FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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活動報告でも書きましたが、改めて。

この度は北海道で大規模な地震が発生し、作者は北海道在住なのでしばらく停電の影響を受けネットワークも繋がらない状況となっていました。

ようやく停電も収まりつつありますが、余震が何度も来てまた大きいのが来るのではないかと不安な状況です。とりあえず一時的にでも安定している今の内に更新することにしました。状況次第では更新が遅れますので、どうかご了承下さい。




それと、今回は珍しく一万字超えました。




第70話  ミッシェルの正体

 無限城へと乗り込んだ妖精の尻尾(フェアリーテイル)選抜メンバー。彼らが無限城内を進みルーシィの元へと向かう最中、捕らえられていたナツやココ、ゼントピア内部に潜入していたギルダーツやラキと合流することに成功した。その合流した場所が大司教のいる部屋であり、そこでゼントピアの枢機卿であるラポワントが六魔将軍(オラシオンセイス)のマスター・ゼロの髪の毛から生み出されたパペットであることが判明し、大司教を操っていたのも彼であることが判明した。

 

各人の時間に干渉し感覚を狂わせる魔法、リアルナイトメア。それを止める手段としてレギオン隊はルーシィの抹殺を、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々はルーシィの救助を目的として動き、無限城の奥を目指す。バイロはギルダーツによって阻止されたがその場に居合わせたサミュエルがバイロの意思を継ぎ、ルーシィの元へと一足先に向かう。大司教の治療の為にウェンディ、シャルル、ウォーレンはその場に残り、ナツとココが選抜メンバーと行動を共にする。

 

彼らの前に新生六魔将軍(オラシオンセイス)が次々と立ちはだかり、一刻も早く進むためにグレイ達が彼らの打倒に挑む。そうしてルーシィの元へと辿り着いたのはナツ、エルフマン、ココの三人だった。先にルーシィの元へと向かっていたサミュエルは、イミテイシアによって無限城の外へと放り出されてしまっていた。

 

 エルフマンやココが戦闘不能にされ、ナツは一人イミテイシアへと立ち向かう。ブレイン二世が途中から合流してはいたものの、戦いには参加するつもりはなくただ二人の戦いを眺めていた。そんな時、この場に近づく二人の影。

 

「ロメオ、あそこ!」

 

「ナツ兄…!ってことは…」

 

こっそりクリスティーナ改に乗り込んでいたロメオとイーロンは、念話でウォーレンやウェンディの指示に従いナツ達と合流する為急いでいた。ナツ達とは違い敵に妨害されることもなく進むことが出来たおかげか、しばらく進むと少し開けた空間が見え、ナツや彼と戦っているブレイン二世、そしてイミテイシアの姿があった。二人は物陰に隠れ耳を澄ますと、ナツとイミテイシアが何か話しているのが聞こえてくる。

 

「ルーシィとずっと一緒にいたい、だと?ルーシィの気持ちはどうなるんだ?お前を信じて、裏切られたと分かっても…それでもまだ信じようとしてんだぞ。お前にはその声が聞こえねぇのかよ」

 

「迷うことはない。お前は失われたものを取り戻そうとしているだけだ、イミテイシア」

 

「ミッシェル!うおっ!」

 

イミテイシアは再度ナツへと攻撃を再開する。左手に持った花のような形をした盾、茨が繋がれているそれを投げ、チェーンソーのように回転しながらナツを切り刻もうとする。ナツはそれを間一髪で回避していたが、それに気をとられイミテイシア本人が直接右手に持った剣で背後から斬りかかって来るのを気づけなかった。

 

「きっと姉さんだって喜んでくれる!だって、私達は…いつも一緒だったもの!!」

 

「なっ…!?」

 

 一瞬反応が遅れたナツは炎を纏った拳で防御しようとしたが、イミテイシアに紫色の炎弾が直撃したことで行動を中止した。

 

「嘘つき!」

 

「ロメオ、イーロン!」

 

「何で今更そんな嘘つくんだよ…お前は、本物のミッシェルじゃねぇんだろ!?」

 

「俺達を騙して仲間達を…特に、家族だと思っていたルーシィの姐さんを傷つけたのは許せないッス!!」

 

 イーロンが両手に持った鉄の剣でイミテイシアへと斬りかかる。それを盾で防御したが、ロメオの炎弾が次々と襲いかかる。彼女は二人の攻撃を難なく対処していたが、どうしてか二人へ攻撃することを躊躇っていた。

 

「ずっと一緒にいたっていうのも、嘘なんだろ!?」

 

「違う!私は――」

 

「家族を亡くしたルーシィ姉が、お前に会えてどんだけ喜んだと思うんだよ!どうして裏切ったんだ…どうしてそんな酷い嘘ついたんだよ!」

 

「俺達にとって、仲間は…家族の証。ルーシィの姐さんだけじゃない、俺達皆…アンタをギルドの一員のように感じていた!」

 

「俺だって、お前のこと…チックショーーっ!!」

 

「ロメオ君…イーロン君……」

 

「動揺してはいけませんぞ、イミテイシア様。貴女様の邪魔をする者は全て敵」

 

 ブレイン二世の持つ杖、クロドアがそう言い放つ。その間にも、ロメオがイミテイシアを直接攻撃しようと飛びかかっていた。

 

「何か言えよ、ミッシェル!!」

 

「やれ」

 

 ブレイン二世の冷徹な言葉と共に…イミテイシアはロメオを盾で攻撃した。

 

「「ロメオ!」」

 

「チッ…クショー……」

 

 ロメオは何度も地面をバウンドし、それを見たイーロンはイミテイシアに向かって一直線に走り出す。

 

鉄造形(アイアンメイク)(デスサイズ)!!」

 

「おい、イーロン!」

 

「ロメオの叫びを聞いても…アンタは何も思わないんスか!?」

 

「……」

 

「何とか…言えッス!!」

 

 自身の身の丈程の鎌を横に一閃。それを屈んで避けたイミテイシアに、イーロンはバク宙をしてそのまま鎌を縦回転させる。しかし、イミテイシアは一歩後ろに下がり紙一重で躱し、ロメオと同じように盾でイーロンを迎撃する。

 

「ぐ、がっ!?」

 

 鎌で防御したイーロンだったが砕かれ、吹っ飛ばされてしまう。その時、ナツは気づいた。ロメオの時もそうだったが、今イーロンを攻撃した瞬間にもイミテイシアが苦痛の表情を浮かべていたことに。

 

 イミテイシアと相対してからずっとそうだ。彼女の瞳に迷いのような感情が浮かんでいるのをナツはずっと感じていた。

 

「…わぁーったよ、ミッシェル。お前が何者なのか…そんなことは後回しだ。とにかくぶっ倒して、ルーシィを助ける」

 

「……」

 

「あらら、これは面白い見世物ですな!」

 

「怯むなイミテイシア。お前の望みは私が叶えてやる。…忠誠を見せろ」

 

その一言を切欠に、再びナツとイミテイシアが動き出そうとしたその時だった。

 

 

 

「…警告。急速に近づく殺意を感知」

 

 

 

 無限時計に取り込まれ、意識すらも取り込まれかけているルーシィが無機質な声を発した。

 

 

 

「殺意……?」

 

 

 

「うおおおおっ!!」

 

 

 

「サミュエル!?何をする気…!?」

 

 

 

 サミュエルは(エーラ)を負傷してしまった為しばらく飛行することが出来なかったが、ゴーシュが辿り着いた頃には殆ど回復していた。ナツ達がイミテイシア、そして後に合流したブレイン二世相手に苦戦していたが、サミュエルはそれを意に介さずルーシィへの注意が逸れるタイミングを窺っていたのだ。

 

 

 

これまでの戦闘でルーシィから離れナツやエルフマンと戦っていたイミテイシア。彼女はずっと敵の急所を的確に攻撃しつつもルーシィを守ることを最優先にしていた。しかし、ロメやイーロンがナツ達と合流しイミテイシア…いや、ミッシェルに対して思いの丈をぶつけたことで僅かに感情的になり、今までルーシィに向いていた注意がほんの少し外れたのだ。そこを、サミュエルは見逃さなかった。

 

 

 

 天井を突き破った彼は、そのままルーシィへと一直線へと迫る。

 

 

 

「ルーシィ=ハートフィリア!その血を持って、無限時計を停止させたまえ!!」

 

 

 

 僕が無限城に突入して最初に目に入った光景。それは、サミュエルがルーシィさんに攻撃しようと迫っている所…そして、もの凄いスピードでサミュエルを追い越し二人の間に入り込むココの姿だった。サミュエルはココに直撃する寸前で動きを止めた。

 

「ココ…!そこを退いてくれ!」

 

「退きません!」

 

「言い争っている時間は無いんだ!!」

 

「それなら…私を先にその爪で貫けば良い!!」

 

 ココの瞳には決意が込められていた。アースランド(こっち)では敵としてしか彼女と接していないし、どういう経緯で考えを改めたのかも分からない。でも、世界は違ってもココはココなんだって感じた瞬間だった。

 

「この…!僕は、教義の為に決めたんじゃない!自分の心に従って――」

 

「間違えていると分かっていてもですか!!」

 

「…そうだ。この混沌を収める為には、選びがたきをも選ばざるを得ないんだ!!」

 

 サミュエルの鋭い爪が無慈悲にもココを貫こうとしたその時、僕は彼女を守る為に動いた。彼女が生み出したこの瞬間を、無駄にはしない!

 

防御結界(ディフェンド)円蓋(ドーム)!!」

 

「なんだって…!?」

 

「このーーーっ!!」

 

爪が弾かれ体勢を崩したサミュエル。彼が怯んでいる間に、青い影が彼の顔面へと突撃した。その青い影と殆ど同時に現れた屈強な猫。

 

「ハッピー!?」

 

「貴方は…」

 

「ここは任せろ」

 

「お前ら!…っていうかゴーシュじゃねぇか!もう大丈夫なのか?」

 

「ホントだ!ゴーシュ、いつ来たの?」

 

ただでさえ混戦状態なのに、僕が来ているとなったら更に複雑になってしまっていると思ってたから、今までずっと念話が聞こえていても会話に参加していなかった。だから二人の反応も仕方ない。

 

「今来た所だよ。ナツさん、僕はもう大丈夫です!暴走する危険はなくなりました!」

 

「うん、ゴーシュはもう大丈夫!」

 

「そういえば…その馬って、パタモンだったよね?」

 

「馬っていうより、天馬…?」

 

「今はユニモンだよ、ハッピー」

 

 よく考えたらユニモンやブラックテイルモンをちゃんと紹介していなかったっけ…この一件が終わったらやっておかなくちゃ。

 

「とにかく無事そうで何よりだ、ゴーシュ」

 

「うん、ありがとうリリー。で、あれってサミュエルってエクシードで良いんだよね?レギオン隊の」

 

「ああ、そうだ…奴は俺に任せてくれ」

 

 リリーが一歩前に出て、サミュエルの方へ向き直る。彼はサミュエルに対して怒っているようにも見えた。

 

「辿り着いた答えがそれか!命を奪う選択など、お前の中から消してやる!」

 

「兄さん、ハッピー…!」

 

「サミーーーっ!!」

 

 リリーがサミュエルに突撃し、二人は何処かへと行ってしまう…リリーはエドラスではエルザさんと同じ階級である魔戦部隊隊長だったんだ。エクシードで彼より強い者は限りなく少ないだろう。きっと、大丈夫だ。今はそれよりもやるべきことがある。

 

「ルーシィさん!聞こえますか!」

 

「ルーシィ、起きて!ねぇ、ルーシィってば!」

 

 大きな水晶の中に体が取り込まれ、右目にも何か紋様が浮かんでいるようにも見える。確かマスター達の話じゃ、このままだとルーシィさんが無限時計と同化して…!

 

「涙…?」

 

「オイラ達の声、聞こえてるんだ!」

 

「ハッピー、ココ、離れてて。ナツさん!敵の相手は任せても良いですか!?」

 

「おう、任せろ!」

 

 二人を少し下がらせて、少し離れた場所にいるナツさんにそう聞いた後、僕はデジヴァイスを操作してドルガモンとブラックテイルモンをリアライズさせた。僕もここに来る前に気がついたんだけど、デジモン達は進化した状態でもデジヴァイスの中で待機出来るようだ。

 

「皆、攻撃体勢!」

 

「「「了解!」」」

 

「…ルーシィさん、ちょっと手荒になりますが勘弁して下さいね。柱百烈拳(ハンドレッド・トーティスト)!!」

 

「パワーメタル!」

 

「ホーリーショット!」

 

「ネコパンチ!」

 

「うわーっ!?」

 

 ルーシィさんの囚われている水晶を破壊する為、全力で攻撃する。しかし水晶は傷一つ出来ない。デジモン達の必殺技も合わせたのに…これは、多分力じゃどうにもならないな。やっぱり、何か別の方法を考えないと。

 

「ちょ、ちょっと貴方達!ルーシィ=ハートフィリアに当たったらどうするんですか!」

 

「え、ちょ…ちゃんと当てないようにしてるって!」

 

 何でココに怒られなければならないんだろうか…そんなヘマしないように細心の注意を払って攻撃していたっていうのに。

 

 さて、マスターから秘策を貰ってはいるものの…今はまだ使えない。アレは無限時計が近くにないと意味がなくなってしまう。となれば…無限時計の所有者から所有権を消すしかない。

 

「ハッピーとココはルーシィさんを頼んだよ」

 

「ゴーシュはどうするのさ?」

 

「僕達はナツさんの加勢に行く。新生六魔将軍(オラシオンセイス)を全員倒せばルーシィさんが解放されるんでしょ?この水晶が破壊できないんじゃ、そうするしかないし」

 

 ナツさんの方を見ると、あくまで戦っているのはイミテイシアだけでブレイン二世はただその戦いを傍観している。あくまで高みの見物を決め込むつもりか…確かに、イミテイシアがナツさんと互角以上に渡り合っているようだから自分が出て行く必要がないということかも知れないけど。

 

「ブラックテイルモン、イミテイシアの動きを止められる?」

 

「む、無理だよ!せめてこっちを見てくれないと…」

 

 キャッツアイはブラックテイルモンの目を見ている者にしか効果がない。ネタがバレていれば簡単に対処されてしまうし、そもそもイミテイシアほどの実力者なら目が怪しく光る時点で何かあるって気がつくかも。

 

「やっぱりそうだよね…よし、だったら僕らはブレイン二世に仕掛けよう。散開してイミテイシアとブレイン二世が重なったら仕掛けて!」

 

「「「了解!」」」

 

ドルガモンとユニモンは広い空間を利用して空中で待機、ブラックテイルモンは先行して辺りに散らばっている瓦礫の影に隠れながら移動する。

 

 狙いがバレないように、最初はイミテイシアに攻撃するように見せかける。ただ、あれだけ動き回っているイミテイシアとブレイン二世が攻撃の軌道上に重なるのは殆ど一瞬で、そこを狙っているのなら自分が狙いであるとブレイン二世に気づかれる可能性が高い。

 

 だから、僕がイミテイシアを誘導することにした。

 

「ナツさん、離れて!柱百烈拳(ハンドレッド・トーティスト)!」

 

「うおっ!?」

 

 ナツさんが盾で攻撃されそうになった所を弾いて防ぎ、そのまま(トーテム)でイミテイシアを攻撃していく。イミテイシアはそれを全て躱しているが、作戦通りだ。イミテイシアが次々と襲いかかる僕の攻撃を避け続け、最後にイミテイシアがジャンプして躱すようにやや低めに少し大きめの(トーテム)を放つ。案の定、空中へと回避したイミテイシアの前には、ドルガモンとユニモンがいた。

 

「ホーリーショット!」

 

「パワーメタル!」

 

「はあっ!!」

 

 イミテイシアは右手の剣でユニモンのホーリーショットを真っ二つに斬り、ドルガモンのパワーメタルは左手の盾で斜めに受け後方へと逸らす。

 

 空中であれだけの動きが出来るとは…あれがいろいろな場面でドジをしていたミッシェルさんと同一人物なんて思えないな。あの茨で接続されていることで鞭のような攻撃ができる盾なら、空中で回避行動は出来ると思っていたんだけど、茨を使わなくても対処出来るとは思ってなかった。

 

「ぐあっ!」

 

「くっ!」

 

「ドルガモン、ユニモン!」

 

 盾で迎撃された二体は落下を始めるが、地面に激突する直前に体勢を立て直し着地することが出来たようだ。これじゃ、イミテイシアに当てると見せかけるのは難しいかも知れないな…あ。

 

「ドルガモン、もう一発!」

 

「え、でも…」

 

 

 

「大丈夫!全力で頼むよ!」

 

 

 

「…分かった!」

 

 

 

 ドルガモンはきっと、地上戦の方が得意なんだと思う。必殺技のパワーメタルはドルモンの頃よりも倍くらいに大きくなった鉄球を飛ばす技だ。今まで空中で使って貰う事の方が多かったけど、その威力の高さ故かパワーメタルを使った後に空中でバク宙して反動を殺していた。つまり、地面に足をつけて支えることが出来れば反動を気にせずに全力を出せる!

 

 

 

「パワー…メタル!!」

 

 

 

「…!くっ!」

 

 

 

 先程よりも高速で放たれた鉄球がイミテイシアを襲う。盾で後方に逸らそうとしたが上手くいかず、鉄球を逸らすと同時に盾を持った左手が弾かれてしまった。その隙を狙っていたのか、一瞬で距離を詰めたのはナツさんだった。

 

 

 

「火竜の鉄拳!!」

 

 

 

「ぐはっ!?」

 

 

 

 ナツさんがイミテイシアを殴り飛ばすと同時に聞こえてきたのは、彼女の苦痛の声ではなかった。確かにイミテイシアに当たったのだが、彼女は何の声も上げずに壁に埋め込まれていた。では、今の声は誰の者か。

 

 

 

「よし!」

 

 

 

「やったぁ!」

 

 

 

 奇襲が成功した僕は小さくガッツポーズし、イミテイシアによって逸らされた鉄球の先にいた(・・・・・・・・・・・・)ブラックテイルモンがはしゃいで喜んでいる。

 

 イミテイシアを追い詰めたように見えたが、僕らの狙いはずっとブレイン二世だった。ドルガモンがイミテイシアの盾を弾く程の威力を出せるとは思っていなかったし、そもそもあれはナツさんが上手くイミテイシアの隙を突いたのであって僕の考えていた作戦にはなかった嬉しい誤算だ。

 

 イミテイシアによって弾かれた鉄球をブラックテイルモンが思いっきり殴り飛ばし軌道を修正、それが丁度ブレイン二世の死角となっていた。

 

「ホーリーショット!」

 

 この隙を逃すまいとユニモンがブレイン二世とイミテイシアにそれぞれ光球を放つが、ブレイン二世の屈折(リフレクター)によって軌道が変化し二つの光球は互いにぶつかり合い霧散してしまった。

 

「許さんぞ…蛆共!常闇奇想曲(ダークカプリチオ)!!」

 

防御結界(ディフェンド)(ウォール)!」

 

 前に見たブレインの常闇回旋曲(ダークロンド)と似ているが…違う。ブレインのあの攻撃は僕の防御結界(ディフェンド)でも防ぐことが出来ていた。でも、この攻撃はまるで意思を持ったように動き僕へと襲いかかり、結界で防いでもなお勢いは止まらずにいる。これは…回転しているのか?

 

「無駄だ…貫通性のこの攻撃はその程度の防御では防げん」

 

「くっ…ぐあっ!」

 

「ゴーシュっ!」

 

 結界が破られ攻撃を腹に受けてしまった僕は吹っ飛ばされ、ドルガモンに受け止められようやく勢いを殺せた。貫通性というだけあって、腹が抉られたように痛い…何度も食らったら持たない。

 

「ゴーシュ、無事か!」

 

「大丈夫です…!」

 

 ナツさんもイミテイシアが復活していたようで攻撃されていたようだ。ブラックテイルモンとユニモンも僕の元へと戻ってくる。

 

「哀れな傀儡が…どうやってアレを制御した?」

 

「答える必要はないし…僕は傀儡なんかじゃない。心も、記憶も、感情も、僕が生きている証。ちゃんと生きているんだ!」

 

「造られた存在でありながら、傀儡ではないと?」

 

「ゴーシュ君が…造られた?」

 

 イミテイシアが、この戦闘中に初めて動揺したような瞳で僕を見た。そこには何か迷いのようなものがあるような気がして…ちゃんと話しておかなきゃいけないと思った。別に隠すことでもないから、少し説明口調になりながら僕は語る。悪魔の心臓(グリモアハート)のマスター・ハデスによって生み出された存在であること、ダフネに取引で引き渡され実験のようなことをされていただろうこと、それでもウェンディ…多くの仲間、大切な人達と出会って今があるってことを。

 

 

 

「造られたとしても、元々生きていない存在だったとしても…こうして魂を持っているんだから、それはもう傀儡でも何でもない。生きているのは同じなんだから」

 

 

 

「生きているのと…同じ……」

 

 

 

「下らん」

 

 

 

「…!」

 

 

 

「所詮は戯れ言に過ぎん。貴様が語る事も、そういう風に造られたからだ。本物の魂があるなど、証明の仕様がない」

 

 

 

「――ゴチャゴチャうるせぇよ」

 

 

 

「…何?」

 

 

 

「ゴーシュは俺達の家族だ。ルーシィも、グレイも、エルザも、ギルドの奴らは皆家族なんだよ…元々生きてねぇだとか、そんなことは関係ねぇ!ゴーシュは俺達と同じ“人間”だ!!」

 

 

 

「ナツさん…」

 

 

 

『皆、聞いてくれ!』

 

 

 

 その時、ウォーレンさんの念話が頭の中に響いてきた。ココも反応したことから、どうやらギルドのメンバーだけでなくレギオン隊やゼントピアの人達にも繋げているらしい。

 

『皆、いいか!ルーシィと無限時計の融合を遅らせる方法があるんだ!大司教に説明してもらうから聞いてくれ!』

 

「大司教様…?」

 

 確かここに来るまでの念話で聞いた限りだと、大司教の所にウェンディとウォーレンさんが残っているはず。そっちで何か進展があったのか?

 

『贄となる星霊魔導士と融合するには、時間をかけた精神嵌合とその者の持つ時間の感覚…つまり、記憶と一体化させねばなりません。その為に無限城から地上に打ち下ろされた鎖は、リアルナイトメアを伝播させると同時に地上の魔力とあらゆる記憶を取り込むのです』

 

『つまり、こいつを断ち切ればいくらか時間が稼げるってわけだ!バイロとゼントピアの僧兵達も向かった!皆、鎖をぶっ壊せ!!』

 

 無限城から無数に地上へと伸びていたあの巨大な鎖が、そんな役割を持っていたのか…だったら、出来るだけそっちに戦力を行かせた方が良いか。

 

「へへ、まだチャンスは残ってたみたいだな!」

 

「薄い望みだ…やれるものならやってみろ」

 

「よーし、ゴーシュ。お前は鎖の方に行ってくれ」

 

「え、でもナツさん一人じゃ…」

 

「心配ねぇ!俺も燃えてきた所だ!!」

 

「貴様らに選択肢などない。傀儡よ、貴様は逃がさんぞ…!」

 

「ぐっ…!?」

 

 ブレイン二世が僕の衣服をねじ曲げ、締めつけて拘束する。しまった、油断した…でも、確か屈折(リフレクター)は一カ所にしか使えないって前にエルザさんから聞いたっけ。今も二カ所以上同時に使うのは見ていない。

 

「皆は、鎖の破壊に、行って!」

 

「何言ってるの!ゴーシュも一緒に連れてくよ!」

 

「待って、ブラックテイルモン。指示に従った方が良い」

 

 僕の後ろにいるデジモン達だけなら、さっきサミュエルが開けた穴から外に出られる。逆に僕を助けようと近づいたら敵に迎撃され戦闘不能になってしまうかもしれない。デジモン達は攻撃を受ければ受ける程、粒子化が起こりやすいんだから。

 

 ユニモン…パタモンは三体の中では一番頭が回る。普段のんびりし過ぎているから分かりづらいが、進化すると精神的にも成長するのかそういう面が現れやすいのだと思う。他の二体もユニモンが言ったことが正しいのは分かっているんだろうけど、すぐには動いてくれなかった。

 

「僕は、後から…合流するから!ルーシィさんを助ける為に、急いで!」

 

「「…了解!」」

 

「絶対、後から来てよ!」

 

 ブラックテイルモンがユニモンの背中に乗り、ドルガモンとユニモンが外へと向かう。

 

「言っただろう、貴様らに選択肢など与えん!」

 

防御結界(ディフェンド)(ウォール)!」

 

 ブレイン二世の常闇回旋曲(ダークロンド)がデジモン達に襲いかかるが、僕の結界で何とか防ぐ。その間にデジモン達は穴を通り脱出していった。

 

「チッ…まあ良い。薄い望みであることには変わらん」

 

「…警告」

 

「ルーシィさん…?」

 

「刻印が一つ解放された。残るは二つ」

 

「「やったぁ!」」

 

「コブラ様が!?そんなぁ…」

 

 ルーシィさんの言葉にハッピーとココが喜びを露わにし、ブレイン二世の持つ杖・クロドアが信じられないとばかりに頭を垂れた。

 

「よーし、後は俺がお前らをぶっ倒せばいいだけだ!」

 

「…ホント、しぶとい男。でも、単なる時間稼ぎよ…大局に置いては影響なんてない」

 

「父上がやり残したこと…形ある物全ての破壊、そして無と混乱をもたらすこと。七年前のようにはいかん。今度こそ邪魔はさせんよ、ナツ=ドラグニル」

 

 その直後、僕は常闇奇想曲(ダークカプリチオ)を食らって吹っ飛ばされ、ブレイン二世は屈折(リフレクター)を解除。今度はナツさんの周囲の空間に発動させ、ナツさんもまた僕の方へと吹っ飛ばされてしまった。

 

「ゴーシュ!ナツーっ!!」

 

 

 

「一つ教えてやろう。お前たちが救おうとしている星霊魔導士の小娘…あれを救うことは最早叶わぬ」

 

 

 

「「…!?」」

 

 

 

「百年の眠りなど生易しいもの…ルーシィ=ハートフィリアは無限時計と一体化し、その際に心も肉体も失うのだ。完全に時計の部品となって、人々の記憶からも消去される…その存在はこの世から消滅される」

 

 

 

 …マスター達から聞いた話では、ルーシィさんが無限時計に取り込まれたら、百年間眠ってしまうって聞いたけど……それも間違っていたということか。

 

 

 

 ルーシィさんが…いなくなる。元々いなかった存在として、消える。それがどれだけ残酷で非道なことか。七年間の凍結封印から解除された僕らは知っている。人が元々いなかったことになったら、何かが足りないような虚無感がずっと続くことも…知っている。ほんの少しの間ではあったけれど、透明人間になってしまう一件ではそうだった。

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 僕達が内心驚愕している中、イミテイシアもまた驚いたような顔を浮かべていた。

 

 

 

「な、に……姉さんは…私と、一緒、に…」

 

 

 

「お前と離れることはないぞ?ただの“道具”になるから好きなだけ傍にいればいい。良かったじゃないか、お前のような“モノ”にも、丁度似つかわしい相手だろ?」

 

 

 

「……………ちが、う……違う…!私の望みは……私の祈りは…そんなことじゃない!!」

 

 

 

 絶望しきったような顔で右手に持っていた剣を落とし、イミテイシアは盾をハッピー達の前…もう殆ど取り込まれてしまっているルーシィさんの傍へと投げ、茨を使って移動する。

 

 

 

「姉さんっ!!」

 

 

 

「何をする気ですか!」

 

 

 

「来るなーっ!」

 

 

 

 

 

 

「どけっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 ココとハッピーを一瞬で蹴飛ばし、すぐさまルーシィさんの方へと振り返るイミテイシア。そして盾を振り回し――

 

 

 

 

 

 

「姉さんっ……私!!」

 

 

 

 

 

 

 ――ルーシィさんの囚われている水晶へと攻撃を始めた。その瞳に、大粒の涙を浮かべながら。まるで、ルーシィさんを助け出そうとしているかのように。

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさいっ……ごめんなさいっ!!わた、し…っ!!」

 

 

 

 

 

 

 彼女は懺悔しているようにも見えた…その涙が本物であることも、理解できた。ギルドでの振る舞いも、僕達との時間も、彼女の名前すらも…僕らは騙されていたけれど。今彼女が流している涙は心から流しているものだと、僕は感じた。

 

 

 

「アララ、こりゃ駄目ですな~」

 

 

 

「下らん…イミテイシア、お前の役目は終わった!ゴミに戻れ!!」

 

 

 

「っ!!姉さ、ん――――」

 

 

 

 

 

 

 イミテイシア――ミッシェルさんが何かの魔法をブレイン二世にかけられ、後ろ向きに倒れる。彼女の体は光に包まれ、その光は少しずつ小さくなっていく。そうして僕らの所まで転がってきたのは、少し汚れてしまった、女の子の姿をした人形だった。

 

 

 

 

 

 

「ミッシェル…さん……っ」

 

 

 

 

 

 

 ふと、ルーシィさんの方を見る。もう自力で喋ることすら不可能な程に無限時計と一体化してしまっている彼女の両目から流れる涙は、止まる気配がない。ルーシィさんの悲しみが…伝わって来る。

 

 

 

 ミッシェルさんだった人形を、ブレイン二世が強く踏みつける。コイツ…!

 

 

 

「ふん、哀れな小汚い人形めが」

 

 

 

「お止め下さい、お靴が汚れます…なぁ~んて」

 

 

 

「この…!!」

 

 

 

 

 

 

「ナツ兄ーーーーっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 いつから起きていたのか、ロメオはナツさんへと向けて特大の炎を投げつけた。彼の炎を食らった(想いを受け取った)ナツさんは、全力で駆け出す。

 

 

 

「来い―――っ!?」

 

 

 

 ブレイン二世は顔面にナツさんの鉄拳を受けた。

 

 

 

「人が悲しむのをそんなに笑えるのか、お前は…だったら、笑えなくなるまで…ぶん殴ってやる!!!」

 

 

 

 ついに、無限時計を巡る最後の戦いの火蓋が…切って落とされた。

 

 

 

 




録画していたアニメを見ながら書いているんですが、今回の停電で上手くいかず。そして復旧してもミッシェルが人形に戻ってしまう場面で涙ぐんでしまう…あのBGMは本当に良い仕事するなぁ…と、見る度に思うわけです。

恐らく次回、長くても次々回で星空の鍵編は終わります。立て続けに大魔闘演武編へと続きますので、お楽しみに…と言っても、感覚が空いてしまうかもしれませんが。地震、許すまじ。
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