卵焼きの味付けはいつも迷う。
それもこれも、2人の娘の好みが違うせいなんだ。上の娘、まほの好みは出汁が入った少ししょっぱい卵焼きなのだけれど、下の娘、みほの好みは砂糖がどっさり入った甘い卵焼き。ちなみに私の好みは味付け薄めで、ケチャップをしっかりかけたやつ。
なのでいつも卵焼きの味付けには困ることになる。それでもその日頑張る子の好みにするんだけれど、今日はみほが黒森峰に入学して、一年生にして副隊長に抜擢された事と、まほが隊長として初めての対外戦が重なってしまった。どうしよう。
迷っていても時間に押された体は止まってくれず、ぼーっとしている間に卵は6こ用意。フライパンに油も敷いて、手元には砂糖とだし醤油。まて、両方はまずい、味が濃くて私が食べたく無い。仕方がないので先に手に取っていた砂糖を入れることにする。ごめんね、いつもお姉ちゃんに我慢させて、だめな母親だなぁ。
夜はカレーにすると決めて、心の買い出しメモにリンゴを書き足す。じゃがいもは足りてるし、玉ねぎも頂き物がまだまだある。人参は少し足りないかも知れないから買って…
卵が焦げかけるのを慌てて救助する。あぶないあぶない。今日は砂糖入れたんだから焦げやすいのを忘れてた。よし、大丈夫。
今日はタケさんが体調を崩されてるから1人でお弁当を作ってるんだけど、その度にタケさんがどれだけ偉大かを思い知る事になる。タケさんの動きは決して早くないのだけれど、迷うことがないから流れるように全部が進む。
私も一緒にいるときはその流れに身を任せながら学んでいるんだけど、自分がらその流れを作るまで後何年かかるのやら。将来、まほに花嫁修行を付けてあげられるようにもっと頑張らないと。
さて、卵焼きを切って、冷蔵庫から昨日のさわらのソテーを取り出す。一口サイズに切りなおして、あとは野菜か。夏野菜を電子レンジで温めて簡単な温野菜にして、プチトマトを添える。最後に冷ましたご飯を入れて完成だ。
あとは2人が降りて来る頃に合わせてソーセージを焼いて、レタスのサラダを盛りつければオッケー。
ちょっと休憩して朝のニュースに目をなげる。
大変面倒な政治の話をしている。コストのかかる学園艦の統廃合か…少子化も進んでいる以上その話になるのも当然だけれど、やっぱり寂しいものがある。それに学園艦の学校はキャラクターの濃い学校が多い。同じ年頃の娘がいるからか、統廃合する学園艦が妙に気になってしまった。
「おはようございます、母さん。」
「お母さんおはよう~」
おはよう、と2人の娘に挨拶を返す。まほはきっちりと着替えも済んでいるけど、みほはボコのぬいぐるみを抱えているところを見ると寝起きらしい。今日は服だけは着替えているのが逆に不安だ。ソーセージはケチャップを使わなくていいようにバジルのやつにしておこう。
黒森峰の制服は黒いから汚れは目立ちにくいけど、みほなら予想外の汚しかたをするから油断できない。生まれた時から見ているのにまだこちらの予想を超えるリアクションの引き出しがあるなんて、笑いの神にでも愛されてるのだろうか。
まほにお願いしてみほを洗面所に誘導してもらう。いつも思うのだけれど、完璧に車とか戦車の誘導と同じ扱いでみほを誘導するのは、まほのジョークなのだろうか。ぴっぴっぴ、と笛の声真似をしてみほを連れて行くまほは、真面目な顔をしているけどノリノリだ。
さて、朝の面白映像も見れたし、さっさとサラダを盛ってしまおう。ドレッシングは出来合いので好きにかける事にする。マヨネーズで有名な会社のドレッシングは私の趣味だ。
「今日はお母さんも見にくるの?」
との質問はみほの言。ちょっと不安そうな声で上目遣いに聞いてくるそれは誰に教わったんだろう。私でも出来ない高等技術をさらっと使いこなす娘に戦慄しつつ、ちゃんと師範として激励に行くと伝える。
小さく飛びながら「やった」と笑うみほ。可愛いなぁ。なんでこんな可愛い事が出来るんだろう?しほの背後霊というか、しほだけに見える相談相手やってた時もしほはこんな事しなかった、というか出来なかった。まぁ、私が2日に一回の徹夜散歩してる時にご主人に対してしてたかもしれないけど。
今日はまほのうっかりも無く、平和に朝食が済んだ。いつものタクシー会社さんに来てもらって2人を送ってもらう。さて、朝のうちに少しずつ書類をやっつけないと。
ウチの子達は強い子だけど、順風満帆でずっといられるわけじゃない。今日もたくさん反省する所が見つかって、後悔するだろうからしっかりビデオ撮っておこう。娘たちの成長記録はしっかり撮ってちゃんと保存しとくのは親のつとめで、楽しみだ。午後からの試合を楽しみに、私はパソコンの前でキーボードと戦う事にした。