FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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大変遅くなりました!一週間以内ギリギリですみません!


それでは、どうぞ!


第67話  哀れな傀儡

 ゴーシュと彼のパートナーデジモン達の攻撃に晒されたバイロ。ブラックテイルモンのキャッツアイによって動きを止められてしまったことで防御すらもままならず、バイロ本人も食らうことを覚悟していた。

 

しかしその攻撃がバイロに当たることは無かった。ドルガモンの鉄球も、ユニモンの光球も、そしてゴーシュの放った数十本の結界の柱も、バイロの直前で全てがあらぬ方向へとその軌道がねじ曲げられた(・・・・・・・)

 

「え!?」

 

「今のは…!」

 

 何が起きたのか把握できずにいる中、無限時計の部品六つ全てが淡い光を放ち始める。

 

「…!」

 

「何だ!?」

 

「姉さん、見て!時計が…!」

 

「何が…何が起こってるの?」

 

 異様な魔力を放ちながら、全ての部品が何処かへと飛んでいく。まるで、何かに吸い寄せられるかのように。そうして部品達は合わさって無限時計が組み上げられ、辺り一帯、否世界中に向けてその音を響かせる。

 

「うるせぇぞアレ!」

 

「目覚まし時計?」

 

「墓所が崩れるぞ!」

 

「何なの…これ?」

 

「おい、ボーッとすんな!急ぐぞ!」

 

 崩壊を始めた礼拝堂から脱出するべく、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々は脱出しようと動く。そんな中、ウェンディはゴーシュとデジモン達の元へと歩み寄る。

 

「ゴーシュ、皆!大丈夫?」

 

「俺達は大丈夫!」

 

「何今の!?攻撃が変なとこ行ったよ!?」

 

「何かの魔法かな?」

 

「…多分。でもあの魔法って…?ナツさん?」

 

 ゴーシュは先程の魔法について考えていた。バイロが無効化したわけでも無いし、あの状況であんなことが出来る人物が今この場にいるとは思えない。だとしたら、あれは第三者によって割り込まれたということ。

 

 そこまで考えた所で、ナツの様子がおかしいことに気がついた。彼はジッと無限時計の方を見つめている。いや、正確には無限時計の近くに立っていた者達(・・・・・・・・・・)を見ていた。

 

「何だ、この匂い…!間違いねぇ、アイツらが…いる!」

 

こちらから見て丁度無限時計の真下の建物。その中から、六人の人影が現れる。彼らの姿を見て、ナツやルーシィ等といった彼らと面識のあった者達が反応する。

 

「な、コイツら!」

 

六魔将軍(オラシオンセイス)!?」

 

「だよね…?」

 

「随分雰囲気違くねぇか?」

 

「メンバーも違うようだな」

 

 六魔将軍(オラシオンセイス)とは、かつてナツ達が参加した連合軍がニルヴァーナを巡り争った相手である。当時は妖精の尻尾(フェアリーテイル)ではなく化猫の宿(ケットシェルター)に所属していたウェンディ、シャルル、ゴーシュの三人も連合軍として戦った。

 

六魔将軍(オラシオンセイス)は名前の通り、六人の魔導士のみで構成された闇ギルドであり、三大闇ギルドのバラム同盟の一角を担っていたギルドだ。それ即ち、たった六人だけで闇ギルド最強の一角となるほどの実力を持っていた。

 

しかし、エルザが言った通り七年前に相対した時とはメンバーが入れ替わっている。その入れ替わりであろう巨大な熊のぬいぐるみのような者が胴体に取り付けられたスロットを回し始め、スロットの目に六魔将軍(オラシオンセイス)のギルドマークが揃う。

 

「ニョホホホホ!それ来た激アツ!正しくこれぞ六魔将軍(オラシオンセイス)!いえいえいえいえ、新生六魔将軍(オラシオンセイス)とお見知り置き下さいませ!」

 

〔新生六魔将軍(オラシオンセイス)!?〕

 

「そう、如何にも。我らが新生六魔将軍(オラシオンセイス)

 

「お前、ミッドナイトか!?」

 

「その名は遠い過去の物。ブレイン二世と記憶して貰おうか」

 

 ミッドナイトとは、ニルヴァーナにてエルザ、ジェラールと相対した者。彼の魔法である屈折(リフレクター)はあらゆるものを屈折させることが出来る。光を屈折させて幻を見せることや、衣服などの身につけているものを屈折させて相手を締め付けること、また魔法を屈折させることも可能だ。

 

(そうか、さっきのはミッドナイトの仕業か…!)

 

「何が二世だ!のこのこ出てきやがって!どういうつもりだぁ!?」

 

「我が望みは一つ…父の望みを果たすこと。形あるもの全ては破壊されるべし」

 

「まだそんな寝言を言っているのか!」

 

「フン…レギオン隊、妖精の尻尾(フェアリーテイル)。お前たちの役目は今、終わった」

 

 ミッドナイト、否ブレイン二世がそう言った直後、彼らの真上にあった無限時計の魔力が変化する。それぞれの部品には六魔将軍(オラシオンセイス)のギルドマークが浮かび上がる。

 

「何じゃありゃ?」

 

「ダン、渡してはならん!」

 

「合点承知ぜよ!」

 

「冗談じゃねぇ!そりゃこっちの台詞だ!」

 

「邪魔すんな!」

 

「蛆共が…群がりおって。やれ」

 

 ブレイン二世がそう言った直後、身の丈ほどの鎌を持った、マントで顔を隠している者が前に出る。空中で胡座をかいているその者の目の前に魔法陣が展開され、強烈な竜巻がナツ達に向けて放たれた。

 

「火竜の咆哮!!」

 

 応戦するべくナツが口から炎を放つ。炎と竜巻はぶつかり合い、竜巻が炎を打ち消した。

 

「なっ…!」

 

「そんなもん、効かんぜよ!!…ぐおっ!?」

 

「「ぐああ!!」」

 

 ダンが魔盾リコシェを構え竜巻を跳ね返そうとする。しかし彼の目の前に現れた者によって攻撃され体勢を崩されてしまう。結果、ナツとダンは竜巻に飲み込まれてしまった。

 

「ナツ!…くっ!」

 

「こいつは…レーサー!」

 

 ナツ達へ駆け寄ろうとしたグレイとエルザだったが、先程の一瞬でダンに牽制し竜巻に飲み込まれる前に移動していたレーサーが二人の前に立ちはだかる。彼は七年前の戦闘では自分の周囲の範囲内のスピードを下げる魔法を使っていたが、現在はそれとは別の魔法を使っている。

 

「ダン、下がれ!君もだ」

 

「んだとっ!」

 

「私が如何なる魔法も無効化し…!?」

 

 バイロの周辺の空間がねじ曲がった瞬間にドス黒い魔力がバイロ達を襲う。ブレイン二世がバイロの隙をついて放った攻撃だ。バイロの魔法が及ぶ範囲内をねじ曲げることで一瞬だけ発動を遅らせたのだ。

 

「よぉ」

 

「…!お前は、コブラ!」

 

「久しいな、天空の巫女に猫、そして結界魔法の小僧。ちょっと聞きたいことがあるんだけどよ…何だ、知らねぇか」

 

 ゴーシュ達の目の前へとやって来たのはコブラ。彼は聴く魔法、遠く離れた人々の会話や戦っている相手の筋肉の動き等を聴くことが出来る魔法を扱う。それは人の心の声も同じだった。

 

「…何が目的ですか」

 

「いや、知らねぇなら用は…!」

 

 ゴーシュが背後で作り出した水晶結界(クリスタル)がコブラを攻撃するが、コブラは真横に体を反らして避ける。

 

「テメェの声は聞こえねぇんだったな。何の魔法だ?」

 

「…知りませんよ。こっちが聞きたいくらいです」

 

 これはゴーシュの本音だった。自分の声を聴くことが出来ないのは好都合ではあったが、自分が何かをした覚えは全くない。ダフネが何かしらの魔法を使ってそうしているのではないかと思っているのだが、見当はまだついていない。

 

「まぁ、良い。天空の巫女が知らねぇならテメェもそうだとは思うが…念のためだ。キュベリオスを知らねぇか」

 

「…キュベリオス?」

 

「その反応、やっぱ知らねぇか…なら、消えろ」

 

「うっ!?」

 

「うるさっ…!」

 

「くっ…!」

 

「…!?防御結界(ディフェンド)円蓋(ドーム)!」

 

 コブラがそう呟き指を鳴らした途端、轟音がゴーシュ達を飲み込む。轟音は今いる空間内にいる全てのものを飲み込み、超振動波となって攻撃する。妖精の尻尾(フェアリーテイル)やレギオン隊だけでなく新生六魔将軍(オラシオンセイス)もその攻撃の範囲内だが、ブレイン二世の屈折(リフレクター)によって空気がねじ曲げられたことで新生六魔将軍(オラシオンセイス)は守られている。

 

 コブラに気づかれないよう接近していたデジモン達だったが、真っ先にその超振動波を食らい吹っ飛ばされてしまう。ゴーシュも攻撃のタイミングを予測し防護壁を展開するも容易く破壊されるのだった。

 

 

 

 …強い。七年前とは比べものにならないくらいに。コブラも、レーサーも、ミッドナイトも、全員が圧倒的に強くなっている。

 

 さっきのコブラの衝撃波によって皆ダメージを負い、天井からは岩やら建物の一部が崩壊し落ちてくるのでそれの対処に手を取られている間にレーサーが攻撃を仕掛けてくる。ミッドナイトも以前のブレインが使っていたあのドス黒い魔力による攻撃は、ダンの魔法を弾く盾でも防げないみたいだ。ジャックポットとグリムリーパーもかなり強力な魔法で全体的に攻撃している。

 

 でも、どうやってここまで強くなったんだ?全員評議員に捕らえられ、魔力も使えない牢の中にいたはず。そんな中で特訓など出来るわけも無い。それどころか、身体的には衰えてしまうはずなのに。

 

「…エンジェル、待て」

 

「…?どうした。我々には成さねばならない事があったはず。此奴ら相手に時間を無駄にしている暇はない」

 

 エンジェルが何かの魔法を使おうとしたその時、ブレイン二世がそれを止めた。

 

 

 

「その通りだ。時間をこれ以上かけるつもりはない。ただ…」

 

 

 

「…なっ!?」

 

 

 

 ブレイン二世が僕へと手を伸ばし、僕が着ていた衣服をねじ曲げ締めつけ始める。そしてそのまま徐々に空中へと連れて行かれる。ま、まずい、これじゃ身動きが…!

 

 

 

「ゴーシュっ!」

 

 

 

「ユニモン、行こう!」

 

 

 

「ああ!」

 

 

 

「私も行くっ!」

 

 

 

 ユニモンの背中にブラックテイルモンが乗り、ドルガモンとユニモンが僕を助けようと翼を広げる。

 

 

 

「…!駄目、だ!み、んな…避け……!」

 

 

 

「ほい来た!雷ボーナス~!よいしょーっ!!」

 

 

 

〔うわぁっ!〕

 

 

 

「皆…!」

 

 

 

 デジモン達が落雷によって攻撃されてしまった。っていうか、僕を何処に連れて行こうとしてるんだ…!?

 

 

 

「テメェ、ゴーシュを離せ!」

 

 

 

「君は下がれと言ったはずだ!」

 

 

 

「いいからどけタコ野郎!」

 

 

 

 ナツさんが僕を助けようとして飛び出そうとしたが、バイロがまたナツさんに後ろに下がるように言っている。そうか、バイロの魔法ならタイミングを見計らって僕を解放して奇襲みたいなことも出来るかも…!

 

 

 

「グリムリーパー」

 

 

 

「ああ…」

 

 

 

「かはっ……!」

 

 

 

 ナツさんと新生六魔将軍(オラシオンセイス)との間に連れて行かれた僕へ向けて、グリムリーパーの竜巻が僕を飲み込み、斜線上にいるナツさん達にも再び襲いかかる。

 

僕は防御結界(ディフェンド)で自分を守ろうとしたけれど、ブレイン二世の手によって首を絞められ、魔法に集中することが出来ない。

 

 

 

「二度も同じ手は効かん!!」

 

 

 

 しかし、この攻撃はバイロがいる為無駄に終わる。僕ごと魔力無効化をかければ攻撃自体を無効化出来るのだから。

 

 

 

 そう、無駄に終わるはずだった。

 

 

 

「ぐっ…ぅ……!?」

 

 

 

 バイロが攻撃を無効化させた瞬間、僕は意識が遠のくような感覚がした。それはブレイン二世の攻撃のせいではない。バイロの無効化で僕は解放(・・)された。

 

 

 

「最後の余興だ…哀れな傀儡を解き放ってやろう」

 

 

 

「う、あアア…!!アアアアアアアアアアアアっ!!!」

 

 

 

 

 

 

自分自身から溢れ出した魔力に囚われ、意識が…遠のいていった。

 

 

 

 彼の体から緑色の魔力が溢れる。それはとても膨大で、彼の姿が薄らと人影程度にしか見えないほど濃い魔力だった。その人影は苦しんでいるように見える。彼から発せられている奇声も相まって、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々はそうにしか見えなかった。

 

「な、なんだ!?」

 

「存分に楽しむが良い、レギオン隊。そして妖精達よ」

 

「待て!!」

 

 グリムリーパーの竜巻により視界が遮られ、竜巻が収まった頃には新生六魔将軍(オラシオンセイス)は姿を消していた。

 

「くっ、逃がしたか…!」

 

「おいおっさん!!ゴーシュに何をしやがった!?」

 

 彼がこうなる前に敵の攻撃に飲み込まれ、その後に目の前にいるバイロが何かをした途端苦しみ始め、彼から膨大な魔力が溢れ出したのだ。グレイはバイロへと近づき胸倉へと掴みかかる。

 

「…私は敵の攻撃を無効化させたまでのこと!攻められる謂れはない!」

 

 そう、バイロはただ敵の攻撃とその渦中にいた彼に向けて魔法無効化を使っただけ。寧ろ先程まで敵対していた者を救おうとしたのだ。

 

「じゃあこれはどういうこった!?どう見ても苦しんでるじゃねぇか!」

 

「落ち着け、グレイ」

 

「離しやがれ、リオン!」

 

 興奮しているグレイを蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のリオンが鎮める。どこからか流されていた今回の妖精の尻尾(フェアリーテイル)の行動の目的、無限時計の回収に協力する為にグレイとジュビアの元へと合流していた。最も彼には別の目的もあったのだが今は置いておく。

 

「こいつは確かに魔法を無効化しただけだ、それ以外の魔法は使っていない。そうだろう?」

 

「…まさか」

 

 その時、エルザが何かに気づいた。彼がああなったのは初めてでは無い。あの時(・・・)も今程ではないが同じように魔力が溢れ出していたのだ。

 

「エルザ、何か分かったの?」

 

「お前も前に見たことがあるだろう…ハデスとの戦いの中で、ゴーシュが今のような状態になったのを」

 

「…!」

 

 ハデスの圧倒的な魔力によってウェンディが消されたと思われた時、彼は自我を失いかけた。最愛の人が死んでしまったというショックで絶望した。その時の暴走はルーシィの星霊であるホロロギウムによって救われたウェンディの声(正確には彼女の声を通訳したホロロギウムの声)で自我を取り戻した為収まった。

 

「ウェンディ、ゴーシュが他にああなったことは?」

 

「…私は見たことがありません。ゴーシュも何も覚えていないようでしたし…」

 

「なるほど…ゴーシュも覚えていない(・・・・・・)のか」

 

「どういうことだよ!」

 

 ナツがエルザに問いかける。ナツはここまでの話がほとんど理解出来ていないが、ハデスとの戦闘時にその場にいた最強チームとウェンディは彼の異変を目の当たりにしているのだ。気になるのは当然だった。

 

 

 

「魔法が無効化された途端ゴーシュが暴走した…つまり、ゴーシュには暴走を抑える為の魔法(・・・・・・・・・・)がかけられていたということだ。本人も知らない内にな」

 

 

 

「…!皆、あれ!」

 

 

 

 溢れ出していた魔力の中から彼の姿が現れる。だが、その姿は異形だった。彼の全身の皮膚は魔力と同じ緑色になり、彼の手足の爪は鋭く尖っている。髪は濃い緑色へと変化していた。

 

 

 

「ゴーシュなの…?」

 

 

 

「おい、しっかりしろ!」

 

 

 

「やはり、あの時と同じ魔力…!」

 

 

 

「ならば…何!?」

 

 バイロがもう一度ゴーシュに向けて魔法無効化を使おうとしたその時、ゴーシュは既にバイロのすぐ目の前に移動していた。ギリギリ反応したバイロは自身の武器である杖で辛うじて防ぐ。

 

「ゴーシュ、止めて!」

 

 ウェンディの声でも彼は反応を示さない。バイロへとその爪で引き裂こうと攻撃を続けている。その二人の間に割り込んだ者がいた。

 

「おい!どうなってんのか説明しやがれ!」

 

「ガジル!?」

 

 右手を剣に変化させたガジルがゴーシュの攻撃を受け止める。少しだけ鍔迫り合いのように拮抗していた両者だが、鉄竜剣に罅が入ったことでガジルが徐々に押され始める。

 

「なっ…俺の鉄竜の鱗を…!」

 

「はっ!」

 

 煉獄の鎧へと換装したエルザがゴーシュに斬りかかり、ゴーシュは大きく跳躍し回避する。

 

「ガジル!」

 

「問題ねぇ…おい、火竜(サラマンダー)、ガキ!」

 

 

 

 右手を押さえながらガジルは駆け寄ってきていたレビィを制止し、ナツとウェンディに向かって話しかける。

 

 

 

「は、はい!何ですか?」

 

 

 

「お前ら…分かってんだろうな?あれは、ただの魔法じゃねぇ」

 

 

 

「え…?」

 

 

 

 ナツはゴーシュに、ある既視感を感じていた。その既視感がいつ見たものなのか思い出した。それは、幽鬼の支配者(ファントムロード)との戦いでガジルと相対した時や六魔将軍(オラシオンセイス)のコブラと戦った時だ。この二人には、ある特徴があった。ガジルは滅多に無いが、腕や全身を竜の鱗に変化させることが出来るのだ。

 

 今目の前にいるゴーシュの皮膚は、正にそれだった。

 

 

 

「まさか、ゴーシュもなのか…?」

 

 

 

「…今まで何で感じなかったのか分からねぇが、間違いねぇ」

 

 

 

「あの、どういうことですか…?」

 

 

 

 二人がある確信へと至っている中、ウェンディは何が何だか分からなかった。だがそれも仕方の無いことだ、彼女は自分と同じ存在(・・・・・・・)に相対した事は殆ど無いのだから。

 

 

 

 と、その時。またもゴーシュは動き始めた。彼は自信の魔力を体内に溜め始める。その動きに既視感を覚えたのはナツ達だけではない。グレイやルーシィやエルザも、どういうことなのか分かっていなかったウェンディも、ある事実へと辿り着く。

 

 

 

「そ、そんな…!」

 

 

 

「火竜の…!」

 

 

 

「鉄竜の…!」

 

 

 

「ちょっと二人とも…!きゃっ!?」

 

 

 

 ルーシィがゴーシュに向けて攻撃しようとしていたのを見て慌てて止めようとした。二人以上の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が同時に咆哮を放つ。同じ滅竜魔法だからなのか、その威力は一人の時とは比べものにならない程跳ね上がる。いくら暴走しているからといって、仲間に放つ威力の攻撃ではないからだ。

 

 だがその制止の声は最後まで言葉にならなかった。ゴーシュが今目の前にいるナツとガジルと同じ動作で魔力を溜め、解き放つ。

 

 

 

「「咆哮!!」」

 

 

 

 ゴーシュの攻撃を、ナツとガジルの二人の咆哮がぶつかり合う。やや拮抗し、ナツとガジルの咆哮がゴーシュのそれを押し返し始める。そしてついにゴーシュが押し負けて飲み込まれた。

 

 

 

「…やっぱりか」

 

 

 

「ナツとガジルの二人がかりでの攻撃に僅かだが拮抗しただと…」

 

 

 

「間違いねぇ。ゴーシュは…滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だ」

 

 

 

 ゴーシュは何事も無かったかのように起き上がり、右手に魔力を集め始めた。

 

 今のゴーシュは身体能力が桁違いに上昇している。ガジルの鉄竜の鱗を傷つける程の攻撃力だ、まともに攻撃を食らってしまえば致命傷は間違いないだろう。魔力を一点に集めているとなれば、今まで以上の威力を持つ攻撃が放たれるのは明白だ。

 

 

 

「パワーメタル!!」

 

 

 

「ホーリーショット!!」

 

 

 

「とりゃぁーっ!!」

 

 

 

 タイミングを狙っていたのか、いつの間にか空へと飛んでいたデジモン達。鉄球をゴーシュは跳躍して躱し、光球は体を反って躱す。しかしゴーシュの真下に潜んでいたブラックテイルモンの一撃は避けきれなかった。腹部を思いっきり殴り、彼の服を掴んで地面へと叩きつける。

 

 

 

「よし、今だ!ゴーシュを拘束するぞ!」

 

 

 

「待ってください!!お願いです…!!」

 

 

 

「…すまない、ウェンディ。急がねば時間が無いんだ」

 

 

 

 ゴーシュとの戦闘中も崩落は続いている。急いで脱出しなくては、全員生き埋めになってしまう。

 

 

 

「でも、どうする?生半可な拘束じゃ破られるぞ」

 

 

 

「それに、意識もあるのか分かんないし…」

 

 

 

 意識があるのであれば、ウェンディの声に反応しないはずが無い。それに今いるメンバーでは彼を封じられる程の拘束魔法を使える者もいない。

 

 全員がどうすればゴーシュを止めることが出来るのかを考えている中、ウェンディが動き始めた。

 

 

 

「ちょっとウェンディ!?」

 

 

 

「皆さん、私に任せてください。絶対に、何とかします…!」

 

 

 

 一歩ずつ、ゴーシュへと歩み寄るウェンディ。仲間達はそれを不安そうに見つめる中、シャルルだけは信じていた。二人の絆があれば、きっとゴーシュは意識を取り戻してくれると。

 

 

 

「ウェンディ…っ!」

 

 

 

 最もゴーシュの一番傍にいたブラックテイルモンは気づいた。先程溜めていた右手の魔力が、消えていなかったことを。そしてそれが、目の前に近づいている少女に放たれるであろうことを。

 

 

 

「ダメーっ!!」

 

 

 

 ブラックテイルモンが立ち上がろうとするゴーシュへと飛びかかり、空からもドルガモンとユニモンがゴーシュの元へと降りブラックテイルモンに加勢する。ゴーシュは右手に溜めていた魔力を全身へと巡らせ力ずくで振り払おうとするが、デジモン達は離れようとしない。

 

 

 

「皆…!」

 

 

 

「ゴーシュは、俺達のパートナー、なんだ…!!」

 

 

 

「ゴーシュと、約束…したのっ!」

 

 

 

「最善だと思う行動をしろ…ってね!」

 

 

 

「皆…ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 ゴーシュの目の前まで来たウェンディは、ゴーシュを抱きしめる。

 

 

 

 

 

 

「ゴーシュ、もう大丈夫…大丈夫だから」

 

 

 

 

 

 

「グ、アアアアア!!!」

 

 

 

 

 

 

 ゴーシュは暴れるのを止めず、ウェンディの両肩を掴む。彼の鋭利な爪は食い込み、ウェンディの白い服は赤く染まる。

 

 

 

 

 

 

「っ…!」

 

 

 

 

 

 

「ウェンディ…!!」

 

 

 

 

 

 

「待て。……ウェンディを、彼女達を信じよう」

 

 

 

 

 

 

 ウェンディが痛みに耐える姿、その痛々しい姿に思わずルーシィが声を上げ止めようとするが、エルザがそれを止める。エルザもまた、シャルルと同じ期待を抱いていたのだ。

 

 

 

 

 

 

「本当は…傷つけたく、ないんだよね…?ごめんね、ゴーシュ…」

 

 

 

 

 

 

 ゴーシュが、暴れるのを止めた。彼の両手がウェンディの両肩から離れ、エルザ達からでも分かる程震え始める。

 

 

 

 

 

 

「これは、君のせいじゃないよ。私は大丈夫だから…」

 

 

 

 

 

 

 ゴーシュの体に込められていた魔力が霧散していく。

 

 

 

 

 

 

「私は…もう守られているだけじゃ嫌なの。ゴーシュのことを、支えたいんだ」

 

 

 

 

 

 

 ゴーシュの両手の震えが収まり、ウェンディの背中へと触れる。デジモン達がゆっくりとゴーシュから離れる。

 

 

 

 

 

 

「…ありがとう。やっと、君を助けることが出来たね。今まで、助けられてばっかりだったから」

 

 

 

 

 

 

 ゴーシュの瞳から、一筋の光が流れ落ちる。

 

 

 

 

 

 

「デジモン達も、ギルドの皆も、大事な家族だよ…皆、君が戻ってくるのを待ってる」

 

 

 

 

 

 

 ゴーシュの皮膚が緑色から、少しずつ元の色へと戻り始める。鋭く尖っていた手足の爪も、元に戻っていく。

 

 

 

 

 

 

「…お帰りなさい、ゴーシュ」

 

 

 

 

 

 

「…ただいま……ウェンディ」

 

 

 

 

 

 

 ゴーシュはゆっくりと目を閉じ、眠りについたのだった。

 

 

 




最近自分の小説を読み返すようになりました。今までは恥ずかしくてしてこなかったんですよね…。

見直すと分かったことは「、」が多すぎることと表現力が乏しすぎること…頑張ります。


次回はゴーシュの過去が明らかになります!お楽しみに!
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