FAIRY TAIL 守る者   作:Zelf

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短め&半分サブタイトル詐欺。




第96話  潜入

 大魔闘演武最終日。グレイ、エルザ、ジュビア、ガジル、ラクサスの五人がチーム全員参加の最終競技に挑んでいた頃。

 

ゴーシュが妖精の法(フェアリーロウ)の魔法術式習得の為に、初代の指導の下修行に励んでおり、一方でまたナツ達救出組は王城へと向かっていた。

 

 

「ん?おい、何だお前…ていうか誰だそいつ?」

 

「侵入者だ。あの妖精の娘を助けに来たんだろ」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)か!」

 

「うーん…今は陛下も国防大臣もいないしなぁ」

 

「牢に連れて行くしかなかろう、連れてけ!」

 

「了解」

 

「ん?おいおい、牢はあっちだよ」

 

「え?ああ、すまない。ここに配属されたのは最近でな」

 

 

 

 ミラが王国兵に変身し、ナツが捕らえられたフリをし忍び込んだ。城内へと続く道を聞き出し、周囲に人気がなくなった所でゴーシュから預かった圧縮の結界(コンプレッション)を取り出す。魔力を込めた右手でデコピンをすると、結界が壊れ中にいた四人と三匹が姿を現した。

 

「ふぅ~!何とか成功ッスね」

 

「やっぱりゴーシュの魔法って便利ね~」

 

「サイコロみたいな大きさなのにあんなに広いんだもんな…他にも結界沢山あるしな」

 

「とりあえず進むぞ!待ってろよ、ルーシィ!」

 

「姉さん…絶対に、助けるから!」

 

 ナツの後に続くのは、ウェンディとミラの他にエクシード達三匹。そして、本来ここにいない三人の人物がいた。ロメオ、イーロン、ミッシェルの三人である。

 

 この三ヶ月の修行により大幅に成長した三人を見込んだゴーシュの推薦で、救出チームに加わったのだ。自分の代わりに、仲間を助けてくれと頼まれて。最も、ミッシェルは自分から立候補していたが。

 

「あそこだ!」

 

「ナツ兄、もうちょっと静かに!」

 

 ナツの嗅覚を頼りにしながら進み、ルーシィの下へと辿り着いた。牢の中にはユキノもおり、二人とも気絶しているようだ。小声でルーシィにナツは声をかける。

 

「おい、ルーシィ!ルーシィ!」

 

「ん…ん?ナツ!皆も!私ね…んぐっ」

 

「シーッ!静かに!」

 

「ご、ごめん」

 

「皆様、どうやってここまで…」

 

「いいから、少し下がってろ」

 

 牢の鉄格子をナツが掴み、熱によって形状を変化させ進入口を作る。

 

「着替え、持ってきたわよ」

 

「ご飯もあるよ!」

 

「ユキノさんの分もありますよ」

 

「いえ、私は大丈夫です」

 

「姉さん、無事で本当に良かった~!」

 

「ミッシェル、分かったから着替えさせて~!」

 

「二人とも、覗いちゃダメよ?」

 

「何で俺達に言うッスか!?」

 

「それ、真っ先にナツ兄に言うべきじゃねぇの!?」

 

「…あれ?ルーシィさん、ポケットに――」

 

 

 

 ミラとウェンディが牢の中にあった大きな布を持ち、ルーシィが着替えている最中にそれは起こった。突如地鳴りがし始め、牢屋内の床が抜けたのだ。

 

 

 

「うわぁ!?」

 

「ちょ!?着替え中なんですけど~!!」

 

「確か…この辺りに……!」

 

 

 

 ウェンディはルーシィが先程まで来ていた服のポケットを探る。その中には、ゴーシュのパートナーデジモンの一体が入った圧縮の結界(コンプレッション)が入っていた。ゴーシュが解除する予定だったが、まだ予定していた時刻ではない為、ウェンディは魔力を込めてそれを叩く。すると――

 

 

 

「ん…やっと出番?あら?」

 

 

 

 中にいたのは、プロットモンが完全体まで成長した姿だった。成熟期のブラックテイルモンからさらに進化し、ミラと同じくらいの大人の女性のようであり、しかしその姿は悪魔や吸血鬼、ゾンビを連想させるものだった。

 

 

 

「だ、誰だお前!」

 

「なんか出てきた!?」

 

「酷い言われようね…プロットモンよ、今はレディーデビモンだけどね。貴方達も飛んだら?余った人は任せなさい」

 

「でもこの人数じゃ…」

 

「問題ないわ。ダークネスウェーブ!」

 

 

 飛翔を可能としているレディーデビモンは、ロメオとイーロン、ミッシェル、ルーシィ、ユキノを自らが出したコウモリのようなエネルギーの塊を無数に出し、それらを足場にすることでゆっくりと下降する。

 

 ナツ、ウェンディ、ミラはエクシード組が助け、しばらく下降し続けると広い空間へと着いた。

 

 

 

「ありがと、プロットモン…じゃなくてレディーデビモン!」

 

「呼びづらかったらそのままでも良いわよ?ルーシィ」

 

「それにしても…随分落とされちゃったな」

 

『ようこそ、奈落宮へ』

 

「あん?」

 

「誰?」

 

 その女性の声は、この空間に反響しておりどこから話しているのか分からなくしているようだ。

 

「…近くには人はいないわ。私達だけ」

 

「そうなの?じゃあこの声って…」

 

「通信用魔水晶(ラクリマ)か」

 

『見事に罠にかかりましたね』

 

「罠ですって?」

 

『辺りを良く見なさい。ここは死の都、奈落宮…罪人の行き着く最後の自由。しかしここから出られた者は一人もいない。そこで朽ちていくが良い、賊よ』

 

 足下には白骨化した死体が、そこら中に転がっていた。声を信じるなら、これらは犯罪者達の成れの果て、ということになる。

 

「誰だよテメェは!」

 

『私はフィオーレ王国王女、ヒスイ=E=フィオーレ』

 

「じゃあ、この城のお姫様?」

 

「こわっ…!」

 

「くっそー!出口どこだ、出口―っ!!」

 

「…何も聞こえなくなったッスね」

 

「でも、出口は上だろ?落ちてきたんだから、また飛んで戻れば…」

 

「いくら私でも無理よ?さっきだって出来れば上に戻っていたわ」

 

 ロメオの提案にレディーデビモンは小さく首を横に振る。出口と思われる場所は既に何かの仕掛けで隠されたようで、上は岩の天井が広がるだけ。もし出口が見えていたとしても、飛んで戻るには何度も往復して運ばなければならないのだ。

 

「どうする?ナツ兄」

 

「オイラ達が辺りを見てくるよ!」

 

「それが得策だろう」

 

「そうね。アンタも手伝いなさい」

 

「えぇ。勿論よ、シャルル」

 

「なんか、やりづらいわね…」

 

「いつもはシャルルのこと、お姉ちゃんみたいに懐いてるもんね…」

 

 

 

「ハァ、ハァ…」

 

「ゴーシュ、大丈夫~?」

 

「あ、ああ…まだ、大丈夫だよ」

 

 僕は今、自分で作った圧縮の結界(コンプレッション)の中で特訓をしていた。今頃、ナツさん達は…さっき、圧縮の結界(コンプレッション)が解除されたのは分かったから、ルーシィさんとユキノさんの二人と合流したと思う。プロットモン、ちゃんと仕事してるかな…いや、完全体のレディーデビモンになっている時はシャルルに似た感じだから大丈夫だと思うけど。

 

「ゴーシュ、戻ったよ」

 

「ドルモン…どうだった?」

 

「やっぱり魔水晶(ラクリマ)ビジョンで中継されてたよ。さっきグレイがルーファスを倒してた」

 

 大魔闘演武最終日は、このクロッカス全域をフィールドとしたバトルロワイヤル。他のチームメンバーを一人倒す毎に1ポイント、チームに一人だけいるリーダーを倒すと5ポイントが加算される。最後に点数が高かったチームが優勝だ。

 

 圧縮の結界(コンプレッション)は本来、作った後に結界の中に入ることは出来ないんだが、術式を組み合わせれば特定の者だけ出入りすることが出来る。といっても、一名だけだが…防御結界(ディフェンド)と同じく解除された際に僕が感知出来るし…作って良かったな。

 

 それにしても…大魔闘演武も着々と終わりが近づいてきている。既にグレイさんがルーファスを倒したのなら…残された猶予はもう殆ど無い。

 

「時間がない。急がなきゃ…」

 

妖精の法(フェアリーロウ)は習得出来たの~?それが出来てれば何とかなるんでしょ~?」

 

「いや…それだけじゃ不可能だ。クロッカスにいる皆をドラゴンから守る結界魔法を完成させなきゃいけない」

 

「え?それってもう完成してるんじゃ…」

 

「構想は、ね。ただ、今実験してみて分かった。やっぱり問題なのは消費魔力量と持続時間…それに、発動に時間がかかりすぎる。問題が山積み過ぎるんだ」

 

 

 

 消費魔力と持続時間に関しては大量に用意しておいた循環の結界(サイクル)を使って、それでもようやく発動が可能なレベル。持続時間も…今のままなら数十秒くらい。そもそもこの持続時間にしても、対象毎に変化する。

 

 数値化させると分かりやすい。例えば今この場にいるドルモンとパタモンにそれぞれ耐久値が100のバリアを展開すれば、当然二人のバリアの消耗は変わる。ドルモンが10ダメージを受けた時に、パタモンが20ダメージを受けていることもあるのは当然だ。

 

 僕が今言った結界の持続時間は、何も攻撃を受けてない状態での持続時間という意味だ。

 

 

 

「どうも、魔法展開が上手くいかない…何が足りないんだ」

 

「単純に魔力が足りていないんじゃないか?まだゴーシュの今ある魔力しか使わないで五分以上発動できていたんだよね?」

 

「いや…君たち二人だけなのにたった五分だ。さっきパタモンだけだったら、大体十分くらいだった…消費魔力も対象の数によって倍々と考えて……僕達や他のギルドメンバー全員となると……」

 

 

 

 計算は間違ってない。今の妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーはかなり少ないが、他のギルドは昔よりも増えているだろう。しかも、恐らくドラゴンとの戦闘に参加する魔道士はまだ大勢いる。何せ、脱落した沢山の魔導士ギルドのメンバーもいるのだから。

 

 術式によって補正があるのに、今の実験の結果だと大勢いる魔導士達を守ることが出来るのは本当に一瞬だ。どうやら耐久値に関しては変わらないようだが…これではたった一撃防いだだけで解除されてしまうことになる。

 

 

 

「ゴーシュも魔力量上がってるはずなのにね~」

 

「でもさっき、術式で補正しても大して変わらなかったんでしょ?」

 

「…術式の補正が、効かない?外からの魔法を、受けつけていない…それって――」

 

 

 

 それって、僕の中の問題ということになる。心当たりがあるとすれば…一つしかない。

 

 

 

僕の中の魔水晶(ラクリマ)。それは、滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)のこと。緑竜の滅竜魔法を使う力の根源だ。

 

 確かに、あり得る。緑竜の力はまだその全てが分かったわけじゃない。最初は、魔法を切り裂く特性を持っているのかと思っていた。以前、バイロさんと戦った時に魔法を全て無効化されたにも関わらず緑竜の力が暴走したのは、バイロさんの無効化の魔法そのものを切り裂いたからではないかと。

 

 でも、違った。ジュラさんとの戦いで僕は気づいた。緑竜の特性は、魔法を切り裂くのではない。緑竜の魔力は、ジュラさんの魔法を分解していた(・・・・・・)

 

 

 

「まさか…僕自身が発動する結界魔法にも作用しているのか」

 

「何か分かったの~?」

 

「…うん。でも、どうすれば良いのか分からない」

 

 

 

 僕の体内の魔水晶(ラクリマ)を取り出す?そんなことが出来るなら最初からやっているんだけど…ここにきて緑竜の滅竜魔法が障害になるとは思わなかった。

 

 封印とかも…いや、結界魔法(バリアー)で作るにしても時間が足りなさすぎる。誰か、封印系の魔法を使える人、もしくは僕の中の魔水晶(ラクリマ)を取り出せる空間系の魔法を使える人がいれば…――

 

 

 

「…仕方無い。もう少しここで術式の改良に努めよう。二人とも、実験に付き合ってくれ」

 

「分かった」

 

「りょうか~い」

 

 この後、僕は何とか魔水晶(ラクリマ)の力を完全に抑えることが出来ないか色々試して見るも失敗に終わってしまうのだった。

 

 

 


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