プリキュアオールスターズ×仮面ライダー~bの復活とsの暴走 ~ 作:鈴木遥
・ヒビキは戸惑っていた。
いや、想定外の事態にはこれまで幾度となく遭遇した。
だが、こんな相手には逢ったことがない。
「音撃打が、効かない......!?」
京介は、思わず声に出した。
本来、ダメージを与えるだけなら、鬼にさえなれればいい。
だが、完全に浄化、消滅させるには、“音撃技”を叩き込む必要がある。
ラッパ、ギターなど用法はさまざま。響鬼の場合は、敵の体にディスクをセットし、両手の音撃棒で直接打撃を加える大技。
なのだが......。
今、二人の前にいる怪物はそうではない。
「何回叩いても消えないだと!一体どうなってんだ!?」
「落ち着け京介、こういう時は......。」
落ち着いた表情でたしなめるヒビキ。
「ヒビキさん、何か策が?流石です。」
「『ラッキースプーン』戻ってカップケーキ買おう。」
「関心して損したわ!誰か救急車呼べ、もう駄目だこの人!」
「音撃技って......?」
横で弱ったアコが、不思議そうにヒビキを見た。
「......あの化け物、魔化魍を倒す為の奥義さ。ディスクをセットして、この赤い棒で何度か叩けばいい......ハズなんだけど......。」
「今、効いてませんでしたよね?」
嘆く京介に、アコは首を振った。
「あれ、その魔化魍って奴じゃないと思います。」
「......ん!?」
ヒビキは驚いて目を丸くした。京介はすかさず反論する。
「何言ってんだ!?あの妖怪みたいな化け物、どう見たって俺たちの専門分野......。」
「黙れ京介。アコちゃん、どう言う事か教えて貰えるかい?」
アコは、まるで思い出話の様に語り出した。
かつて、彼女達『スイートプリキュア』と、哀しみの音楽を司る『マイナーランド』と『魔王ノイズ』との戦。
その時用いられた尖兵が、超音波を駆使して人の心を貶める怪物、『ネガトーン』だったのだ。
全ての元凶であるノイズを始め、『マイナーランド』の全員と和解。ネガトーンは愚か、『マイナーランド』自体が自然消滅した......ハズだった。
「じゃあ何で、そのネガトーンがまだここに!?」
「分からない。
「キツネだろ?......どう見たって......。」
「バカ京介。ここ来るまでに、キツネのいそうな場所が有ったか?アレはキツネをどうこうしたモノじゃない。アレは魔化魍でもネガトーン
音撃技が効かないとはいえ、あれだけの猛攻を受けても怪物は弱る気配を見せず、尚も周囲のモノを破壊し続ける。
建物を、屋台を、アコを含む加音町民達が念入りにメンテナンスし、我が子の様に大切にして来た楽器の数々を、やっと恋人になれた少しバカな
アコは悔し涙をこぼし、歯を食い縛った。
なぜ、突然現れたコイツに、全てを壊されなければならない、奪われなければならないの?
私たちが、一体何をしたっていうの?
「泣くな、アコちゃん......。」
「......!?」
「フェスティバルなら、またやり直せば良い。楽器なら、皆で直せばいい。幸い、人間にはこの町にうってつけの、声って物がある。彩りが欲しけりゃ、オレと京介がこの格好のまま一緒に歌うから......。」
「ちょっ......ヒビキさん、何でオレまで!?」
「何?文句ある?」
反論する京介を、ヒビキはかるく睨んだ。
「すいません、ないっス。」
「......ありがとう。」
良いってことよ、と言う代わりにヒビキは優しく微笑んだ。
「ま、とにかくだ......コイツ倒すぞ!」
「「「はい!」」」
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15分前。教会裏、仮説テント内:響&奏&エレンサイド。
「遅いわね......。」
中々来ない選手呼び出しの係員に、エレンは思わず愚痴
を溢した。
響は相変わらず、オドオドとピアノに向かっている。
そろそろ外の様子を見に行こう。奏が呟いた時、どこからかよく知る声が聞こえた。
「大変ニャーーーー!」
スイートプリキュアのパートナー妖精、猫のハミィが、いつの間にかテントに入ってきていた。
「ど、どうしたの!?今日は、アフロディテ様に呼び出されたって......。」
「そこでとんでもないはニャしを聞いたニャ、とにかく皆をここから逃がすニャ!」
「逃がすったって、この大がかりなフェスティバルを中断するって!?一体何が起こってるってのよ。」
いきなり現れて無茶な注文をしたハミィに食ってかかる響。
だが、それに全く動じない程、今のハミィは焦っていた。
「フェスティバルどころじゃないニャ、戻って来るニャ、アイツが......ブラックホールが......!」
「ブラックホール?ハミィ、誰それ。」
「そうだ。セイレーンは知らないんだニャ!まだスイートプリキュアが響と奏の二人だった頃、他のプリキュア達と一緒に倒した『邪悪の神』の名前だニャ。」
「そいつが何でまた戻って来んのよ?」
気だるそうに受け答える響。何かを言おうとしたハミィの口は、突然響いた爆音に書きけされた。
ドォォォオン!!!
直後に響く、世にもおぞましき唸り声。ネガトーンとも違う、聞いたことの無い重低音だが、幸か不幸かこの妙なフィーリングは嫌と言うほど経験して来た。
テントの外では、二人の鬼の様な戦士と、キュアミューズが倒れている。
「アコ!!大丈夫!?」
「この人達は......!?」
奏とエレンが響鬼達に駆け寄ると、重そうな体を引きずり、フラフラと立ち上がった。
「ああ生きてる、大丈夫......畜生、あの化けモンどうすっかな。」
「どうするって......あなた、あれはプリキュアの専門よ!?あなたにどうする事も......。」
ミューズが弱った声で説明した。
「違うのエレン、アレはただのネガトーンじゃない。この、ヒビキさん達が戦って来た『魔化魍』って怪物の力が混ざってる......。」
「そんな......何でそんなモノが......!?」
「やっぱり!!『ブラックホール』が尖兵を使わしたせいかニャ。」
恐怖で立ちすくむエレンとハミィを前に、響はガッツポーズを見せた。
「何にしても、ここで決めなきゃ女が廃る!」
「気合いのレシピ、見せてあげるわ!」
「...そうね。やっぱり、心のビートは止められない!」
それぞれオリジナルの決め台詞を披露すると、懐からアコと同様の『キュアモジューレ』を取り出した。
『『『レッツフレイ・プリキュア・モジュレーション!』』』
三人が、赤、青、白のプリキュアに変身すると、ヒビキはあんぐり口を開けた。
「え!?何?プリキュアって......アコちゃんだけじゃないワケ!?」
「はい、そうなのでした。っつー訳で、アコ!
『爪弾くは荒ぶる調べ、キュアメロディ!』
『爪弾くはたおやかな調べ、キュアリズム!』
『爪弾くは魂の調べ、キュアビート!』
『爪弾くは女神の調べ、キュアミューズ!』
『響け、四人の組曲。スイートプリキュア!!』
決まった、久しぶりに決まった!と、ここでもリーダーが自画自賛する中、敵は攻撃を開始した。
カラータイルの地面が抉れる程の超音波。六人はたまらず耳を塞いだ。
メロディとリズムはいち早く反撃に出るが、敵は地面に鋭い爪を突き立て、とてつもない衝撃波を発生させた。
呆気なく後ろに弾き飛ばされるメロディとリズム。
飛ばされる二人を、響鬼は両手で受け止めた。
「すいません。油断しました!」
「良いって事よ、おかげで名案が浮かんだ。逆に感謝するよ。」
「……名案、ですか?」
「三人とも、名前は?」
あまりに予想外の質問が飛んできたせいか、固まる三人。
「今、自己紹介してる場合じゃ……。」
「いやいや君……今だからだよ。おじさんを信じてくれって……。」
意外と押しの強い響鬼に負け、エレンから名乗った。
「キュアビートこと黒川エレンです。」
「キュアリズムこと南野奏です。」
「……で、君は?」
「あ、はい。キュアメロディこと北条響です。」
「ふむふむ。了解……。」
全員の名を聞き終えて、響鬼は再度四人の顔を見回した。
「あの、コレ何の意味が?ていうかあなたのお名前って……」
「ああ、そうだったな響ちゃん。そこで伸びてんのが、弟子の桐谷京介。んでおじさんは……ヒビキです!」
「それフルネームじゃないですよね!?っていうかさり気なく私と被ってるし!」
響のもっともなツッコミに、響鬼はイタズラっぽく笑った。
「君たちの技は、愛をもって音符を浄化して来た......違うか?」
「そうですけど、どうしてそれを......。」
「オヤジの勘だよ......当たりなら、いい考えがある。」
「考え、ですか?」
「ネガトーンと魔化魍の掛け合わせに、片方を倒すための技は通じない。逆に言えば、ネガトーンと魔化魍を倒すための技があわされば、混合種である奴を倒せるんじゃないか?」
「......なるほど!」
「やってみる価値はあるわね。」
奏とエレンも賛同した。
「決まりだな。全員、俺が今から言う配置についてくれるか。」
「「「「はい!」」」」
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響鬼の作戦は、音撃と並行してプリキュアの技を放つ事で、ネガトーンとしての音符の力を浄化するものだった。
だが、物理的な浄化が無ければ、魔化魍の力を浄化する事も出来ない。
ディスクのセットをー。と、動こうとした響鬼を、京介が止めた。
「俺が......やります!」
「出来んのか?ボロボロだぜお前......。」
響鬼は敢えて、消極的な言い方をした。
伊達に彼と一緒にはいない。
京介が、ほぼ動く間もないままやられた己の不甲斐なさを憂い、汚名返上しようと必死な事くらい、響鬼は百も承知だった。
だが、だからこそ無茶をさせたくないのだ。
今の彼は、もしかすると自分の命を投げ打って働くかも知れない。
何よりも、それが心配だった。
「ちゃんと後で、町の片付け手伝えよ?」
「手伝わなきゃ破門でしょ?絶対戻りますよ......!」
言うが早いか、京介はキュウビネガトーンに向かって走り出した。
キュウビネガトーンは京介を睨むと、再び鋭い爪を思いきり地面に突き立てた。
京介がそれをかわし、敵はもう一撃加えようとする。
それを何度か繰り返すうちに、ついに京介は敵の足元にたどり着いた。
京介を見た敵は、低い声で唸りを上げた。と思えば、口から一筋の赤い光線を放った。
ドォォォン!!
辺りに響く轟音。地面に空いた大穴。
響鬼が目を見開き、アコが悲鳴を上げたかと思えば、京介は敵の頭上を舞っていた。
「......ったく!ギリギリだった。オレ飛べねんだよ!」
ベッ!!
生き延びた京介を見たキュウビネガトーンは、宙に向かって唾を吐いた。それは弾丸ほどの速さで真っ直ぐ飛び、京介の体を貫いた。
「京介ェ!」
「......大丈夫ッス響鬼さん!おい、化けもの!いい攻撃してんな。けどよぉ、
京介は斜め下に向けて、ディスクを投げつけた。
ディスクはキュウビネガトーンの額に付着し、手の平サイズから大太鼓の大きさに膨張した。
「響鬼さん!額で良かったッスか!?」
「ナイスだ京介!後は任せな。いくぜプリキュア四人衆!」
響鬼の作戦は、音撃打とスイートプリキュアの演奏技を並行して行う事で、魔化魍の邪悪な力とネガトーンとしての音符の力を浄化するものだった。
メロディ、リズムは響鬼と前衛に付き、ミラクルベルティエ及びファンタスティックベルティエを召喚。
ビートは敵の背中に乗り、ラブギターロッドを構える。
ミューズは京介に、キュアモジューレを手渡した。
「え......アコちゃんこれ......。」
「京介さん、笛、吹ける?」
「これにも多少、浄化の力はあるわ。参加したいならこれ使って。」
「でもこれ......。」
「私の使いかけよ!文句あるなら休んでて。」
「いや、ありがたく使わせてもらう!」
京介の顔をマジマジと見ると、空中に虹色の鍵盤を出現させる。
(正体バレてからは、使った事ないけど......なんとかなる!)
本来、敵を封じ込める為の能力だが、響鬼の指示では、
『
メロディとリズムがベルティエによる指揮を開始すると同時に、自分が鍵盤を、ビートがギターを、響鬼が音撃を、そのコラボレーションで、敵を浄化するのだ。
「「おいで、ミリー/ファリー!」」
メロディとリズムは二人同時に
ビートはソリーを呼び出し、ラブギターロッドに合体させた。
『響鬼装甲!!』
いつの間にか敵の額に乗り込んだ響鬼は、掛け声と共に最強フォームへの変身を完了していた。
「「それでは、レッツミュージック!」」
二人の指揮と同時に、響鬼は太鼓をたたきだした。
それが浄化の儀であると察する様に、キュウビネガトーンはもがきだした。
揺れる巨体に、バランスを崩しかけるビート。
「気にすんな!まだこっからだぞ!」
「はい!」
続いて、ミューズの伴奏と京介のモジューレ吹奏。
先程の超音波で対抗するキュウビネガトーン。もはや、二人は音と一つになり、まるで意に介さない。
ビートのギター弾奏も重なり、セッションはいよいよ完成した。
『circle of life』。
昔、別の世界のとある仮面ライダーに教わった、父からのプレゼントの一曲だそうだ。
考えてみれば、奇妙な話だ。
響鬼は四人に、“音”にさえなっていればそれでいい。
と、そう言ったハズなのに、全員が自由に演奏する内、ごく自然にこの曲に行き着いたのだから......。
ねぇちゃんと確かめて 当たり前だと浪費する
愛やその絆 それこそが 奇跡的
君の手のひら 僕と繋いで
僕は 次の 誰かと繋ぐ
笑い合う様に 支え合う様に
ずっと ずっと 時の果てまで
続きます様に just feel the circle of life
世界が 変わり出す
「ォ~......タァ!」
『
響鬼の渾身の一打と、メロディ、リズムの完成を告げる合図と共に、キュウビネガトーンは爆発四散した。
残ったのは、浄化された音符と、雨のように降り注ぐ獣の毛束だけだった。
灰クグツは、
(チッ......マサカ『鬼』ト『プリキュア』ガ同ジ街二揃うトハ......マァイイ、所詮アノ魔化魍モ捨テゴマダ。
『ブラックホール』様へ報告スルトシヨウ。ワレラの、
暗黒ノ世界ノ夜明ケハ近イ......。)
灰クグツは不気味な宣言を残して消えた。それはまるで、この後に起こる巨大な戦いの幕開けを、予知するかの様に......。
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数時間後、『ラッキースプーン』二階のカフェテラスで、下の広場のピアノ演奏を見ながら、ヒビキと明日望、京介、アコの5人は、カップケーキを食べた。
数分後に、奏太たちの金管演奏も控え、皆食い入るように広場を見つめた。
「ハミィ達はこれから、いちご坂って街に『ブラックホール』ってのを探しに行くニャ。」
「良し京介、俺たちも付いてくか......。」
「はい!」
「女将さん、ごちそうさまでした。」
と、響鬼が千円払って店を出ようとした時、奏の母が電話の子機を持ってきた。
「ちょっと待ってヒビキさん、お電話ですよ。」
「ああどうも、誰だろう?オヤッサンかな......。」
『俺だ』
相手は低い声の男だった。
「ああどうも......あんただろ?たちばなに電話寄越したのは......。」
『お初に......仮面ライダーディケイドこと、門矢士だ。
よろしく。』
「で?何でここがわかった?」
『仮面ライダーの勘だ。でもって、アンタに頼みがある。』
「待てよ、アンタ何が目的だ?なぜたちばなが猛士の支部だと知ってた?第一、俺が仮面ライダーだとどこで聞いたんだ?」
『すまないが、時間がない。詳細はきちんと話すから、いちご坂って街に来てくれ。』
ハミィに、電話の男がいちご坂の名を口にしたと、指でジェスチャーした。
電話が切れると、ヒビキは今度こそ奏の母に千円払い、バイクのエンジンをかけた。
「広場に寄って、三人拾うぞ、京介、アコちゃん。」
「「はい!」」
「それから明日望......!」
「はい!」
「頑張れよ!次会うときは、日本一の医者だ!いいな!?」
「......はい!」
もう、鬼としての師弟ではないヒビキと明日望。
それでもいい。人生の先輩としての彼の激励は、いつになっても心に響く。
彼との約束を果たす誓いを心に刻み、明日望は去り行く
ヒビキをいつまでも見守っていた。
この章で響鬼、京介&スイートプリキュアが奏でた曲は、LINEQでご意見を募集して決めました。
『circle of life』ご存じの方もいるかも知れませんが、
『劇場板仮面ライダーキバ 魔界城の王』のエンディングテーマです。
賛否両論ありましたが、これがいいってのが1つだったので、こちらにしました。
またこういった議会あると思いますので、LINEQや感想などでコメントをお願いします。
皆さん一度は聴いて欲しいです。
『circle of life』。