FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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二話連続投稿です!89話もありますので、そちらから先にお読み下さい!


第90話  ウェンディVS.シェリア

 ついに始まった、三日目バトルパート第四試合。ウェンディとシェリアの試合だ。ここからは僕も観客席で観戦をすることが出来るし、しっかり応援しよう。

 

「ウェンディ!頑張れ!」

 

「うん!行ってきます!」

 

 観客席から声をかけ、返事をしたウェンディを見送る…のだが、何も無いところで転倒。しかも何故か相手のシェリアという子まで転んでしまっていた。まさか、ウェンディ以外にそんなドジをする子がいたとは…

 

『実に可愛らしい組み合わせです!おじさん嬉しい~!』

 

 …実況の人が凄く気持ち悪いが、我慢するしか無い。

 

 

 

「行きます!」

 

「うん!」

 

「アームズ、バーニア、付加(エンチャント)!天竜の翼撃!!」

 

 最初に攻撃力とスピードを上昇させた一撃を放つウェンディ。しかしシェリアは身軽に回避した。

 

「躱した!?」

 

「北風よ!神の息吹となりて大地を駆けよ!天神の北風(ボレアス)!」

 

「ふっ!…うわっ!」

 

 地面を抉る黒い竜巻を躱したウェンディだったが、軌道を変えての二度目の攻撃は躱しきれず呑み込まれてしまう。

 

「ウェンディ!」

 

「大丈夫だよ、シャルル」

 

 竜巻の中で竜巻と逆回転の風を起こして相殺、ウェンディはほぼ無傷だ。

 

「凄い、コレ避けるんだね!だったら…!」

 

 無数の黒い風の刃。その全ての軌道を逸らし対処したウェンディ。シェリアはその間に真っ直ぐウェンディへと接近する。

 

「風よ、風よ!大地を抉り、空へ踊らせよ!天神の舞!」

 

「きゃあ!?」

 

 黒い風に巻き上げられたウェンディ、シェリアもまた空中に飛び追撃を当てようとするが、ウェンディは風で体勢を立て直し逆にシェリアの後ろを取る。そのまま風を纏った蹴りを放った。

 

「天竜の鉤爪!」

 

「くっ!」

 

二人は着地と同時に遠距離攻撃を選択。殆ど変わらない魔力の高まり方、体勢。シェリアという少女の魔法は、ウェンディと殆ど同じだ。そして、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)とよく似た魔法を扱う魔導士を、僕は知っていた。

 

 

 

「天竜の…!」

 

「天神の…!」

 

 

 

「駄目だ、ウェンディ!」

 

 

 

「咆哮!!」

 

「怒号!!」

 

 

 

 風と風がぶつかり合い、視認が困難な程の風が巻き起こる。風が収まり、ようやく見えたのは…無傷のまま立っているシェリアと、ボロボロで座り込んでいるウェンディだった。

 

 

 

 恐らくシェリアは、天空の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)なのだ。思い出されるのは、天狼島で相対した火の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)、ザンクロウ。ナツさんと戦い、圧倒した男だ。魔力を空にして神の炎を食べるという荒技でようやく倒した相手だ。滅竜魔法より、滅神魔法の方が一撃の威力は高いのだろう…ザンクロウは楽々と天狼島の巨大な木々を切り刻んだりしていたし、何より。

 

 滅竜魔法では滅神魔法を御しきれない。一度ナツさんがザンクロウの炎を食べられなかったのがその証拠だ。

 

 

 

「驚きました…」

 

「リオンから聞いてたんだ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に私と同じ魔法を使う子がいるって。ちょっとやり過ぎちゃったかな?ごめんね、痛くなかった?」

 

「平気です…戦いですから」

 

「折角だから、もっと楽しもう?ね?」

 

「私…戦いを楽しむって、よく、分からないですけど…ギルドの為に頑張ります!」

 

「うん、それで良いと思うよ!私も愛とギルドの為に頑張る!」

 

 …そういえば、ウェンディはこれまで敵としか戦っていないんだよな。せいぜい、やったのは修行した三か月で僕達と模擬戦くらい。好敵手(ライバル)と呼べる存在は、今までいなかった。戦いを楽しむという感覚が分からなくても無理はない。

 

 

 

 接戦が続くが…ウェンディが押されている。このままじゃ、勝てない。シェリアの方が攻撃系の魔法に慣れているような気もする。

 

 その事にウェンディも気がついたのか、一度シェリアから距離を取った。そして、周囲の空気を食べ始める。これは…あれをやるのか。

 

「あ、やっぱり空気を食べるんだね!じゃあ私も…頂きます!」

 

 ウェンディと同じようにシェリアもまた空気を食べ始めた。彼女もまた大技で決めるつもりなのか…でも、先に食べ始めたのはウェンディ。先に仕掛けるのもウェンディだ。

 

 

 

「滅竜奥義!!」

 

 

 

「ウェンディが奥義だと?」

 

「勝ったわね」

 

「行け、ウェンディ!!」

 

 

 

「これは、風の結界…!?閉じ込められた!?」

 

 

 

「照破・天空穿!!!」

 

 

 

 閃光のような風の波動。風の結界に捕らえられた時点で、確実に決まる。これが今のウェンディの全力の一撃だ。

 

 マトー君がシェリアに近づいた。このまま気絶しているのなら、これで…!

 

「シェリア、ダウンーっ!勝者、妖精の尻尾(フェアリーテイル)A――」

 

「あ、ごめんね!ちょっと待って!まだまだこれからだから!」

 

 

 

 シェリアが立ち上がった。服はボロボロになってしまっているが…傷が再生している。まさか、自分の傷の修復…?ウェンディでも無理なのに…シェリアは可能だというのか?これは、ウェンディに勝ち目は…!

 

 

 

「ふぅ~、やっぱ凄いね、ウェンディ!」

 

「こ、これは失礼しました!試合続行ですカポ~!」

 

「大丈夫?もう降参しとく?」

 

 そう言って心配そうにするシェリア。ウェンディはフラフラで、今にも倒れそうにしている。息も絶え絶えで…

 

「ウェンディ…」

 

 シャルルは心配そうにしている…このままじゃ勝つどころか、大怪我することだってあり得るんだ、心配しないわけない。

 

 僕だって、これ以上は無理して欲しくない。でも…ウェンディは真っ直ぐにシェリアを見ている。ウェンディが何を思っているのかが分かるから…止められない。

 

「私、戦うのは嫌いじゃ無いけど、勝敗が見えている一方的な暴力には愛が無いと思うの。降参しても良いよ?」

 

「…出来ません!私がここに立っているということは、ギルドの為に戦う覚悟があるということです!情けはいりません…私が倒れて動けなくなるまで、全力で来て下さい!!」

 

「ウェンディ…!」

 

 

 

「ウェンディ!!!」

 

「っ!ゴーシュ…」

 

「君なら、絶対出来る!!!滅竜奥義だって完成させたんだ!!まだ勝てないなんて決まってない!!!最後まで、力を振り絞るんだ!!!」

 

 

 

 僕は大声でウェンディにそう伝えた。彼女がこの三か月どれ程頑張ってきたのか、一番近くで見てきた。彼女の覚悟の大きさも、良く分かっている。だから、もう無理するな、なんて言わない。僕は、ウェンディを信じる。

 

 

 

「…倒れるわけには行かないんです。彼には、かっこ悪い所、見せられませんから!」

 

 

 

「そっか…それが貴女の覚悟、そして愛の力なんだね。だったら私も、それに全力で答えるよ!それが礼儀だし、これが私の愛!!」

 

 シェリアの周りに黒い風が吹き荒れる。しかしそれはやがて黒い羽のようになり、美しさも感じさせる。

 

「全力の気持ちには全力で応える…それが、愛!!滅神奥義、天ノ叢雲!!!」

 

 

 

 ウェンディにシェリアの大技が襲いかかる。が、シェリアの技は逸れていった。

 

「避けた!?」

 

「いや、外れた!」

 

「どういうことッスか?」

 

「ウェンディは傷の回復は出来ないけど、体力は回復出来る。今、ウェンディはシェリアの体力を回復させて勢いをつけさせて、外させたんだ」

 

 

 

「なんて戦法!?凄い…!」

 

「やぁーーっ!!天竜の、砕牙!!」

 

「うあっ…凄いよ、ウェンディ!!」

 

 

 

 ぶつかり合う、二人の小さな拳。シェリアも大技を外したことで魔力が大幅に減少している。ウェンディもシェリアに必死に食らいつく。

 

「ウェンディ…!」

 

「頑張れ…頑張れ!!」

 

 

 

 そして。

 

『試合終了―っ!!!この勝負、引き分け!!両チームに5Pずつ入ります!!』

 

 そのアナウンスが聞こえた瞬間、僕は観客席から飛び降りていた。

 

「ウェンディ!」

 

「ゴーシュ…!」

 

 座り込んでしまったウェンディに手を出し、ウェンディは僕の手を取って何とか立ち上がる。またフラついて倒れそうになるのを、抱きしめるようにして支える。

 

「…頑張ったね」

 

「うん…応援してくれて、ありがとう、ゴーシュ」

 

「うんうん、愛ってやっぱり良いよね!」

 

 そう言って、シェリアは僕らに歩み寄ってウェンディの治療を始めた。既に自分の回復は終わらせているようだ。

 

「あ、あはは…」

 

「楽しかったよ、ウェンディ」

 

「私も、少しだけ楽しかったです!」

 

「ね、友達になろう?ウェンディ!」

 

「は、はい!私なんかで良ければ…」

 

「違うよ、友達同士の返事」

 

「え?」

 

 

 

 シェリアは一歩下がって、僕はウェンディを自力で立たせる。

 

 

 

「友達になろっ!ウェンディ!」

 

 

 

「…うん!シェリア!!」

 

 二人は笑顔を浮かべ、握手を交わす。同年代の女の子の友達はウェンディにはいなかった…本当に良かったね、ウェンディ。

 

 

 

 …とりあえず気持ち悪いことを実況でさっきから言い続けてるあの人、どうしてやろうか。

 

 

 




今日でゴールデンウィーク中の連続投稿は終了になります!

元々お詫び&ゴールデンウィーク企画(作者が休みとは言ってない)で始めた連続投稿でしたが、何とか最終日を終えられて良かったです!今後は一ヶ月以上空けることがないよう精進して参ります!

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