無事に自己紹介を終えた。
期待をされていたものを超えることは出来ずに多少残念がらせてしまったようだが別にいいだろう。短い人生で色々な人と出会い絆を深めて来たものの生憎と小洒落た話術で笑いを取るような真似をしたことは……なかった筈。
それよりも驚いたのは。
「――驚いた、千冬姉さんが先生をやってたなんっ…!」
「織斑先生だ、馬鹿者」
痛い。
相変わらずの腕っ節の強さだ、懐かしいジゴクテンやハヌマーンの力強さを彷彿とさせる。流石にジークフリートやカーリーに例えるのは千冬姉さんにも失礼だろう。普通の人間なのだから超常の現象であるペルソナには及ぶとは思えない。
「何にせよ安心した、かな。先生は何故か自分の仕事についてとか僕にひた隠しにしてたし……偶にボロが出てたけど」
「何?……そんなことはないだろう」
「ある時期から教育関係のニュースを見る目が変わったりしてたし」
「む」
「他にも酔った時に愚痴を零してたよ」
「お前は私の……いや、いい。ニュースを見る目とは…全くなんなんだそのマメさは。普段は口癖がどうでもいいの癖して…」
そこまで言ってある種の罰の悪さから目を逸らした千冬姉さんは気分が家の時に近付いていたことに気付き咳払いをして僕達二人に集まった視線に付随するひそひそ話を断ち切った。
世界の最先端技術である『インフィニット・ストラトス』の第1回世界大会において格闘と総合部門の優勝者であるブリュンヒルデの意外な一面に女生徒達は舌が収まりきらないようだ。
………どうにも内容が自分の知っている単な噂好きの話好きでなく、どうにも怪しい部分があるのが気にならなくもないが、どうでもいいか。インフィニット・ストラトスの特性からこの界隈は男子禁制である風潮がある。ということは即ち千冬姉さんみたいな綺麗で格好の良い女性が…そういう対象に見られるということだろうから。
弟としては姉に妻が出来るのは可能な限り避けて欲しいものの、あれで男性に対して憧れなども持っているのは確認している。なので余程のことがなければ男を捕まえることだろう。
大分話が逸れたものの新入生に対する教師としての話は千冬姉さんへの熱を込めた歓声を交えつつつつがなく進行して行った。
「久し振りだね」
「あ、あぁ……」
休憩時間にまたしても多数の目に晒されている中久し振りに再会した幼馴染の箒に屋上に誘われた。
自分は勿論、箒も昔と変わらずあまり口数が多い方ではない。非常に盛り上がり花が咲くとまではいかなくてもぽつぽつと会話を繋げていく。
「ありがとう、助かった」
「気にするな、私が少し話をしたかっただけなんだ………やはりお前でもあの状況は辛いのか」
「ほら、僕は軟弱者だからね」
「全く…どう見てもそんな風には見えなかったぞ?」
「そう?」
漸く緊張がほぐれたみたいだ。
硬さがなくなった表情からは笑顔が覗いてついつい見詰めてしまう。六年前とは違う女性的な魅力が感じられる。あの頃でも群を抜いて容姿が整っていたが今では更に磨きがかかった。
「あ、あまり見詰めるんじゃない……」
「ごめん」
「別に謝る必要は……」
「じゃあ見てていいよね」
「あ、う………そ、そうなるの……か?」
主に赤くなったまま百面相をする箒を見詰める。途中鳴ってしまった予鈴と授業開始の合図も、折角の再会をしたのだからと箒の手を握り押し留めることで強引に無視し次の授業に合わせて教室に戻った。
あんまり進まないな……。
あと有里湊くんよく喋るな…。