FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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第22話  王都

 シッカの町を抜け、物凄いスピードで周囲の景色が流れていく。ここまで速い魔導四輪は乗ったことがない…!でも、おかげで…。

 

「ウップ…!!」

 

 誰か、助けて下さい。隣がもうリバース寸前です。今までの乗り物酔いのレベルじゃなさそう。普段乗り物酔いをしない僕でも少し気分が悪くなっている。もしこれで事故を起こしたりしたらと思うと、気分が悪くなってくる…。このスピードにナツさんが耐えられるのだろうか…。

 

「ウェンディ、トロイアかけれる?」

 

「う、うん。ちょっと待っ…!…………ごめんなさい、ナツさん」

 

「ウェンディ!?」

 

 なぜだ。まさかあの慈愛の心に溢れているような性格をしているウェンディが、ナツさんを見捨てるとは…。しかも、間の長さからしてこれはかなり葛藤した上での決断…!この乗っている間にトロイアをかけてもらうのは無理そうだ…。いや、本当になんで?

 

「…あんた、鈍いわね」

 

「え…?シャルル、どういうこと?」

 

「自分で考えなさい」

 

 …駄目だ。これはいくら考えても分からないパターンだ。たまにこういうことがあるんだよなぁ…。ウェンディが不可解な行動をして、シャルルはそれがどうしてそうなったのか分かっている。だけど僕はそれの意味がさっぱり分からない。ごめんナツさん。少しの間だと思うから我慢してください…。

 

「後ろの奴等、元気だな」

 

「あ、すみません。助けてくれてありがとうございます」

 

「本当助かったわ!」

 

「…王都へ、行くんだろ?あんなオンボロ船よりこっちの方が速ぇぞ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)最速の男…ファイアボールのナツとは俺のことだぜ」

 

「「ナツ~!?」」

 

「お、俺~…!?」

 

 ゴーグルを外すとナツさんと同じ顔があった。…実際に見ると、隣で極度の乗り物酔いのナツさんが運転している姿とか、不思議な光景だ。こんなのアースランドだったら絶対にありえない光景だもんね。

 

「こっちの、エドラスのナツ!?」

 

「ルーシィが言ってた通り、そっくりだな。で?あれがそっちの俺かよ、情けねぇ」

 

「こっちのナツさんは、乗り物が苦手なんです」

 

「それでも俺かよ…。こっちじゃ俺は、ファイアボールって通り名の運び屋専門の魔導士なんだぜ?」

 

「そういえばこの魔道四輪、SEプラグ付いてないよ?」

 

「こっちじゃ人が体内に魔法を持たないからじゃないかな」

 

「車に関しては、アースランドより全然進んでるじゃない」

 

 SEプラグとは、セルフエナジープラグの略。運転手の魔力を燃料へと変えてくれる装置だ。エドラスの人達は体内に魔力を持っていないからそれは必要ないわけで、こっちの魔道四輪は完全な魔力だけで走っている。これはアースランドではまだ確立されていない技術だ。と、その時、エドナツさんが急停車した。か、慣性の法則が…!

 

「ちょっと、何よ急に…!」」

 

「…そうとも言えねぇな。魔力が有限である以上、燃料となる魔力もまた有限…。今じゃ手に入れるのも困難だ。だから、俺が連れてってやるのはここまでだ。…降りろ」

 

「なっ!?」

 

「これ以上走ったら、ギルドに帰れなくなるんだ。あいつら、また勝手に場所を移動したからな」

 

「うおぉーっ!生き返った~!」

 

「もう一人の俺は、物分かりが良いじゃねぇか。…さ、降りた降りた!」

 

 魔導四輪から放り出され尻餅をつく。今どうやったのか分からなかった…。それはともかく、目の前に広がる景色を見て僕は驚いた。ここまで大きいとは思ってなかったから。

 

「王国とやり合うのは勝手だけどよ、俺達を巻き込むんじゃねぇよ。今回はルーシィの…お前じゃねぇぞ、俺達が知ってるルーシィの頼みだから仕方なく手を貸してやった。だが面倒は御免だ。俺は…ただ走り続けてぇ」

 

 このナツさん、六魔のレーサーと仲良くなれるんじゃないだろうか。さっきから似たようなセリフばっかりだなと内心思った。

 

「おい!お前も降りろ!」

 

「バッ、てめぇ、何しやがる!?」

 

「俺も同じ俺として、一言言わせてもらうぞ」

 

「や、やめろ!よせ!俺を…降ろすなっ!!」

 

「お前…何で乗り物に強ぇ?」

 

「そんなことかい!」

 

「あうっ…!ご、ご、ごめんなさい…。僕にも、分かりません…!」

 

 …ああ、そうだった。本田さんと同じ体質だったっけ、こっちのナツさん。突然ビビりになってしまったエドナツさんに、他の皆はポカーンとしていた。

 

「お、お前…。本当に、さっきの俺?」

 

「は、はい!よく言われます…。車に乗ると性格変わるって…!」

 

「こっちが本当のエドナツだ~!?」

 

 性格変わるというか、もはや二重人格の域だと思うけどね。

 

「ひぃ~…!大きな声出さないで…!怖いよ~…」

 

「…鏡の物まね芸でもする?」

 

 ルーシィさん、悪い顔してる。ナツさんがひきつった顔を見て、昨日のお返しにってことだ。ルーシィさんって時々SなのかMなのか分からないよね…。というか、このエドナツさん見てるとイーロンを思い出すな…。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい!僕には無理です!僕はただ、ルーシィさんの頼みだからここまで来ただけなんです…!」

 

「いえいえ、無理しなくていいですよ?」

 

「こんなのいても、役に立ちそうにないしね」

 

「シャルル、それは言い過ぎだよ」

 

「…もしかして、ウェンディさんですか?小っちゃくて可愛い!そっちがアースランドの僕さん?」

 

「どこにさん付けしてんだよ」

 

「オイラはハッピー!こっちはシャルルだよ!」

 

「あたしは、もう知ってると思うけd「ひぃ~!ごめんなさい!!何でもします!!」…」

 

「お前さ、もっと俺に優しくしてやれよ」

 

 エドナツさんって動きがすごい速いんだね…。今の魔道四輪の物陰に隠れるスピードが異常だった。もしかしたら怯えて逃げる時のエドナツさんのスピードはレーサーに匹敵するのでは…?

 

「僕はゴーシュです」

 

「え…!?ゴ、ゴーシュってあの!?」

 

 ?なんかすごい怯えられてるような…?そういえば、こっちの僕はどんな人なんだろう?妖精の尻尾(フェアリーテイル)にはいなかった気がするけど…。

 

「ゴーシュを知ってるんですか?」

 

「ゴ、ゴーシュって確か、王国で有名な研究員にそんな名前の人がいた気が…!」

 

「それじゃあ、まさか…」

 

「こっちの僕も、ここにいるってことですね?」

 

 エドラスのエルザさんと同じように、エドラスの僕も王国軍にいるらしい。研究員ということは、バイロとかの部下ってことかな…。原作に僕はいないんだから、僕がいることで大きな変化がなければいいんだけど…。

 

 僕の言葉で、他の皆もようやくこの都市―王都に到着したことに気づいた。

 

「これって…!」

 

「もしかして王都!?」

 

「大きい~…!」

 

「何だよ、着いてんならそう言えよ!」

 

「うわぁ、ごめんなさい!!」

 

 ここに、マグノリアの皆の魔水晶(ラクリマ)がある。確か、原作だと…。

 

「皆、あれ…」

 

「ん?…何あれ!?」

 

「まさか、あれが…!?」

 

「多分、そう…。きっとあれが、マグノリアの皆の魔水晶(ラクリマ)だ」

 

 遥か上空に、超巨大な魔水晶(ラクリマ)があった。やっぱり、ここからでも十分見える位置にあった。まああんな巨大な物を隠すなんてできないだろうけどね。かなり遠いはずなのに、巨大すぎて全然遠くにある感じがしない。

 

「あんな上にあるなんて…。どうするの?」

 

「オイラたちが魔法使えればなぁ」

 

「もしかしたら、王都に行けば移動する方法があるかもしれないですね」

 

「…いいぞ!こんなに早く着くとは思わなかった!皆の場所も分かったしな!」

 

「さっさと行くわよ」

 

「ちょっとシャルル!」

 

 シャルルが駆け出したのを見て、僕達も後に続いていく。

 

「じゃあ、ありがとな!」「あたしによろしく!」

 

「あ、あの!本当に、王国と戦うの…?」

 

 エドナツさんが、ナツさんを引き止める。彼らからすれば、僕達は無謀な戦いを挑みに行くようなものだ。優しそうなエドナツさんが、止めようとするのは当然とも言える。

 

「さあな。俺達は仲間を救えればそれでいいんだけど、タダで帰してくれねぇようなら…。そりゃもう、やるしかねぇだろ!!」

 

「!………………お、王国軍になんて、勝てるわけないよ」

 

「へへっ!」

 

「あ…」

 

 エドナツさんは、ただこっちを不安そうな顔で見ているだけだった。

 

 

 王都に入ってみると、人が大勢いた。まるでお祭り騒ぎだし、ここでは建物の色んなところに魔法が組み込まれているようだ。この世界の全てをほぼ統一しているらしいから、ここまで栄えているんだろうけど…。他の町とは、別世界だ。

 

「なんか、向こうの方が騒がしいですね」

 

「パレードとかやってんのかしら?」

 

「よーし、様子を見に行ってくるか!」「あいさー!」

 

「あんたたち!遊びに来たんじゃないのよ!」

 

「行っちゃったね…。僕らも行きましょう」

 

 ナツさんとハッピーが群衆の方へと向かっていくので、僕らもその後を追いかけていく。

 

「なんだなんだ?」

 

「待ってよナツ!」

 

「うわぁ、すごい人混み!」

 

「ウェンディ、はぐれないでよ」

 

「あ…!」

 

「どうかした?ウェンディ」

 

「シャルル…!う、ううん!何でもないよ!」

 

 人混みをかき分けて、最前列の方へと向かって進んでいく。この人の多さだとウェンディははぐれてしまうような気がしたので咄嗟に手を掴んでおく。…嫌かもしれないけど、ここでいつものドジをされたら本当にはぐれてしまうから勘弁してね。

 

「った!ちょっと、急に立ち止まらないでよ!…え!?」

 

 最前列まで行くと、そこには大きな魔水晶(ラクリマ)があった。空にあった物ほどではないけど、高さ10m以上は確実にある。

 

魔水晶(ラクリマ)…!?」

 

「じゃあ王都の上にあったのは何なの?」

 

「これ、一部分ね。切り取られた跡があるわ」

 

 魔水晶(ラクリマ)の前にある演説台のようなものに、一人の老人が上がる。あれが、この国の国王…。

 

「エドラスの子らよ。我が神聖なるエドラス国は、アニマにより十年分の魔力を生み出した」

 

「何が生み出しただよ…!オイラたちの世界から奪ったくせに!」

 

「…落ち着きなさい、オスネコ」

 

「共に歌い、共に笑い、この喜びを分かち合おう」

 

 その言葉で、周囲の人々が歓声をあげる。中には涙を流して喜ぶ人や屈託のない笑顔を浮かべている人もいる。魔水晶(ラクリマ)がマグノリアの皆だと分かっている僕らから見ると、人間を資源として喜んでいることが異常だと感じる。ほとんどの人々が真実を知らないと分かっていても。

 

「エドラスの民にはこの魔力を共有する権利があり、また!エドラスの民のみが未来へと続く神聖なる道を、我が国からは誰も魔力を奪えない!!そして、我は更なる魔力を手に入れることを約束しよう。…これしきの魔力が、ゴミに思えるほどのな」

 

「…!!!」

 

 エドラス国王は、そう言いながら魔水晶(ラクリマ)を持っていた杖のような物で罅を入れ、崩れた部分が地面へと落ちた。

 

「我慢して…!」

 

「出来ねぇ…!あれは、あの魔水晶(ラクリマ)は!!」

 

「お願い!皆、同じ気持ちだから…!」

 

「…滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の魔力は、この世界でも特殊な物らしいです」

 

「ゴーシュ…?」

 

 ミストガンにその説明も受けていたけど、敢えて伝えていなかった。原作通りに進んだ方が先の展開が分かるし、僕という異物が居てもそれほど変化が出ない方がいいんじゃないかと思っていた。実際、六魔将軍(オラシオンセイス)との戦いはほとんど原作通りだったから上手くいったような気がするし。……でも、魔水晶(ラクリマ)を、仲間を傷つけられた瞬間を見て、抑えられなくなった。

 

「ミストガンの話だと、魔水晶(ラクリマ)にされた皆を元に戻すこともできるらしいですよ」

 

「今ここで暴れる気!?」

 

「…本当はもっと後で伝えるつもりでしたけどね。仲間が傷つけられたのを見て、黙ってられなくなりました」

 

「ゴーシュがそんな荒っぽいことするなんて、珍しいね」

 

「僕だって、感情的になることぐらいあるよ」

 

 ウェンディは隣で笑顔を浮かべた。それもすごく嬉しそうに。他の皆も、やる気に満ちた目をしている。

 

「皆、いいですか?」

 

「仕方ないわね、もう!」

 

「やろう!」

 

「うん!」

 

「逃げることも考えなさいよ!」

 

「仲間の為だったら、世界だろうが敵に回す!それが妖精の尻尾(フェアリーテイル)だ!!」

 

 ナツさんのその言葉で、僕達の大暴れが始まった。

 

 

 




次回からオリジナル展開となります。原作の方が良かったって方もいるかもしれませんがご了承下さい。

ちなみに序盤でウェンディがナツを治さなかった理由ですが、次回の前書きとかに書いておきます。分かる人は分かるかもですけどね。
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