fate / archer in IS 作:タマテントン
アーチャーと束はノートルダム大聖堂にいた。アーチャーは長椅子にどっかりと座っており、束はアーチャーの目の前で息を切らして地面に座り込んでいた。
「…驚いたな。まさか、生身のまま私に追い付くとは。いやはや…君は本当に人間かね?」
「ハァ…ハァ…貴方、こそ…何で、そんなに平気な、顔、してるの…ハァ…ハァ‥」
束は汗をかきながら恨めしそうにアーチャーを見る。アーチャーはそんな視線を涼しい顔で受け流し、大きく溜息をついた。
「振り切って有耶無耶にしようと少し考えてはいたが、君のその形振り構わずに追ってきた無様さに免じて質問には答えよう。好きに問いたまえ。」
アーチャーの言葉にムッときた束だが、呼吸を整えて落ち着くと、アーチャーに質問をする。
「フゥー。それじゃあ訊くけど、貴方は何者?」
「私が何者か…。先程にも言ったが、名はアーチャーだ。今はこの名に意味などないがな。それでも呼ばれ慣れた名と言えばコレだろうな。」
アーチャーは視線を外へやり、懐かしそうに目を細める。
「それじゃあ、どこからきたの?言っておくけど、どの国も調べられる所は全部調べたから。嘘言ったらすぐに分かるよ。貴方はドイツに突然現れた。それまでどこで何をしていたの?」
「…まさか、世界中に監視の目を持っているとはな驚いたよ。君は世間の言う通り相当に優秀な人物らしいな。」
「そういうの要らないから早く答えて。」
束はジッとアーチャーを見つめる。
「全く君は答えを急ぎすぎる。女性であるなら少しばかり優雅さを身に着けたほうが良いのではないのかな?走ったから喉が渇いただろう?一応君が来るまでの間に紅茶を用意しておいた。」
アーチャーはそう言い立ち上がると、奥から紅茶を持ってきた。
「一応冷たくしてある。一気に飲んでは腹を冷やす。ゆっくり飲み給え。」
束はアーチャーから紅茶を受け取ると、匂いを嗅いで薬な入っていないかを確かめてから紅茶を飲んだ。
「…おいしい。」
束がそう呟くと、アーチャーは当然だと言わんばかりに笑みを浮かべる。束はその表情に苛立ち、一気に紅茶を飲み干す。
「全く、一気に飲むなというのに…。お代りはいるかね?」
アーチャーは束に紅茶のはいったポットを見せる。
「……ん。」
束はそっぽを向きながらアーチャーにカップをつき出した。アーチャーがそれを受け取ると、紅茶を入れながら束の質問に答える。
「どこから来た…か。さて、嘘が通じないのであれば素直に言うほかあるまい。私は幽霊というやつでね、一時的に現界しているだけだ。」
「はい?幽霊??」
束は何を言っているんだこいつという表情でアーチャーを見る。
「説明が必要かな?」
アーチャーは紅茶を束に差し出す。束はそれを受け取りながら首を縦に振る。
「とはいっても、特に説明することなどないのだがね。私は死んで、何の因果かこの世に再び現れた。そのまんまなのだがね。」
「死んでる…。幽霊って、物体には干渉できないんじゃないの?」
「さて、他がどうかなど私の知る限りではないが、私はできる。それだけだ。」
「じゃあ、弓とか剣とかを出現させたり、ISと張り合う膂力は何?ただの幽霊だとは思えないんだけど。」
アーチャーはティーポットを置き、椅子に腰かける。
「さて、どう説明したものかな…。それは生前から私が持っていた特殊能力だ。死後になって獲得したというわけではないのでね。幽霊云々は関係ない。」
「ふぅーん、特殊能力ね。ならあれって創ってるの?取り出してるの?」
「質問攻めだな。少しは遠慮というものをしてほしいのだが。」
「好きに問えって言ったじゃん。」
「答えるかどうかは別だとも。まぁいいだろう。あの剣や弓は私の中に存在していてね。それを取り出しているに過ぎん。そうたいしたものではないよ。」
「ふーん。」
束は何か考え込むように顎に手を当て目を瞑る。
「どうかしたかね?」
アーチャーがそう問うと、束は目を開け、立ち上がった。
「ううん。なんでもない。まぁ、そういうことにしといてあげるよ。それよりもさ、ウチにおいでよ。もう少し詳しく知りたいけど。私もう疲れたから休みたいし。」
「君の家?君は世界から逃げ回っていたのではなかったのかな?それをこんな得体のしれない男に住処を教えるなどどういうつもりだ?」
「別に逃げ回ってないし。ただ回りが鬱陶しいから避難してるだけ。別に知られたのなら他に隠れ家作ればいいだけ。凡人ごときに見つかっても大したことないからね。」
「…そうか。では、君の言うとおりにしよう。」
アーチャーは束に連れられて行くと、人参の形をした機械の塊が置いてある場所に着いた。
「一応聞こう。これは何だね?」
アーチャーは人参型の機械を見て束に尋ねる。
「これがないと戻れないんだよ。でもこれ中は一人しか入れないからアーチャーはここの取っ手の部分に捕まってね。」
束はアーチャーにそう言うと人参型の機械に乗り込むと、端末を操作する。アーチャーはまさかと思いながらも言われた通り、人参型の機械にしがみつくようにして取っ手につかまる。
「うん、ちゃんと掴んでるね!それじゃあレッツゴー!!!」
束は端末の赤く丸いボタンを押すと人参型機械の先端部から火が噴出され、空高く飛んでいった。
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「…さて、地獄に落ちろと言いたいが。ひとまずそれは置いておこう。」
アーチャーは現在空に浮かぶ円盤型の飛空艇に乗っていた。
「よくもまぁ、これほど巨大なものが見つからないものだ。」
アーチャーは感心しながらも周囲を見渡す。
「まぁ、それなりに仕掛けもしてあるからねぇ〜。束さんにかかればそれくらいは余裕だよ。」
束は椅子に座りPCを操作しながら話した。
「何をしているんだ君は?休むためにここに戻ったのではないのかね?」
アーチャーがそう尋ねると、束は操作をやめずに返事をする。
「天才はやることが多いのさ。今ちょっと調べ物をしてる最中だったからね。貴方のせいで止まってけど。」
「それはすまなかったな。それで、休みを削ってまで何を調べている?」
アーチャーがモニターを覗くと、そこには『冬木市爆破テロ発生 被害総額は100億円』と大きく書かれた記事を見る。
「…なんだね?これは。」
アーチャーがその写真をみて束に尋ねた。
「ん?書いてある通り爆破テロについてだよ。」
「そうではなくなぜテロなどを調べている?確かに規模は大きいが睡眠時間を削るほどでは無かろう。」
「…ISが使われてたから。」
「…。」
(ISか…。やはり兵器として運用されているのは当然か。絶対防御に手抜きとはいえ私の投影に罅を入れる破壊力。そちらの方面で使用されるのは自明の理だ。しかし、今はそれよりも…。)
アーチャーは自分の手を見る。すると、アーチャーの手の輪郭が青く透けた。すぐにそれは収まるが、アーチャーは自分にあまり余裕が無いことを理解し、それを見ていた束がアーチャーに詰め寄る。
「ちょっと!!今の何!?まさか本当に幽霊なの!?」
「少しは落ち着き給え。」
詰め寄る束の頭を押さえ、小さくため息をつく。
「フゥ、信じていなかったのかね?まぁ、突拍子もない話だとは思うが。」
「そりゃ、ちょっと頭のアレな人かなって思ってたけど。っというかそれ大丈夫なの?消えたりしない?」
「君に言われてはお終いだな。問題はない。回復する手立ては一応ある。あまり効率的とは言えないがね。それよりも君は早く休みたまえ。」
「わかったけど、回復する手立てって?本当に幽霊だとしたらー…んー、人の魂を喰らうとか?」
「君は、確かに天才なのだろうが、非科学的な考えは平凡そのものだな。とはいえ確かに魂食いは有効な手立てだ。だが、私はそこまでしてこの世にとどまろうとは思っていない。人の信仰が集まる場所。そこが私の回復場所だ。人の想いには力があってな、その力を少しばかり頂戴することによって私自身の力に変えている。たしかに今私はギリギリだが、存在するだけであれば1日はもつ。明日私を地上に降ろしてくれれば問題ない。」
「ふぅーん、わかった。それじゃあ私は…ん?電話だ。」
突然束の携帯に電話がかかる。
「その電話が終わったら休み給え。私もそろそろ活動を休止する。とはいっても寝ているわけではない。
何かあれば呼ぶがいい。」
アーチャーはそう言い残すと部屋を出て行った。
「はーい。んー、こんな時間に誰からかなぁ?まぁ、ちーちゃん以外には考えられないけど、もすもすひねもすぅ束さんだよ~。っとちーちゃん切らないで!…アハハハ、それで何かあったの??……ふーん。そうなんだぁ、身元不明の捨て子ねぇ。束さん的にはどうでも良いんだけど、愛しのちーちゃんの為なら一肌脱いじゃうよ!それで名前は??ふむふむ、えみやしろう…。衛星の衛に宮、士官の士に太郎の郎で衛宮士郎ね。わかった。そんじゃ、探してみるねぇ。バーイバーイ。」
束は電話を切ると、目薬を差して目頭を揉む。
「はぁ、ガキの戸籍探しなんてちーちゃんの頼みじゃなきゃ絶対やらないんだけどなぁ。」
束は親友の為に一仕事しようとパソコンに向かった。
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[side:???]
朝になり、俺は目を覚ます。爺さんが死んで間もなかった。正義の味方になりたかったと語った爺さんの夢を受け継ぎ、これから正義の味方になろうと決意した後に黒い孔に飲み込まれて真夜中の見知らぬ場所に飛ばされた。
飛ばされた場所の見た目は洋風の町に見える。俺は途方に暮れた。俺は正義の味方にならなくちゃいけないのに、こんなところで立ち止まるわけにはいかないのに。そう嘆いていたら、女の人に声をかけられた。
「おい、お前日本人か?子供がこんな時間に出歩くものじゃない。親はどこだ?私が送ってやる。」
黒髪で、美人。まるで刀のような人だと思った。
「ここが…どこだかわからないんだ。気づいたらここに居て…。」
「迷子か…。外国で子供を一人にするとはな…。旅行か?」
「いや、俺はさっきまで自分の家にいたのに…。どうなってるんだ?」
「それは私が聞きたいことなのだが…。ふむ、迷子で少しパニックになっているのか。仕方ない、束に調べされば一発だろう。名前は何という?」
「衛宮士郎。」
「衛宮士郎だな。わかった。少し待っていろ。」
女はどこかに電話をかけると通話相手に士郎の名前を告げ、早々に電話を切った。
「これで大丈夫だろう。とはいえ。もう夜遅い。家がわからないのだろう?なら一晩家に来い。」
「え、でも迷惑じゃ…。」
「子供がそんなことを気にするな。ついてこい。」
女はそれだけ言うと士郎に背を向けて歩き出す。
「あ、ちょっと待って!お姉さんの名前は!?」
「私は織斑千冬だ。」
千冬はそれだけ言うと再び歩き出した。士郎は千冬のあとを追いかけ走って行った。
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[side:archer]
「ん、ふぁ〜。良い匂いがするなぁ…。今は…7時16分…。まだ、1時間半しか寝てない…。仕方ない…天才束さん特製のエナジードリンクを飲むしかないかぁ〜…。」
束はそう言うと、寝間着のまま冷蔵庫の中のエナジードリンクを求めるためにリビングへと歩いていった。
「全く…。女性であるのならもう少し慎みを持ったらどうかね?」
束がリビングにつくと、作ってからあまり活用していないキッチンに立つ弓兵の姿があった。
「貴方…一体何してるの??」
「見ての通り君の朝食を用意しているのだが?」
「何でそんなことをしてるの?って意味。」
束は呆れた目線をアーチャーに送るが、アーチャーはどこ吹く風で束の前に料理を並べる。
「う…美味しそう…。」
「一般的な女性の食事量にはしてあるが、もし過不足があれば言ってくれ。」
「ううん、大丈夫。じゃあ頂きます。」
束は恐る恐るアーチャーの料理を口に入れると、あまりの美味しさに驚く。
「…美味しい。」
「そうか、それは何よりだ。」
アーチャーのドヤ顔に少しだけムッとする束だが、それがどうでも良くなるくらい料理が美味しく、そちらに集中する。
束は出された料理をすべて平らげ、食後にアーチャーの淹れた紅茶を飲む。
「んー!良いとこのお嬢様になった気分だよ。」
「君がその気になればその程度の暮らしはできるだろう。」
「私は近くに他人を置きたくないんだよね。」
「難儀なものだな。それで、いつ頃地上に行けるのかな?まぁ、私としては飛び降りても構わないのだがね。」
アーチャーは食器を洗いながら束にそう言った。
「これから設定するよ。日本の神社で良いでしょ?」
「あまり小さなところだと困るがね。回復はするだろうが時間がかかる。いっそのこと神社で働ければ良いのだがな。」
「わかったよ。適当に見繕っておくねぇ。」
束はそういう目的地の設定のためにと部屋を出て行った。