ジュン目掛けて凶刃が迫る。
「これで終わりだ!」
思わず目をつぶるジュン。
「王子!!」
ザシュッ!
―――――痛みはない。生きてる。
目を開けると目の前に広がる赤。
血。
「へへっ・・・」
「っ、ルダーさん!」
ルダーがあの一瞬で間に入ってジュンを庇ったのだ。見事に腹を貫か
れている。
ルダーを貫いた騎士が一番驚いている。何が起こったのか――――。
「いい、タイミングだった・・ろう?・・・・・・」
「しゃべらない方がいい!」
ジュンに支えられ、口から血を流してもルダーは喋った。
クレインの後方から緋之元が走って来る。
「やっと来たか、緋之」
「うるせぇよ、いきなり鳩が飛んできたかと思えば・・・っ! ルダー!!」
現場を見れば大体わかるだろう。緋之元も大体の事は理解したらしい。
「平和な・・・・世の中に、してくれ・・るんだ・・・・よ・・・
なァ・・・・」
ルダーから全身の力が抜け、ジュンの腕にかかる力が強まる。
「死んだか・・・哀れなものだな、力なき正義は・・・」
甲冑騎士たちの一人が卑しく言い放つ。
「緋之、活路を開くぞ」
静かに怒るクレインの言葉に緋之は呼応する。
「ああ、ファーストアタック行くぜ」
雷よ 一条の矢となり我が敵を討て
緋之元が呪文の詠唱を始める。
「コイツ、ウィザードか!」
詠唱完了。
「エネルギーボルトォ!!」
「よし! 行くぞ」
緋之元が雷光の軌跡を辿ってジュンの元まで突っ切る。その間にクレ
インは自分の剣を拾い上げ、体制を整えている。
「緋之、頼む!」
「わかってるよ!・・・・・俺は回復魔法は使えないからな・・・・」
そう悔しそうに言いながらも、緋之は凍結魔法の応用で傷口を塞ぐ。
「緋之・・・・・ルダーさんは・・・・」
弱々しくジュンは呟く。
「落ちつけよ、ジュン。まだ生きてる。コイツは王を守ったんだ。自分
たちの王を。お前はそれに答えりゃアいいんだよ!」
額に汗が浮かぶ緋之。普段攻撃呪文しか使わない(覚えていない)彼に
とって、細かな事は性にあわない。最新の注意を払わなくてはいけないの
だ。その最中に喋ったのだからかなりの事だろう。
クレインはその間、三人の前に立ち、自らの間合いの結界を張っている。
それは後ろのジュンにも凄まじくピリピリとした感じを与えるものだった。
『間合いに入れば即死』それほどの威圧感を感じたブラックナイト達は
迂闊に入る事もできず、彼らに猶予と言うものを与えてしまった。だがそ
の十週秒の間で、先ほどクレインが鞘で仕留めた一人も目を覚ましてしまう。
十数秒ほどで傷口を塞ぐのを終えて、一息つきながら緋之元は立ち上がる。
「間一髪だ。おかげで、事情は大体わかった・・・・・・胸クソ悪ィよ、
お前ら・・・・」
ルダーの一命を繋ぎとめた緋之元が、眼光をギラつかせて前に進む。
「なんだ、貴様も死にたいのか・・・?」
クレインの剣の間合いに押されつつも、騎士の一人は言った。
「・・・・・・・死ぬのはお前らだ」
ニヤリと笑い、敵の間合いに歩み寄りながら呪文の詠唱を始めた。
空の戒め解き放つ
流れる星のひと片よ
ギョっとするクレイン。一瞬にして剣の結界が溶けた瞬間だった。
静かに呪文の詠唱を始めると、甲冑騎士たちの間に同様が走る。
「なっ!」
「バカな! 下級魔術師しかいない島じゃないのか!?」
我を阻みし愚かなる者に
「詠唱させるな!」
カーツの命令にそってブラックナイト達が緋之元に迫る。
「ちっ!」
剣を構えるクレイン。
厄なる――――
しかし、意外なところから妨害の手があった。
緋之元の前にスッと手が出される。
「!」
ジュンだった。
急に止まった詠唱に、ブラックナイト達も把握できず止まっている。
「止めるなよ!」
「ダメだ、コイツ等は俺が殺る・・・」
「っ・・・」
後のセリフが出てこなかった。今まで大人しかったジュンが自分の理由で
初めて動いたのだ。
怒っていた。普段穏やかな者ほど怒らせてはいけない。という言葉が思いつ
くくらいに激しく。
彼の人生の中で「殺る」なんて言葉はまず聞けないだろう。しかも一人称
まで「俺」になっている。今まで誰かの後押しがなければ動かなかった彼が
自分の意思で動いた。
――――敵討ち。
「ほぉ、己の実力を把握できんとは愚かだな、元王子」
「コイツ・・・!」
向こうも愚かではなかった。しっかり、デフィルの息子というのを把握して
いる。クレインが「王子!」と叫んでいたのを聞いていれば当然かも知れな
いが。
それまでは「王子か?」の疑いだったが、ルダーの行動を見て核心に変わった
と言える。
「クレイン、剣と盾を」
「はい」
あっさりと自分の剣と背中にしょっていた盾を渡すクレイン。
「お気をつけて」
「おいおい、いいのかよ?」
「大丈夫ですよ」
緋之元が最もな意見を口にする。ジュンの剣の実力はたかが知れている。
それは先程でハッキリしている。
剣を受け取り、ゆっくりと歩を進め、その足取りも次第に加速して行く――――。
「だああぁぁ!!」
疾走してから剣を勢い良く振り下ろす。
ガキィイン!
「ふっ、やはり口で言った割には対した事は無いな。元、王・子!」
真っ向から受けとめ弾き返す。
やはり相手は余裕の表情――――では無かった。
「なに!?」
弾き返された勢いに乗せて、一回転し、横薙ぎの形を作る。
「クッ」
だが、それも間に合い止められた。
「敵は一人じゃないんだぜ! 王子様よぉ!」
後ろからもう一人が襲いかかる。だがその剣線を盾で受け流しつつ、もう
一人に攻撃をしかける。
「なっ、コイツさっきと動きが違う」
さっきとは確かにまるで別人のような動きを見せる。
「おいおい・・・・」
あまりの意外性にあっけに取られた緋之は、口を開けたままだ。
「だから言ったでしょう。ですが、このままだと・・・」
「・・・・・? このままだと、なんだよ」
「勝てません」
「おい!」
クレインの予告通り、次第にジュンの動きも読まれ始め、看破されてしまう。
「相手は一人じゃないんだ。その辺を頭に入れておくんだったな」
このままだと、さっきと同じである。
「見てらんねぇよ・・やっぱり俺の魔法で――」
「いけません」
「なんだよ、お前まで! このままだと死ぬぞアイツ!」
「メテオストライクですか? アレは範囲魔法でしょう。周りに被害が及び
ます。少し考えなさい」
メテオストライク。ウィザードの使用する魔法の中で最強の部類にはいる魔
法。隕石を降らせる強力な魔法だ。
「わかってるよ! だから別のヤツを――――」
「もうすぐ来ます」
意味深な笑みを浮かべるクレイン。
「え?」
そう言っている間にも、ジュンが大きく空振りスキを見せてしまう。
「死ねぇ!」
ジュンに二回目の凶刃が襲いかかった。
「ジュン!!」
ドスッ!
「がはッ・・・・・」
その鈍い音はジュンではなくブラックナイトからだった。
細長く、先端に刃がつけられた武器がしっかりとソイツを貫いていた。
「ほらね」
クレイン、ニヤリ。
「槍・・・だと?」
「注文しておいたんですよ。『エルフの槍』をね」
してやったり顔のクレインが自慢げに呟いた。
「使え! ジュン!」
聞いたことない声の叱咤が飛ぶ。だが、即座に反応し槍を手にしていた。
「フン! 槍に変えたくらいで実力が変わるわけでもあるまい。死ねェ!!」
残りは3人。
一人目掛けて再び疾走し、槍を振り下ろすジュン。
「馬鹿の一つ覚えだな!」
余裕で受けとめるブラックナイト。
「そこから横薙ぎだろう!?」
次の行動を把握していたもう一人が後ろから迫る。だが――――、
「なっ!?」
ジュンの手にある槍は、弾き返された力に逆らわず、頭の上を通り後ろの地面
に刺さる。その間、ジュンは体を半回転にひねり、刺さった槍の反動を使い、後
ろから来た敵のさらに後ろに回りこんだ。
ズンッ!
「馬鹿な・・・・・・」
そして一突き。槍は、二人の騎士を貫いていた。しかも、一番強度のない甲冑
の縫い目を通したのだ。なす術も無く二人の敵は倒れた。残るはブラックナイト
カーツただ一人。
「で、出鱈目だ・・・・・・」
思わず、緋之元からそんな言葉が漏れる。
「う~ん、ココまでとは・・・」
クレインも驚嘆する。
「まさか、武器一つでココまで変わるとはな・・・勝負!!」
ダッっと一騎に間合いを詰めるカーツ。ジュンの槍の間合いで勝負をさせない
要に間合いを極限まで詰めたのだ。
ジュンは盾での防戦一方だった。連続で繰り出される突きに反撃する暇すら与
えらない。力技と言えばそうだが、事実ジュン盾にヒビが入り始めていた。
「これでどうだぁ!!」
ガンッ!!
ついには盾を貫通し、ジュンを――――。
「いない!?」
ドスッ
「ガッ・・・・・」
盾を手放し、相手の死角に入りこんだ。ただそれだけの事。盾で全て防ぐのは
布石。自らの連続攻撃によって一種の催眠に陥ったのだ。そして次第に盾=敵=的
という感覚に落ちていた。それがカーツの敗北した理由。
「・・・・・・・・ふっ、俺を殺しても・・・無駄だ すでにここに反逆者が
いるという報告は陛下に届いている・・・すぐに他の討伐隊が来るだろう・・・
・・・・・・ガハッ・・・・」
すぐに討伐対が来ると言う事は、もうここにはいられないと言う事。終わらせ
るには、敵の頭を叩く事意外にない。
ジュンティーヌ=デフィルの冒険はここから始るのだ。
新たな時代を作る者達(NewType)の物語が。
翌日、自分の家で目を覚ましたルダーの横にこんな置手紙があった。
『ありがとうございました。行って来ます ジュン』
「いいのか、ルダー? あんな別れ方で」
ルダー以外誰もいない部屋から声が聞こえる。
「いいんですよ。向こうは時期アデン国王、こっちは島の一般人ですから。
情がうつりすぎる前にね、思いを吹っ切ってもらった方がいいんですよ」
ルダーも驚くことはせず、自分以外誰も見えない部屋で喋る。相手はもうわ
かりきっているからだ。この声はジュンに槍を渡した声と一致していた。
「とかなんとか言ってるワリには、お情けで最後のひと押しはお前だったな」
「そうですか?」
「そうだよ。傷は平気そうか?」
「いえ、止血が間に合ったんで平気ですよ。大佐」
緋之元が傷口を凍らせて家に運んだ後、摩利支天が治癒したようだ。
「もう大佐じゃないよ」
大佐、コレが彼の呼び名だった。
「でも、俺の中じゃ大佐ですよ。きっとあいつ等・・っと、時期国王達もそ
う呼びますよ」
「それはそれで嫌だなぁ」
『嫌』と言う割にはクックックと楽しそうに笑う透明人間。
「これからどうするんですか?」
「森に帰ってから、アデンの動向を探ってみるよ」
ジュンの生まれ故郷、そして今は反応が納める領地―――。
「そうですか。頼みましたよ、大佐」
「もう大佐じゃないが、頼まれよう。時期国王のために、ね。っと、テレポート
コントロールリングは返してもらうぞ」
何も無いところから手だけ現れ、そのリングを見せつけたかと思うと、光に
包まれて気配も消えた。
テレポートコントロールリング。それを使って、あの一瞬でジュンを庇う事
に成功したのだ。
そして、ここから始まる血盟物語―――――。
そしてメインランドへ向かう船の中。
「目指すはアデン王国!!」
「命尽きるまで、お供しましょう。王子」
「波乱万丈の幕開けであった、まる、っと。出来た」
「お、おえええええぇぇええ」
「「「緋之っ!! 汚え(い)!!!!」
【リネージュ豆知識】
船
リネ時間で日中話せる島とグルーディンの間を何回か行き来してますね。船に乗るとホントに旅だと思いませんか?
だって、船に乗ると知らない相手でも暇な時間を語らったりするじゃないですか。ここで、血盟に勧誘したり、「おえええぇえぇえ」ってやってる人にヒールをかけたり(笑)。
みんなで海賊来ないかナァとか期待したり・・・・。
そう言った意味ではとても楽しいものだと思いますよ。
ただ、上級者になると、船って使わなくなるんですよねぇ・・
時間がもったいないって。
楽しいのに・・・・・。