実際ここに来て数日、一人で落ち着いた事は無かった。
誰かが入れ替わり立ち替わり見に来るのだ。よそ者が珍しいのか、頻繁に顔を見せにくる者もいた。老若男女問わず、だ。
「ゆっくりしていきな」
ルダーはそう言ってくれたが、ゆっくりできなかった。
落ち着いて一人で考えている暇すらまるで無く、どこかに行こうとすれば、必ず誰かがくっついて来る。そんな日が続いていた。
そんなある日、一人のウィザードが訊ねてきた。
昨日だって一昨日だってウィザードは何度も来た。一人前を目指す、幼いお子様ウィザードが何人もかたまって見にくることもあった。その度にキャーキャー騒いで
帰って行く。
会話なんかまともにできやしない。
だが、今日訊ねてきたウィザードは違った。明かに他者とは違って見えた。
ソイツは、あまり造りのいいとは言えない木造の家に入ってくるなり、ふてぶてしく、しかも一応(微妙ではあるが)敬語で喋り始めた。
「ジュンティーヌ様だな。ゲレン様がお呼びなので来て頂く」
「あの、あなたは・・・・・?」
目の前に立つ男ウィザに訊ねる。何が起こったのかイマイチ分からない。
「緋之元・・・・ここでウィザードの修行をしている。さあ、ゲレン様がお呼びだ」
悪意はないが悪態である。気に入られていないのか、どうもぶっきらぼうな人物である。
ゲレン。それはルダーも言っていたが、この『歌う島』を造ったとされる人物。その人のところへ連れていってくれると言うのだ。考えるまでも無く会いに行くしかない。だが、会いに行って自分はどうする?
「選択する権限はない、来て頂く」
「あ、ああ・・・」
有無を言わさず連れ出されてしまった。
「どこへ向かっているんだ・・・・?」
「『話せる島』だ。そのためにはまず、イシターのところへ行く」
イシターは、『歌う島』と『話せる島』を繋ぐテレポーターであると聞かされた。逆に、『話せる島』から、『歌う島』へ行くにはジェノに会わなくてはいけないらしい。
「あら、ヒノ。もう戻るの?」
イシターは女だった。しかも、このとっつきにくそうなウィザードと気軽に話しをしている。ヒラヒラと手を振り、まるで世間話とでも言うような仕草だ。
反対に緋之元はなんともやりにくそうだった。
「いいから速くしてくれ。ゲレン様が待ってるんだ」
「あらあら、しょうがないわねぇ。だからグランカインの黒魔術しか使えないのよ? もっと広い心を持たなくちゃ」
「いいから!」
「はいはい」
いつもの事、とでも言うかのようにニコニコ顔をイシターは崩さない。
何やらブツブツと呪文を唱えたかと思うと、自分と緋之元の体は白色の光に包まれ、気づいた時には周りの景色が一瞬にして変わっていた。まるで、大掛かりな手品でも見せられたかのように。
「おう、速いな。ヒノ」
今度はイシターの変わりに男が立っていた。
「すぐの用だったからな」
緋之元は誰が相手でも、ぶっきらぼうは崩さないらしい。
「ほう、その人か?」
「ああ、ゲレン様が用があるらしい」
「ふーん・・・・・・俺はジェノだ。もし、歌う島に戻りたかったら俺のトコにきな。よろしくな、ジュン!」
もう名前を知られている。やはり野次馬が多かったせいで名前も一気に広まったのだろう。今思えば、イシターの所まで行くときにジロジロとやたらに視線を感じたのも、いつのまにか有名になっていたからなのだ。
「よろしく」
「行くぞ」
「あ」
ジュンとジェノを無視して、緋之元はさっさと歩いていってしまう。慌ててジュンもついて行く光景を見て、ジェノはそれを見て「やれやれ、相変わらずだな」と肩をすくめて見送るのだった。
『話せる島』に住むウィザード『ゲレン』。そして同時に『歌う島』を作った人物。一体どんな人物なのだろうか・・・。
<つづく>
【リネージュ 豆知識】
グランカイン
悪神です。善心はアインハザードと言います。魔法には3種類あって、「カオティック」「ロウフル」「ニュートラル」の3つです。
この内、「カオティック」がグランカインの属性、即ち黒魔法に当たります。アインハザードの属性は白魔法です。
黒魔法は「カオティックテンプル」、白魔法は「ロウフルテンプル」で覚える事が出来ます。
ニュートラルの魔法はどちらでも覚える事が出来ます。
え? ニュートラルはどちらでもないですよ?
あえて言うなら赤魔法?
そりゃFFだって・・・・ww