苦々しげな表情を鬼灯に向けるヴォルデモートだったが、一度息をつくと、落ち着いた声で鬼灯に語りかけた。
「鬼灯よ、貴様はあの世の住人、闇のモノだ。ならば光溢れる現世は生きにくいだろう?昔の問いの答えを聞かせてもらおうか。俺様とともに、マグルを、純血を裏切った魔法族を始末し、世界を闇に染め上げようではないか。さあ、答えるがいい、地獄の鬼神よ」
傲慢な態度で鬼灯に語りかけるヴォルデモート(ただし、向けている顔はクィレルの方)。
それに対し、鬼灯は袖の中をゴソゴソと探り、何かを取り出したと同時にそれをクィレルにぶん投げた。
「う○こ召し上がれ」
「ブベラッ!?」
投げられたガラス瓶は見事クィレルの口の中へ入り、割れた。そして、毒々しい色で粘性の液体が溢れ出した。
「ゴブッ……………」
「ウグゥッ!?な、なんだこの匂いは!おい、クィレル、どうした、返事をしろクィレル!!」
辺り一帯に名状しがたい匂いが立ち込め、クィレルは泡を吹いて失神した。今、クィレルの体が立ったままなのは、ヴォルデモートが体の操作権を乗っ取ったからだ。
「貴様…………一体何をしたァァァッ!!」
「丁寧に『クソくらえ』と言って、有言実行しただけです。最近とある漫画で、『クソくらえ』を丁寧に言ったら『う○こ召し上がれ』になると見たもので……一度言ってみたかったんです。ちなみに、投げつけたのは日本地獄の閻魔庁フンコロガシ
ヴォルデモートは怒りの表情を浮かべながらも、冷静に〈泡頭呪文〉を使う。周りの空気をシャットアウトする呪文だ。だが、
「な、なぜまだ臭い!?なぜだ!」
「ガラス瓶が割れた所から匂いを発するように、瓶に魔法をかけてもらったから、でしょうね。座標ではなく当たった場所なので、そこから動いても意味はないと思いますよ」
ヴォルデモートは激怒した。この暴虐な鬼神を排除せねば、と怒り狂った。懐から一つの巻物を取り出し広げる。そこには、ヘブライ語の呪文と精巧な魔法陣が描かれていた。
「まさか、これを使う羽目になるとはな……貴様も無事ではすまないはずだ……俺様の奥の手、もしもの時のために用意していた秘中の秘……魔王サタンの召喚陣を……!」
ちょこっと解説、召喚魔法
FFなどでおなじみの召喚魔法。強大な力を借り受けることができる優れものではあるが、ものによってはそれ相応のリスクがあったりする。
例えば、悪魔を召喚するのであれば、『○○月の○○日だけ』『火曜日だけ』など、とても細かい条件が決まっている。さらに、それに加えて対価も払わなくてはいけない。
条件が無くとも、召喚したモノが納得しなければ使役できない場合もある。自分よりも強い者にしか従わない、知恵を示さなければ従わないなど。おそらく、そんなことを全く気にせず召喚できるのは植物や炎ぐらいだろう。
また、召喚時に交わした契約は絶対であり、違えることがあれば対価を支払うことになる。
今回、ヴォルデモートがサタンに対して交わした契約は、
『一度限り、サタンはトム・マールヴォロ・リドルに力を貸す。トム・マールヴォロ・リドルは死後、その魂をサタンへと引き渡す。
トム・マールヴォロ・リドルが契約を破った時は、サタンは軍勢を用いてトム・マールヴォロ・リドルを滅ぼす。
サタンが契約を破った時は、以上全ての契約を破棄する。
以上を、ステュクスの河に誓い契約とする』
実名で無ければ契約が成立しないため、ヴォルデモートは本名を使用し、契約を絶対とするために、わざわざハデスの冥界にある、ステュクスの河に誓った。
ヴォルデモートはいずれ、とある秘宝を集め死を遠ざけ、サタンを返り討ちにするつもりであるため、この契約に同意した。
サタンは、魂は確実に欲しいがとある存在と戦うことは避けたいため、この契約にしたようだ。
それが収まった時、そこには、これぞ悪魔と言うようないでたちをしたサタンの姿が──
無かった。
「…………………………………は?」
ヒラヒラと一枚の手紙が、ヴォルデモートの目の前に舞い落ちてくる。ヴォルデモートは呆然と、手紙をキャッチして読み始めた。実に簡潔な手紙だった。
『すまん、
役目を終えた巻物が燃え尽きていく。それもわからないまま、ヴォルデモートは意識を手放した。理由は、『絶望』だった。
戦闘回(と言う名のヴォルデモート卿絶望回)でした。
作中の召喚魔法の理論についてはオリジナル気味なので注意。
う○こ召し上がれ…『銀の匙 SllverSpoon』14巻より