ミストガンに、アースランドからエドラスへ転送してもらった僕とルーシィさん。現在、大ピンチに陥っていた。
「ル、ルーシィさん…。大丈夫、ですか…?」
「大丈夫だけど、ゴーシュは大丈夫なの!?」
「な、何とか…」
今、僕達は岩壁に掴まっている状態。僕がルーシィさんの手を掴んで、もう片方の手で岩壁を掴んでいる。両手が使えないからエクスボールも飲めないし…。しまった、こんなことなら先に飲んでおくべきだった…。
「ル、ルーシィさん…!僕のポケットに入ってるエクスボールが入った袋、取れますか…?一つでも取って飲んでくれれば助かるかも…!」
「う、うん!もう、少し…!あっ!」
ルーシィさんが僕のポケットから取り出そうとした時に、袋が引っかかって中身がどんどん零れ落ちる。これは、まずい…!
「中身が…!ルーシィさん!」
「…ごめん、少ししか取れなかった…」
「十分です…。い、いいから早くして下さい~…」
「う、うん!あむっ…よし!開け、処女宮の扉!バルゴ!」
「お仕置きですね、姫」
「早く、あたしたちを助けて~!!」
ルーシィさんが飲み込んだ後バルゴが出てきて、僕達を助けてくれる。でも、エクスボールを落としたのは厳しい…。ナツさんたちの分があればいいんだけど…。
☆
ルーシィさんが回収できたエクスボールは四個。その内二つは僕とルーシィさんが飲んだから、残りはたったの二個だけ…。せめてもう二個あれば、ナツさんたち全員に飲ませることができたんだけど…。こればっかりは仕方ないか。
何とか近くの町にやって来た僕達は、情報収集するために探索をすることにした。
「ごめんね、ゴーシュ…」
「大丈夫ですって!あれは仕方ないですよ」
ルーシィさんはさっきのことで落ち込んでしまっている。先に飲んでおかなかった僕が悪い。
そういえば、ナツさんたちとはいつ合流できるんだろう?確か、こんな感じの丸っこい建物がいっぱいある町は見たことがある気がするんだけど…。どこだっけ?来てすぐに会えると思っていたけど、もしかするとこのまま何日も彷徨うかもしれないのか…。とりあえず、王都に関する情報を集めよう。皆もそこに行くはずだ。
「いたぞ!」
「「へ?」」
ふと後ろからそんな声が聞こえてきて、振り返るとそこには兵隊さんらしき人が沢山いた…。あれ、王国軍では?
「お前たち、
「ちょっと、離してよ!」
「こっちに来い!お前はルーシィだな!お前は…見かけん奴だな。だがその紋章、
いきなり囲まれて、取り押さえられる僕達。僕の顔は分からなかったらしいけど、左腕前腕部にある紋章で捕まったらしい。長袖の服を着てくるんだった…。
「確かにルーシィだけど、何なの一体!」
「…ルーシィさん、やっちゃいましょうか?」
「そうね…でも、いいのかしら?」
「今回の敵は王国そのものですし、捕まったら何されるか分かりません」
「分かったわ。開け、天蝎宮の扉!スコーピオン!」
「ウィーアー!サンドバスター!!」
『ぐあぁっ!?』
サソリの尻尾があるテンションの高い星霊、スコーピオンが砂嵐を起こして王国兵たちを一掃していく。王国兵は全員どこかへ飛ばされて行ってしまった。
「俺っちこれからアクエリアスとデートなんで、んじゃ!」
「相変わらず嵐のような星霊ですね…」
「アハハ…」
「ルーシィ…」
「皆!会いたかった~!!って、あたし~!!?」
良かった、無事にナツさんたちと合流できた!それにこっちの世界、エドラスのルーシィさんも一緒にいる。本当に同じ顔だ…。なんだか鏡か何かを見てるみたい。
「ゴーシュ…!」
「ウェンディ!シャルルとハッピーも、無事で良かった!」
「いたぞ、あそこだ!!」
「話は後回しにしましょう!」
「このままじゃ捕まっちゃうよ!」
「
「ぐわぁっ!」「固い~!」「魔法なのか!?」
また王国兵が群がってきたので、先手必勝とばかりに僕は結界を叩きつける。見たことない魔法だからそれだけで驚いているようだ。この世界だと魔法は道具と一体化している物しかないから、仕方ないとは思うけどね。
「ルーシィさん、どうにかできますか?」
「任せて!開け、白羊宮の扉!アリエス!」
「あ、あの、頑張ります。すみませ~ん…!」
「なんだこれは!」「人が現れた!?」
「アリエス、あいつら倒せる?」
「は、はい!やってみます~!ウールボム!」
羊の星霊、アリエスの手から羊毛の爆弾(?)が放たれ、王国兵達がピンク色一色に包まれていく。なんか癒されている奴が何人もいるみたいだけど…。まあ、戦えなくできるならそれで良し。
「ウールショット!からの、ウールウォール!!」
「皆、今のうちよ!」
「こ、こんな感じで良かったんでしょうか…。すみませ~ん…」
「モコモコ最高ー!」「ナーイスルーシィ!」
「あ~、あたしも気持ちいいかも~!」
「これが、アースランドの魔法…」
王国兵が羊毛の壁に阻まれて動けなくなっている間に撤退する。…途中、王国兵の方から「もっとやって~」だとか「やられているのに気持ちいい~」とか聞こえてきたけど…。喰らった相手をマゾに変えるとか。…アリエスの魔法、恐るべし。
☆
町を出て、普通の木々とは変わった色をした森の中で一度休憩をとることにした僕達。大分遠くまで来たから、見つかることは恐らくないだろう。
「しっかしお前ら、どうやってエドラスに来たんだ?」
「私達、ルーシィさんもゴーシュも
「ホロロギウムに助けてもらったの」
「僕は新しい結界で。こっちの世界には、ミストガンに送ってもらいました」
皆にここに来るまでの経緯を話していく。エクスボールのことを話す時にルーシィさんが暗いオーラを纏ってしまったけど。
「で、あんたたちを探してたってわけ」
「それじゃ、それを飲めば俺らも魔法使えるようになんのか!?」
「でも、残り二個しかないんじゃ…」
「単純に考えて、戦力にならない私とオスネコは飲まなくていいわね」
シャルルの言葉により、ナツさんとウェンディがエクスボールを飲むことになった。まあ、ハッピーとシャルルはこの世界でも使えるようになるはずだから、間違いではないだろう。
「てめぇら、本気で王国とやり合うつもりなのか?」
「当然!」「仲間の為だからね!」
「…」「本当にこれ、あたし?」
これで魔法を使えるようになったから、よっぽどのことがない限り負けることはないはずだ。…これはフラグではない。
☆
ナツさんたちと合流した日。ルーエンの町を出て王都へと向かっていき、次のシッカという町で宿をとる。確かあと三日くらいかかるんだっけ。飛空艇に乗るより、エドラスのナツさんの魔道四輪に乗せてもらうのが最速だったはず。原作通り乗せてもらった方がいいけど、魔力が戻っているナツさんたちだったら飛空艇を奪おうとするよね…。どうしよう?
「おい、見ろよ!あいつとあたし、身体まで全く同じだよ!」
「うわぁ!そんな恰好で出て行くな~!」
「エドルーシィさん!?ナツさんとゴーシュもいるんですよ!?」
「僕は後ろ向いてるから、早くどうにかしてくれ」
「別にあたしは構わないんだけどね」「構うわっ!」
ルーシィさんとエドルーシィさんがいないと思っていたら、一緒にお風呂に行っていたらしい。二人ともバスタオル姿で出てきた。
「賑やかだねダブルーシィ」「それ、上手い事言ってるつもりなの?」
「ん~…」
「何だナツ、見たいのか~?」「止めて~!」
これ、アースランドのルーシィさんからすればひどい罰ゲームだよね。勝手に自分の裸見せられるのと同じようなもんだし。
「ぷふっ!」
「何がおかしいのよ!そうか、あたしよりエドルーシィの方がスタイルが良いとか、そういうボケかましたいのね?」
「自分同士で、一緒に風呂入るなよ!」
「「…言われてみれば!」」
やっぱりルーシィさんはどこの世界でもルーシィさんらしい。ツッコミで振り回されている所とか、全く変わらないと思う。
「本当に見分けがつかないほど瓜二つですね!」
「まさかケツの形まで一緒とはな~」「止めてよ!」
「お!鏡の物まね芸できるじゃねぇか!」「「やらんわ!」」
「息もピッタリ…」「悲しいわね」
「っていうかジェミニが出てきたみたい!」
確かに。ジェミニじゃないとここまでツッコミとかも合わせられないだろうな。
「ジェミニ?」
「あたしが契約している星霊よ!開け、双子宮の扉!ジェミニ!」
「じゃ~ん、ジェミニ登場!」
…もう後ろ向いてるのも面倒になってきたから、こっそり部屋から出て行く。どうせ振り向いたら後でウェンディからお叱りをもらうことになるんだから、これが一番安全だ。
外に出てみると、目の前には夜の世界が広がっている。空を見ると月のような光を放つ球体がいくつも存在していた。色も違っているから、すごくきれいだ。
「魔法が有限の世界、か…」
元々、魔力自体が存在していない世界で前世を過ごして、魔力が無限の世界で10年以上過ごした。それだけで、魔力がどれほど便利なものかが実感できる。最初は魔力を感じることができなかった僕でも、こうして魔導士として生活していくことができるようになった。そんな魔導士を生業としている人達が、魔力の枯渇に怯えながら毎日を過ごしている。それを思うだけで、なんだかきれいだと感じたこの夜の景色が、哀しく儚いものに思えてきた。
☆
「何よこれ~!!信じらんない!!」
「朝っぱらからテンションたけぇな…」
「どうしたの…?」
翌日、僕達はルーシィさんの声で目が覚めた。髪が長いのでアースランドのルーシィさんだ。昨日の夜エドルーシィさんはキャンサーによって髪をバッサリ切ってもらっていたからもう見間違うことはない。
「エドラスのあたしが、逃げちゃったのよ!」
「王都へは東へ三日歩けば着く。あたしはギルドへ戻るよ、じゃあね幸運を…」
「手伝ってくれるんじゃなかったの!?もうどういう神経してるのかしら!!」
「ルーシィと同じじゃないの?」「うるさいっ!」
ルーシィさんがここまで怒るのも珍しい気がする。確かコレ、逃げたわけじゃなかったよね。というか、不器用だなぁと思う。素直にギルドの皆を説得してくるって書いておけばいいのに。
「仕方ないですよ、元々戦う気はないって言ってましたし」
「だな」
「あたしは許せない!同じあたしとして、許せないの!」
「まあいいじゃねぇか」「良くない!ムキーーッ!!」
これはしばらく放っておいた方がいいか。それよりお腹減ったな…。
☆
「フフ~ン♪」
「もう機嫌治ってる」「本屋さんで珍しい本見つけて、嬉しいんだろうね」
「何の本買ったんだよ、ルーシィ」
「こっちの世界の歴史書!あんたたちも、この世界について知りたいでしょ?」
ルーシィさんがノリノリだ。というか僕は、アースランドと通貨が一緒ってことに驚いた。まさか手持ちのお金で買うことが出来るとは思わなかったな…。服も買えたから着替えられたし。ちょっとカンフーっぽい服だけど、特におかしくはないだろう。
「この本が物語っているわ!この世界って面白い!例えば、エクシードって種族がいてね!」
「私も聞きました、すっごく恐れられている種族らしいですけど…」
「…!皆、隠れて!あそこに王国兵が!」
王国兵が前方に集まっているのを見て、僕は咄嗟に皆を物陰に隠れさせる。着替えたとはいえ、こっちは顔バレしている人もいるから気を付けるに越したことはない。…話を盗み聞く限り、やっぱり巨大
「あの船、奪うか!」
「ナツが乗り物を提案するなんて珍しいね」
「ウェンディのトロイアがあれば、乗り物など怖くないわ!」
「でも、あれ操縦できます?」
『あ』
おい。全員考えてなかったってことだよね?思わずため息をついてしまった。この中で僕以外乗り物の免許を持っていない。しかも持っている僕でさえ魔道二輪だ。前世の知識を使っても四輪車までしかできないから、飛行船なんて操縦できない。
「誰か、ロープか何かあります?」
「あそこにロープあるよ!」
「どうするつもり?」
「警備さえどうにかできれば上手くいくはず」
「よし、ゴーシュに任せるぞ!」
「あ、ちょっとナツ!?」
え、まだ作戦伝えてないんだけど…。まあ、勢いで行っちゃうのがナツさんか。そう思って僕達も隠れるのを止めて飛行船に向かっていく。でも、できれば飛行船が離陸する直前が良かったな。
「火竜の翼撃!」
「天竜の咆哮!」
「
「開け、獅子宮の扉!ロキ!ってあれ!?」
立て続けに攻撃を仕掛けていく中、ルーシィさんだけが王国兵に取り囲まれていた。原因はおそらくロキさんが出てこなかったこと。だってどう見てもあれは、ロキさんじゃなくてバルゴだったから。
「ちょっと、なんで!?」
「お兄ちゃんは今デート中ですので、召喚できません」
「お兄ちゃん?」
「はい、以前そのように呼ぶようにとレオ様から」
「バッカじゃないのあいつ~!」
「ルーシィさん、危ない!」
「えっ!?」
ルーシィさんだけでも捕らえようとしたのか、王国兵が背後から近づいていく。攻撃されそうになっていたその時、赤い魔道四輪が王国兵達を轢いてルーシィさんの目の前に現れた。
「
「ってことは味方?」
「ルーシィから聞いた。乗りな」
その言葉を聞いて、僕達は急いで魔道四輪に乗り込む。魔道四輪は、また王国兵を蹴散らしながらあっという間に逃げ切ってしまった。良かった、原作通りになって。僕の考えでは、飛行船のどこかにロープを巻き付けて、それを僕の
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