FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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いつの間にか九月終わってしまった…

台風は逸れたけど、地震がまた何回か来てて本当に勘弁してほしい。



第72話  笑顔のままで

 新生六魔将軍(オラシオンセイス)全員が無事評議員の検束部隊によって捕らえられた。無限時計は散り散りとなり、ルーシィさんも無事に発見されギルドへと帰ってくることが出来た。今回の一件がどういうわけか、妖精の尻尾(フェアリーテイル)が原因とされている噂も既に流れているようだけど、まあ良しとしよう。

 

 そして今現在、四代目と四代目補佐の二人がゼントピアで大司教様からのありがたいお言葉を頂いているであろう頃。

 

「ここに我らレギオン隊…妖精の尻尾(フェアリーテイル)に対して、深く謝罪する次第です」

 

「いずれにせよ危機は去った。頭を上げられよ。争ったとは言え、過ぎてしまえばそれはそれ…もう良いではありませんか」

 

「感謝の念に堪えません」

 

 てっきりレギオン隊はそっちに行っていると思っていたんだけど、こうして僕らのギルドへと訪れていた。レギオン隊もただ騙されていただけだし、マスターの言う通りだと思う。

 

 

 

「ゴーシュよ、あの子(・・・)を連れてきてくれぃ」

 

 

 

「あ、はい!」

 

 

 

 マスターにそう言われて、僕は一度ギルドの外へ出る。レギオン隊が来た時に連れてくる準備をするように元々言われていたから、彼女にはもう既にギルドの裏でイーロンと待機して貰っている。後は合図して入って貰うだけだ。

 

 

 

「マスター、あの子って?」

 

 

 

「今に分かるわい。さぁ、改めて紹介するとしよう」

 

 

 

 マスターの一言の後、僕とイーロンが彼女と一緒にギルドの中に入る。

 

 

 

「え……?」

 

 

 

「今日からギルドの魔導士となった、ミッシェル(・・・・・)じゃ」

 

 

 

 彼女がギルドの一員となった経緯。それはルーシィさんが無限時計から解放されたあの夜に遡る。

 

 ユニモンから落ちた僕は岩山へと激突する直前、光に包まれた。でもそれは無限時計から放たれた光の塊ではなくて、僕の腕の中から(・・・・・・・)放たれていた光だった。光はやがて人の大きさになり、僕を横抱きにして地面へと着地した。

 

「ミッシェル…さん?」

 

「ゴーシュ君…わ、たし」

 

 その時はミッシェルさんにも何が起こったのか分からない様子だった。それによく見ると服装も違う。さっきまでの黒い花のような戦闘服でも、僕らと一緒にいた時に着ていたピンク色のドレスでもなく…人形が着ていた、青と白を基調とした服だった。それに少し、幼くなったようにも見える。僕よりは年上だろうけど、多分ルーシィさん達よりは年下っぽい感じ。

 

「ゴーシュ!!」

 

「ユニモン!大丈夫、僕は無事だよ。それより…」

 

「なぜ、またパペットの魔法が……?」

 

 そう、ミッシェルさんは僕がずっと抱えていた人形。ブレイン二世の物に魔力を与えて心を宿す魔法で、ミッシェル=ロブスターとして行動していた。ブレイン二世によってその魔法は解除され、人形に戻ってしまっていた。よく思い出してみると、ミッシェルさんがイミテイシアとして戦っていた時に持っていたあの盾。あれの中央にあった六魔の刻印が刻まれていた。

 

 と、そこまで思い出して僕はあることに気がついた。マスターから託されていた、秘策のことを。そして僕は再度、ミッシェルさんのことを観察する。そして胸元にある宝石のような飾りに、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドマークが刻まれていることに気がついた。

 

「…多分、僕がマスターから託された魔法のせいです」

 

「どういうこと…?」

 

「無限時計に刻まれた六魔の刻印を上書きすれば、無限時計の所有権を取り返すことができるんじゃないかって思って、マスターに相談してみたんです。で、僕のギルドマークを無限時計の部品のどれかに当てれば上書きできるようになっていたんですが、結局使わずじまいで…」

 

「それが私に、刻まれた…」

 

「パペットの魔法も、六魔の刻印が魔力源となっていたんじゃないですか?パペットの魔法が解除されて間もない今、不完全だけどこうして発動できたんだと思います」

 

 無限時計、結局どこにあったのか分からなかったし…そもそも、無限城に突入してすぐに戦闘が始まってしまったから探す余裕もなかったんだけど。まさかこの時になって発動するとは思ってなかった僕は唖然としてしまった。

 

「とにかく、ミッシェルさん…ありがとうございます、助けてくれて」

 

「そんな…お礼を言わないといけないのは、寧ろ私の方よ。またこうして、自由に動けるようになるなんて、思っても見なかったし…」

 

「…ミッシェルさん、ギルドに戻ってくるんですよね?」

 

 六魔は既に壊滅、無限時計も何処かへ飛んでいった。ミッシェルさんを縛るものはもう何もない。ミッシェルさんもただルーシィさんと一緒にいたかっただけだ。だったら、また前みたいにギルドにいても問題ない。

 

 しかし、ミッシェルさんの表情は優れない。その表情からは、後悔が感じられた。

 

「それは…無理よ。私は彼らに手を貸してしまった。騙されていたとはいえ、犯罪を犯してしまったの。これ以上ギルドにいたら、迷惑をかけてしまうわ」

 

 後ろめたい気持ちで一杯なんだろう。その気持ちは僕も何となく分かる。

 

 

 

「大丈夫ですよ」

 

 

 

「え…?」

 

 

 

「僕らのギルド、元々問題行動ばっかりで…評議員に目の敵にされてるのは今更です。それにミッシェルさんは犯罪を犯したって言うけれど、教会破壊には直接は関わってないじゃないですか。今回の一件で、ミッシェルさんが新生六魔将軍(オラシオンセイス)のメンバーだってことは僕らとレギオン隊とかのゼントピアの極一部の人達くらいです」

 

 

 

「それでも、姉さんを…ギルドの皆を裏切ったことには変わりないわ」

 

 

 

「元々敵対していたガジルさんとかジュビアさんもギルドに入れたんだから関係無いです。騙されていたのもあるんだから、二人の時よりも受け入れられやすいですよ、きっと」

 

 

 

「私は…人間ではないわ」

 

 

 

「僕らみたいな得体の知れない存在でもギルドに入れてくれるから、気にしなくて良いよ~」

 

 

 

 いつの間にか退化していたパタモンが、ミッシェルさんにそう言ってくれた。ずっと僕らの会話を黙って聞いてくれてたし、ここぞというタイミングでこんなことを言ってくれる…さすが、僕のパートナーの中で一番空気が読める子。見習わないといけないかも。

 

 

 

「…ほん、とうに……良いの?」

 

 

 

「ハァ…ま、とにかく帰りましょう。ギルドの皆がいる時に紹介すれば、杞憂だったって分かりますから。それまでは僕の家にいて下さい。いいですね?」

 

 

 

「わ、分かったわ」

 

 

 

 ルーシィさんはナツさんが猛スピードで走っていたから大丈夫だろうと考え、僕らは一足先にギルドへ戻ることにした。

 

 

 

「――僕からは以上です」

 

 一通り事の顛末を話し終え、皆の反応を観察する。ギルドの皆はそれほどでもないけれど、問題はレギオン隊の面々かな。特にバイロさんがヤバい。何というか、オーラが。

 

「マカロフ殿、これはどういうことでしょうか」

 

「そのまんまじゃ。ミッシェルをギルドのメンバーとして迎える」

 

「此奴は新生六魔将軍(オラシオンセイス)!何をしでかすか分かったものでは…!」

 

「僕がマスターに頼んだんです。ミッシェルさんはただ騙されていただけで――」

 

「騙されていたからと言って無罪とは言えないのでは?」

 

 …どうしよう。口じゃ勝てない気がする。っていうかもう、怒ってますって感じがビシビシと伝わってくる。

 

「バイロ様、落ち着いて下さい!」

 

「そうそう、子供をビビらせちゃ駄目じゃん?」

 

「む…しかしこれではギルドにとって問題となるでしょう」

 

 ココとヒューズがそう言って止めに入ってくれたおかげで、少しだけバイロさんからの怒りオーラが引っ込んだ。

 

「ギルドの評判がどうというのは気にせんぞ?昔から評議員の目の上の瘤なのは変わらん」

 

「ギルドマスターがそう言ってるんだから良いんじゃない?これはギルドの人達が考えることだよ」

 

「えっと…サミュエルの言う通りです。それより一番話したいのは…」

 

 この場にいる全員が視線を一カ所に集める。視線の先にいるルーシィさんは少し困惑しているようだ。

 

「皆…いいの?」

 

「そりゃそーだろ。ミッシェルはお前の妹だし」

 

「そういうこった」

 

「ミッシェルのことは、お前が一番良く分かっているだろう?お前が決めたことに私達は従おう。構いませんか、マスター?」

 

「うむ!最初からそのつもりじゃ」

 

「…ありがとう、皆」

 

 

 

 ルーシィさんはミッシェルさんの元へとゆっくりと歩き出す。

 

 

 

「ミッシェル…」

 

 

 

「姉、さん…わ、私…!姉さんに、皆に酷いことを…もう、許してもらえないって……それで…もう、姉さんと一緒には……っ!」

 

 

 

 ルーシィさんがミッシェルさんを優しく抱きしめる。

 

 

 

「大丈夫だよ…誰も怒ったりなんかしてない。あたしも…また、ミッシェルと会えて、本当に嬉しい…!」

 

 

 

「ねえ、さ……っ」

 

 

 

「ねぇ、ミッシェル…これからはずっと、傍にいてくれるよね?」

 

 

 

「……うん、うん…!ねえさん…ありがとうっ…!!」

 

 

 

 こうして今回の騒動が解決した記念のパーティは、僕らにとってはルーシィさんに妹が出来た記念パーティとなった。

 

 

 

 その後は大食い競争とか決闘とか色々あったけど、それぞれ楽しい時間を過ごしていた。僕はヒューズさんやシュガーボーイさんからこの前のことを謝られたり、大食い競走で食べ残った肉を食べながら過ごしたりした。

 

「ゴーシュ君」

 

「バイロさん?」

 

 何だかちゃんとしたご飯食べたの久々だな~…実際は二、三日前にミラさん達とご飯食べたのにな…とか考えながら味わっていると、さっきまでギルダーツさんと酒を飲みながら話していたはずのバイロさんから声をかけられた。っていうかバイロさん、酒飲んでも顔色一つ変えないんだ…

 

「先程は怖がらせてしまったようですみません」

 

「あ、いえ…別に気にしてないですよ。わざわざそれを言いに?」

 

「いや…あの時、君からは凄まじい魔力を感じた。あれは何だったのか、気になってしまって。答えたくなければそれでも構いませんが」

 

 ああ、地下で僕が暴走した時の話か…バイロさんからしたら気になるよね。魔力を無効化させた相手が突然あんな暴走なんかしたら。

 

「あれは僕の中にある滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)が暴走したんですよ。魔水晶(ラクリマ)の魔力までは消せなかったんじゃないですかね」

 

「確かに魔水晶(ラクリマ)を体内に埋め込んでいる魔導士もいるが…私の無効化は、その魔水晶(ラクリマ)の魔法ですらも無効化されるはずなのだ。しかし君の場合、そうならなかった」

 

 確かあの時、僕はバイロさんの魔法を全身で受けた。僕自体が魔法に飲み込まれてバイロさんが無力化で防いだんだから、それは間違いない。だとすると…

 

「…多分、滅竜魔法の特性か何かだと思います。今は何とか術式で封じることが出来たんですが、その過程で術式の文字を打ち消すことが何度もありました。無力化に似た特性だったから、バイロさんの魔法と打ち消しあったんじゃないでしょうか?」

 

「なるほど…しかし、だとすれば君の中の魔水晶(ラクリマ)は相当強力な物のようだ。どこでそれを?」

 

「さあ……?」

 

 あ、ヤバい。今バイロさんの額に青筋が見えた気がする。はぐらかされたとかふざけてると思われたかもしれない。

 

「隠してるわけじゃないんです。本当に知らないんですよ」

 

「それは一体どういう…?」

 

「僕、記憶がない期間がありまして…その間に埋め込まれたらしいんです。だからあの暴走の時まで魔水晶(ラクリマ)を埋め込まれていたことは知らなかったんですよ」

 

「…幼子にそのような仕打ちをするとは。私がその者を捕らえよう」

 

「あ、いや、犯人の見当はついていて…もう評議員に捕まってる人なので、ご心配なく」

 

「そうですか…どうやら辛い話をさせてしまったようで、申し訳ない」

 

「い、いえ…」

 

 レギオン隊の誰か、バイロさんとの接し方を教えて下さい。天然なのか、たまに暴走しそうなんですけど。それも割と本気でやりそうな感じの。

 

「…そろそろか」

 

「…?何がですか?」

 

「ダン、シュガーボーイ。マリーとココを探して来てもらえますか」

 

「ん、了解ぜよ」

 

「お任せあれ、バイロ様」

 

 そう言ってダンさんとシュガーボーイさんが外へと出て行ってしまった。今気づいたけど、空が既に夕焼けに染まっていた。もうこんな時間になっていたんだ、気がつかなかった。

 

「我々はそろそろお暇するとしましょう」

 

「もう行くのか?」

 

「ええ。皆ゆっくり休めたことでしょうから」

 

 一日くらいゆっくりしていけば良いのに。もう夜も近いんだし…いや、明日仕事だったらそれが普通か?前世では社会人だったのに忘れてしまった…このギルド、いつもお祭り騒ぎだからそれに慣れちゃったよ。

 

 そんなことを考えている間に、ギルドにいた全員が外に出る。もう既にレギオン隊全員と、ルーシィさんやミッシェルさん、リリーがいた。

 

「本日伺ったのは他でもありません」

 

「気づいておった…別れの挨拶」

 

「え?」

 

「別れだぁ?」

 

 バイロさんの唐突な話に僕らは少し驚きつつも、彼は気にせずにそのまま話を続ける。

 

「大司教様の命により我々レギオン隊は、各地に散った無限時計の部品を探し出し、より深い封印を施す為に旅立ちます。とはいえ、部品は魔力を蓄積するまで魔法での探知は不可能…各人が一生をかける仕事となりましょう。恐らく、皆さんとお会いできるのは本日が最後…ですので」

 

「何言ってやがる」

 

「最初から決めつけるなんて、つまんねぇよなぁ?」

 

「全くだ」

 

「ココ、色々ありがとう!マリーも次は遊びに来てね!」

 

「こちらこそ!お姫様も皆さんもお元気で!」

 

「絶対遊びに来る!じゃん!」

 

「改めて…この度はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

 

「もう過ぎたこと気にしても仕方ないきに!せっかく可愛くなったのに台無しぜよ?」

 

 どうやら暗い雰囲気なのはバイロさんだけのようだ。他のレギオン隊のメンバーはそれぞれ明るく別れを告げている。リリーとサミュエルのそれぞれの呼び名が変わっていたけれど、そこは気にしないでおこう。

 

 

 

「あ!そういやタコ親父!すっかり忘れてた!」

 

 

 

「タコ親父って…」

 

 

 

「…何ですか?」

 

 

 

「ずっとムスッとしてて疲れねぇか?たまには笑えよな!」

 

 

 

「これこれ!」

 

 

 

 いや、この人にそれを求めるのは難しいと思うんだけど…現にレギオン隊の人達は殆ど苦笑いだし。

 

 

 

「…心で向き合えば、でしたね?ココ」

 

 

 

「…!」

 

 

 

「あの時君が言ったこと…私にもようやく分かりました」

 

 

 

 バイロさんはそう言った後、すごくぎこちない笑顔をして…それを皆が逆に怖いとか言ってバイロさんが怒って…そうして皆がまた笑い出す。笑い声を残したまま、彼らは旅立っていったのだった。

 

 

 

必ずまた会おうと、約束して。

 

 

 




今回で星空の鍵編終了!次回からいよいよ大魔闘演武編です!

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