FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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第13話  たった2人の為のギルド

「ジェラール=フェルナンデス。反逆罪で、貴様を逮捕する」

 

 ジェラールの手に手錠がかけられる。ジェラールは抵抗することもない。多分、ジェラールは記憶がないとしても自分が罪を犯したということは理解しているんだと思う。だから、大人しく捕まろうということだろう。

 

「待ってください!ジェラールは、記憶を失っているんです!何も覚えてないんですよ!?」

 

「刑法第13条により、それは認められません…もう術式を解いていいぞ」

 

 いや、記憶喪失が認められないって言われても…何がなんでも、ジェラールを捕らえるつもりか。

 

「でも!」

 

「いいんだ…抵抗する気はない。君達のことは、最後まで思い出せなかった…本当にすまない。ウェンディ、ゴーシュ」

 

「…この2人は昔、あんたに助けられたんだって」

 

「そうか…俺は君たちにどれだけ迷惑をかけたのか知らないが、誰かを助けたことがあったのは嬉しいことだ…エルザ。色々、ありがとう」

 

「…」

 

 エルザさんが震えている。ジェラールはそのままさっきリチャードが入っていった牢馬車へと連れられて行く。…このままじゃ、ジェラールは行ってしまう。記憶がないのに、悪いことをしたのは操られていただけなのに…!

 

「…他に言うことはないか?」

 

「ああ」

 

「…死刑か無期懲役は、ほぼ確定だ。二度と誰かと会うことは出来んぞ」

 

「そんな…!」「いや…」

 

「行かせるかぁー!!!」

 

「ナツ!!」「ナツさん…!」「相手は評議員よ!?」

 

「貴様…!」

 

 ナツさんがジェラールを連れ戻そうと動き出していた。本当にこの人は…どこまでも真っすぐで、本当にカッコいいよ、ナツさん。連れ戻そうとしたナツさんを、検束部隊の評議員が取り押さえようとしている。

 

「どけ、そいつは仲間だ!連れて帰るんだーっ!!」

 

「ナツさん…」「よせ…!」

 

「取り押さえなさい!」

 

 さらに人が増えた…こうなったら、仕方ない。

 

「行け、ナツ!!」「援護します!」

 

「グレイ!」「ゴーシュ!?」

 

「こうなったら、ナツは止まんねぇからな!気に入らねぇんだよ…ニルヴァーナを防いだ奴に、一言の労いの言葉もねぇのかよ!!」

 

「そうです!!いくら罪人だからって、功績を無視するのはおかしい!!」

 

「それには一理ある…その者を逮捕するのは不当だ!!」

 

「悔しいけど…その人がいなくなったら、エルザさんが悲しむ!」

 

「もう、どうなっても知らないわよっ!!」「あいさー!!」

 

「お願い、ジェラールを連れて行かないで!!」

 

 やっぱり、皆思っていたんだ。こんなの、間違っているって。…いくら無期懲役を免れないって言っても、ニルヴァーナを止めた功績は認められるべきだ。なのにこの人達は、それを無かったことみたいに…納得、できない!

 

「来い、ジェラール!お前は、エルザから離れちゃいけねぇ!ずっとそばにいるんだ、エルザの為に!だから来い!!俺達がついてる…仲間だろっ!!!」

 

「全員捕えろ!!公務執行妨害、及び逃亡補佐だ!!」

 

 くっ…数が多すぎる。こっちはニルヴァーナの破壊と六魔との戦いでボロボロだっていうのに…!!このままじゃ…全員捕まるだけだ。

 

「もういい!!そこまでだ!」

 

『!』

 

 エルザさんの声で、全員が動きを止める。

 

「騒がせてすまない。責任は…全て私がとる。ジェラールを…連れて行け」

 

「エルザ!!」

 

「座ってろ!!」「はいっ!!」

 

 評議員の人達は、ジェラールを連れて馬車に乗せようとしている。その時、ジェラールがこちらを…エルザさんの方を見た。

 

「そうだ。…お前の髪の色だった」

 

「!!」

 

「さよなら…エルザ」

 

 それを最後に…評議員とジェラールは、姿を消した。

 

 

 

「エルザ…どこ行ったんだろう」

 

「しばらく、一人にしてあげよう…?」「あい…」

 

 皆、納得はしていない。でも、一番ジェラールと親しかったであろうエルザさんがああ言った以上、何かをする気にはなれなかった。

 

「ウェンディ?」

 

「ちょっと…風に当たってきます」

 

 ウェンディはそう言って、その場から離れていく。姿が見えなくなってから、僕とシャルルも立ち上がった。

 

「僕らも…ウェンディの様子を見てきます」

 

「ええ…」

 

 ウェンディはあれから、ずっと涙を流していた。何も言わずに、ただずっと…それだけで、胸が痛くなった。

 

「…どうするつもり?」

 

「何も、しないかもね」

 

「何もって…」

 

「ほら…あれ」

 

 空は、きれいな緋色に染まる。朝焼けが、空を一色に包んでいる。まるで、エルザさんの髪の色のように。そんな中、ウェンディは岩陰に隠れて何かを見ていた。その先には…涙でくしゃくしゃになった、エルザさんがいた。僕とシャルルはそれを見て、皆の所へと引き返すことにした…。

 

 

 

「こんな服初めて着たぜ」「俺もだ」

 

「2人とも…ちゃんと着てから言ってくださいよ。この服は、ギルドの皆が作ったものなんです。集落全体がギルドで、織物が特に盛んなんですよ」

 

「へぇ、そうなんだ~」

 

「一夜さんたちは着ないんですか?」

 

「我々はこの格好が正装なのでね。気にしないでくれたまえ」

 

「「「さすが先輩!」」」「メェーン…」

 

 おお、なんか久しぶりに見た気がするぞこのやり取り。ともかく、今は連合軍皆で化け猫の宿(ケットシェルター)の集落に来ている。あれからヒビキさんたちも合流し、一度落ち着ける場所に行こうということになったんだ。

 

「ニルビット族に伝わる織り方ということか」

 

「多分、そういうことなんだと思います」

 

「あれ?ゴーシュは知らないの?」

 

「僕とウェンディ、シャルルは後から入ったんだ。それ以外のメンバーは前からずっと一緒なんだって」

 

「それより早く行こうぜ!宴だ宴!!」「あい!」

 

 ナツさんたちが先に出て行ったので、全員がついて行く。きっと、マスターも待ってくれていることだろう。

 

「…ゴーシュ殿」

 

「なんですか、ジュラさん?」

 

「先ほどから、何かを気にしているようだが…」

 

「そんなこと、ないですよ?それよりほら、早く行きましょう」

 

 何かを気にしている、か。ジュラさんの言う通りだ…この後起きることを考えると、どうしようもないって分かっているのに、どうにかしたいと考える自分がいる。駄目だ。以前から分かっていたことじゃないか…どうにも、ならないんだ。

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)青い天馬(ブルーペガサス)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)…そしてウェンディにシャルル、ゴーシュ。よくぞ六魔将軍《オラシオンセイス》を倒し、ニルヴァーナを止めてくれた。地方ギルド連盟を代表して、このローバウルが礼を言う。ありがとう…なぶら、ありがとう」

 

「どういたしまして、マスター・ローバウル!六魔将軍(オラシオンセイス)との、激闘に次ぐ激闘…楽な戦いでは、ありません、でしたが!仲間との絆が我々を…勝利に導いたので~す!!」

 

「「「さすが先生!!」」」「メェーン…!」

 

 いや、二回はいいや。っていうか、一夜さんはほとんど拘束されていただけだったのでは?まあ、ニルヴァーナの破壊には貢献してくれていたからいいか。

 

「終わりましたのね~」

 

「お前たちも、よくやったな」

 

「…ジュラさん」

 

「この流れは宴だろ!!」「あいさー!!」

 

 その一言と共に、一夜さんの掛け声でトライメンズが踊り出す。それにつられて、ナツさんたちも踊り出すけど…化け猫の宿(ケットシェルター)の皆は何も反応しなかった。それによって、主に一夜さんが大きなショックを受けている。

 

「皆さん…ニルビット族のことを隠していて、本当に申し訳ない」

 

「そんなことで空気壊すの~?」

 

「ぜんっぜん気にしてねぇのに…なぁ?」「あい!」

 

「マスター、私も気にしてませんよ?」

 

「マスター…」

 

 僕は知っている。知ってしまっている。この後、マスターが何を話すのか。このギルドの正体も。

 

「うむ…皆さん。これからする話をよく聞いて下され」

 

 マスターは一から話してくれた。自分がニルビット族そのものだということ。400年前にニルヴァーナを作ったのがマスターだということ。どうしてニルビット族が滅んでしまったのか。

 

 ニルヴァーナは無制限に闇を光に変えることはできなかった。バランスをとるだけだった。一時代を築いたニルビット族に変えた分の闇がまとわりつき、殺し合った。生き残ったのは…マスターだけ。今はマスターも思念体に近い体なので、すでにニルビット族は全滅しているとも言える。

 

「儂の代わりにニルヴァーナを破壊してくれる者が現れるまで400年、見守ってきた…今、ようやく役目が終わった…!」

 

「そ、そんな話…!何これ、皆!?」

 

「あんたたち!?」

 

「マグナ!?ぺぺル!?」

 

「どうなってるんだ!?人が、消えていく…!」

 

「イヤよ、皆…!消えちゃイヤァァァ!!!」

 

「皆…っ」

 

 ギルドメンバーが、次々と消えていく。7年一緒に過ごしてきた皆が、次々と消えていく…分かっていても、涙が出てきた。ウェンディも涙を流し、シャルルも涙目になっている。

 

「騙していて…すまなかったな。ギルドのメンバーは皆、儂が作り出した幻じゃ」

 

「なんだとっ!?」「人格を持つ幻だと!」「何という魔力なのだ…」

 

「儂は、ニルヴァーナを見守る為に、この廃村に一人で住んでいた」

 

「マスター…そこからは僕が」

 

「ゴーシュ…!?」

 

 僕は話した。7年前にジェラールと一緒にマスターと出会い、ウェンディと共に預けられたこと。その後、マスターが幻を生み出したことも。ウェンディとシャルルを、ずっと騙していたことも…

 

「そんな…!?」

 

「あんた、そんな大事なこと…!!」

 

「ウェンディ、シャルル。ゴーシュは何も悪くない。彼を口止めしていたのは儂じゃ。それに…彼を見れば、お前たち同様…ギルドのメンバーを家族同様に思っていたのが分かるじゃろう。このギルドが、お前たちの家になることが出来ていたのなら…これほど嬉しいことはない」

 

「ウェンディとゴーシュの為につくられたギルド…!!」

 

「そんな話聞きたくないっ!!バスコもナオキも消えないでっ!!」

 

「ウェンディ、シャルル、そしてゴーシュ。もうお前たちに偽りの仲間はいらない。本当の仲間がいるではないか」

 

 マスターが笑顔をつくり…そのまま消えていく。それでさらに、目から涙が溢れる。ふと、左腕の前腕部にある化け猫の宿(ケットシェルター)の紋章を見ると…徐々に、消え始めていた。

 

『お前たちの未来は…始まったばかりだ』

 

「マスター!!」

 

「マスター…!」

 

 ウェンディがマスターに駆け寄り、僕はその場で崩れそうになるけど何とかこらえて、少しずつ歩き始める。どうしても、言わないといけないことがあるから…マスターに、伝えたいことがいっぱいあるけど…言い切ることができそうにないから、たった一言にそれらを込める。

 

「…ありがとう、ございました…マスター・ローバウル…!!」

 

『…皆さん、本当にありがとう。3人をどうか、頼みます…』

 

「マスターーー!!!うぁぁぁぁ!!!」

 

 僕はウェンディの横で深々と一礼した後に膝から崩れ落ちた。ウェンディは天に向かって慟哭していた。それからどれくらい経ったのか分からないけど…エルザさんが、僕とウェンディの肩に手を置いた。

 

「…愛する者との、別れの辛さは…仲間が、埋めてくれる。来い、妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ…!」

 

 これが、僕達が妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ったきっかけだった。

 

 

 

 連合軍は、それぞれのギルドへと帰ることになった。

 

 一夜さんやヒビキさんは今度青い天馬(ブルーペガサス)のギルドへ遊びに来るように言ってくれた。リオンさんはグレイさんに脱ぎ癖を治すように言っていたけれど、そう言った時既にリオンさんは上半身裸だった。そしてレンさんとシェリーさんがなんか互いに言い合っていたけれど…あれはツンデレ同士が好き合っているとしか思えなかった。

 

 そして妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆とウェンディ、シャルル、僕は近くの港からハルジオンという港町に船で向かうことになった。

 

「ゴーシュ、ちょっといい?」

 

「ウェンディ…うん」

 

 船が来るまで少しだけ時間があったので、その間は自由行動となった。僕は、化け猫の宿(ケットシェルター)の皆がいなくなってからウェンディやシャルルと顔を合わせられなくなっていた。今も責められて嫌われるんじゃないかって怖いけど…ちゃんと話し合っておかないといけない。

 

 その後シャルルも合流し、近くの海が一望できる場所までやってきた。少しの間、僕達は話すことなく静寂が流れていたけれど、ウェンディが話し始めた。

 

「ずっと…ゴーシュは、知ってたんだよね?マスターたちのこと」

 

「…うん。僕とジェラールがマスターに初めて会った時、明らかにあそこは廃村で他に人がいるようには見えなかった。マスターも僕が変に思っていたことを気づいていたみたいで、ウェンディが依頼に行っていた間に聞いたんだ」

 

「そっか…私、皆のことが大好きだったんだ。マスターも、バスコも、ナオキやマグナにペペル…皆が、本当の家族みたいに思ってた」

 

 やっぱり、すぐに許してもらうのは無理…かな。多分あの頃にウェンディに皆は幻なんだって言っても、信じてもらえないかジェラールやマスターに恨みを持ってしまうこともあり得るんじゃないかって思った。だからウェンディを傷つけない為と思って、ずっと隠し通してきたけれど…それが、今のウェンディの心に深い傷をつけてしまった。

 

「…あ、違うの。ゴーシュが黙ってたことを責めてるわけじゃないんだ。だって、ゴーシュは私達をいつも守ろうとしてくれているのを知ってるから。ね、シャルル」

 

「…そうね。確かに驚いたけど、連合軍ができる前にマスター達が消えたら、私たちはただ途方に暮れるだけだったと思うわ」

 

「そう言ってもらえると…助かるよ」

 

 僕が暗い顔をしているのを見て、ウェンディとシャルルがそう言ってくれた。それだけでも、本当に救われた思いだ。

 

「ゴーシュは、本当に優しいから…自分を責めてるでしょ?私達を傷つけたって」

 

「そんなことは…」

 

「あんた、本当に嘘下手ね」

 

「うっ…」

 

「ふふ…ゴーシュ、私達は大丈夫。悲しかったけれど…誰も悪くないって、分かってるから!」

 

「ウェンディ…シャルル……ありがとう」

 

 ウェンディとシャルルの気遣いに、僕は本当に救われた気持ちになった。僕は、これからも2人を…大切な人達を、守り通す。あなたから教えていただいた魔法で、必ず守り通して見せます。だから見守っていて下さい、マスター。

 

 

 

 




先日、お気に入り数が50を突破しました!

本当にありがとうございます!これからものんびりと頑張っていこうと思います!
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