第一層迷宮区
ツナはフードを被った女の子の戦闘をジッと観察していた。モンスターとの戦闘を終えて安全エリアへと帰ってくる女の子に
「あんな戦い方だと身がもたないよ?」
「何?文句あるの?貴方には関係ないでしょ。」
ツナはつい声をかけてしまうが、女の子は余計なお世話と休憩するために座りこんでしまう。
「私ははやくこの世界から脱出したいのよ。」
「なら俺と組まない?」
ツナがジッと見てきたため、女の子はつい自身のことを語ってしまう。ツナはそんな女の子に微笑みながらパーティを組もうと手を差し伸べる。
「貴方の実力を見せてくれたら考えるわ。」
「わかった。でも他言無用にね。」
ツナは日本刀をストレージから取り出しフィールドに駆け出す。するとモンスターが三体出現する
「「「グルルルゥゥ!」」」
「ハッ!鮫特攻!」
ツナはスクアーロから教わった技で一直線に突き進みモンスター三体を一瞬でポリゴン体へと消滅させた。
「!!!」
「大丈夫?ボーッとしてるけどどうしたの?体調が悪いならちゃんと休まないと。」
ツナは安全エリアへと戻ってきており、女の子が放心していることに気がつくと、顔の前で手を振り健康状態を心配する。
「大丈夫よ。貴方いまの技は?ソードスキルではないわよね?」
「システム外スキルかな。剣は師匠がいてね。その人が使っていた技なんだー」
ツナはニコニコと微笑みながら女の子の横に座り技の説明をする。
「そう。」
「俺とパーティ組んでくれる?」
ツナはコテンと首を傾げながら女の子を見つめる。
「私はアスナよ。よろしくね。貴方・・・男性でいいのよね?」
「ンナ!!俺は男性だよ!!アスナちゃんね。俺はツナ。よろしく!」
「アスナでいいわよ。私も呼び捨てで呼ばせてもらうわね。」
アスナはフードを取りツナに握手を求める。ツナも握手に応じてニコニコしながらパーティ申請をした。その際にアスナの顔は若干赤くなっていたがツナは気にしなかった。
「とりあえず、連携を試さない?スイッチとかわかる?」
「スイッチ?」
どうやらアスナは連携技を知らないらしく、このまま連携技のレクチャーをすることにした。
「フゥ 今日はこの辺りにしとこうか?宿に戻るけどどうする?」
「私はいいわ。」
「そう?女の子を一人残すのも気がひけるけど・・・お風呂に入ったら戻ってくるね。」
「え!?ちょっと待ちなさい!」
アスナは帰ろうとするツナの後ろ髪を掴み引っ張る。
「ンゲ!!」
「あ、ごめんなさい。」
「いいけど。どうしたの?」
ツナは急に髪を引っ張られたことで、後ろに倒れてしまい変な声をあげてしまう。アスナは指をモジモジとさせていたが意を決したのかツナに詰め寄り
「いまお風呂って言ったわよね?この世界にもお風呂があるの?」
「え!?第一層には限定的にだけどお風呂がある所があるんだけど、ちょっ近い近い!!」
ツナはアスナが顔を近づけてきたことに対して動揺してしまい座り込みながら後ろに下がる。
「いいわ!ツナの家で食事にしましょ!」
「ハ!?フィールドに残すよりかは安全だからいいけど、俺も男だよ!」
「あら?ツナなら大丈夫でしょ?」
アスナはツナの手を取り街へと続く道を走り出す。
宿屋にて
「大丈夫だとは思うけど・・覗かないでよね。」
アスナはジト目でツナを一瞥するとお風呂へと歩き出す。
「ハァ ナッツおいで。」
「ガウッ」
ツナはため息をつきながらアニマルリングからナッツを呼び出す。ナッツはツナの膝の上に座り身体を伸ばし欠伸をする。ツナは宿屋に着くまでに嫉妬めいた視線を感じて疲れていた。
なぜかというと、ツナの隣を歩くアスナがフードを取り、満面の笑みで歩いていたからである。ただでさえツナはイケメン(本人に自覚なし)で女性プレイヤーのファンクラブまで存在しているため男性プレイヤーからのやっかみが多いのだ。
SAO内に閉じ込められてから死亡した人数は1900人程度であり、そのほとんどが男性プレイヤーだった。
ツナは持ち前の超直感で女性プレイヤーの危機に駆けつけて助け出していたのだ。移動には夜の炎を使用していたため時間のロスもなく神出鬼没な扱いを受けていた。
「ハーー 久しぶりにさっぱりしたわ。お風呂ありがとう。」
「どういたしまして。食事にしようか?といってもパンしかないんだけどね。」
アスナがタオルを被りながらラフな格好で出てくると、気持ち良さそうな雰囲気でお礼を言う。周りに花が舞っていても可笑しくない笑顔をしていた。ツナも笑顔で返し、パンをストレージから出してクリームと一緒にテーブルに並べる。
「これは?」
「クエスト報酬のクリームだよ。これを付けると美味しくなるから試してみなよ。」
アスナはクリームを初めてみたらしく困惑しながらパンに塗るが、一口食べた後はガツガツと残りを食べ進めていた。
「美味しかった。ところで膝の上にいる生き物はなに?」
「ん?俺の相棒だよ。ナッツって言うんだ。」
「ガウガウッ」
ナッツはツナの膝の上からアスナの膝の上に飛び移る。するとアスナは手をワナワナとさせて目を輝かせ
「可愛い〜!ナッツちゃんって言うの?見た目は燃えてるのに暑くないのね。フサフサでモフモフ〜」
ツナはアスナとナッツの絡みを微笑みながら見守っていたが、我に返ったアスナが細剣をストレージから取り出し、ツナに突きつけて
「忘れなさい。」
「アスナは可愛いね。「ヒュンッ」・・・・了解。忘れます。」
ツナはアスナを褒めるが、顔スレスレに細剣が通り過ぎると首を上下に振り忘れると誓う。
「とりあえず、明日も迷宮区に潜るのよね?」
「そのつもりだよ。朝から行く形にするけど大丈夫かな?あと、ひとつ説明しておくね。俺とパーティを組むと大空の加護という特殊ボーナスが発生するんだ。効果は全てのステータスが2倍になるのと経験値も2倍になるんだ。」
「なによそれ。ならみんなとパーティを組めばはやいんじゃない?」
アスナはツナの口から出たトンデモ設定に驚く。
「誰でも構わずではないんだよ。相性も関係しているみたいで中々発生しなかったんだけど。アスナには発生してるから、アスナと俺は相性がいいのかもね。」
「!!もう寝るからまた明日ね。」
ツナはアスナを見つめながら満面の笑みを向ける。アスナは顔を真っ赤にしてベッドに潜ってしまう。
「え?(泊まるの?)」
ツナはアスナの行動に驚きはするが、深くは考えずにイスで眠ることにした。
大空の加護はツナに対しては標準装備です。