FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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第76話  取り残された者達

僕が皆の元へと戻った頃には、太陽が真上にまで昇っていた。待ち合わせしていた場所には、何故かウェンディとシャルル、そしてデジモン達しかいなかった。あれ?もう待ち合わせの時間過ぎてるよね…もう先に修行始めちゃったかな?

 

「あ、ゴーシュ!」

 

「お待たせ、ウェンディ。はい、約束のスイーツ」

 

「わぁっ、ありがとう!ごめんね、並ばせちゃって」

 

「ホント、凄い行列だったよ…」

 

 売り切れまで残り数個って所で買えたから、少しヒヤヒヤさせられた。もし買えなかったら明日になっていただろうから、今日の内に買えて本当に良かったよ。さすがに二度も、何時間もかけて並びたいとは思えない…まあ、ウェンディの為だと思えば何度でも並ぼうと思えるけど。

 

「それで、他の皆は?」

 

「それが…」

 

「分からないのよ。私達もさっき来たばかりで」

 

「さっき?てっきりもう皆、僕を待っていると思ったんだけど…何か用事?伝言は?」

 

 待ち合わせ時間は二十分くらい前だ、元々遅くなることをウェンディに伝言を頼んでおいたんだけど…

 

「あ、ちゃんと伝言は朝ご飯の時に言っておいたよ」

 

「俺達、さっきまで人気の無い浜辺の方にいたんだ」

 

「あー…なるほどね」

 

 確かに待っているのも暇だろうから、デジモン達をウェンディに預けたんだった。まだ海に来て三日くらいなんだが…まあ、たまには良いか。てっきりロメオとかイーロンも一緒にいるかと思っていたけど。

 

「おーい!」

 

「あ、ジェットとドロイだ!」

 

 走ってくる二人に向かって体当たりしに行こうとするプロットモンを、抱き上げることで中断させる。全くこの子は…知っている人全員に突撃するのは止めて欲しい。

 

「ジェットさん、ドロイさん、ナツさん達は?」

 

「そ、それが…」

 

「さっき、バルゴが来てよ…」

 

「バルゴって確か…」

 

「ルーシィの契約している、メイドの星霊よ」

 

 さすがにデジモン達はルーシィさんの契約している星霊の名前までは把握し切れていなかったようだ。今度、訓練がてら紹介して貰おう。

 

「バルゴがどうかしたんですか?」

 

「星霊界の危機だとかで、ナツ達を連れて行っちまったんだ!」

 

「ええ!?」

 

 …話を聞いて今更原作知識を思い出す僕。以前にもこんなことがあったような気がする。そうだった、ナツさん達が星霊界で宴をする話ってあったな…あれ、じゃあ僕達って置いてけぼりにされた?

 

「ど、どうしようゴーシュ…」

 

「…多分だけど、星霊界の危機っていうのはバルゴの嘘じゃないかな」

 

「嘘?」

 

「だって、本当に星霊界が危機に陥っているなら僕らとか、ジェットさんやドロイさんも連れて行くはずでしょ?戦力が多いに越したことはないんだから」

 

「た、確かにな…俺らその場にいたのに除け者にされたんだ」

 

「もしかしたら、星霊界に連れて行ける人数に限りがあるのかも知れませんね」

 

 実際はどうなのか知らないけど。中途半端な強さで連れて行けないって言うのなら分かるけど、少なくともウェンディの治癒魔法は重要だしドロイさんやジェットさんはこの七年間で僕らよりも強い可能性がある。なのに連れて行かないってことは、人数が多すぎると連れて行けないってことなんじゃないかと考えた方が自然な気がする。

 

「他の全員が星霊界に連れて行かれたんですよね?」

 

「ああ、いや…ロメオとイーロンはいなかったな」

 

 あの二人もどこかで別行動中ということか。そうなるとまずは二人を探した方が良いかな。

 

「まあどっちにしろ、星霊界には行く手段がないのでこっちはこっちで修行するしかないですね」

 

 というわけで、原作知識は殆ど覚えておらずいつナツさん達が帰ってくるかも分からず…僕らはナツさん達の帰りを待ちながら合宿を続けることにした。

 

 

 

 何日も、何日も魔力底上げと新たな結界魔法を生み出すことに集中し続けていた僕。この日ようやく新たな結界魔法が一つ完成し、それの性能を確かめる目的で初めて他の皆との実戦訓練に参加した。

 

「パープルブラスト!!」

 

鉄造形(アイアンメイク)大砲(キャノン)!!」

 

「天竜の咆哮!!」

 

「パワーメタル!!」

 

「ホーリーショット!!」

 

 ロメオの巨大な紫色の炎弾と、イーロンが生み出した大砲から発射された砲弾。この一ヶ月での修行の成果がそれぞれ現れている。ウェンディや、デジモン達の技も威力がかなり増していた。それらが僕へと着弾した瞬間、砂煙によって視界が遮られてしまう。

 

「ど、どうだ…!」

 

「やったッスか!?」

 

 砂煙が収まり、僕の姿が露わになる。僕を覆っている結界を見てウェンディとユニモンは笑顔に、イーロンとロメオとドルガモンは悔しそうな表情を浮かべた。

 

「ゴーシュ、これって!」

 

「…うん、成功だ。これがようやく完成した新しい結界魔法の一つ、外殻の結界(シェル)だ」

 

 防御結界(ディフェンド)反射結界(リフレクション)のようにドーム状で展開する結界だが、その表面は殻のようにゴツゴツとしている。この青い結界は魔力量によって強度と範囲が変化させることが出来る。

 

 今の僕の上限はまだ分からないが…少なくとも、今くらいの攻撃は防ぎきることが出来たようだ。今後は防御結界(ディフェンド)に代わって使用することが多くなるかも知れない。まあ防御結界(ディフェンド)のように形状を変化させることは出来ず、ドーム状にしか展開出来ないんだけど。

 

「くっそ~!」

 

「俺達ももっと強くならないとッスね…ハードルは高いッス」

 

「いや、二人ともかなり強くなってるよ。正直驚いたくらい」

 

 っていうかこの二人、おかしくない?ウェンディやデジモン達と戦い続けて、砂が水を吸い取る勢いで強くなっている。大魔闘演武が始まる頃には、一ヶ月前の僕ぐらいまでなら追いつくんじゃないだろうか。ロメオとイーロンでこれなら、デジモン達も相応に強くなっているということだろうし…これは僕も負けていられないな。

 

「あ、ゴーシュ兄!まだ結界消さないでくれよ!」

 

「え?」

 

「そうッスよ!俺もまだ挑戦したいッス!」

 

「俺もやるよ!」

 

 結界を解除しようとしたらそんなことを言われた。何でそんなやる気なんだよ…ウェンディとユニモンは参加していないけどさ。まあ良い、存分に相手をしてあげようじゃないか。この外殻の結界(シェル)ならば破られる気はしない。

 

「うおりゃあーっ!!」

 

 

 

 ――十分後。

 

 

 

「どらぁーっ!!」

 

 

 

――三十分後。

 

 

 

「パワーメタル、パワーメタル、パワーメタル!!」

 

 

 

 ……長い。体力どんだけあるんだ、この三人。ぶっ続けでもう一時間くらい経つぞ。一回結界の中から出ようとしたら怒られるし…まあ僕もこの結界の持続時間の実験が出来るから良いんだけど。

 

「ハアッ、ハアッ…どんだけ固ぇんだよ、その結界…」

 

「さす、がにっ…疲れたッス~」

 

「パワー…メタル!!」

 

 大の字で倒れ込んでそう言う二人。彼らに目もくれず、未だに僕へと攻撃を続けるドルガモンだって、既に体力が底をついているはずなのだが…

 

「ドルガモン、ここまでにしよう。これ以上は修行にならないよ」

 

「も、もう少しだけ…」

 

 …?おかしい。確かに強くなる為に修行するのは分かるけど、これ以上は修行ではなくただの無茶だ。そんなに急いで強くなる必要は無いのに。

 

「何を焦っているの?普段冷静な君らしくもない」

 

「ゴーシュ…俺は、ちゃんと役に立っているのかな?」

 

「何言って…」

 

「俺達がゴーシュの力になれば、その代わりにゴーシュは友達のロップモンを探してくれるって約束してくれた。知ってるよ、ゴーシュがいつもギルドの依頼が終わった後とか、手がかりを探してくれている事」

 

 確かに依頼でフィオーレ各地へと向かった際は何か変わったことがないか聞き込みをしたりとかそれらしい痕跡を探ったりはしているけれど…ただ約束を守ろうとしているだけだし、今の所全て空振り状態なんだ。改めてそんな風に言われることではないんだが…。

 

「なのに、俺達は本当に力になれているのかなって…不安なんだ。プロットモンとパタモンは、ちゃんと力になれていたと思う。マリー=ヒューズとの戦いに勝てたのはあの二人のおかげだ。でも、俺は……」

 

「…………」

 

 ドルガモンもいてくれたから、これまで戦い抜いて来れたんだけれどなぁ…足手まといだと思ってるのかな。だからか、さっきからオーバーワークになるくらいに修行しているのは。

 

「だから、俺はもっともっと強くなりたいんだ!もっとゴーシュの役に立てるように!」

 

「でもドルガモン、明日以降もまだまだ修行が続くんだ。今日特訓をし過ぎて動けなくなったら逆に予定よりも特訓出来なくなってしまうんだよ?そう言ってくれるのは嬉しいけど…」

 

「それは分かってるんだ…でも、何か掴めそうな感じがするんだ」

 

「何か?」

 

「うん。この特訓、俺が強くなる近道になっているような…そんな感覚があるんだ」

 

 …もしかすると、完全体に進化するにはそれぞれの個性に合った特訓が必要ということなんだろうか。デジモン達の本能でそれを理解しているのかも知れない。ただの勘違いの可能性もあるけれど、少し調べてみる必要があるな。

 

「…分かった。ドルガモンはいつもの特訓メニューにこの特訓も追加しよう。ただし経過を見て上手くいっていないと判断したら中止にするからそのつもりでね」

 

「本当!?ありがとう、ゴーシュ!」

 

「勿論、過度に特訓するのは禁止。だから続きは明日、分かった?」

 

「う、うん…分かった」

 

 何か進化の手がかりが掴めると良いな、というそれくらいの軽い気持ちで、僕はドルガモンの特訓に付き合ってあげることにした。

 

 

 

 ということがあったのが、つい一週間前の話である。今、僕達はある話し合いをしていた。それは、修行場所を変えるべきか否かというものである。理由は…話の流れで分かるかも知れないが、今日の早朝にドルガモンが完全体に進化した。

 

 

 

 大事なことなので二回言うが、ドルガモンが完全体へと進化することが出来たのである。彼の直感は正しかったようで、外殻の結界(シェル)に必殺技を撃ち込む特訓は彼の攻撃力を底上げし、限界を迎えようとしたところで完全体へと進化。気になる能力の上昇具合だが、外殻の結界(シェル)に罅を入れることが出来るほどの威力が出た。最低限の魔力で作ったとはいえ、素晴らしい成果だ。

 

 

 

しかし、問題点が二つ。完全体へと進化した状態での必殺技は規模がデカく、結界を攻撃した際に起きた余波は地震のように感じた。これではこのアカネビーチ周辺にいる人達は観光どころではない。ホテル等の施設でも商売あがったりになってしまう。

 

もう一つは、ドルモンの完全体の姿は想像以上に巨体だった。彼だけで今回の合宿メンバー(ナツさん達も含む)を荷物もまとめて乗せられるのではないかと思うくらいデカい。これも一般人には怪物が現れたと思われてしまうだろう。

 

「ごめん、ゴーシュ…また迷惑をかけちゃって」

 

「全然迷惑なんかじゃないよ。ドルモンが頑張った成果なんだから、もっと胸を張ってていいんだ」

 

「そうそう!それに明らかに強そうだったぜ?」

 

「うん、本当にカッコ良かったよ、ドルモン!」

 

「元気出して~」

 

「皆…」

 

 というわけで、僕らは修行場所を移すことにしたのだが…中々良い場所が思い浮かばない。いや、正確には僕は一つだけある。あるにはあるんだけれども…許可が下りるかどうか分からない。

 

「…ゴーシュ、あそこなら存分に特訓出来るんじゃないかな」

 

「ウェンディ…僕も多分、君と同じ考えだ。だけど…」

 

「二人とも、心当たりあるのかよ!」

 

「何処ッスか!?」

 

 早く修行を再開したいロメオとイーロン。この二人が僕とウェンディが思っている場所を思い浮かばないのはきっと、行ったことがないからなんだろう。ここで悩んでいても仕方ない。許可を貰ってくれば良いだけの話なのだ。

 

「パタモン、申し訳ないんだけど僕と一緒に一度ギルドまで戻るよ。皆は先に向かっていてほしい」

 

「オッケ~」

 

「ゴーシュ兄、ウェンディ姉ももったいぶってないで教えてくれよ!」

 

「行けば分かるよ。ジェットさん、ドロイさん。そういうわけで僕らは別の場所で修行します。ナツさん達のことは…」

 

「ああ、それは良いけどよ…」

 

「何処行くつもりなんだ?」

 

「他に人がいなくて、デジモン達や僕らが全力を出しても問題ない場所です」

 

 僕の言葉を聞いて、ウェンディとシャルルは確信を得た様子。しかしそれ以外のメンバーは分からないのか、首を傾げている。

 

「そんな場所あるか?」

 

「さあ…」

 

「デジモン達は行ったことあるはずなんですけどね」

 

「え!?ど、何処だろう…?」

 

「俺だって分からないよ…」

 

「またアンタはそんな風に言って…実は楽しんでる?」

 

 シャルルのツッコミに、僕は図星だったのは内緒にしておこう。そう思った僕は適当に愛想笑いをする。

 

「ゴーシュ、マスターに許可を貰ってくるんだよね?先に向かって大丈夫なの?」

 

「多分…いや、やっぱり待ってて。僕が許可貰ってから向かおう」

 

 勝手に入ったら僕がマスターに怒られそうだ。ナツさん達みたいに問題児扱いされたくはないし…うん。やっぱり待っていて貰おう。

 

 これ以上もったいぶっているとキレられそうだったので、僕はこれから行こうとしている場所を伝えた。そしてデジモン達以外にはとても驚かれたのだった。

 

 

 




次回からは原作と同じように、一気に大魔闘演武直前まで飛びます。グダグダになってしまうと思うので。
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