fate / archer in IS 作:タマテントン
「side:tabane」
「なに…これ?孔?はぁ…通りで…。」
束は液晶をタッチしながら自分が世界中に散りばめた監視カメラから得たある動画をみていた。
「うーん…。」
束は端末を操作し、あるページをモニターに出す。
「やっぱり、衛宮士郎なんて人間はいないなぁ。アーチャーといいこのガキといい、変なことばっかりで疲れるよ。しかもアーチャーは出て行っちゃうしさ。」
欧州から日本へ向かう途中、中東でISによるテロが発生した。その速報を丁度テレビで見ていたアーチャーはこの場で降りると言い、窓の外から飛び出して行ってしまった。
「はぁ…。少し調べようかなぁ。アーチャーの事もあるし、もしかしたらあの孔はあの世に繋がってたりするかもしれないし。」
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[side:archer]
「ふぅ…。これで全員か。」
アーチャーは中東のテロに巻き込まれた現地住民の救助をし終え。廃墟の屋上にいた。
「この目の見える範囲にはもう人はいないな。無事助け出せたか。」
救いを求めている人を目にすると救おうとしてしまう。これはどうしようもないほど体に染み付いてしまった癖だ。生前、変わることのなかった鋼鉄の意志。しかし、死後にはそんな意志でさえも砕け散った。だが、意志が砕け散ったとしても、体に残る反射までは消えなかった。
「…このまま消えるのも悪くはないが。今はまだもう少し…。」
アーチャーは霊体化し、魔力の回復が見込める地を目指して行った。
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[side:shirou]
少年、衛宮士郎が織斑千冬に拾われてから数年が経ち、中学3年生となった。
「色々な事があったな…。」
士郎は朝食後の当番となっている洗い物をしながらそう呟く。
篠ノ之束という人からの連絡では、俺の戸籍は存在しなかったらしい。そこで千冬さんが篠ノ之束に頼み込んでどうにか俺の戸籍を作ってもらった。千冬さんは、気にするな。と言ってくれたけど、恩返しがしたかった俺は千冬さんの身の回りの世話を申し出た。ドイツ軍のISの教官として働いていた千冬さんはいつも帰りが遅い。だから家事をするのは大変だろうって思ったんだ。ドイツ軍の施設で暮らすはずだった千冬さんは、本来なら深夜過ぎになっても起きる、なんてことにはならなかったと思う。だけど俺の面倒を見る為にドイツ軍での居住の準備ができるまで、繋ぎとして借りていたアパートの契約を延長してそこで一緒に住ませてくれた。
「まぁ、今は日本に戻ってこれたんだけどな。」
そう、今俺は日本にある織斑家に住まわせてもらってる。日本に帰って初めにしたことは自宅の確認だった。何となくこの世界が自分の知ってる世界ではないということは薄っすらと理解していた。結局冬木の街を見つけることはできても、自分の家は見つけられず、織斑家の世話になることになった。千冬さんは月に数回しか帰ってこないが、一夏とは良い友人関係を築き、なんとか協力しあって暮らしていた。近々高校受験を控える俺たちは互いに励まし合って頑張っている。
「よし!洗い物はこれで終わりだな。一夏はどっか出かけてるみたいだし、千冬さんは休日なのに仕事に行ってるなんて大変だよな。」
今の時期俺のやることと言えば受験勉強だ。千冬さんは大学まで面倒を見る。金の心配はするなと言ってくれたが、勿論そんなに甘えるつもりはない。高校を出たら仕事に就きたいと考えてはいるけど、それは俺の目標である正義の味方になる道ではない。
「ま、今は勉強しなきゃな。」
と言って千冬さんからもらった自室で勉強を始めるものの集中ができない。正義の味方になる方法を考えるといつもこうなる。このままでは正義の味方になれないんじゃないかって不安と焦りに駆られてしまう。
「仕方ない。少しだけするか。」
俺は机に向かうことをやめ、机の上に置いてあるハサミを左手に持って部屋の中央に座る。そして目を閉じ、頭の中でイメージをする。
「――――投影、開始」
投影魔術を行使し、右の手の上にハサミを投影する。
「よし、今回は結構いい感じになったぞ。」
切嗣と共に住んでいた家では、切嗣が俺の魔術の練習用に廃材を沢山くれたから強化魔術の練習道具には困らなかったけど、今住んでいるのは織斑家だ。廃材はそう多くないし、あってもすぐに強化を失敗してダメにしてしまう。だから俺は投影で日用品を投影してはそれを強化する練習をしている。が、俺が投影で作り出したものは中身が空っぽで実物よりも強度が弱い。だから、一瞬で壊れて魔力に還ってしまうが、これをやめるわけにはいかない。効率が悪いがあまり良くないことはわかっていたが、何度も繰り返すうちに気付いたことがあった。それは、自分はハサミや包丁、カッターなどの刃物の投影が得意だということ。刃物に関連したものを投影するとき、他の物を投影するときよりも魔力の消費が少なく、軽く使えることもわかった。今では刃物の投影は日課に組み込まれている。しかし、強化の魔術はほとんど成功していない。
「よし、これで強化を成功させられれば…。」
「――――同調、開始。」
集中に集中を重ねる。己を透明にし、体の意識を強化対象の刃に重ねる。魔力を流し込むが、ハサミにヒビが入る。
「くっ…うっ!!」
士郎は魔力を制御しようとハサミは魔力に耐えきれず粉砕する。
「ハァ…また駄目か…。いや、まだまだっ」
士郎は再びハサミの投影を開始した。
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「おい、一夏。お前本当に迷ってないんだな?」
「あ、あぁ…多分、きっと、恐らく…迷いました。」
士郎と一夏は藍越学園を受験するために会場に来ていた。試験会場に着き、教室まで一夏の案内を信じて士郎は歩いていたのだが、人の気配がなくなり、倉庫のような所に辿り着いた。
「時間があるから良いものの…。しっかりしてくれ一夏。」
「悪い士郎。でも係員からもらった奴にはこっちだって書いてあるんだけどなぁ…。」
二人が引き返そうとした瞬間に突然二人の真横にある扉が開く。二人は驚いてそちらを見るがそこには誰もいなかった。
「ビックリしたぁ…。なんでいきなりドアが開いたんだ?」
「そんなの俺が知るかよ。って、ここISの保管庫じゃないか?こんなに近くで見たのは初めてだ。」
二人はISに近づく。
(そういえばISって女の子以外は乗れないんだよな?よし、――――同調、開始。)
士郎はISの構造を見るために魔術を使う。すると突然頭に膨大な情報が流れ込んでくる。
「くっ…何だ、これ。」
士郎は目を瞑ってそれに耐える。しばらくしてから目を開くと、ISが光を纏っていることに気付く。
「どうなってるんだ…?」
「おわっ!!」
一夏の悲鳴が聞こえ、士郎はそちらを向いた。すると、一夏も士郎と同じようにISに触れるとISが光を纏い佇んでいた。
「おい、これどうなってんだよ!?」
一夏が士郎に尋ねるが、士郎も、知るか。といって手元を見る。
(どうなってるんだこれは?)
手詰まりの状態で二人は佇んでいると、ドアが開き、女性が部屋に入ってくる。
「誰!?まさかISが男に反応している!?そんな。」
二人の男は唖然とその場に佇んでいた。
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「はぁ…。今日は疲れたな。」
「全くだ。お前が道を間違えるからだぞ?一夏。」
「仕方ないだろ。係員から受け取った地図にはそう書いてあったんだって。」
士郎と一夏はあの後検査の連続で夜までかかり、志望校を受けることができなかった。二人は帰宅早々リビングの床に寝そべり脱力する。
「しろー。」
「なんだー?」
「俺たちってこれからどうなるんだー?」
「IS学園の入学だろ。これはもう決定事項だって言われたじゃないか。」
士郎はゆったりと起き上がる。
「それに、形だけでも試験は受けないといけないんだ。あの分厚い参考書貰ったろ?あれを少しでもやってせめて入学してからの授業には遅れないようにしないと。ほら一夏、飯にするぞ。今朝の残りだからすぐにできる。お前はその間に風呂を洗っておいてくれ。」
「あぁー…わかったぁー…。」
二人は己がするべき仕事に取り掛かる。こうして夕食、入浴を済ませ、二人は自室へと戻る。
「もう12時か…今日は大変だったな…。だけど魔術の鍛錬だけはサボるわけにはいかないな。」
士郎は床に座り込み、手を前に出して目を閉じる。
「――――投影、開始。」
士郎は手元に使い慣れた包丁を投影する。
「ふぅーー…。よし、」
「————同調、開始。」
投影した包丁に魔力を流し込む。
「————っ。」
包丁が流した魔力に耐え切れず破損する。
「くっ…。」
士郎は包丁に流していた魔力を止める。
「ハァ…ハァ…集中できてなかったか。」
士郎はひび割れた包丁を見て溜息をつく。
「壊れた投影物を魔力に還らないようにするのはできるようになったんだけどな。」
士郎は魔力をカットして投影物を消し、床に寝そべる。
「こんなんじゃ駄目だ。俺はこのままじゃ。IS学園を卒業したら大半は大学に行くかIS関連の仕事に就くかのどっちかだ。標準科目もやるにはやるけど。ほとんどがISの勉強で潰される。入学は決定してるし、やめるなんてことはできない。打つ手なしかよ、畜生…。一刻も早く正義の味方にならなきゃいけないのに……こんなところで道草喰ってる場合じゃないのに…。」
士郎は顔を押さえて考え込む。自分が憧れた正義の味方。切嗣の夢。それて自分がそれを成し遂げなければならないという使命感。色々なものが頭の中をよぎる。
「…せめて入学後に勉強で時間を取られないようにするために今のうちに覚えられることは覚えなきゃな。」
士郎は頭の冴えないまま机に向かった。
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「衛宮士郎です。趣味はガラクタ弄りです。よろしくお願いします。」
士郎は自己紹介を終えると席に着いた。今日はIS学園の入学式だった。長い式典を終え、クラスが発表される生徒たちは教室へと向い、今に至る。この学校は敷地がかなり広いく、校舎も同様だ。教室に着いた士郎らは五十音順で自己紹介をしている。なので士郎の後、すぐに一夏の番になった。
「織斑一夏です………以上です。」
座ろうとした一夏の頭に拳が強打する。
「なにが『以上です』だ馬鹿者。せめて衛宮ように趣味の一つでも言えんのか。」
いつの間にか一夏の後ろにいた千冬は大きくため息をついた。
「千冬ねえ!」
一夏は自分の姉の存在に気付き、驚きの声を上げると、再び拳で頭を叩かれる。
「織斑先生だ。」
「はい…。」
千冬の目が士郎を捉える。
(俺も織斑先生と呼べってことか。)
士郎は『了解した』という意味で小さく頷く
(まさか千冬さんが教師だったとは。また迷惑を掛けてないようにしなきゃな。)
千冬が自己紹介を済ますと、クラスから歓声が沸き上がる。
(すごい人気だな。まぁ、ISに携わる人間で知らない人はいない程の人だから当然か。)
自己紹介を終え、休み時間になると、他クラスから沢山の人が教室に訪れてくる。
(動物園のパンダにでもなった気分だ。一夏は…っと。)
士郎の席は真ん中右寄りの一番後ろで、一夏の席は真ん中左寄りの一番前だ。士郎は一夏の席を見ると、女生徒と共に教室を出ていくのを発見する。
(まさか、この状態で一人にされるなんて…。)
士郎は休み時間中ずっと好奇な視線を受け続けた。休み時間が終わると早速授業が始まった。士郎はあらかじめ予習をしていたため、なんとか授業についていける状態だったが、一夏は全く予習をしていなかったため、微塵も授業についていけない。その時このクラスの副担任である山田真耶が丁度一夏に尋ねた。
「ここまでの授業で何かわからないことはありますか?質問があれば何でも聞いてくださいね。なにせ私は先生ですから。」
すると一夏は青い顔をしながら手を挙げる。
「先生…。」
「はい何でしょう?」
「ほとんど全然わかりません。」
一夏がそう答えると、焦ったように真耶生徒らにわからないところはないか尋ねるが、誰も手を挙げなかった。
「マジかよ…。士郎。お前わかるのか!?」
一夏は後ろの席に居る士郎に尋ねる。
「わかるも何も、これまだ貰った参考書の一番最初に書いてあったところじゃないか。」
「マジかよ…。」
一夏が頭を抱えていると千冬が一夏の元へと歩いていく。
「お前、入学前の参考書はどうした?必読と書いてあったはずだが?」
「あの分厚い本でしたっけ?」
「そうだ。」
「…間違えて捨てました。」
一夏がそう答えた瞬間に出席簿で叩かれる
「再発行してやる。一週間で頭に叩き込め。」
「あれを一週間!?それは「やれと言っている。」…はい。」
千冬の眼光に負けた一夏はうなだれるようにそう返事を返した。
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授業が終わり、士郎は机の上に出した教科書をしまっていると、一夏が金髪の少女に話しかけられているのが視界に映る。
(早速話しかけられてるな。顔は千冬さんににてカッコいいからな。)
そんなことを考えながら次の授業の準備をしていると、一夏の声が聞こえてくる。
「一つ良いか?代表候補生って…何だ?」
一夏の言葉を聞きクラスの皆がずっこける。金髪の少女は信じられないものを見た様な顔をする。
「信じられませんわ!日本の男性とはこれほど無知なものですの!?」
士郎はその言葉を聞き、誤解を解かねばと一夏の元に向かう。
「待ってくれ!それは誤解だ!一夏は例外だ。一緒にしないでほしい!」
士郎がそう言うと一夏は眉を顰める。
「おい、士郎。そりゃないだろ。お前は代表候補生って何かわかるのかよ?」
「読んで字のごとく、IS代表の候補の事だろう!これは最早専門知識じゃなくて一般常識だぞ。まったく。」
士郎はやれやれと肩を竦める。
「彼女は自国のIS代表候補生を務めるほど優秀ってことだろう。」
士郎がそう言うと、金髪の少女は気を良くしたのか、ニヤリと自信ありげに笑みを浮かべた。
「その通り!エリートなのですわ!全く、授業もロクについてこれない男性がこの学校に居るなんて不思議で仕方ありませんでしたけど、一般常識程度は知っている男性がいてよかったですわ。ミスタ、お名前をもう一度教えてくださります?」
「衛宮士郎だ。君の名前も教えてほしい。」
「よろしくてよ。イギリスの代表候補生、セシリア・オルコットですわ。私と知り合えたことを光栄に思いなさい。」
二人が自己紹介をすると、丁度チャイムが鳴り響く。
「あら、もうチャイムが鳴ってしまいましたのね。話の続きはまた今度ですわ。」
セシリアはそれだけ言うとさっさと自席へと戻っていった。