一点の曇りも無く、穏やかな日。いつも通りに巡航されるグルーディン地方と
話せる島を往復する船に珍客が乗っていた。
白い甲冑の騎士が一人と、黒い甲冑の騎士が三人。あまりに奇妙な者たちな
ので、周りの誰も必要以上に近づく事が無かった。ゆえに、彼らの会話を聞きと
れた者もいない。
「話せる島に着いたぞーー!!」
帆の上で監視をしている者が叫ぶ。
島に上陸すると白い甲冑が口を開いた。
「ここが話せる島か」
「『赤きナイトの家』出身のナイトが言うことなので、間違いないと思います」
黒い甲冑の一人が答える。
「ここに陛下に対して反旗を掲げようと目論んでいる連中がいるとの情報にも
間違いなさそうです」
「だが、陛下もあまりお気にし過ぎではないか?いくらデューク =デフィルの
息子とはいえ、青二才一人で何が出来るってんだ・・・」
残りの騎士も口を開く。
「言葉に気をつけろ。おまえごときの分際が、陛下自らお下しになった決定に
意見できると思ってるのか」
凄みのある低い声にビクッっと体を振るわせる。
「で、出すぎた真似をいたしました!」
「・・・言っておくが、みだりやたらに誰彼構わず剣を抜かないようにしろ」
「はい!」
そして彼らは上陸した。
☆ ☆ ☆
「はっ!、やぁ!」
「おっ、とっ」
カンッ キンッ
二人の男が剣を交えている。ジュンとクレインだ。
ジュンは懸命に攻撃するのみなのだが、クレインはまだまだ涼しげ。
ジュンは今日でまる一週間、ここで修行に励んでいた。グンターに薦められ「自
分の身は自分で守る」為に、実力強化をはかったのだが、剣はどうも使い難いようだ。
「やっぱり、槍の方が得意みたいですね」
一度、実践練習中に剣を弾かれ、偶然落ちていた長い木の棒を使ったとこ
ろ、剣以上の実力が発揮できたことがあるのだ。適正武器は使う者による。
「くっ」
何の苦もなく剣をさばくクレインの余裕の顔にカチンときたのだろうか、ジュンに
焦りの表情が浮かぶ。そしてそれを熟練者は見逃さない。
「スキあり!」
「あっ」
ガキィィン
ジュンの剣は手から離れ、地に落ちる。
「ふぅ・・・・少し休憩にしましょう、おなかもすいたし。食べますか?」
持っていた袋から一口大の食べ物を取り出して口に入れる。注意して欲しいの
だが、クレインの食べ物=肉である。クレインは美味いというが、ジュンはそう
思えなかった・・・・。なんと言っても、どこをどうやって作ったのかクモの肉で
ある。
「遠慮しておく・・・・・」
「そうですか。・・・・・・今日で一週間。実力を見ましたが最前線で戦うには
まだですね。槍を使ったほうが良いかも知れません。あの一度しか見てませんが、
剣よりずっと使いこなせてましたよ」
口をモグモグさせながら言われても説得力には欠けるが、事実であるのは確かだ。
「そうか・・・」
とは言われたものの、使えそうな槍がないのは切実な悩みでもある。
「槍・・・・・ねぇ」
「パンドラの所にあったかなぁ・・・・見に行きます?」
パンドラとは、話せる島の船着場にいる商人である。
「そうだな・・・」
☆ ☆ ☆
何やら妖しげな雑談を交わす甲冑の騎士たち。
「とりあえず島の住民と接触を試みて、それらしき者を物色する方が早いと思わ
れます」
「・・・それよりも、まずグンターに訪ねて行って聞いてみる方が良くはありま
せんか?」
「グンターは陛下に大いに反感を持っているというのに、我らに協力すると思う
のか?」
しばらく黙った後、一人が提案をする。
「・・・こうなったらこの島に住む者どもはグンターも含めて全て皆殺しにして
しまうのはどうでしょうか?その方が後々煩わされることもなくなりますし・・・」
その言葉に真っ先に隊長騎士が反論を出した。
「おまえ、前に言わなかったか、口に注意しろと。罪のない人の血をむやみに
流した者は、その10倍の報いを受けるだろう」
騎士達のリーダー(カーツ)が放つ言葉には何倍もの重みがあった。
「はっ! 口が過ぎました」
ビクッと体を震わせて敬礼する。
「・・・問題は、やはり我々が探している人物が実際にここで頭角をあらわして
いるのかどうかなのでしょうか・・・」
「・・・いや、その反対だ。頭角をあらわしている者こそ、陛下に反旗を翻す危
険な者だということだ。さぁ、警戒を怠らず周囲を見張れ!」
「はい!」
声を揃えて返事をし、探査を始める。一時間ほどしてから戻ってきた。普段、見
なれない全身甲冑の騎士たちに、島の住民たちも驚きを隠せず動揺が走ったのは間
違いなく、その騒ぎは槍を買いにパンドラの元に来ていたジュン達の耳にも当然入
ることになった。
「何でしょうね?」
「行こう」
「・・・・・・・・・・」
返事が無い。それを不信に思ったクレインは王子の顔を見るなり、表情を変えた。
「王子・・・・・?」
(見つけた・・・見つけたぞ・・・・)
今までのような穏やかさを一切失った、戦士の顔だったのだ。
「探索の報告を」
黒い騎士たちの隊長であるカーツが言った。
「はい!今のところ特別怪しい者はおりません」
「ですが・・・この島に住む人々は全体的に陛下に対して反感を抱いているよう
です」
「実際、巡察中に襲撃されそうにもなりました」
「特に怪しい者こそ発見できませんでしたが、逆に言えばこの島にいる人々は全
員どこかし怪しいです」
この島は本土とは離れている分、反感的な意見がハッキリと飛び交う。普段のそう
言ったモノが隠しきれていないのだろう、気配ですぐに悟られてしまう。
あやしい、と。
「そうか。結局この島に対する警戒を緩めるわけにはいかないということか・・・」
「いいだろう、街の者を全員一箇所に集めろ。不穏分子がいないか奴ら全員に聞い
てやる」
「はい!」
その時だった――――。
ザッ
「王子!?」
「でやあああぁぁぁあぁ!!」
『全員に聞いてやる』。その言葉で連想したのは、アデン城から命からがら逃
げ出した日の光景だった。逆らう者は皆殺し。この島でも同じ事を繰り返すのだ
ろうかと考えた瞬間、頭に血が上った。
後先考えず、剣を掴み飛び出した。
「!」
「不穏分子ならば容赦はせん! 丁度良い、見せしめにしてやろう。首を取り、
我らが王に反する者の末路をさらすのだ!!」
そしてクレインはポツっと呟く。
「私の剣・・・・」
そう、ジュンが掴んで飛び出したのはクレインの剣だった。槍を探して買い
物に来ていたジュンは丸腰だったため、一番身近にあったもの、クレインの剣を
奪ったのだった。そして今度は自分が丸腰のナイト、クレイン。もはや出番な
しか・・・・・。
飛び出した勢いに任せて勇猛果敢に切りかかるジュンだったが、多勢に無勢。
実力も伴わず、すぐに押され気味になる。
「クッ」
向こうは相手の実力がわかると、遊び半分に手を抜き始め遊んでいる。
そして次第に、
「ホラホラ、どうした!!」
「最初の勢いが無いぞ!」
ワザとタイミングを合わせて、ジュンが追いついていける限界の速度で打ち
込みを三人で繰り返す。
「オラァ!!」
「あっ」
カン、という軽い音がした。気付いた時にはジュンの手には何もない。剣は
地面に突き刺さるような事も無く、カラカラと転がった。
「しょうがない!」
クレインも勢い良く飛び出した。だが剣は無い、となれば素手しかないのだが。
「助太刀します!」
「もう一人いたか、良いだろう来い!」
クレインのなりを見て甲冑の騎士たちは嘲笑する。そう、剣が無いのだ。
「丸腰でどうする気だ? 剣は家にでも忘れたか? 間抜けな騎士よ」
「剣ならそこに落ちてる」
「なるほど、ソレは貴様の剣か。どうりでコイツにはそぐわないと思っていた」
「だが、拾わせてやる気は毛頭ない」
「貴様、グンターの弟子と見たが」
「だとしたら、どうする?」
「生かしておけんな」
「死ぬ気は毛頭ない、島から失せろ! 反王の犬が!!」
「粋がるなよ! 丸腰めがぁ!!」
ジュンへの打込みでそうとう気分が上がっていた騎士の一人が丸腰のクレイン
へ刃を向け、襲いかかる。だがクレインは涼しげな顔で交わし、そして――――
「バカ、な・・・」
一撃を炸裂させた、クレインの手には剣の鞘があった。
「おっと、動くなよ・・・鞘か、面白い。だが、先にコイツを処分させても
らう」
丸腰のジュンに剣先が向けられた。
鞘も立派な武器になる。それは古流剣術や護身術などを学んだものにすれば普
通の事。だが、完全な素手で剣に対抗する術はない。あるとすれば、徒手空拳の
一つである白刃取りだが、あれは動体視力がかなり優れていないと出来ない技術
だ。そして今のジュンにも到底できるはずもない。
「これで終わりだ!」
「王子!!」
ザシュッ!
【リネージュ豆知識】
ブラックナイトカーツ
話せる島専用の敵キャラとしていましたが、消えてしまいました。ですが、また最近復活との情報を聞いたのですが、いかんせん本物を見た事がない・・・。
さらには、ブラックナイ(以下BK)が四人組から
八人組に変わり、卑怯度アップ!!
それでも、BKを狩る人の数が変わらないのは出て来るものが美味しいからなのでしょう。リネ川柳にもありましたが、八人で襲うヤツらはもはやナイトでは無いです。クランハントで戦争並にボコボコにしましょう!w
あぁ・・・カーツに会いたい・・・・・。