかいないからな」

 

「秘書官を誰にする?空母系なら、空母系の艦娘を本来秘書官にしないといけないけど」

 

「現在は空母系はいないからな……神通、どうすれば良いと思う?」

 

「はい、空母系はいませんが、テッサさんが妥当かと。艦載機を空母並み……いえそれ以上に搭載できるテッサさんなら……遺憾ながら空母系の艦娘を顕現できると想定します」

神通は至極全うな意見だが、テッサには思う所があるようだ。

 

「そ…そうか」

宗介もテッサと聞き、ためらうかの様な返事となる。

 

「おい、テッサって潜水艦じゃないのか?何で艦載機を空母以上に搭載できるんだよ」

摩耶はテッサが航空戦力を有している事を知らないでいた。

 

「…………摩耶さん。テッサさんはお分かりのように艤装がそのまま本来の艦の姿をしているという常識で考えられないような艦娘です。摩耶さんは見られていないのでその疑問は当然ですが艦載機の数は優に100は超えています……」

 

「はぁ?」

 

「……テッサさんはここで建造された艦娘とお聞きしてます。それと、ここの技術水準は明らかに現代より相当先に進んでいます。それが要因だと推測しますが……ではなぜこんなに進んでいるのでしょうか?」

 

「摩耶と鳥海には説明をこの基地を案内がてらするつもりであったが、俺とアルはこの世界の人間ではない。俺とアルはこの島ごとこの世界とよく似た未来から何らかの要因で転移してきたからだ……テッサ……トゥアハー・デ・ダナンは元々俺が所属していた組織の旗艦だった」

 

「まじかよ……ということは宇宙人か?やるな提督!」

何故か摩耶は目をキラキラさせて宗介を見る。

 

「違うわよ摩耶……未来人でいいのかしら……それでこの技術水準。司令官さんのいた世界とは?」

鳥海はあきれたように摩耶を見やってから、宗介に向き直る。

 

「それは私から、相良提督とアルさんのお話から、深海棲艦がこの世界に現れる前までの歴史は聞く限りはすべて一致しておりました。なので、推測ですが、提督は深海棲艦が現れないという分岐した世界。要するに平行世界の未来から来られたと考えております」

宗介の代わりに神通が答える。

 

「その見解には賛同いたします」

突如スピーカーからアルが声を出し神通の推測に同意する。

 

「そうなんですね。……でもどうやって転移を?」

 

「わからん」

「不明」

宗介とアルは同時に答える。

 

「……わかりました。話しにくいことを私達に聞かせていただいてありがとうございます」

鳥海はそんな宗介とアルを苦笑しながら、軽く頭を下げる。

 

「これからは共に戦う仲間だからな、知ってもらいたかった」

 

鳥海はその宗介の言葉を聞き、やはり、ここに所属してよかったと思う。

 

 

「提督~、どうするの?」

ほったらかしにされていた中尉から催促の声がかかる。

 

「うむ、テッサを呼んでくれ」

宗介は神通にテッサを呼ぶように告げ、イヤホン式の無線装置でテッサに連絡をしようとするが……

 

「相良さ~ん、提督のテッサはここですよ~」

何故か大きめなTシャツにスパッツとラフな格好をしているテッサが顕現装置(建造)の裏側から現れる。

 

「いつの間に?」

鳥海は突然現れたテッサに驚く。

宗介と神通、中尉はいつもの事なので、そのまま話を続ける。

 

「テッサ、建造を行うに当たって、秘書艦を務めてくれ」

 

「相良さん!漸く私を第一夫人に……正妻に!!」

 

「テッサさん!提督に抱きつかないでください」

 

「ふふんだ。私が今後正妻だから、貴方の言う事なんて聞きませんよーだ」

 

「何を言っている?テッサ」

宗介は不穏な空気にさらされ、一歩下がる。

 

「一時的な処置です!私が秘書官で一番なんです」

神通は何故か負けじとテッサに対抗する。

 

「おい、提督、これはどういうことだ?正妻ってなんだ?おい、場合によっちゃあ、殴るだけでは済まさないぞ」

摩耶が宗介を怒りの形相で睨みつけている。

 

「司令官さん?説明をしてくださいますか?」

鳥海もにっこりした笑顔だが何故か怖い。

 

「……俺も何がなんだか分からない」

宗介も分からないようだが、良くない雰囲気だと言う事だけは感じているようだ。

 

「ああ、そういうのいいから、早くしてくれない?」

中尉はめんどくさそうに、催促する。

 

「そうです。建造です。すみません提督、テッサさんの妄想に巻き込まれる所でした。テッサさんは建造時に一時的に秘書艦になるだけですから、勘違いしないでください」

神通は中尉のその言葉で我に返り、宗介に謝り、テッサに注意をする。

 

「ぶーぶー、……相良提督!私がずっと秘書艦で良いんですよ?」

 

「ほっ、冗談なんですね」

「冗談か……迷惑なやつだな……本当にこんな奴が、秘書艦で大丈夫なのか?」

鳥海も摩耶もどうやら誤解が解けたようだ。

 

「実際に秘書艦変更しなくていいから、便宜上そう言ってるだけだから、このコンピュータ上の話だけだよ」

中尉は呆れたように、神通とテッサに言う。

 

「………中尉、すまんな、続けてくれ」

 

 

「秘書艦はテッサで…資材は一般的な空母に対応させておいたよ。……じゃあ行くよ。ポチっとな」

中尉はそう言って建造と書かれた一際大きなボタンを身体全体を使って押す。

 

顕現装置(建造)上部の電光掲示板に16時間と表示される。

 

「………うむ。前よりましか」

「は、はい」

宗介と神通は顔をしかめながら頷く。

大和型の倍の時間が表示され、一瞬失敗かと思ったのだが……テッサの時に比べると随分ましなほうだ。

 

「ははははっ、参ったねこりゃ、どうやら提督は特殊な艦娘を呼ぶ体質のようだよね」

中尉は苦笑気味にそんなことを言う。

 

「俺の問題か?」

 

「いえ、これは相良さんと私のいわば共同作業!この子は相良さんと私の子です!」

テッサは宗介の腕を取り、また、訳が分からない事を言い出した。

 

「テッサさん提督から離れてください。しかも、それで言いますと貴方は、アルさんと提督の子供になるという事ですよ」

神通はすかさずテッサを注意しつつ、テッサが言ったことの言動をそのまま自分に当てはめて返す。

 

「ええ?まさか?そんな……わたしが相良さんの子供?しかもお母さんがアル?」

何故かその神通の言動でショックを受けるテッサ。

 

「16時間って聞いた事無いわね摩耶?」

鳥海は電光掲示板の表示時間に驚き、摩耶に同意を求めようとしたのだが……

 

「……うう、なにか?あたしは前のあのエロ親父提督の娘という事か?」

摩耶はテッサと神通の会話を聞いてショックを受けていた。

 

「摩耶……あなた……」

鳥海は摩耶をかわいそうな子を見るような目で見ていた。

 

 

 

「……とりあえず明日の朝には顕現される。丁度9時ぐらいか……」

 

「そうだね。そのときに集合だね」

中尉はそう言ってこの場を締めくくった。

 

 

 

 

翌朝、宗介は皆と朝食を取るために艦娘寮の食堂に向かったのだが……

 

「いやだーー!わたしはここに残る~~~!」

 

「何言ってるのよ!暁!昨日日本に帰ることを皆で決めたじゃない」

「そうだぞ」

「暁ちゃん子供みたいなのです」

どうやら第六駆逐隊のメンバーが言い争っているようだ。

 

「だって、ここのベットはフカフカだしゴージャスだし!各部屋に浴槽つきのシャワールームがあるのよ!しかもコスメまで充実してるし!広いし、冷蔵庫もあるのよ!!」

暁は涙目で他のメンバーに訴えかける。

 

「確かに凄かった」

「まあ、それは認めるわ」

「なのです」

響、雷、電は設備については暁と同じ意見のようだ。

 

「だって、帰ってもこんな所にもう泊まれないし~~、誰もレディーみたいに扱ってくれないし~~、ここだったら、レディー気分が味わえるし~~」

暁は口を尖らせて、こんな事言っていた。

 

「だからといって、これとそれとは話は別だ」

響は暁に言い聞かせようとする。

 

「いやだーー、わたし、帰らない!」

 

「帰らないって、日本はどうするのよ」

雷はそんな姉の態度にあきれているようだ。

 

「知らない~、帰らない帰らない帰らない帰らない!!」

暁は食堂の床に仰向けに寝転がって、手足をぶんぶんと振り出して、小さい子供のようにダダをこね始めた。

 

「はわわわわわっ、暁ちゃん子供になっちゃったのです」

 

 

収拾がつかない事態に陥るが、川内が間に入り、手をパンパンと2回叩く。

「はい、はい、あんた達、その件は後よ。先に朝ごはんにしましょ」

 

「そうですね。まだ、暁ちゃん達にはメリダ島鎮守府の雇用条件とか、日本に帰る場合の件について説明もしないといけませんしね」

神通は川内に続き、暁たちに説明する。

 

「わかったわ、暁も子供みたいな真似しないで、後にしましょ」

雷は素直に返事をし暁にそう言う。

 

「帰らないから!」

 

「わかったから、先に朝食にしよう」

響も呆れたようにしながらも、寝転がっている姉に手を差し伸べて起こす。

 

 

 

「………とても、あたいたちの先輩には見えないな」

「………そうね」

「でも、暁ちゃんたちとなら、仲良くなれそう」

朝霜、早霜は呆れたように、清霜は好意的に、そんな第六駆逐隊を見ていた。

 

 

 

 

朝食後、予定通り艦娘の誕生の時間に合わせ建造室に宗介と神通、それに建造の旗艦をしていたテッサ、隣の開発室に用事があった摩耶と鳥海、今回は夕雲型駆逐艦の3人娘が立会っていた。

川内は第六駆逐隊の面倒を見ているため、今回は立ち会うことができないでいた。

 

 

宗介は新たな艦娘の誕生に期待と緊張したような表情で顕現装置をじっと見守る。

 

そして、顕現(建造)装置の電光掲示板の時間が0になる。

 

顕現装置に白い煙が立ちこめだす。

 

 

………徐々に煙が薄れていき、人影が見えてきた。

女性にしては高身長の影が……

 

 

長そうな黒髪をアップでまとめ、切れ長の目にフレームの細いメガネ、顔立ちはキツメだが色白の美人。スレンダーな身体に全身ネイビー色のウエットスーツに身を包み、上からは同色のライフジャケットを羽織っている。腰にはウエストポーチと、両サイドには後腰からアームが伸び、ミサイル発射管を内蔵搭載していると見られる船体の一部が装着されている。

 

ウエットスーツにシンプルな艤装とその顔立ち……どうやら、期待していた空母とは違い外国籍の潜水艦のようだ。

 

 

彼女はスッと顕現装置から足を踏み出すと……

 

 

「私の名はTrafalgar class submarine HMS Turbulent(トラファルガー級原子力潜水艦二番艦タービュレント)貴方がAdmiralですか……なんと可憐な……女王陛下に感謝を」

 

どこかの大企業の敏腕美人秘書のような雰囲気をかもし出す彼女は、なぜかテッサに向かって、片膝を付き、自己紹介を行いだしていた。

 




……ついにやってしまった。
ニュー艦むす登場です。

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