FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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第64話  闇の力

 ルーシィさんに渡された時計の部品の在処が描かれている地図に示された地点へとようやくやって来ることが出来た。巨大な湖が高い場所と低い場所に一カ所ずつあり、どちらの湖の上にもアーチ状に岩がいくつも連なっている。…恐らく、この二つの湖の何処かに時計の部品がある。

 

「リサーナ、大丈夫かしら?」

 

 現在、リサーナさんには湖の中を探索して貰っている。かなり広大なものが二つあるので、しばらく時間がかかるのは仕方ない。それはミラさんも分かっているだろうけど、やっぱり心配になってしまうんだろう。エドラスでのことがあったのだから尚更だし。

 

「でも水中を自由に動けるの、リサーナさんしかいませんし」

 

「こうなったら俺が…!」

 

『まだ十分くらいだし、もうちょっと待ってもいいんじゃないかな~?』

 

「そうね、もうちょっと待ってみましょうか」

 

 多分、エルフマンさんが飛び込んでもあまり意味が無いと思う。

 

 

 

 それからさらに数分経って、高い方の湖の水位が徐々に下がってきているのに気がついた。何かの仕掛けを作動させることが出来たらしい。やがて湖の水は最終的に全てなくなり、下の湖の水位が上昇した。高い方の湖の底だった場所に立っているリサーナさんの傍には、何というか…リサーナさんと同じくらいの大きさの、お風呂の栓みたいなものがあった。折角湖という自然にこんな人工物があると違和感が…。

 

「ねぇ、あれ!」

 

 全員で探索することになっていた為デジモン達も出していたのだが、プロットモンが何かに気がついたらしい。その方向を見ると、明らかに人工の巨大な石版に埋め込まれていた丸い物体があった。多分あれが時計の部品だ。

 

「お手柄ね、リサーナ!」

 

「最近ちょっと存在感が薄かったから、良いアピールになったかなぁ…なんて」

 

「どういう意味だそりゃ…」

 

「ねぇねぇ、私は!?」

 

「はいはい、プロットモンもお手柄だったね」

 

「さ、部品を回収してギルドに戻りましょ!」

 

 僕はプロットモンの頭を撫でる。抱っこは落ち着かないから嫌らしいけど、頭を撫でられるのとかは嬉しいらしく今も気持ち良さそうに目を細めている。その間にエルフマンさんが埋め込まれている部品を掴み、難なく回収した…と思ったら、なぜかそのまま何処かへぶん投げた…あれ、なんで?

 

「ちょ、何処投げてんの!?」

 

「あれ…」

 

 部品を再度回収しようと動こうとしたが、僕は部品が投げ飛ばされた方向に誰かいることに気がつき臨戦態勢に入る。その人物を見て、僕は思わず顔をしかめた。

 

「カハッ、ご苦労さん。おかげで何の苦労もなく部品を頂くことが出来たじゃん」

 

「あなたは…!」

 

「レギオン隊のマリー=ヒューズ!」

 

「私達を付けていたのね」

 

「その通り。お前らに部品を探させ、それを横取りすれば楽ちんじゃん!アッタマ良い~!ま、考えたのはサミュエルだけどさ~」

 

 マリー=ヒューズ…ギルドを襲ってきた時は散々だったけど、今回はそうはいかせない。リベンジしたいと思っていた所だし!

 

「またテメェかよ!部品を返せ!」

 

「ふっ!」

 

 エルフマンさんが右腕を接収(テイクオーバー)して正面から突っ込んでいった。その時点でこの後どうなるのか分かった僕は、僕とミラさん、リサーナさんを覆うように防御結界(ディフェンド)円蓋(ドーム)を展開した。案の定、マリー=ヒューズは指揮術でエルフマンさんを操り僕らを攻撃させた。

 

「わ、悪ぃゴーシュ!」

 

「大丈夫です!」

 

「そっか、お前もいたじゃん。ま、何度やっても同じこと。このタクトがある限り、お前らはマリー=ヒューズの操り人形じゃん!」

 

 また僕を操られてしまったらこっちの攻撃を防がれてしまうかもしれない…っていうか、僕がいたことに気づかなかったってどういうことだ。

 

 と、丁度その時だった。目の前に転がっている時計の部品に何か文字が浮かび上がった。これは、ルーシィさんのお父さんの遺品にも同じ文字が…!

 

「共鳴か…そろそろそれを持ち帰んないと不味いじゃん」

 

「共鳴…?」

 

「渡しはせん!それが漢!」

 

「んじゃ、兄弟同士で傷つけ合う?」

 

「貴女、間違ってる!男女混合の兄弟のことって、正しくは兄弟姉妹って言うのよ」

 

〔へぇ~〕

 

 ってあれ?なんでこのタイミングで豆知識講座をやったんだろう?ちゃっかりマリー=ヒューズも聞いてるし。

 

「…って、んなこたぁどうでもいいじゃん!とにかく部品は貰っていくよ!」

 

 …良かった、ルーシィさんみたいなツッコミ出来る人が目の前にいて。エルフマンさんはともかく、ミラさんとリサーナさんは結構マイペースだから話戻すの大変なんだよね…

 

「何故そんなことをするの?」

 

「何故?そんなの知るわけないじゃん。大司教様の仰る通りにすれば全てが上手くいくじゃん!」

 

「は…?」

 

「言いなりになってるだけなら!」

 

「ただの操り人形じゃない!」

 

「っ!」

 

 

 

ミラさんの一言でマリー=ヒューズは目を見開き、真っ直ぐミラさんを見つめる。なんか、雰囲気が変わった…?

 

 

 

「…あっそ。じゃあ、アンタも操り人形にしてやろうじゃん!!」

 

 

 

 そう言ってマリー=ヒューズがタクトを構える。が、今までと違ってタクトは異様な魔力を放っていて、その手みたいな形状が少し変化する。そして、彼女が僕らの方にタクトを構えた直後。

 

 

 

「うあ、あぁ…!?あ、あああぁっ!!」

 

 

 

「姉ちゃん、どうした!?」

 

 

 

「ミラ姉!?」

 

 

 

「これは…!?」

 

 

 

 ミラさんが苦しみ始めた…だが、その苦しみ方が異常だった。やっぱり今までと違う指揮術なのか…!?

 

 

 

「指揮術第二楽章…禁じ手にされてるけど、特別に見せてやるじゃん!!」

 

 

 

「ミラ姉の体から…!」

 

 

 

「サタンソウルが!?」

 

 

 

 ミラさんはそのまま倒れ込んでしまう。どうやら気絶しただけみたいだけど…ミラさんから出てきたサタンソウルは、ゆっくりとこちらを振り向く。もし、あの第二楽章とやらがあのサタンソウルを操り、しかもミラさんと同等の強さなんだとしたら…!

 

「くっ…ビーストソウル!!」

 

「エルフマンさん!!」

 

 こちらへと接近するサタンソウル。それに対抗する為、エルフマンさんも全身接収(テイクオーバー)を使用し肉弾戦を始める…が、エルフマンさんの攻撃は躱され、懐に飛び込んだサタンソウルが魔力を解放。それだけでエルフマンさん遥か上に位置するアーチ状の岩に叩きつけられる。間髪入れずに、サタンソウルは魔力の塊をエルフマンさんへと直接叩き込んだ。

 

「そんな…どうすればいいの!?」

 

「すっげぇ、最高じゃん…大司教様に逆らう奴は皆悪い奴。悪い奴には、罰を与えるじゃん!!」

 

「…皆!」

 

 今のマリー=ヒューズはサタンソウルを操っている為、隙だらけだ。確かあのタクトは、一度に一人しか操ることが出来ない。禁じ手だとしても、恐らくそれは変わらない。だったら、エルフマンさんがサタンソウルを引き受けてくれている今がチャンスのはず!

 

 僕の声に合わせて、ドルモンとプロットモンが正面から突っ込み、パタモンは低空で右方向へ向かう。

 

「パピーハウリング!」

 

「うるさっ……!」

 

「メタルキャノン!」

 

 プロットモンの技で怯んだマリー=ヒューズに、ドルモンは僕が一瞬だけ展開した弾性結界(バウンド)を踏みパタモンと反対側、つまり左側へと一瞬で回り込みつつ鉄球を撃ち込んだ。マリー=ヒューズは咄嗟にしゃがみ込んで躱す。

 

「エアショット!」

 

「くっ…面倒じゃん!」

 

「…!皆、戻って!」

 

 パタモンの攻撃も紙一重で躱し、タクトを振ったのを確認したので一度全員を僕の元まで戻す。そして、上空から僕の目の前に着地した影が一つ。僕はその着地の瞬間に合わせて攻撃した。

 

柱百烈拳(ハンドレッド・トーティスト)!!」

 

「ゴーシュ、駄目!」

 

「くっ!?」

 

 (トーテム)による連続攻撃を叩き込んでいる最中に聞こえたプロットモンの叫び。その次の瞬間、(トーテム)の内の一本が僕の方へと(・・・・・)飛んできているのに気がついた。僕はそれを横に飛んで間一髪躱すことに成功する。しかし、攻撃はそこで終わっていなかった。

 

水晶結界(クリスタル)外装(アームド)…ぐはっ!?」

 

「ゴーシュ!」

 

(トーテム)を両手で持ってハンマー投げの要領で回転し防いだサタンソウルが僕らへと投げつけてきたのだ。そしてそのままそれを目隠しにして急接近し、僕の鳩尾目がけて一発撃ち込んできた。水晶結界(クリスタル)を纏ったけど、いとも容易く砕かれた…!

 

「うわっ!」

 

「パピーハウリング!」

 

 サタンソウルは近くにいたドルモンを攻撃し、ドルモンはしゃがんで回避する。その時、プロットモンが至近距離でのパピーハウリングで怯ませようとしたが…不味い!

 

「えいっ!」

 

「きゃうっ!?」

 

 サタンソウルが怯むことなくプロットモンへと殴りかかろうとしたが、ギリギリ間に合ったパタモンがプロットモンを横に押して二体とも回避に成功、ドルモンも一度距離をとった。

 

 サタンソウルは人ではなく、マリー=ヒューズが操っている魔力そのもの。生物ではないのだから、怯むことはない。

 

「カハッ!すっげぇ強ぇ!そんな小細工したって無駄じゃん?」

 

「あ、ありがとパタモン…」

 

「どういたしまして~」

 

「やっぱりミラさんの魔法を操ってるだけあって強い…!」

 

「ここは俺が進化して…!」

 

「…!ヤバッ、皆散って!」

 

 サタンソウルの次の攻撃は近接攻撃ではないことに気がつき、デジモン達を散開させ僕自身は防御結界(ディフェンド)で防御壁を張る。避けるという選択をしなかったのは、僕の後ろには気絶したままのミラさんと彼女を守っているリサーナさんがいたからだ。あの両手の魔力…あんなのを食らったら一溜まりも無い。防御結界(ディフェンド)でも持たないかもしれないけど、せめてリサーナさん達が逃げる隙を…!

 

「ゴーシュ、避けて!!」

 

「メタルキャノン!!」

 

「エアショット!!」

 

 ドルモンとパタモンの攻撃を物ともせず、サタンソウルは両手の魔力を一つに合わせてこちらへと放とうとする。その時だった。

 

「漢ぉぉぉぉっ!!!」

 

「エルフマンさん!」

 

「エルフ兄ちゃん!」

 

 真上からサタンソウルへと殴りかかるエルフマンさん。サタンソウルはそれも躱してしまうが、そのまま立て続けにエルフマンさんが近接戦を持ち込む。さっきのように大振りではなく、防御しながら他に注意を向けさせないようにする動き。それが時間稼ぎであることを察し、僕は急いでリサーナさんの方へと走った。

 

「リサーナさん、ミラさんを安全な場所へ移動させます!」

 

「わ、分かったわ!」

 

 浮遊結界(バルーン)にミラさんを乗せ、リサーナさんは接収(テイクオーバー)で鳥人間のような姿へと変身しミラさんを運ぶ。少しでも遠くへ、巻き込まれない場所へ。

 

 

 

「ぐおっ!」

 

 

 

「エルフマンさ――!?」

 

 

 

「チャンスじゃん!やれ!!」

 

 

 

 サタンソウルに吹き飛ばされたエルフマンさんに巻き込まれる。そして先程と同じように両手に魔力を溜め、それを一つに合わせ放たれようとしている…ヤバい、このままじゃ二人一緒にやられる…!

 

 

 

「ダメーーーっ!!」

 

 

 

 放たれる直前に、プロットモンがサタンソウルの両手へと渾身の体当たりをして軌道が逸れる。しかし、それは自殺行為に等しい。軌道を変えることは出来るのかもしれないが、プロットモン自身は自分から魔力の中に突っ込んでいるのだから。

 

 

 

「うあぁっ……!!」

 

 

 

「プロットモンっ!!」

 

 

 

 こちらに吹っ飛ばされたプロットモンを抱きとめる。明らかに戦闘不能だ…早くデジヴァイスへ戻してあげないと…!

 

 

 

「プロットモン、デジヴァイスに――!」

 

 

 

 デジヴァイスを操作しようとしたその時、ピシッ、という音がした。音がしたのは、プロットモンの首にあったホーリーリング。今の攻撃のせいだろう、大きな罅が入っている。罅は全体へと広がっていき、破片となって崩れ落ちた。

 

 

 

「うっ…!」

 

 

 

「プロットモン…?」

 

 

 

「くっ…あぁ…!!」

 

 

 

 そして、僕は気がついた。

 

 

 

 プロットモンの体が、光を放っていることに。

 

 

 




というわけで次回、冒険が進化する。


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