西住しほの朝は早い   作:九段下

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西住さんちのお買い物。

「母さん、これはちょっと、恥ずかしい…」

 

そう言いつつ、薄いブルーのワンピースと幅広のベルトを着たまほは軽く回ってくれた。

 

恥ずかしいと言いつつ、まほの口元はちょっとだけ笑っている。少女趣味(山盛りレース)でもないし、露出だって多くない控えめな服は安心感があったみたいで、まほも気に入ったみたいで良かった。胸元が少し開き気味だけど、下品ではないレベルに抑えてるのがいいね。これも買っておこう。

 

私こと西住しほ(仮)は、小学生の頃から変わってなさそうなまほの服のセンスを治療するために、今日はショッピングモールまでお出かけしている。男の子を連れて来て欲しいわけではないけど、かと言って男の子に反応されないのも親としては悔しい所。何としてもまほの私服を一新し、まほのファッションセンスを磨かねばならない。脱ヌニクロ宣言だ。

 

ヌニクロも良い素材で品質と機能は良いのだけれど、女の子を飾るには少し足りない。男性から見ると細かい違いなんだろうけど、こっちとしてはその違いに必死だ。

デザインと質感が両立されたものを、しっかり選ばないと悲しい事になる。形だけ良くてもチープに見えたらもうお終いだし、質が良くてもデザインが少し古いだけで他の服と合わなくてコーデに無理が出る。

男性で言うところの車のデザインとエンジンとか、ガンダムのツノとビームの違いである。たとえ理解されないとしても妥協しちゃいけないラインがある。

 

「隊長!すごく可愛いです!た、隊長が可愛い!ほらみほ見なさいよ!あんたもこんな感じ目指すんだからね!黒森峰ディスってる奴らを完璧な衣装で蹂躙してやるんだから!」

 

と、私の隣で元気に飛び跳ねているのが逸見さん家のエリカちゃん。こっちは本物の少女趣味だ。ゴシックロリータ系のファッションと、差し色に使った黄色のジャケットが可愛らしい。

 

いつもどこかしらがしましま模様のまほにも教えてあげて欲しいので、今日は無理を言ってついて来てもらった。というか、まほの私服改造計画を語ったらすごい勢いで食いついて来たのでどうせなら、と誘ってしまった次第。

 

どこから見つけてくるのか、妙にフリルの多い服を見つけて来てはまほに苦笑いされていて心強い限り。これくらい押しが強くないとこの子は折れないから、どんどんやっちゃって欲しい。まほが諦めてからが今日の本番だ。

 

「服で蹂躙って…エリカさん何と戦ってるの?プ◯キュアみたいにフリフリで戦うくらいなら、パンターの方がいいと思うんだけど…」

 

「ア、ン、タ、こ、そ!何を吹き飛ばそうとしてんのよ!私は隊長の事悪く書いてたあンのクソ編集吹き飛ばしてやりたいって話をしてんの!ウチの隊長が力押ししかできないですって?その調整がどんだけ辛いかわかって無いのに口出すなってーのよ!」

 

すかさずにトボけたことを言ってくるみほに、打てば響くタイミングで返すエリカちゃんは私にとって本当にありがたい援軍だった。まさか1人でこんなにツッコミを入れてくれるなんて思わず、かなり楽になってると同時に申し訳なくなってくる。

学校でもいつもこのノリなんだろうな…今日のお礼に何か服を買ってあげることにしよう。

 

「あの記事は酷いよね。それこそパンターの出番だと思うんだけど。タンカストロンに来てくれないかな、あの人。思い切り近くで砲撃合戦してあげるのになぁ。」

 

帰って来たみほが持っているのも、まほ用の服らしい。みほのチョイスは花柄のオフショルダーのトップスと白のワイドパンツ。堅実な所で攻めて来たというか、今の流行に乗りつつも明らかに使い回しを考えたラインナップ。

 

絶対に1人で起きれないボケ担当の子が、1番今日の趣旨を理解してキラーパスを持ってくる。直感というんだろうか、事態に対しての対応力は流石だった。何か黒いことを言ってるのは聞かなかったことにしよう。

 

「エリカ。これは勘弁して欲しいんだけど…」

 

「だめです!隊長は綺麗なんですから、もっと服も飾らないと!せっかく戦車道で女子力上げてるんですからここで手を抜いちゃだめですよ!」

 

若干青ざめた顔で許しを請うまほに対して、いつになく強気のエリカちゃん。今日はバックに私がいる事が分かってるからだろうか。時々ちら、とこちらに視線を投げてくるので力強く頷いてあげることにする。西住流に撤退はない。

 

「お姉ちゃんもだけじゃなくてエリカさんは何も着せなくていいの?お母さん。」

 

今度はこっそりとこちらに近づいて聞いてくるみほに、さっきからエリカちゃんが立ち止まっているポイントを教えて、一着お店の人に取り置きしておいてもらう様にお願いした。

 

そうするとみほは、2人の話に少し対応してからさっさと教えたポイントに移動していく。あの子、今日はサポートばっかりだから次はみほの服を選ぶことにしよう。疲れてきたまほにも、人の服を選ぶ、という理由で自主的に選ばせてみたいし。

 

さて、あの子は自分に似合う服を自分で選べるし、今度はちょっと値段的に手を出しづらい小物とストラップサンダルを見に行こう。もう少し、たまの休日を楽しんで居たかった。

 

みほとエリカちゃんにもいろんな服を着せて楽しんでいると、すぐさま時間は過ぎてしまった。名残惜しいけど、今日は夕食を食べて帰ることにしよう。

 

近くのハンバーグレストランに電話で予約を入れていたので、そこにタクシーで移動することにした。荷物は自宅に送ってもらう事にしたので、4人でも一台に乗れたのは助かった。後ろの三人が窮屈そうに、でも楽しそうに笑っている。

両端を娘たちが陣取って、エリカちゃんを挟んでお互いに倒れかかっていた。エリカちゃんが顔を真っ赤にしているけどどっち娘のせいだろう。運転手さんはおじさんなんだから、変なイタズラしてないといいんだけど。

 

結局エリカちゃんは、テンパっていたせいかメニュー読めず、指差した場所も悪かったせいで1ポンドハンバーグなんていう大物と戦う羽目になり。早めに救助しないと必死になって食べそうだったので、鉄板で来たタイミングで半分いただく事にした。

 

野菜多めで小さめのセットを頼んでおいて正解だったみたいで、エリカちゃんの「助かった!」という表情にほっこりする。

 

うちの娘たちは、本当にいい友達に恵れたみたいです。

 




区切り悪くて申し訳ないけど、今日はここまでで失礼。次からは短編2話で一回の投稿にしますので、ここまでの話もそのうち統合します。
突然降りてくる西住さんちは、楽しそうです。
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