FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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第69話  打開の策

 ゼントピアの総本山、その上空に突如出現した無限城。ウィル=ネビルの弟子の子孫達の生態リンクによって封印されていたそれは、新生六魔将軍(オラシオンセイス)がアンチリンクを行うことで解き放たれた。その反動で、生態リンクを施されていた者達は時間の感覚が遅くなり、蛹のような状態になってしまった。彼らは100年経つまでその状態から解放されることはない。

 

無限城の傍には青と白を基調としたある船があった。七年前の六魔将軍(オラシオンセイス)討伐の際に連合軍として、妖精の尻尾(フェアリーテイル)や当時の僕達のギルドである化猫の宿(ケットシェルター)と共に戦った青い天馬(ブルーペガサス)。彼らが所有している魔導爆撃艇・クリスティーナ改だ。改、というのは七年前に一度大破したからである。というか、今も無限城の傍に不時着しているようだけど。

 

 そのクリスティーナ改に乗り込んだのは、夢による洗脳から解かれたカナさんが占いで選出したメンバー。ナツさん、ルーシィさん、グレイさん、エルザさん、ガジルさん、ミラさん、エルフマンさん、ウォーレンさん、ウェンディ、そしてエクシード隊の三人…の、はずだった。

 

「それじゃ、僕も出発します」

 

「うむ。使うタイミングはお主に任せるぞ」

 

「…はい!」

 

 見送っている皆に声をかけ、マスターからそう声をかけられる。それはマスターから借りたある魔法(・・・・)についてのことだ。一度きりのチャンスだ、無駄には出来ない。

 

「それじゃ…頼むよ、ユニモン!」

 

「オッケー!」

 

 跨がっているユニモンに声をかけると、翼を大きく広げ空へと飛翔する。急がないと、大変なことになるかもしれない。全く、あの二人は…七年前より成長して頼りになるのは良いんだが、今回はさすがにやり過ぎだ。帰ったら覚悟してもらわないと。

 

 話は数時間前に遡る。

 

 

 

 新生六魔将軍(オラシオンセイス)と戦っていたメンバー達が次々と帰ってきている頃。どのチームも敵に有利な戦闘を強いられる形になっており、ほとんどのチームは敗戦…特に酷かったのは、ミッシェルさんが新生六魔将軍(オラシオンセイス)のナンバー2であるイミテイシアであったことが発覚し僕らを裏切ったことにより、ナツさんとルーシィさんが敵に捕まってしまったらしい。唯一、ウェンディとビッグスローさんが新生六魔将軍(オラシオンセイス)の一人であるグリムリーパーに勝利したのは幸いだった。

 

 こうして状況が刻一刻と進んでいる中…この時僕達が行っている作戦は、お世辞にも上手くいっているとは言えなかった。

 

 ギルドの近くの森の中、地面に準備していた術式…と言っても、この術式は普通のそれとは違う。四角形ではなく円になるように文字が並べられ、その上に術式の中心に向かって直線が四本ほど引かれるように文字を配列させている。それとは別に、僕の体にも術式の一部をレビィさんに書いて貰っている。

 

 僕達がやろうとしているのは、制限結界(リミット)を僕の周囲にだけ展開し続けるというものだ。魔法を使おうとすると暴走が必ず起こってしまうのは間違いない。だったら、制限結界(リミット)に使われている術式を書き換え永続的に発動させ続け、滅竜魔法を発動すること自体を阻止するという考えだ。

 

僕の体に術式の文字を刻んだ状態で制限結界(リミット)を発動させれば勝手に縮小され、僕の意思に関係無く展開し続けるように調節される。レビィさんやフリードさんのように術式を書き換えて貰えば解除は可能だし、この無限時計の一件が終わるまでであれば多少動けるようにはなるのではないかと思う。

 

 しかし、これには問題があった。

 

「ゴーシュ、もう一回魔力を高めてみて」

 

「…分かりました」

 

 術式の中に入り座り込み、目を閉じて集中…ほんの少しだけ魔力を高める。すると、自分の体に異変が生じているのを感じる。毎回浸食が始まる部分は違って、今回は右手からだった。皮膚が緑色に変色していき、爪が鋭利になっていく。

 

 さらに魔力を高め続ける。皮膚の変色が徐々に広がっていき、やがて全身が緑色になる。自分の魔力ではなく、魔水晶(ラクリマ)から溢れ出ている魔力を精一杯抑えつけようとするけど、こうなっては制限結界(リミット)を発動させることに集中することが出来ない。これでは、また――

 

「…!ゴーシュ、駄目!」

 

 レビィさんの声で僕は目を開き、僕の体に書かれている文字が掻き消されていくのが見えた。これではもう作戦は成功しない。僕は魔力を抑える…が、魔水晶(ラクリマ)からの魔力は止まらない。僕は術式から離れてから地面を殴りつけ、そうして合計十個目(・・・)の、半径数mに及ぶクレーターが出来上がり、僕の体は元の状態へと戻っていく。

 

 今ので十回目の失敗。全身が緑色になるまで魔水晶(ラクリマ)の魔力が高まってしまうと僕の体に書いた術式の文字が掻き消されてしまう。

 

「また失敗かぁ…」

 

「…すみません。失敗する理由は分かってはいるんですが」

 

「…ねぇゴーシュ、ナツ達に任せた方が良いんじゃない?ここまで無理しなくても…」

 

 …確かにレビィさんの言う通りかもしれない。ナツさん達なら上手くやってくれると信じられる。

 

 

 

でも、この時の僕は異様な胸騒ぎを覚えていた…悲しい出来事が起こってしまうような、そんな予感と共に。

 

 

 

「…レビィさん、もう一回お願いします!どうしても、行かなきゃならない気がするんです!」

 

 

 

「…分かった。でも、これで失敗したらどっちにしろ時間がないからね!」

 

 

 

 レビィさんが僕の体に文字を書き込み終えたと同時に、僕は術式の中にもう一度入る。もう、形振り構っていられない…絶対、成功させる!

 

 

 

「すぅーっ…はぁーっ………!はあぁぁぁっ!!」

 

 

 

 深呼吸してから、一気に魔力を高める。今まで失敗していたのは、魔水晶(ラクリマ)の魔力を無理矢理に抑え込もうと意識してしまっていたからだ。それで結局自身の魔力をコントロール出来ないまま暴走が進み文字が掻き消される。

 

 

 

 ならば、全身の浸食が終わってしまう前に…一瞬で魔力を高め制限結界(リミット)を発動させることが出来れば!

 

 

 

 体が浸食されても、怖がるなと何度も自分に言い聞かせる。怖がっていては、魔力を上昇させる前に僕の浸食の限界が来てしまう。

 

 

 

「な、なんて魔力…!」

 

 

 

 今まで以上の凄まじい速度で全身が魔水晶(ラクリマ)から溢れる滅竜魔法に浸食されていくのが分かる…でも、これなら行ける!

 

 

 

「…制限結界(リミット)、発動!!」

 

 

 

 紫色の結界が僕を覆い、僕の体に刻まれていた文字と地面に書かれていた術式の文字が結界へと流れ込んでいく。僕は何もしていないが地面に書かれた術式、そして僕の体に書かれた術式が制限結界(リミット)に干渉し、徐々に範囲も狭まっていく。やがて僕の体にピッタリと張り付くように制限結界(リミット)が調整されて文字は消え、僕の体は元の状態へと戻った。

 

「成功…ですよね?」

 

 外見上は何も変化していない。が、文字が消えたといっても今までの失敗のように掻き消される感じではなく、少しずつ透明になっていくような消え方だった。制限結界(リミット)に溶け込んだようにも感じた僕は、不安混じりにレビィさんに尋ねる。

 

「多分…ゴーシュ、魔法を使ってみてよ」

 

「は、はい。…防御結界(ディフェンド)円蓋(ドーム)!」

 

 僕を覆うように青緑色の結界が展開された。魔法を使うのにも何の苦労も感じない。暴走する前と同じ感覚で魔法を扱えたのだ。

 

「上手くいったんだ!やったね、ゴーシュ!」

 

「はい!ありがとうございました、レビィさん!」

 

 レビィさんがいなければ絶対に上手くいかなかっただろう。これで、僕はまた戦える…それが、本当に嬉しかった。

 

「そうだ、ロメオとイーロンにも伝えに行かないと…」

 

「そういえばあの二人、何処に行ったんだろうね?」

 

 途中まで僕のことを見てくれていたんだけど、ギルドの方へ戻っていくのは見た。そしてさっき、クリスティーナ改がギルドから飛び立っていくのも。

 

 …戦力として数えられてなかったんだろうなぁ…と、僕は少し落ち込んだ。ドルガモンかユニモンに頼んで無限城に向かえば問題ないはないのだけれど。とにかく一度ギルドに向かうことにして、十分程歩くとギルドの玄関へと到着した。

 

「すみません、遅れました!」

 

「おお、ゴーシュ!大丈夫か?」

 

「はい、レビィさんのおかげで」

 

 ギルドに入ると四代目が声をかけてくれた。他の皆もこっちに集まってくれて、僕は皆に何をしていたかを説明する。

 

「なるほど…確かに可能かもしれんが、リスクが大きすぎる。下手をすれば暴走したままじゃぞ?」

 

「無茶し過ぎだろ!」

 

 まあ、そこら辺はちゃんと見極めていたし問題ない。最初の二、三回は暴走して気を失わないでいられる段階はどの位か調べながら行っていたのだ。

 

「それに、結界魔法も使えるものが限られるじゃろ?」

 

「そうですね…今は防御結界(ディフェンド)しか使えないと思います」

 

 元々制限結界(リミット)を使いながらだと防御結界(ディフェンド)しか使うことは出来なかった。常時制限結界(リミット)を発動させるようになったのだから、防御結界(ディフェンド)しか使えないのも変わらない。

 

「僕のことはとりあえず大丈夫です…それより、今の状況は?」

 

 その後何とか暴走する危険がなくなった僕は皆に状況を尋ねた。そして、ロメオとイーロンがギルドの中にいなかったことも気づき、無限城へと向かわせてもらうことにした。マスターも僕がそうすることを見越していたのか、秘策まで用意していてくれていた。成功するかは分からないって言っていたけど。

 

 というかあの二人、何で勝手にクリスティーナ改に乗り込んだんだ。あの二人じゃ力不足なのは否めない。ちゃんとした決意があるのなら別に構わない…力不足なのは今の僕も同じだろうし、思いこそが一番大事だ。けれど、ただの驕りで行ってしまったのであれば止めなくては。

 

「っていうか、何で四代目とか止めないかね…」

 

「きっと二人が逞しくなって嬉しかったんだよ」

 

 ユニモンの言うことも分かるけど、時と場合を選んでほしいよ…どう考えても危ないって。確かに二人とも将来は強くなりそうだけど、今はまだ七年前の実力である僕相手にも一対一じゃ勝てないんだから…それなのにクリスティーナ改に乗り込むのを黙って見てるんだもんなぁ。

 

『にしても、何か魚みたいだね』

 

「ハッピーみたいなこと言うね、ブラックテイルモン…あれ?」

 

 デジヴァイスの中のブラックテイルモンとそんな話をしていると、視界に何か動く物体を捉える。人型ではあるものの、水色の肌と白い翼が印象的だった。

 

「どうしたの?」

 

「頭みたいな部分の少し上に誰かいるんだ。一体何をしてるんだ…?」

 

 あれはレギオン隊の…確かサミュエルって名前だったっけ?そういえばさっき、ウォーレンさんからの念話で新生六魔将軍(オラシオンセイス)を全員倒せば無限時計の所有権が解除されるって言っていた。でもきっとレギオン隊…いや、あのバイロのことだからルーシィさんを殺して止める方が早いと判断するだろう。そしてサミュエルはバイロの指示で動いている可能性が高い。ということは、あそこに向かえばルーシィさんが…!

 

 そしてサミュエルが魚の頭のような部分に急降下して突き破り、中へと突入していった。ヤバい、急がないと!

 

「ユニモン!」

 

「分かってる!」

 

 こうして僕達もそこから無限城へと突入することにした。僕はふと自分のギルドマークが刻まれている左腕を見て、紋章が煌々と輝いているのを改めて確認する。絶対に、成功させるんだ。この魔法で、無限時計は取り返してみせる…!

 

 

 




制限結界(リミット)大活躍!元々術式と組み合わせた結界魔法なので、こんなことも可能かな?と思いました。

そして、あと2,3話くらいで星空の鍵編終わる予定です。

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