FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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第84話  戦車

 大魔闘演武の二日目の競技パート、種目名は戦車(チャリオット)だ。クロッカス全体を巡るように並んだ大量の戦車の上を走るレースのような競技だ。僕はカナさんと交代し、出場ギルド用の観客席から観戦している。代わりにカナさんがリザーブ枠で参加した。僕が起きたの夜中だったし、念のためってことだね。

 

 因みにイーロンは医務室。理由は、良く分からなかったんだけど…何か僕達が帰った後に無茶なことをしたらしい。競技始まる前に見に行ったら頭にデッカい瘤があった。ポーリュシカさんの説教の影響かも知れない。見てるこっちが痛くなるほどの見事な瘤だった。

 

 

 

 今回の出場者は、Aチームがナツさん。Bチームがガジルさんだ。何か昨日の夜に二人とも自分が出るって引かなかったらしくて、その宣言通りに人選したわけなんだけど…今回は、戦車(のりもの)の上を駆け抜けるレースである。つまり…

 

 

 

「うっぷ…」

 

「な、何で俺まで…」

 

「おぇ…」

 

 

 

 滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の三人がダウンしている。残り一人は剣咬の虎(セイバートゥース)のスティングだ。こんな競技だったら、グレイさんとかカナさんとかが有利だったかも知れない。トラップ仕掛けられるし。まあ、競技は事前に知ることは出来ないから…いや、名前で分かるか。流石に戦車と戦うとまでは思わないだろう…多分。きっと。

 

 っていうか、この競技って完全に滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)潰しだよなぁ…僕含めると、妖精の尻尾(フェアリーテイル)には五人もいるし、全員チームメンバーに含まれているし。ウェンディは乗り物酔いしないけど…ガジルさんの様子から考えるに、いつかは乗り物酔いするようになるかも知れない。

 

「まあ…仕方無いよね。後で医務室に向かおうかな」

 

「そうだね…私も行くけど、シャルルはどうする?」

 

「……」

 

「どうしたの?何か元気ないね」

 

「ウェンディ…そんなことないわよ。私はここで他の皆の応援してるわ」

 

「…まあ、シャルルが大声上げて応援しているイメージないしね。あってもウェンディの試合の時くらいでしょ」

 

「喧しいわね」

 

 

 

 昨日の話は、とりあえず保留ってことにした。漠然としているし、どうすればそんな未来を回避できるのかも分からない。しかし、それ程の厄災と呼べる程の危機がこの王都に迫っていると言うことは確かだ。シャルルの予知はそう遠くない未来の出来事であるから、警戒も怠るわけには行かなくなった。このタイミングで僕がチームから外れたのは不幸中の幸い、というやつかも知れない。

 

 ギルドの皆には大魔闘演武に集中してて貰いたいので、これは僕とシャルル、そしてデジモン達だけの秘密となった。何でデジモン達も含まれたかというと、三体ともあの時の話をデジヴァイスの中で聞き耳を立ててたからだ。バレたからには、協力して貰うことにした。

 

 

 

 それにしても、赤いドラゴン、か…イメージ的には炎のドラゴン、ってことなのかな。ドラゴンって言っても、どんなドラゴンなんだろうか?ドラゴンって言っても…どんな奴なんだろうか。手足無い奴とか二足歩行の奴とかもいるよね。しかし、炎のドラゴンって何か悪い奴って感じしないんだが…主にナツさんの印象で。荒々しい感じはするけど。

 

 僕が対峙することになるのは間違いないだろう。というかウェンディが危険に晒されると聞かされて黙っていられるか。どっかのタイミングでシャルルに詳しく聞いておかないと。何かしら対策が思い浮かぶかも知れない。

 

 

 

「とにかく、二人とももっとしっかり応援しないと!」

 

「応援って言っても、ねぇ?」

 

「…もう絶望的ね。この競技は捨てた方が良いわよ」

 

 …正直、もう頑張らなくて良いですって言ってあげたいんだが。可哀想過ぎる…そんなこと言っても、絶対諦めないだろうけど。

 

 っと、先頭集団の方は接戦のようだ。ナツさん達三人以外は、殆ど互角と言っても良いくらいの距離にいる。既にゴールは目前だから、皆温存していた魔法を使って来る頃だと思うけど…って、トップが大鴉の尻尾(レイヴンテイル)だ。昨日の連中のやり方だと姑息なのが常套手段なのかと思っていたんだけど…ちゃんと実力がある人もいるんだな。

 

「波動ブースト!この衝撃波の中で魔法は使えんぞ!」

 

「ポッチャリ舐めちゃ、いけないよ!」

 

「魔法を掻き消す波動か…ならば!俊足の香り(パルファム)、ゼロ距離吸引!」

 

 蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のユウカさんが妨害と自身のスピードアップを図った魔法を使うが、人魚の踵(マーメイドヒール)のリズリーという人が戦車の側面を重力操作で走ったり、青い天馬(ブルーペガサス)の一夜さんは鼻の穴に試験管を突っ込んで、香り(パルファム)の効果でスピードアップした。

 

 三人の様子をやや後ろで見ていた、昨晩カナさんを飲み比べで制したというバッカス。彼が大きく四股を踏むと、あまりの威力に彼がいた戦車が真っ二つに大破。その余波で前方と後方の何台かの戦車も横転してしまった。

 

「な、なんてパワー…」

 

「ってか、速っ!?」

 

 そのままバッカスは全速力で駆け抜け、戦闘を走っていた大鴉の尻尾(レイヴンテイル)のクロヘビを抜き去り一位でゴール。二位から下はクロヘビ、リズリー、ユウカさん、一夜さんという順番だった。

 

四つ首の番犬(クアトロケルベロス)にこんな奴がおるとは…」

 

 S級魔道士と言われるだけの実力はある。他のギルドのS級魔道士ってあんまり見たこと無いかも。一夜さんもS級だったはずだけど…あの人は、何というか特殊だから。後はジュラさんくらいか。

 

「うおおおおっ!!」

 

「ぐおおおおっ!!」

 

 魔水晶(ラクリマ)ビジョンはまた最下位争いの方へと切り替わる。ナツさんとガジルさんが少しでも前へと進み続ける中、スティングはただ二人の姿を見ているだけだった。どうやら、この競技は諦めるつもりらしい。

 

「一つだけ聞かせてくれねぇかな。何で大会に参加したの、アンタら?」

 

 スティングの疑問の声が、会場中に響く。昔の妖精の尻尾(フェアリーテイル)からは世間体とか気にするとは思えない。評議員に目を付けられても怯えることも無いようなマイペースなギルドが、何故この大会に参加したのかと。

 

「仲間の為だ…!七年も、ずっと、俺達を待っていた…どんなに苦しくても、悲しくても、馬鹿にされても!耐えて、耐えて…ギルドを守ってきた、仲間の為に…!俺達は見せてやるんだ…妖精の尻尾(フェアリーテイル)が歩き続けた証を!!だから前に進むんだ!!」

 

 

 

 そこからは、スティングは何も話さなかった。ナツさんの言葉にギルドの皆は感動して涙を流し、二人の姿を最初は観客達も馬鹿にしていたけれど、ゴールした頃には罵声が歓声に変わっていた。

 

 ナツさんが六位、ガジルさんが七位。スティングは予想通り棄権した。

 

「ゴーシュ!」

 

「うん。行こう!」

 

 ただの乗り物酔いではあるが…あの様子では多分暫く動けないだろうし。ウェンディがいればすぐに全快するだろう。

 

 僕とウェンディ、シャルルはナツさんとガジルさんを医務室に運んで治療する為、二人の元へと向かった。

 

 

 

 ナツさんは思いっきりグロッキーでダウンしていたんだけど、辛うじて意識を保っていたガジルさんはフラフラしながら何処かへ向かっていた。まあ途中で回収したけど。すぐ倒れたから、無事に医務室まで運んできました。

 

「兄貴!そろそろ来ると思ってたッス!」

 

「ウェンディ姉、代わるぜ」

 

 ロメオ、何処に行ったのかと思っていたら医務室に小型の魔水晶(ラクリマ)ビジョンを持ち込んでイーロン達と見てたのか。

 

 ロメオがナツさんを、イーロンがガジルさんをベッドに寝かせて、僕とウェンディで治療を始める。まあ、ただの乗り物酔いだからそこまで時間はかからないとは思うけどね。

 

「イーロン、もう大丈夫なの?」

 

「勿論ッスよ!兄貴、本当にありがとうございましたッス!!」

 

「だからもう良いって、多分僕が魔力を回復させなくても殆ど変わらなかっただろうし」

 

 とりあえずこの二人の治療が先決だ。ウェンディにはナツさんの方をお願いして、僕はガジルさんを治療し始めるか。幸い、ここには二人の食料…同系統の魔力があるから、気分が良くなったらすぐに腹一杯食べられる。

 

「ゴーシュ、ナツさんをお願いして良い?」

 

「え?僕よりウェンディがやった方が良いんじゃ?」

 

「それがね、前に私のトロイアが効かなくなっちゃったんだ…」

 

 そういえば、そんなことを聞いたような聞いていないような…どうしてだろう、思い出そうとするとこう…やり場の無い怒りが込み上げてくるような気が…?

 

 いや、そんなことを気にしている場合では無い。ウェンディがそう言うのなら、僕がナツさんの治療に入るとしよう。

 

 

 

 しかし、僕の治療法は聖結界(ホーリー)のみ。そしてこの結界はウェンディの魔法を参考にしているため、ウェンディの魔法の劣化版である。さらによく考えれば、ウェンディがナツさんを治療出来なかったのは修行前の話だ。もう既に修行前とは桁違いに上達している。つまり、ナツさんが治るのは僕がその事に気づいた後だったとさ。

 

 

 




平成が終わると言われても特に実感がわかない今日この頃です。
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