とある血盟物語 -Lineage-   作:三方真白

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#1 始まりの島

 

 不適な笑みを浮かべる、かつて家臣であったはずの黒い甲冑の騎士。

 既にブラックナイトたちに取り囲まれ、自分にはもはやどうする術もない。

 いや、違う。彼には剣が一本あった。

 

「・・・・・・」

 

 この状況の中、もはや頼れるのはこれしかなかった。

 

 ――――構える。

 

 かつて剣の師が言っていた。

 

「剣で槍と勝負するには相手の三倍の技量が要る」

 

 そう、黒い騎士たちが持っているのは己の身長はあろうかという槍だった。

 ハッキリ言って自分には剣の才能があるわけでもない。

 特に秀でた特技もない。勝てる見込みはもはやなかった―――――はずだった。

 

「うおりゃあああぁぁ!!」

 

 その一人の声が合図になって一斉に黒い波が襲ってくる。統率も何もない、ただの特攻。

 その波には終わりがなく、自分の周り数メートル以外は全て黒一色だった。

 

「うわああああぁぁぁぁ!!!」

 

 彼は波の恐怖と、自分を奮い立たせるように叫びながら、黒い波に立ち向かう。

 ナンの脈絡もく、めちゃくちゃに剣を振っているだけの哀れな抵抗。だが、その剣にすいこまれるようにして波が引き込まれていく。

 一人一人と絶え間なく後から後から。

 

 やがて黒い波は赤い波へと変わっていく。叫ぶまもなく波がどんどん死んで赤に変わっていく―――――。

 

「ハ、ハハハ・・・・・」

 

 自分が狂ったような気がした。昨日まで、特にこれがスゴイといった才能もない自分が、これ程の数の敵を全て切り刻めているのだから。

 

「ハハハハハハハハハハハ・・・・・」

 

 だが、まだ終わっていなかった。

 

「ッ!!」

 

 赤い海から、自分が殺したはずのヤツが立ち上がってくるのだ。一人は片方の足をなくして、一人は首から上をなくして、一人は上半身だけで、一人は槍を持って手だけで。

 

 もはや、一人ではなくなっていた。バラバラにしても地面を這って赤い海を越えて向かってくる。

 

「来るな、来るな!!」

 

 ズッ、ズッ・・・・・・

 

「来るなぁ!!」

 

 ズッ、ズッ・・・・・・

 

「来るなああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 ピシャッ

 

 目の前に何かが落ちてきた。

 落下速度の勢いにつられ、条件反射でそれを眼で追ってしまい、そして見た。

 

「・・・・・・・・・・・!!」

 

 自分の父だった。首から下は何も無くただ頭だけがそこにあり、その眼は自分を見ていた。

 そして、

 

ニヤリ

 

 と笑ったのだ。まるで、殺された恨めしい相手を見るように。

 その瞬間、時が動き出したように地面が落下を始めた。

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!」

 

 

 

 

 

「おい、大丈夫か!?」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 叫んだのはやけに太い男の声だった。彼は何が起きたのか分けがわからず視界に入るものを確認した。

 安物の装飾類、木で出来た壁。誰かの家であるのは間違い無いようだ。

 そして自分はベッドで寝ていた。 

 

「・・・・・・・・・天国ってこんなトコなんだ」

 

 ボソッと思った事が口に出た。

 

「こんなトコで悪かったな。おめえ、まだ生きてるぜ」

 

 声のする方を見てみる。やっぱり野太い声に違わず、ごついオジサンだった。

 

「随分うなされたみたいだな、相当汗かいてるぜ」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 体をベッドから起こしながら夢を思い出し、気分が重くなる。

 

「・・・・・・なんだ? 俺じゃなくて、可愛い女がよかったか?

 そんなお約束な展開じゃつまんねえだろう? ま、拾ったのが俺だったんだ。黙ってあきらめろ」

 

 ガハハハと、豪快に笑う。

 

「・・・・・・・・・ありがとうございます」

「よし。まあ、生きててよかったな。さて、自己紹介させてもらうぜ? 俺はルダーだ。よろしくな」

 

 ルダーはごつい手を差し出してくる。

 それを握り返しながら彼も答えた。

 

「ジュンティーヌです。ありがとうございました」

「ジュンティーヌぅ!?」

 

 オウム返しに親父は尋ねる。

 

「女々しい名前だな。それに長い! ジュンで十分だ。そう呼ばせてもらうぜ」

「はい」

 

 名前の呼び方が気に入ったのか気に入らないのか、別のことを思ったのか少し考えこむ。

 

「あの、」

「ん? なんだ」

「ここはどこなんですか?」

 

 やっと気分が落ち着いてきたのだろう、素朴な疑問を口にする。

 

「ここか? ここは『歌う島』だ」

「歌う島・・・・・・・・・?」

 

 聞いた事ない名前の島だ。第一、地図にも載っていない。

 

「ああ、ここはゲレン様がウィザードたちの修行のために造った島だ。だからここでは強いモンスターに襲われる心配もない。それにジュン、あんたよそ者だな。ここに来たのはわけアリか?」

 

 痛い所を突かれ、押し黙ってしまう。

 

「ああ、言いたくないならいい! 俺も詳しくは聞かねえよ。まあ、ここに来たのも何かの縁だ。ゆっくりしていきな」

 

 身振り手振りを大きくして言う親父はとても良い人物だった。

 そして、これからジュンはどうするのだろうか・・・・。

 

<つづく> 

 

 

 

【リネージュ マメ知識】

 

 歌う島

 

 SIと略されます。

 レベル13になると「話せる島」に強制的に送還

 されてしまう初心者専用の島。

 プリンス/プリンセスとウィザードのスタート地点になります。

 ゲームを始めると、ルダーのセリフがあります。探してみましょう。

 ちなみに、昔はブックマーク出来たため、上級者がパインを振ったりテイムしたモンスター を放したりと、リスタしても即死する恐怖の島だったらしいです。

 現在はそんな事ありません。

         

 

 

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