『TDD-1建造』相良宗介、軍曹から提督へ   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

すみません。
まだテッサ(偽)でません><
この調子だと2話後かな?


第六話 深海棲艦現れる。

メリダ島で初の艦娘顕現(建造)は波乱と失敗の予感が漂う。

通常では考えられない120時間、5日という期間が提示されたのだ。流石の神通も驚きを隠せないでいた。

顕現(建造)開始して、3日が経ち完了まで後2日。

 

宗介は顕現(建造)以外でも憂慮すべき事態が起こっていた。

メリダ島周辺やその近隣の島々に、深海棲艦の物と思われる超小型偵察機が飛び回り、神通達艦娘、そして援護砲撃を行った謎の部隊(宗介)を探し回っているのだ。

艦娘達には不安がらせないためにも、この情報は伏せ、取りあえずは戦力が整うまで息をひそめやり過ごす事にしている。

 

 

 

そして、宗介とアルがこの世界に飛ばされて丁度1ヶ月が経過していた。

 

「アル、基地の修復は状況はどうなっている」

 

「現状ではメリダ島施設全体の約70パーセントまで回復。あと2週間で完全修復可能です」

 

「そうか……俺たちが、元に戻れる手だては見つかったか?」

 

「不明です」

 

「そうか、致し方ないが生きるためにも今を進むしかない。そういうことだな」

 

「肯定です。相良提督」

アルは宗介の事をすでに軍曹とは呼ばなくなっていた。

 

 

「此方の戦力が整うまで、この周辺を嗅ぎまわっている深海棲艦をやり過ごせればいいのだが……」

 

「……最悪の事態は常に考えておく必要があります。いざ、この地が敵に察知された場合、我々としては防衛しか手が無いのですが……」

 

「援軍のない籠城戦か……厳しい状況だが、やってやれんことは無い」

 

現在宗介達が保有している戦力はレーバテイン1機。それ以外にも、基地に残っていたUCAV(無人ステルス爆撃機)を4機復旧させ、開発試験中であったECM搭載無人爆撃機及び攻撃機を各1機をどうにか使えるようにしているが、現状、軍事衛星や成層圏プラットホームなどが無い現在において、無人機はその行動範囲は、直接電波を発信しているメリダ島周辺にどうしても限られる。

肝心のレーバテインも、海上を航行できず、飛行能力も緊急展開ブースターでその場所までミサイルの様に飛んで行くだけしかない片道切符、実質戦力にはならないときている。

 

そして、友軍として、神通達艦娘5人。

清霜は現在新しい艤装の訓練中にて実戦投入は困難な状態であるため戦力外。

此方からの攻撃手段はこれだけなのだ。

メリダ島からの各種巡航ミサイルは有るが、防衛システムを優先しているため復旧はまだ先であり現行使用できない。

 

ようするに現状では此方から打って出る事はほぼ不可能だという事だ。

 

 

防衛という意味では、現在メリダ島の防衛システムはほぼ、全回復している。宗介やアルが優先的に復旧してきただけの事はある。この異常なスピードでの復旧は妖精のお陰ではあるが……これで深海棲艦の攻撃もある程度防ぐことが出来るだろう。

防衛においてはレーバテインも無人機も機能するだろう。向こうから直接乗り込んできた場合は、此方から向かうよりもずっと有利に展開することができるだろう。

 

しかし悪い話だけではない、現在色々と復旧に開発にと活躍している妖精達も、顕現(建造)施設や装備開発施設、そして、艦娘の顕現を行った事で宗介の提督としてのキャパ又は鎮守府としてのキャパが上がったのためだろうか、更に100人ほど増え、現在250人程度この地で働いている。今後さらに復旧スピードは上がるだろうことは想像に易い。

 

 

「取りあえずは、ここがばれるまで、基地の復旧と、巡航ミサイル及び中距離ミサイル発射施設の復旧を第一に、装備開発、人手が足りんため無人機の生産を優先にだ。さらに衛星の代わりに高高度偵察ドローンのまとまった数が欲しいな。せめて、高度2万以上を取れるものだ。そのうち成層圏プラットホームの代わりになるようにできれば言う事は無いのだが、それは後の課題だ。艦娘装備について後は清霜の訓練しだいか……問題は今顕現(建造)中の艦娘なのだが……よりによってあれ程時間がかかるとは……」

宗介は基地に復旧と無人機の生産を第一に指示する。

本来、艦娘顕現(建造)装置が完成した時点で、数日中に一部隊(6人)は編成し訓練に取り掛かりたいところだったのだが……アテがはずれたための無人機生産なのだ。

 

「相良提督、ひとまず顕現中の艦娘の事は忘れましょう。失敗の恐れもあるため、戦力とカウントは出来ないでしょう。それよりも、レーバテインも対深海棲艦用に何かしらの改修が必要でしょう」

アルはレーバテインが現行ではあまり役に立たない事を分かっているため、前々から水上移動手段を検討していた。

 

「ああ、そうだな、レーバテインについては任せた」

 

 

 

 

しばらくし、日課となりつつある神通と清霜の基地への来訪の知らせを受ける。

清霜は、装備開発施設に行き、艤装の調整を行い、その後アルとシミュレーターによる訓練。

神通は宗介の元に来て、相談役となる。

彼女らもこの島に来て、2週間が経過していた。

 

 

神通は宗介に仕事の合間に前から気になっていた事を何気なしに聞いてみた。

「相良提督は、その失礼とは思うのですが、随分お若いようにお見受けします。お幾つなのでしょうか?」

 

「ああ、たぶん18だ」

 

「……たぶん?」

神通は不思議そうに宗介の顔を見る。

 

 

そんな時である。

ズンという地響きと共に基地自体に軽い揺れを神通と宗介も感じた。

 

 

「アル、どうした?」

宗介はアルに呼びかける。

 

アルは、基地のスピーカーではなく宗介だけに伝えるため、宗介の耳にしている小型通信機ごしに話す。

「敵、深海棲艦が、この島の周囲を回っていましたが、遂に砲撃を開始しました。しかし、的を絞らず散発的にあちらこちらに砲撃をしております。近隣の島でも同じ様な行動をとっている事を望遠カメラで確認がとれております。要は我々をあぶり出す算段の様です」

深海棲艦が、潜んでいる神通達艦娘と謎の援護部隊(宗介)をあぶり出すためにこの海域にある島々に砲撃を開始したようだ。

 

「了解だ。念のため、基地に居ない艦娘達には宿泊施設の下のシェルターに避難するように指示してくれ。俺は発令所に行く」

宗介はアルの報告を受け、艦娘達の避難誘導をアルに指示し、自身は発令所に行き、指揮を執るようだ。

 

「相良提督、何事ですか?」

神通は宗介に地響きの事と避難命令を出している事について聞く。

 

「うむ、深海棲艦があぶり出しのために、この島にも艦砲射撃を散発的に行っている。問題ない」

宗介は、淡々と神通に説明する。最後は安心させるためだろう言葉を出している。しかし、彼の『問題ない』発言は確証がない場合に使われることが多いのだ。

 

「私もご一緒させてもらえないでしょうか?」

神通はそんな宗介を見て、半分部外者であるのだが、ついて行く事を言葉にしてしまう。

 

「……いいだろう。但しここで見た事は、日本では他言無用だ」

宗介は少し考えるしぐさをして、神通に条件付きで、同行を許す。

 

「もちろんです」

神通はそう言って、宗介の後に続く。

 

 

宗介は発令所内に入り、中央の司令官(提督)の席に立つ。

発令所は広々とした薄暗い空間に、真正面、壁一面の大型ディスプレイから、段々に机と席が作られそこでは妖精が何やら作業をしている。この発令所は要するに正面ディスプレイを中心にすり鉢状となっている構造だ。その中段に宗介は今立っており、横には神通が控えている。

神通はこの異様な空間と機械設備、さらに映画スクリーン大のカラーで写る画面に驚きを隠せないでいた。

 

真正面のディスプレイには各方面の超望遠で捉えられている深海棲艦の姿が見える。

「この島周囲には18体確認されている。南に大凡100㎞離れた小さな島にも、18体。

東に大凡160㎞離れたこの島より少し大きめの島にも18体確認されている。中には人型の深海棲艦も多数みられるな」

宗介は各島に映し出されている深海棲艦を指しながら神通に説明する。

宗介は敵の戦力情報を教えてもらうために、神通を発令所に入る事を許可したのだ。

 

神通は宗介がメリダ島周辺の映像として示した画像に映るひと際異彩放つ深海棲艦を見て、顔を顰める。

「……重巡棲姫」

 

「うむ、確か姫や鬼と呼ばれる上位の深海棲艦だったな、あれ一体がいるだけで、戦艦級艦娘が複数人相手をしなければならないという」

 

「……はいそうです。……しかも、残りの17体のうち正規空母ヲ級が2体、戦艦級が3体、軽空母級が3体……私たちの戦力ではまともに戦う事も……困難です」

神通の顔色が明らかに悪くなる。

 

「問題ない、戦わず、このままやり過ごす。元々そのつもりだ」

宗介は慌てることなく淡々と神通にそう言った。

 

「………」

神通は、この戦力は明らかに、強行偵察だけでなく、確実に神通達と宗介たちを一人残らず塵にする為の戦力であると確信していた。

そんな宗介の顔を見上げ、表情を伺うがこの危機的状況下で動揺や焦りは全く無いように見える。しかし、神通にはそれが逆に、神通達に気を使い冷静なふりをしているのではないかと勘ぐってしまっていた。

神通は宗介と過ごしたこの半月あまり、無骨だがその優しさに触れ大いに心が救われた。そして、彼に好意を寄せている事も今は自覚している。

しかし、戦いになればどうなのだろうか?優しさだけでは敵には勝てない、時には非常な判断もしなければならないのだ。深海棲艦との戦いにも不慣れなうえ、戦力は圧倒的に不利、相手にはあの姫級までいるのだ。

 

神通は宗介の顔を見てある決意をする。

 

神通はそんな宗介に静かに一礼して、発令所を後し、そして歩んでいく、その姿は断固たる決意がみなぎっている様であった。

「みんなは、相良提督はやらせない……」

 

 

 

……しかし、神通は知らない、相良宗介という男の本当の力を……表面には見えずとも、地中奥深くでふつふつと燃え盛るマグマのような激しい闘志、そして何にも決して屈しない鉄の意志で世界をも救った事を………

 

 

 

 

その後も一時間ほど深海棲艦から散発的な砲撃をメリダ島は受けていた。

宗介は、その様子を発令所の大型ディスプレーを見ながら、ダメージコントロールの指示を出す予定であったが、幸いにも基地、その他の施設はほぼ地下にあるため、被害は皆無であった。

 

「敵も地下に堅牢な基地が作られていようとは思ってはいないだろう。徹甲弾を使われると流石に被害がでる可能性はあるだろうが……」

宗介はメリダ島基地が堅牢に出来ている事を知っている。メリダ島最終決戦時にも完全破壊は免れこうして復旧出来たのだから……

 

「相良提督、緊急事態です」

アルが宗介の耳に取り付けている小型通信機にそう告げた。

しかし、宗介がこの発令所から見る限り、メリダ島内施設には被害もなく、深海棲艦の一団は現在西側に回り、散発的な砲撃を行っているのみで、現状特に問題がないはずだった。

 

「何だ?」

宗介はアルに疑問を返す。

 

「神通が艤装を装着し、メリダ島の東部からそのまま海上を東に、かなりのスピードで進んでいます」

アルは宗介にそう報告した。

神通は発令所から退出し、宿泊施設に艤装を取りに行きそのまま、島を出た様だ。

このタイミングで島を出れば、普通に考えれば深海棲艦に恐れをなして逃亡したと思われても仕方がない行為だ。

 

「なっ!………バカな!」

宗介はアルのその報告を聞いて、何故?と疑問を言い掛けたのだが、宗介は神通が進むルートを正面の大型ディスプレーを見、神通の考えが朧げに見えたのだ。

 

「予想だと東の160㎞先にある島に向かっているようです」

アルは宗介が考えている事を先読みした様に答えた。

 

「やはりか!!神通は東の島に向かって、敵を全部引き付けるつもりだ!そして、東の島に他の仲間も潜んでいると相手に思わせる偽装………自分の身を挺して時間稼ぎをするつもりだ!!……くそ!!」

宗介がその考えに至ったのは千鳥かなめと会うまでの自分で有れば任務のために同じような行動をとっていただろうからだ。

 

「既に緊急展開ブースター装着準備を行っております」

アルは宗介の次の行動を先読みしレーバテインに緊急展開ブースターと各種武装装着の準備を始めていた。

 

「良し!アル出るぞ!!」

そう言って宗介は足早に発令所を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

少し前……

神通は宿泊施設に戻り、倉庫に保管している艤装を取り出し一つ一つ装着していた。

 

「神通………」

その後ろから不意に声が掛かった。

 

「姉さん……」

神通は振り返り声の主に返事をする。

声を掛けたのは宿泊施設の下にあるシェルターに避難しているハズの川内だった。

 

「私も行くよ」

 

「姉さんは残って……あの子たちの事を導いて……そして、相良提督の麾下に入って、優しい彼を支えてあげて……」

神通は首を横に振り、川内に残るようにお願いをし、そして笑顔を向ける。

 

「あんたバカだよ……」

川内は目に涙をため神通を抱き寄せ耳元でそうささやく……

川内には何となくだが、神通がこれからやろうとしている事が分かっていた。やはり姉妹艦なのだろう。

 

「ごめんなさい姉さん、……では行ってまいります」

神通は川内を優しく引きはがし、笑顔でこう言った。

 

 

 

凛とした佇まいの中、強い意志が全面に顔に現れ、見るものすべてを魅了するその美しい姿、日本屈指の艦娘、歴戦の勇士神通はメリダ島から東の島に向け海上を風を切り猛然と進んでいく。

「姉さんたちを……この島を、相良提督を守ります」

 

 

 







すみません。
テッサまだ出なくて、もっと早くだしたかったんですが……なぜかこうなってしまいました。

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