街の人々は昼夜賑やかで、賑やかな雰囲気が途切れることなく深夜2時を回る頃にも人々は寝ることなく酒場で盛り上がっている。
ここは騎士たちの町、シルバーナイトタウン。その表の姿は騎士たちの修行場として知られ、裏では打倒反王を意思とする兵たちの集まる街でもあった。
「本当にここでいい仲間がみつかるの?」
現在のメンバーに足りない強い騎士を求めて、この街にたどり着いたのはいいが、あまり強そうな騎士は見かけることができなかった。
人選に人選を重ね、クレイン、ロゼ、天女の3名で日中に騎士探しを行ったが、一時間歩けば5回は絡まれ、「護衛やりますよ」とか「俺の女にならない?」とか必ず言われる。
クレインは騎士の腕を見極める役、ロゼと天女は男騎士たちに対する餌だった。
ジュンは出歩くと反王の刺客の目に留まる可能性を考え、緋之は血の気が多い、めそは騎士の見極めに不適格という理由で宿に残してきた。
結果、クレインが蹴散らした数はおよそ二十名余り。収穫は無し。
そんなことがあったからこそのロゼのセリフだった。
今日の報告を宿の夕食の席でしているわけだが、隣のテーブルの人と近すぎるため会話が筒抜けかと思いきや、人数が多すぎて会話があちこち飛び交っているので聞かれているわけでもないらしい。
「・・・さぁ?」
天女もさすがに昼にあれだけのことがあると疑わしくなってきていた。
「でも、一人くらいはいるんじゃないんですかぁ?」
めそが肉をナイフで切りながら言う。
「クレインどう?」
ロゼがグラスの酒を揺らしながらクレインにふる。
「・・・今日見た中には・・・・有力な人材は見か・・・・けませんでしたね」
食べながらなので、変なところで途切れ途切れになっている。騎士といえども食事のマナーまではかっこよくなかった。
「そっか」
「おまたせしました~」
そこへ、穏やかな物腰で直径二メートルはあろうかというドデカイ皿に、山盛りに盛られた料理を片手で運んでくる女性がやってきた。
その恐るべき力とは裏腹に、ジュン一行の女性陣とは全く違うほんわかした雰囲気をかもし出している。
誰も目が点になっていた。その皿を手に乗せて頭の上で構え、左手で他の料理を持っていたのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「はい、当店自慢のスペシャル料理。猪の肉のスペシャルヂャム仕立てです~」
「・・・・・・・・・・・誰? コレ頼んだの」
「私ですが、何か?」
天女の言葉にクレインがサラッと答える。
「何か、妖しい色の煙が立っているんだが」
ジュンが魔女が作ったの奇妙な薬でも見るような、なんともいえない目で呟いた。
「匂いは悪くないんですがネェ・・・・」
『めそ』ことメンソーレオキーナワ=シルブプレー=エスプレッソが魔女の薬の壷を覗き込んだ。
「是非食べてくださいネ。美味しいですから」
おっとりした声で、力自慢の女性は答える。
「女将、」
クレインはキランっと音を入れたくなるような鋭い視線をおくった。
「はい~?」
「女将が作ったのですか?」
「そうですよ、自信作です。それとジャムソースの作り方と材料は秘密ですからね」
「私はクレインという旅の者です。女将の名前をお伺いしたい」
騎士が自らの名前を名乗るのは相手の実力を認めた証。しかし、何の・・・。
「はい、裸武と申します」
「なるほど、もしかしたら未来の大料理人に出会えたかもしれない」
まじまじと目の前の得体の知れない食べ物を見やる。
「そんな、大げさですよ」
よくオバサンが「あら、やだ」とよくやるあの動きをした。それにもかかわらず歳というものは全く感じさせない何かがあった。
「ありがとうございます、また」
「はい、ごゆっくり」
宿屋の女将こと、裸武は一礼して奥へと消えていった。
「そういえばさ・・・ヒノの姿が見えないんだけど・・・」
「あ、そういえば・・・」
ロゼが「どこよ、アイツ?」と声あげると、料理の様子のメモしていた天女も顔を上げて他の客の中に視線を送った。
「緋之元さんならあちらですよ」
と、めそとクレインの二人で店のカウンターの方を指をさす。どれくらいクールに格好よく飲んでいるものかと見てみると、
「ケンラウヘルがどうしたってんだ~~~!! なぁ、オッサン!?」
「お~よ!! このオレ様がチョチョイと捻ってやるぜ、ア~~~はっはっはっはっは~~!!」
「スイマセン、お客様。他のお客様の迷惑になるのであまり大声で騒がないで下さい。上の階ではすでにおやすみになってらっしゃるお客様もおりますので・・・」
「うるせぇ~~なぁ、こっちも客だぞってんだコンチクショウ!」
「そうだ~~~! 俺らも客だぞ~~。寝てる奴は寝かしときゃいいんだよ。こっちはこっちで楽しくやってるんだからよぉ~~」
「・・・・・・・・・・・・」
酒乱。
どこの誰ともしれない鎧姿の親父と、肩を組んで杯を酌み交わしていた。しかも二人そろって絡み酒。しかも、お店の人に思いっきり迷惑かけている。
「・・・・・・・ブッ放す?」
「ダメ」
ロゼの手に魔力が収束するのを天女が止めた。
「ですから、他のお客様に迷惑がかかる行為は・・・・・・」
「んだとぉ? 俺らがいつ迷惑かけったってぇ~?」
「そ~~~~~だぁ! 俺らは二人で楽しく飲んでるだけじゃねぇか!!」
完全にたちの悪い酒になっている。他のメンバーも複雑そうな顔で、止めに入っていいものかと躊躇っている。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・ヒノ、酒乱。と」
「一緒にいるの誰?」
「酔っ払い」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「オッサン」
ガコンっとメソの頭ロゼに拳が飛ぶ。
「殴るわよ」
「もう殴ってるヨ~~」
「他人のふりが一番いいかと」
「そうね」
「異議なし」
「ほおっておこう」
クレイン、天女、ロゼ、挙句にはまとめ役を勤めなくてはいけないはずのジュンまで、他人のフリを決め込んでいる。そう、彼らは話せる島からの船の出来事で既に知っていたのだ。
酔っ払いには近寄るな、と。
「あ~~~? なんだテメェ、さてはケンラウヘルの刺客かぁ?」
「ですから~~」
「・・・・・・雲行きが怪しくなってきたんだが」
しばらくすると今度は店員に絡み始める。
さすがにマズイと察したジュン。
「近づかない方がいいですよ、王子」
「そうそう。どうせ、ろれつも回らないんだから魔法の発動する心配もないし」
「それに、アレに割ってはいるのは・・・・」
「絶対にイヤ。死んでもイヤ」
「右に同じ」
「・・・・・・・・・」
一同、酔っ払いには相当苦い経験でもあるのか、他人を決め込もうとする。
「あらあらまぁ、お客様~すいません~~」
「女将!?」
そこへ女将が平然と近寄っていった。これにはさすがにジュン達も事の大きさがいけない方向に流れていると察した。
「んだぁ~~?」
「っ! あのバカ!」
「いい加減、マズイんじゃ」
「女将に手ぇ出したら、私ら今晩泊めてもらえないジャン!」
「平気でしょう」
「クレイン、冷静すぎ!」
しかし、言葉と同じようにクレインは平然と、さっき運ばれた怪しい肉を食べている。一体何が平気なのかと思った矢先。
「え!?」
「ほらね」
「・・・・・・・・・」
なんと、女将が緋之とオヤジの型をポンっと叩いただけで二人は倒れこんでしまったのだ。
「・・・美味なり」
モキュモキュと口を雨後しながらクレインが呟く。
「え」
その言葉に唖然としていると、女将が二人を文字通り引きずってこっちへ来た。
「お客様のお連れですよね?」
「あ。はい、そうです。申し訳ありませんでした」
まさかばれているとは知らず、他人のフリをしていたのだから罰が悪い。
「いえいえ、いいんですよ~。日常茶飯事ですから」
「それにしても、よくウチらの連れだって分かったねぇ。私ら来たときは奥にいたはずだろう?」
「はい、匂いでわかりました」
「匂い?」
「ええ、皆さん。同じ匂いがしますから~」
「酒臭いって事?」
「それでは、ごゆっくり~」
そんな疑問もなんのその。女将はサラリと流し、奥へと引き下がっていった。
「ヒノ、どうする?」
「ここに寝かせておきましょう。あとで毛布でもかぶせておけば心配ないでしょう」
「明日はどうします?」
「また、一通り見て回ろう。仲間になってくれる強い見方がいるかもしれない」
「そうね」
その日はこうして解散したのだった。
翌日。
「バジリスクだ~~~!!!」
「っ」
なんだ朝っぱらからとも思いつつ、変な地響きに反応し逸早く起きる緋之元。
「っ痛ぅ~~~」
が、すぐさま頭を抑える。二日酔いだった。
周りを見回すと、宿屋の一階のバーだった。ここでやっと自分が夕べココで寝てしまったことに気付いた。
同じく広いロビーの中央で大の字になって寝てる年輩の騎士を見て、
「あのオッサン、風邪引くぞ。誰かは知らねぇが・・・」
と、アレだけ杯を酌み交わした相方を他人扱いした。
外にでると、地響きの張本人バジリスクが村のスグそこまで迫っていた。ものすごい勢いで突進している。そこまでバジリスクが考えることができるかは微妙なところであるが、やぶれかぶれだという感じの突っ込み具合であった。その先にはシルバーナイトタウンがある。
「でけぇ・・・・」
その体は宿屋の一階の体積に等しいほどである。その意外な大きさに圧倒されるが、戦士の顔に切り替える。
「・・・やるしかネェか」
一呼吸置いてから呪文を紡ぎだす。
天より降りし
大気の渦よ
凍れる海となりて
我が敵を
そこまで紡いでおきながら急に口を押さえて黙り込んでしまった。
「うっ・・・・・・・おええええええぇぇぇぇぇぇ」
な、情けない。二日酔いで最後まで呪文を言い切ることができなかった。
バジリスクの突進は尚も止まらない。
が、緋之の後には宿屋の女将こと、裸武が厨房においてあるはずの包丁を持っていつの間にか立っていたのだ。
「? おい、あんた・・・・・・」
「裸武、推して参ります」
目の前のバジリスクへ向け、エプロンをなびかせて疾走する。
タンッ
低く身構え豹のようなしなりを持って跳躍すると、
「はあああああああぁぁぁぁ!!!」
ザンッ
気合一閃。正面から突っ込み、横一文字に薙いだ。
戦いはそれだけで終わってしまった。バジリスクは口から裂けていき上下真っ二つになってしまったのだ。
まさに一撃必殺。
「鎌鼬(かまいたち)と呼ばれる真空現象ですね。本来なら、二メートル近い大剣を振り回しておこしていたのでは?」
いつの間にか宿屋の入り口に立っていたクレインが解説する。
「そんな危ないもの使わないですよ。町が無くなっちゃうのは困りますから」
本気とも嘘ともとれない、危険なセリフを言う裸武こと女将。
「・・・・・・・・」
「女将、あなたは・・・」
「皆さんの朝食の支度をしますね」
「・・・・・・・・・」
まるで、今まで外の掃除でもしてたくらいの気軽さだった。
「なんだったんだよ・・・」
「聞いたことくらいあるでしょう『微笑む死神』と呼ばれる騎士を・・・・・・」
「げっ!!」
「ウソでしょう!?」
かつての戦乱の時代。アデンと隣国との戦争が続いていた頃、隣国の兵士たちから最も恐れられた騎士。
女ながらに二メートル近い大剣を振り回し、一騎当千をやってのけても息切れ一つせず、なお戦場で微笑み続ける死神の伝説があった。
それが彼女だった。いつしか隣国との戦争は終わり、その死神の話も眉唾モノの御伽噺として人々の記憶から消えていったのだ。
で、その本人はというと、何やらバジリスクの割れた体から何かを取り出している。
「・・・・・・・コレ、なんですか?」
「バジリスクの肝臓です。二日酔いには利くんですよ」
「・・・・・・・・食え、ヒノ」
問答無用でロゼが指示を送った。
「なんで俺が!?」
「毒見係」
ジュンがすかさずロゼにつく。
「ちょっとマテェ!!!」
「二日酔いじゃない」
「飲んでない」
「頭痛くない」
「吐き気しない」
「身体機能問題なし」
それぞれ、我が身可愛さで的から外れるいいわけをした。
「・・・・・お前ら」
「食べていただけますよね」
天使のような死神の微笑みを浮かべる裸武。
「ヒッ! い、頂きます・・・・・・」
逆らえないままパクッと口にいれた・・・。
「ぐあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁx!!!!!!!」
この日のシルバーナイトタウンではこの叫び声が、目覚まし時計になったという。
メデタシ。メデタシ。
2017/08/27 追記
先日【リネージュ2 レボリューション】が遂に公開されましたね。
スマホゲーとしては非常にハイスペックを求められるクオリティです。そしてタブレットじゃないと絶対につまらないと言って良いと思いました。
筆者はオルビスサーバーにいます。
今までリネージュ内で一度も使った事のない名前で存在しています。
オート戦闘で勝手にクエスト進行や、レベル上げをしてくれるので放置していても問題無く、やりこみ要素の強い設計となっています。
元がMMORPGだからこその出来ですが、なんだろ…PCでやってみたかったな、というのが個人的な想いだったりします。
そろそろ最初の転職ができそうです。