FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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またまた思ったより遅くなってしまってすみません!




第40話  ゴーシュの過去①

 X772年。今から12年前。

 

 闇ギルド三大勢力の一つ、悪魔の心臓(グリモアハート)にはいくつも拠点がある。本隊はマスター・ハデスがいる戦艦。他の拠点は戦闘訓練、魔導書の保管、傘下ギルドの拠点…様々な用途で用いられている。

 

 ここは、その中の一つ。主に、失われた魔法(ロスト・マジック)についての魔導書が保管されている場所。そこに、老人と青年がいた。

 

「マスター・ハデス、ここは…」

 

 一人は後の煉獄の七眷属となる男、ラスティローズ。この頃の彼は幹部クラスとまではいかないものの、エリートと呼ばれるだけの存在だった。

 

「主に授ける魔道書がこの中にあるのだ…」

 

 そしてこの老人は、悪魔の心臓(グリモアハート)のマスター・ハデス。ハデスはこの日、ラスティローズを呼び出しこの拠点へとやって来ていた。二人は長い螺旋階段を降り続けている。

 

 そして途中で、マスター・ハデスは立ち止まった。ラスティローズもすぐに立ち止まり、どうしたのかと窺い始める。

 

「これだ」

 

 ハデスが持っていた杖をある方向へと向ける。するとビッシリと本棚を埋め尽くしていた魔道書の中から一冊が飛び出してきた。それがラスティローズの目の前で止まる。

 

「これが…!」

 

「具現のアーク…主には、この魔法を授ける。今から、その魔法の会得に精進せよ」

 

「はっ…!この魔法で、マスター・ハデスの手足として役立って見せます。……しかし、これはどういった魔法なのですか?」

 

「この魔法は、己が思い描いたものを具現化させるというものだ…私もこの魔法を会得している」

 

「マスター・ハデスが!!?」

 

 ラスティローズは衝撃を覚えた。自分にとってはマスター・ハデスは神に近い存在。そんな人物と同じ魔法を身につけられるとは、思ってもみなかったのだ。

 

「だが、複数の魔法を会得することは、それだけ熟練しにくくなるということ。並ならぬ時間がなければ不可能というもの」

 

「な、なるほど…ですが、俺に身につけることが出来るのでしょうか?」

 

 ラスティローズはこれまで、所有(ホルダー)系の魔法しか使ったことがない。どんな魔導具でも、あっさりと扱うことが出来た。だからこそ、エリートと呼ばれるまで成り上がることが出来たと思っている。

 

 しかしこの具現のアークという魔法は、間違いなく能力(アビリティ)系の魔法だ。少々不安に感じるのも当然だった。

 

「心配ない…主に合っていると思ったからこそこうして託したのだ………ふむ、そうだな。一つ、私もこの魔法で試したいことがあった。それを、今ここで見せよう」

 

「ありがとうございます!」

 

 すると、マスター・ハデスは魔力を高め始める。やがて、この場所自体が恐怖で揺れていると錯覚してしまうほどの揺れが始まった。

 

「な、なんと……!」

 

「出でよ…輪廻の門!!」

 

 マスター・ハデスの目の前に、禍々しい物体が現れる。ラスティローズには、それは門でも何でもなく…ただ、恐ろしい何かとしか言えなかった。確かに門のような形をしているが、これが繋がっているのが何処かなど考えることも出来なかった。この門を潜ってしまったらどうなるのか…そんなこと気にする余裕もなかった。

 

「我が声に耳を傾けよ!この地へとその姿を現せ!!」

 

 マスター・ハデスの声に反応し、門が魔力をさらに高め始める。やがて、それは光を放ち始める。明滅を繰り返し、光は徐々に強くなり、稲妻が走る。そしてそれが止まったと思った瞬間に、強烈な閃光が周囲を飲み込んだ。ラスティローズは思わず両腕を交差するようにして目を庇う。

 

「………ふむ」

 

「…!!こ、これは!?」

 

 マスター・ハデスが小さく声を発し、ラスティローズは両腕を退ける。そして見たものは……生気を感じることが出来ない目をした、紺色の髪(・・・・)の赤ん坊だった。

 

 

 

 

 その様子を、小さな黒い魔物が観察していた。

 

 

 

「それからマスター・ハデスは、その赤ん坊に魔法を与えようとした…が、それは失敗したらしい。三年間様子を見たが…身体能力は高いものの魔法を一切使うことの出来ない子供と認識されたそいつは、ウチのギルドの戦闘訓練の的代わりになり、挙げ句の果てにはドラゴンの情報と引き換えにある研究者へと売られたのさ」

 

「………それ、が」

 

「そう、お前だよゴーシュ=ガードナー!どうやって魔法を使えるようになったのかは知らんが、髪の色を見る限りあの女に改造でもされたんだろう?」

 

 なるほど…これで納得がいった。ダフネが僕を知っていた理由も、ラスティローズがあんな反応を示した理由も。今考えると、ザンクロウも僕を知っていたんだと思う。皮肉がどうとか言っていたし。

 

 元々、僕が本当は存在しない人間だってことは分かっていた。ここが、僕が生きていた世界とは違うってことも分かっていた。だからこそ、自分がどうしてここに前世の記憶を持ったまま生まれたのかが気になっていた。記憶を持っていないなら、百歩譲って納得出来る。でも、僕には前世の記憶がハッキリと残っていた…少なくとも最初に意識を取り戻した時は。今は、大分忘れてしまったけど。

 

 記憶を持ったまま生を受けていた時点で、そして五歳以前の記憶がない時点でまともな人生ではないとは思っていた。だから…あまり、ショックを受けたりはしていない。

 

 問題は……他にある。

 

「…これで昔話は終わりだ。さて、そろそろ始末させてもらうとしよう。また見ることが出来て楽しかったよ、実験台」

 

 今は、この人を倒すことが先決だ。と、ラスティローズの今の台詞で僕はあることに気がついた。

 

「………ふふ」

 

「……何がおかしい?」

 

「実験台……そう、いうこと、か…。貴方は、僕に……負けたことが、あるってことか…分かりやすい人、ですね…」

 

「っ!…黙れ、このクソガキ!!」

 

「ぐあっ…」

 

 戦闘訓練の相手…ということは、昔ザンクロウともラスティローズとも僕は一度戦っている。その頃はまだ自分の魔法を使いこなせなかっただろうから、身体能力が高いだけの僕にやられたってことだ…案の定この反応を見る限り正解みたいだ。

 

 ラスティローズは怒り、ベルクーサスに押えられた状態の僕の頭を踏みつけた。

 

「…いいだろう。お前に、俺の最強の攻撃魔法を食らわせてやる!!」

 

 それにしても、もう痛みを感じることも出来なくなってきた…さすがに攻撃を食らいすぎたか。でも、時間稼ぎ(・・・・)をした甲斐はあった。ラスティローズは僕から少し距離をとった。僕を押えていたベルクーサスは、僕がもう抵抗する力もないと判断したのか、ラスティローズの方へと戻っていく…これなら、行ける!

 

「出でよ…ディンギルの――」

 

「妖精機銃、レブラホーン!!」

 

「何だと!?」

 

 上から魔力弾が無数に降ってくる。ラスティローズはそれによって体勢を崩し、逃げ場を封じられた。そして奴が何か動きを起こそうとした瞬間、地面から獣の腕が現れた。

 

「漢ぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!!!!」

 

「ぐほぁっ!?」

 

 豪快な一撃がラスティローズの顎にヒット。そのまま後方へと吹っ飛んでいった。

 

大黒柱拳(マックス・トーティスト)………!!」

 

「ぐ…なっ!?」

 

ラスティローズが起き上がる前に、今の僕が作ることが出来る最大の防御結界(ディフェンド)(トーテム)が僕の真上に出現する。サイズは…通常の数十倍。これだけのサイズがあれば、多分ギルドも半壊くらいには出来る。ラスティローズはそれを見て、驚愕の声を漏らした。

 

 巨大な柱の矛先が、ラスティローズの方を向く。

 

「べ、ベルクーサス!!奴を攻撃しろ…!!」

 

「そうはさせねぇ!!!うおおおおっ!!!」

 

 ベルクーサスをエルフマンさんが押さえ付ける。ここが正念場だと、その背中が語っていた。

 

「死に損ない風情がっ…!!」

 

「覚悟は、いいですね?」

 

「くっ……!!わ、我が左腕に―――」

 

「させるもんですか!妖精爆弾グレムリン!!」

 

「ぐっ!?」

 

 エバーグリーンさんの鱗粉爆弾…火薬のような鱗粉を相手の周囲に撒き散らして爆発させる技だ。見覚えはあるものの、多分一緒に仕事に行ってなかったらこんな技があったことも覚えていなかっただろう。

 

 とにかく、この隙を逃すもんか!!

 

「これで………終わりです!!はあーーーーーーっ!!!!」

 

 ラスティローズへと、巨大な柱が突き立てられた。地面を抉り、結界がラスティローズごと大地を穿った。

 

 

 

「ゴーシュ、無事!?」

 

「だ、大丈夫……ですよ」

 

 エバーグリーンさんが地面に倒れた僕へと駆け寄る。魔力の使いすぎと体へのダメージで…しばらく動けそうにない。

 

「ったく、無茶するぜ。俺たちがあの文字に気づかなかったらどうしてたんだ」

 

「いやぁ…お二人なら、気づくと思っていたので…」

 

 エルフマンさんの言う文字とは、二人を結界で囲んだ時に書いておいた術式用の文字のこと。今回は戦いながら術式を仕込むなんてこと出来なかったので、メッセージとして残した。エバーグリーンさんが読めるの知っていたし、敵に気づかれたとしてもなんて書いてあるか読めないんじゃないかと思ったわけだけど…ラスティローズは僕を痛めつけるのに夢中だったみたいだし、その心配はいらなかった。

 

 内容は、奇襲の作戦。エバーグリーンさんに上から攻撃してもらい、相手が上に気をとられている間にエルフマンさんが地中から一撃を与える。僕も奴を一撃で倒せるだけの魔力を込める為、ベルクーサスの攻撃をわざと防がずに食らっていた。

 

「それにしても、内容が無茶苦茶よ!あいつがあの技を出さなかったらやられてたじゃない!」

 

「ははは……まあ、倒せたから結果オーライってことにして下さい…」

 

 いや、攻撃が全部効かないことを見せてやれば必殺技使ってくるかなと思っていたんだけど…ベルクーサスの落下からの一撃で結界が粉砕されるとは思わなかった。でも、結構こっちの口車に乗ってくれたから何とかなった…よほど、昔の僕に痛い目を見せられたらしい。

 

「はぁ……全く、ゴーシュがここまで無茶するとは思わなかったわ」

 

「とりあえず、ベースキャンプに戻りませんか?あ、エルフマンさん、すみませんが…」

 

「ああ。運んでいってやる」

 

「ありがとうございます」

 

「ところで…ベースキャンプには今誰がいるんだ?」

 

「えっと…ミラさんにリサーナさん、レビィさんとガジルさん、そしてウェンディに…マスターです」

 

「マスターもいるのなら安心ね」

 

「いえ……マスターにガジルさん、ミラさんは重傷です。特にマスターがひどい状態で」

 

「そんな…!」

 

 エバーグリーンさんは驚愕を隠せない様子だ。…当然か。僕だってマスターがやられるなんて、マスターを倒すほどの敵がいるなんてあまり考えたくない。

 

「…姉ちゃん!!リサーナ!!」

 

「ちょ、まっ…!」

 

 とか考えていたら、いきなりエルフマンさんが倒れていた僕を担いで走り出してしまった…あ、やばい。これ、吐きそう……

 

「ちょっとエルフマン!!ゴーシュは怪我人なんだから―――」

 

「待ってろ姉ちゃーーーん!!リサーナぁぁーーー!!!!」

 

「…駄目ね、これは」

 

 喋ったら吐きそうだ…エバーグリーンさんも諦めてしまった。ベースキャンプまで持つかな…僕。

 

 

 っていうか……

 

 

 

 

 

 

 ウェンディに、どう話せば…?

 

 

 




サブタイトルですが、いずれ②もやります。

最近デジモンの新作を買いました!今はそっちばっかりやってます。ドラクエもちょこっとやってますけどね!

そして、いつの間にかお気に入り登録者数が20近く増えていました!本当にありがとうございます!これからも、どうかよろしくお願いします!!

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