ローブを取り払い、相手の姿を確認する。黒い短髪、細身の体、左目の近くには古傷がある。姿を見て、僕は困惑した。
「え…?」
「メストが、もう一人…?」
「…これは、アースランドの魔法の一種か」
そう、目の前にはすぐ近くでリリーが動きを封じているはずのメストさんの姿があった。てっきりギルドの誰か、可能性は低いけどギルド以外の人物を想定していたけど、メストさんがもう一人…?確か、この魔法は…
「思念体ね」
「そんな魔法も使えるとはな」
「リリー…?」
「恐らくこいつは、人の記憶を操作する魔法の使い手だ。ギルドのメンバーに魔法をかけ、自分がギルドの一員であることを装った。ミストガンのことも含め、考えれば不自然な点だらけだ。お前と接点を持つ者の名も上がらない」
リリーの話の途中で、僕の目の前のもう一人のメストさんが消える。これ以上思念体を作っておく必要がないと判断したんだろう。
「………」
「消えた!?」
「きゃ…!」
そして次の瞬間、メストさんが消える。が、ウェンディの声で居場所が分かった。僕の後ろ、ウェンディの目の前だ。
「ウェンディ!!」
「
「…広げろ!」
ウェンディを結界で覆う直前に、すぐそばにいたメストさんはまた消える。でも消える直前、僕の方を見てそう言ったのを確かに聞いた。どういうことかと思った直後。
「うわっ!」
「きゃっ!」
目の前で、爆発が起きた。僕は咄嗟にガードが間に合ったけどそのまま吹き飛ばされ、崖から身を投げ出してしまった。が、その後地面の上に立っているというか、地面に足をつけている感覚があった。腕を退けると、目の前には赤とオレンジの縦縞模様があった。
「メストさん…?」
それがメストさんの着ていた服の柄だと気づき、今僕はメストさんに守られていることに気がつく。
「大丈夫か?」
「あ、はい。皆は…」
ウェンディは結界に守られている。リリーもシャルルを抱えて空に逃げていたようだ。既に近くに着陸する体勢になっている。
「無事か、ゴーシュ!」
「うん…今のは――」
リリーが地に足をつけたその時、ある方向が光ったのが見えた。これがさっきの爆発攻撃と同じ物だと理解するのに時間はかからない。
「
「誰だ、出てこい!」
攻撃が来た方向には、一本の木。それ以外に何か隠れられそうな物はない。
「…よくぞ、見破ったものだ」
「木から人が…!」
「何者だ!」
「俺の名はアズマ。
「グリモアハート…?」
「闇ギルドよ」
「それも、三大勢力の一角…」
「さっきの信号弾は、敵の襲撃を知らせる物か」
顔だけだったのが、さらに変形を続けやがて上半身の形になった。
「今更遅いと言っておこうか」
「くっ…一体、何がどうなっているんだ!!」
「…
「あんた一体…!?」
「まだ気づかねぇのか?俺は評議院の人間だ。
…やっぱり、評議院の人だったのか。ギルドのメンバーか評議院の人間か、よく分からなくなっていたけど、これでハッキリした。ハッキリしたのは良いんだけど…この状況、不味い。僕たちと
「評議員!?」
「そんな…!」
「だがそれもここまでだ…あの所在地不明の
言われて気づいたけど、沖の方を横目で確認すると確かにそれらしき艦隊が見える。あんな大きな船が近くにいるのに気づかないなんて…いや、後から来たシャルルやリリーも気づいてなかったんだ。きっと隠蔽する魔法の一種を応用していたんだろうから、気づかなくても仕方ないか…
「戦闘艦…あれのことかね」
アズマも横目で背後の方にそれらがあることを確認する。すると戦艦の辺りが光り、先ほど僕たちを襲った攻撃の何倍もありそうな爆発が起こった。
「な……!!?」
「え…!?」
「な、何をしたの!?」
「船が…!」
「馬鹿な…!」
戦艦は全艦大破、と言った所か。海上で大火事が起こり黒煙を上げている…まだかなり遠いのに、ここから戦艦を破壊するほどの威力。今初めて気づいて攻撃したのか、今の会話で気づいたフリをしただけで元々爆弾か何かを仕込んでいたのかは知らないけど…この人の魔法はまともに食らったら不味い…!
「では改めて…そろそろ仕事を始めても良いかね?役人さん」
「…全員、下がってろ!」
「リリー、援護するよ!」
「リリー、ゴーシュ!」
「うおおおおっ!!」
リリーが猛スピードでアズマに接近し殴りかかる。アズマはリリーが間合いに入る直前に右手をこちらに向ける。
「ブレビー」
「
リリーの目の前に壁をつくり相手の爆発を防ぐ。どうやらあの爆発攻撃にも規模の違いがあるようだ。接近戦だからなのか、威力があの戦闘艦を破壊したものとは別物だ。おかげで防ぎきることができ、リリーにダメージはない。そのまま右下からのアッパーを食らわせる。
「……!!」
「うおっ!」
「きゃあっ!」
「リリー!」
「…大丈夫だ!」
だがアズマはまるで何ともないかのように、リリーにノーモーションで爆発攻撃を放ち、リリーは爆発に飲み込まれてしまった…そうか、船を破壊した時は何も動いていなかったのだから、ノーモーションで繰り出せるのは当然。もっと、爆発する前の光を見るんだ…!
「二人とも!援護します!!」
「おお…!これがサポートの魔法というものか…これなら!」
「ウェンディ…」
ウェンディが起き上がり、僕達にバーニアとアームズを付加する。これでスピードと攻撃力が上昇。リリーは飛び出し、再度接近を試みる。アズマも爆発攻撃を連発しているが、スピードの上昇したリリーに当たることは無い。
そして僕は、ウェンディが頷いたのを見て、この付加術をかけた意味を理解した。これは、賭けだ。本当にまだやったことがない戦術。だからエルザさんとの戦闘でも使えなかった。きっとウェンディもこの攻撃が効くとは考えていないはずだ。
「…
「ブレビー」
結界の柱を、アズマが爆発でへし折っていく。その威力に改めて脅威を感じるが、あれだけの威力を出すには一つの爆発にそれだけの魔力を込める必要があるはず。アズマが僕の攻撃の対処に時間をかけてくれれば…!
「でやぁっ!!」
「…メストさん、私に作戦があります!力を貸して下さい!」
リリーの蹴りがアズマにヒットする。僕は移動しながら、アズマを囲むように柱を生み出していく。リリーが空中へ逃げられるように配慮しながら。
「な、何を言っている!俺は評議院の人間だぞ!」
「今はそんなの関係ありません!私は
「ゴーシュ!その結界を、棒状に出来るか!?」
「了解!
「よし、武器さえあれば!!」
「む…!」
リリーの手元に刀サイズの柱を生み出し、リリーがそれを掴んでアズマへと斬りかかる。剣とただの棒ではかなり変わるだろうけど、エドラスでは魔戦部隊隊長だったリリーの腕前なら問題ないはず。リリーの先ほどまでと違う動きに、アズマも僅かに驚いたような顔をする。その間に僕も残りの作業を進める。
「俺は出世の為に、お前たちのギルドを潰しに来たんだぞ!」
「構いません!!絶対、潰されたりしないから!!」
「リリー、今よ!空へ!」
「
背後にいるシャルルの声に合わせてリリーが飛んだのを確認し、アズマの真後ろに攻撃が行かないように気をつけながら、アズマの周囲の柱を一斉に突き刺す。
「天竜の……!!」
アズマの真後ろに瞬間移動してきたメストさんとウェンディ。そしてウェンディ自身にもアームズが付加されている。これで―――――
「つまらんな」
「!!」
ウェンディの一撃よりも早く、アズマが両手を広げる。
「タワーバースト!」
戦艦を破壊したあの爆発の何倍、何十倍の規模の炎の塔が僕らを飲み込んだ。
ローブの中身が思念体というオチ。浮かんだ別展開っていうのが、フェアリーテイルのラキさんがメストのパートナーになって参戦という展開。ただこれをやってしまうと、キナナさんと七年間を共にする女友達がいなくなってしまうので可哀想だなってことでパスしました(ビスカは結婚しているしあんまり話しているシーンもない気がしたので)。
こんな安直な作者ですが、どうか今後もよろしくお願い致します。