「ちっ、バレたか・・・・」
わずかにニヤっとした笑みを浮かべながら現れたのは緋之元だった。
この時、二人が使っていたのはインビジリティと呼ばれる魔法だ。ちなみにジュンはこのタネあかしをあとで聞いた。
そしてもう一人いる。恐らくそのインビジリティを使ったのがこの女ウィザードだ。
「ありがとう。あなたですね、私の傷を回復してくれたのは」
「はい。ヒノは治癒魔法は使えませんし」
やたら丁寧な口調ではあるが十分に嫌味を含んだ口調で女ウィザードは喋る。
「そうだな、ヒノは治癒魔法使えないしな」
同じようなセリフをクレインは連呼する。
「俺が役立たずのような言い方だな」
実際に彼は攻撃魔法しか覚えていない。
「別に、事実を言ったまでだ」
「事実ですね」
カラカラと二人は笑う。会話について行けず、見ているだけのジュン。
女ウィザと視線があうと、彼女はハッとなって名乗った。
「申し送れました。私の名前は『摩利支天』。一応、ウィザードをやっています」
「一応?」
「はい、一応です。本職は小説を書いています。といっても、まだタマゴですが・・・・ちなみにペンネームは『紅葉』です」
小説家のウィザード。どういった経由でこうなったのだろう。気にはなるものの口には出さなかった。
「どうだ、天女? 少しは面白いモノが書けそうか?」
『天女』とは摩利支天のことらしい。
今のふりからすると、摩利支天は小説のネタ探しとしてここに来たみたいである。
「うーん、まだわかんない。でも、オモシロそうなのは確かね」
どうやら、ネタ探しで来たらしい。興味深そうにしげしげとジュンを観察する。
「決めた! くっついてこう! 何かおもしろい事があるかもしれないし」
急にポンっと納得しウンウンと頷きながら自己完結する。
「ねっ! よろしく、王子様」
ピースまで決める摩利子天。対するジュン王子は唖然呆然紀元前・・・・。そこ
へ緋之元が割って入る。
「おい、天女。コイツ、まだどっか行くとか決まってないぞ。下手すりゃ、ずっと
ここにいるぜ」
「え!? そうなの?」
「ジュンティーヌ様」に始まり、気がつけば「ジュン」だったが挙句「コイツ」呼ばわりしている。
「ヒノ、失礼だぞ。摩利子天もだが、世が世ならアデン王国を治めていたかもしれない人に向かって」
クレインがフォローを入れるが効果は薄い。摩利支天は「天女でいいって」なんて言っている。
それにしても、ウワサが広まるのは随分速いものだ。
「ジュンさん、師グンターの下へご案内致します。きっと本土の状勢に関しても
ご存知でしょう」
歩き出して、少し気になったのがやたら目立つ看板が多いという事。クレインは
「気にしないで下さい」と言うだけだったし、置いてかれるのもこまるので3人とも後をくっついていくだけだった。
そして半刻ほど歩くと二人のガードに守られた洞窟があった。中はしっかりと作ら
れており、装飾も悪くない。
そして、奥から一人の屈強そうな老人が出てくる。何故か手にはくすだまを持って
いる。
「ようこそ、ジュン王子!! っと、あ?」
くすだまを割ろうとしていた手が止まった。
「なんだ、クレインが連れてきてしまったのか・・・う~む残念だ」
「?」
「??」
「???」
心底残念そうに言うがクレインを除く三人はハテナ顔。それもそうだろう。
「はぁ・・・誰もウォークラリーなんかやりませんよ」
グンター主催のウォークラリーそれが真相である。なるほど、途中で見かけた看板
はそれだったのかと思わず納得。
「ジジィの趣味か・・・・」
ボソっと緋之。
「ふむふむ・・・」
メモを取る天女。
「最近、誰も参加せんからつまらなくてなァ・・・」
「参加してもらっても、こっちが困ります」
「そうか・・・」
ゲレンもそうだったが、このグンターという人物の考えが読めない。
なんと言うか切り返しが早いのだ。にしても、グンターウォークラリーはどんな内容なのだろう。
「クレイン、客人をもてなす準備を」
「はい」
グンターの指示を受け、立ちあがるとクレインは厨房と思わしき方へ行ってしまう。
「さて、ジュンティーヌ=デフィル様。ウワサは聞いていますが、ここに留まってい
るみたいですね・・・」
反王に殺されたデュークの息子。本土から来た勇者。挙句の果てにはアインハザードの使者なんて話しも流れているのを本人は知らない。
「はい」
「素直ですね。まるで仇を討ちに行く気がないみたいだ」
ニヤリと蔑むような笑みをグンターは浮かべる。
「そんなことは!」
その嫌な笑みに反応し感情を出す。
だが、グンターはそんなことはお構いナシに続ける。
「では、なぜゲレンの家ではああ言う風な流れになったのでしょう? 実はあの場に
私もいたんですよ。・・・・失礼とも思いましたが隠れて話しを聞かせていただきました」
「え?」
「俺は気づいてたぞ」
緋之はサラッと言った。二人のやり取りを天女はメモしている。
「どこに迷う必要がありますか? 父の仇を取る。あなたの理由はそれで十分なはず
です。民が悪政を嫌い、あなたに期待を抱こうが関係ないでしょう? あなたはあなたの理由で動きなさい」
「怨霊になろうぜ、目的は同じ。俺も手伝うからよ」
らしくなく、ヒノが口を細々させて口を挟んだ。
「そっか、ヒノもそうなんだっけね。結局アンタも王子様と一緒じゃない」
天女が何か知っているらしい。
「うるうせぇなぁ。ジュンも余計な詮索するなよ!」
「わ、わかった・・・」
先に釘を打たれてしまった。
「そうやって脅さない。・・・あ、アタシも行くからね。回復役は必要でしょう」
天女は行く気満々だ。
そこへ、クレインが山盛りで湯気を上げた料理の皿を持ってきた。
「食事の用意が出来ました」
「そうか、待ちくたびれたぞ。さ、お客人方遠慮無く食べてください」
グンターに薦められつつ、テーブルにドカッと乗ったその皿をみてジュン、ヒノ、天女の三人は沈黙する。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・??」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・これは、なんですか?」
恐る恐る、珍しくジュンが尋ねた。異国の珍味でも食べる興味もあったのだろうか。
「肉です」
即答するクレイン。
「はっはっは。珍しいものでもありますまい」
豪快に笑うグンター。
「珍しいだろう・・・こんなの見た事無いぞ」
「私も・・・・」
「美味いですよ。ジャイアントスパイダーの肉」
「これがなかなかの珍味でな、初めは私も疑ったんだがいけるんだよ」
グンターが生き生きと語る。ウィザードの二人は明かに惹いている。ジュンは
「はぁ・・・」という顔だ。
クレインもさっさと一つ口にほおりこんで食べている。
「さ、どうぞジュン殿」
「わたしパス」
「俺も」
「美味いのになぁ」
「・・・・・・・・頂きます」
素手でパクっと一つ、口の中に入れた。
そして――――。
―――――――バタッ。
倒れた。
「あぁ!」
「死んだな・・・・」
「ウム、どうやら刺激が強すぎたようだな。クレイン」
「そう、みたいですね・・・・」
「なんの刺激だよ・・・」
【リネージュ 豆知識】
グンター
ナイト達のお師匠様みたいな人です。ここでナイトの試練の一つが受けられます。ゲレンもそうでしたが、ゲームと小説ではまるで性格が違うのはご愛嬌です。修練場としてTICを作ったらしいですが、ナイトだけLv15にならないと入れないのはハメ(仕様)ですww
余談ですが、今回の肉イベントは身内ネタを私がアレンジしたものです。クモの肉なんてアイテムはありません。出てきたとしても、誰かが詰めこんだものでしょう。
ウォークラリーもありません!