「どうなってんだこりゃ…」
「皆!」
「ひどい…」
聞き慣れた声は、ナツさんとルーシィさんとハッピーのものだった。結界をすり抜けてベースキャンプに入った三人は、負傷者の皆が寝ている姿を見てそう口にする。
「ナツ」
「リサーナ!」
「リサーナ、良かった無事で!」
「ねぇ、ウェンディは来てないの?オイラ、探してくるよ!」
ハッピーが僕とリサーナさんにそう言った。姿が見えないから不思議に思ったんだろう。僕とウェンディが一緒にいたのは知っていただろうから。
「大丈夫、ウェンディに皆治療してもらったよ。一段落したから休んでもらってるんだ」
「そっか、なら安心ね」
「じゃあ、シャルルとリリーは?」
「二人もウェンディと一緒だよ」
「リサーナ、ゴーシュ…何があった?」
「…ここが
「リサーナさん…」
ナツさんの問いに、リサーナさんが説明してくれている。けど、途中から目に涙を浮かべ、声が裏返りそうになっていた。
「リサーナ、泣いちゃ駄目だ!元気なオイラ達が泣いちゃ駄目なんだよ!」
「ハッピー…」
「う、うん…そうだよね」
「……許さねぇ…絶対に、許さねぇ」
ナツさんが指を鳴らしながらそう呟いた。ナツさんがいてくれると、こっちまで心に希望の炎が灯ったような気になる…どんなに強大な敵が相手だったとしても、何とかなるんじゃないかと思わせてくれる。
「さらにマスターとカナが負傷か…」
「どうなってんだ一体…」
「グリモアの戦艦が、ここから東の沖にある。さっきシャルルと共に確認してきた。ここの守備を考えて、チームを二つに分けてみてはどうだろう」
「攻めのチームと、守りのチーム…」
「…」
ハデスのいる本艦へと攻め込むチームと、このベースキャンプを守るチーム。攻め込むチームの方は恐らく、いや確実にハデスと戦闘になる。マスターをここまで追い詰めるほどの強敵…魔法のバランスを考えて、現状で最高の攻撃を出せるチームにしておかないといけない。
「ナツさん、ルーシィさん!」
「ウェンディ!休んでなくて大丈夫なの?」
「はい!もう大分休みましたし」
「シャルル~!どこも怪我してない?」
「ええ、大丈夫よ」
「お前の方がボロボロだが…」
「…ゴーシュ、ちょっと来てくれ」
「あ、はい!」
ウェンディ達が合流し、再会を喜び合っていると、フリードさんから呼び出されそちらへと向かう。フリードさんはそのままベースキャンプの結界の外に出たので、何だろうと思いながら僕もそれに続く。
「よし、まずはここの結界を張り直してくれ」
「…?分かりました」
それはやるつもりだったので、言われた通りにする。さっきの武者の攻撃で結界が一つ消されていたので、ちゃんと五重に張り直す。まずは一度解除し…とにかく長く持続させられるように、さっきよりも魔力を込める。
「
「…よし。では、これから周囲に術式を用いた罠を張る。レビィやビッグスローにも声をかけるとしよう。急がねばナツのことだ、突撃してしまうかもしれん」
「…?ちょ、ちょっと待って下さい!なんで…」
「ああ、雷神衆の二人には術式の修正を頼むことがあってな。あいつも術式の書き換えが出来る」
「いや、そうじゃなくて…なんでナツさん達が行く前にやっておくんですか?確かに急いだ方が良いけれど…」
「お前もナツ達と一緒に行くからさ」
と、後ろからビッグスローさんに肩を組まれながらそう言われた。
「え…?」
「さっきの戦いで分かっただろう。お前の魔法は攻撃の瞬間を作り出す為に必要だ」
「それに連携を考えりゃあ、ナツ達のチームとよく一緒に仕事してるお前とウェンディが適任だろ」
「……」
…確かに、この二人がベースキャンプを守ってくれているなら、僕は攻め込むチームに参加した方がいいかもしれない。だけど……僕がいても役に立つことが出来るんだろうか。
ナツさんとゼロが戦っている場所に向かおうとした時に、こっちのジェラールに言われた言葉が引っかかってしまった。防ぐだけでも手一杯だったエンジェルとの戦いから、少しは成長したとは思う…思うけど、ハデスはゼロよりも強い敵だ。それを考えると……まだ、力不足ではないだろうか…?
「ゴーシュ、どうした?」
「その……僕が行って、役に立てるでしょうか…?マスターを倒すほどの相手なのに、勝てるでしょうか…」
「なーに、お前一人で戦うんじゃねぇからな」
「…!」
「ハデスに単独で勝つことなど不可能だ。だからチームで戦うんだ…
家族で……皆で、一緒に乗り越える…
「…分かりました。ナツさん達と、行ってきます!」
「それじゃ、早速とりかかろうぜ。レビィも呼ばねぇとな」
「ああ、急ごう」
向こうで話しているナツさん達の様子を見ると、まだ余裕はありそうだ。今のうちに、少しでも多く防御の術式を設置しておかないと!
☆
少し時間が経って、術式の設置が大体終わった頃。
「さてと!ハデスを倒しに行くぞ!!ルーシィ、ハッピー!」
「あいさー!!」
「あ、あたし…!?」
どうやらもう出発するようだ。一度作業を止めてナツさんの元へと集まる。
「同じチームでしょ?」
「分かってるけど、フリードとかの方が…」
「俺はここで術式を書かねばならん」
「守りは俺たちに任せとけ」
「…私も、ナツさん達と一緒に行きます!」
「ちょっと、ウェンディ!」
「ナツさんのサポートくらい出来ると思うし」
ウェンディがやる気…いや、好戦的と言った方がいいのか。ここまで戦う気満々なのは、普段を考えると本当に珍しいと思う。
「お、俺も行く…ガジルの敵をとってやらねばならん」
「…?」
リリーがそう言っているけれど…何というか、いつもと違うような…?
「雷が怖いんだってさ」
「へぇ…ちょっと意外」
「だからうるさいぞ!」
いつもはもっとクールな感じだから、今の雷に怯えているリリーはなんか可愛く思えるな。
「私は、フリードの術式を手伝う為に残る」
「私も…ミラ姉とエルフ兄ちゃんの傍にいるね」
「これで決まりだな…」
フリードさんが僕の方に視線を向ける。大丈夫…もう迷ったりしない!
「僕もナツさん達と行ってサポートします!」
「皆のことは必ず守るから、安心して行ってこい!」
「気をつけてね!」
「大分魔力が回復してきた!」
「残る敵は多分…ハデスのみ!」
「最後の戦いになりそうですね…!」
そうだ…これで、この戦いも終わるんだ。かなり手強い相手だったけど…ハデスさえ倒せれば…!
「オイラ達も頑張るぞーっ!」
「分かってるわよ!」
「エクシード隊、出撃だ…!」
シャルルも不満そうだったけれど、結局行くことにしたようだ。ウェンディが心配なら最初からそうすれば良かったのに。
「行くぞーーーーっ!!!」
「「「「「「おおーーっ!!」」」」」」
ナツさんに僕らも続……こうとしたら、ルーシィさんがリサーナさんに呼び止められていたので僕ら(ナツさん以外)は歩みを止める。
「……」
「…えっと…何?」
「あ、ううん。何でも無いの」
「……僕がよく攻めのチームに参加したな、とか思ってるんでしょ」
「…バレちゃった?」
「ウェンディも分かりやすいんだよ」
「ゴーシュほどじゃないけどね」
「なんだそれ…まあ、守りに参加しようとしてたけどね…あの二人に背中押してもらったから」
「…そっか」
「なんで笑ってるの?」
「…何でも無いよ!ルーシィさーん、ナツさん行っちゃいますよーっ!」
…成長した、って言いたいのかな。今までの僕だったら守りを重視する考え方してたと自分でも思うし。今もしてるけど…自分だけで守るんじゃ無く、家族全員で乗り越えるってことが優先になったからかな?
「お待たせ!それじゃ、行こう!」
「「はい!」」
☆
敵の本艦に向かう途中で、グレイさんとエルザさんがいた。
「俺は…いつも誰かに助けられてばかりだな」
「私も同じだ」
エルザさんが顔を上げ、グレイさんも続けて顔を上げる。そこで、僕たちに気がついたようだった。
「皆…」
「グレイ!」
「エルザさん!」
「…俺も同じだ!!」
「…!」
「二人とも、これが最後の
「ありがたい」
「助かる…」
あれだけあったのに、もう残っていない。ベースキャンプにならまだいくつかあるだろうけど、あれは負傷者の皆の分だ。だから、もう魔力の回復は出来ない。
「行くぞ!!」
「おう!!」
「ああ!!」
これで、最強チームが揃った。もう、心配ない。皆でハデスを倒す!
次がいつになることやら…今月はもしかすると先月より更新出来ない可能性も…
そういえば今更なんですが、タグをいくつか追加してます。随時増えたり減ったりすると思います。