ハリーとロンは正座していた。
より正確には、すっごく特徴的かつ恐怖を感じる顔の人形やらお面やらに囲まれて正座していた。そして、膝の上には教科書などでの重し多数。
なぜ、彼らはこんな目にあっているのか。その理由は、つい三十分ほど前にさかのぼる。
ホグワーツ特急に乗り遅れ、空飛ぶフォード・アングリアによりホグワーツ城へと向かっていた二人は、エンジントラブルにより太い木に──『暴れ柳』に激突し、車はそのまま逃走、二人は息絶え絶えにそこから逃げ切れた。そして、窓からこっそりと大広間を覗く。
「──スネイプが居ない」
「それ本当?とうとうクビになったんじゃないか!?」
「静かに!鬼灯先生に見つかったらマズいよ。一体どんな罰則を宣言されるか…………でも、スネイプが居なくなったのは嬉しい──」
「もしかしたら、その人は君たちを待ち構えているのかもしれませんなぁ」
背後から声がした。
バッと振り向いたその先には、ギラギラと眼を輝かせたスネイプが立っていた。
「我輩は君たち二人が汽車に乗っていなかった理由をお伺いしようとここに来た。やはり、問題を起こしてくれましたな、ウィーズリー、そしてポッター!ついてきなさい!」
マントを翻し歩き出すスネイプ。彼が向かったのは地下牢にある、研究室だった。
「有名かつ尊大かつ自惚れているハリー・ポッター殿とその忠実なるご学友ロン・ウィーズリーのお二人は、あの汽車ではご不満であり、もっと皆を驚かせるとんでもない方法でご到着になりたく、ついには実行してしまった。そういう事ですかな?」
ハリーは抗議したが、スネイプは聞く耳を持たず、『夕刊予言者新聞』を投げ渡した。そこには、彼らが乗ってきた車のことが書かれていた。
「行ったことがいかに愚かなことかわかったかね?
もう一つ、君たちが絶望するであろうことを申し上げよう。君たちが傷つけた『暴れ柳』は非常に貴重であり、かつ────鬼灯先生のお気に入りの一つでもある」
途端に、ハリーたちは固まった。そして、青い顔で震えだし、それを見たスネイプはニィ……と顔を歪ませた。
「至極残念なことに、我輩にはお前たちを退校処分にする権利はない──ゆえに、権利を持つ人物を連れてきてやろう。二人とも、ここで待つように。でなければ………あとは、おわかりですな?」
スネイプが出て行ったあと、二人は──特にハリーは──走馬灯を見ていた。これならヴォルデモートに路地裏の曲がり角で激突した方がマシだ、と。
この先のことについて、ハリーもロンも詳しくは覚えていない。ただ、退学にはなっていないこと、そしていつのまにかジャパニーズホラーな部屋で一時間正座させられ、終わった後に座敷童子に足をつつかれたこと、そして、1週間の間の全ての男子便所掃除手伝いとその他いくつかの罰則で済んだことだけは、頭に残っていた。
すっごく特徴的かつ恐怖を感じる顔→何かに使えるかも、と鬼灯様が一年に一度、日本地獄からもらってる。作っているのは孤地獄の契約デザイナー。
二人がどんな目にあったかはご想像にお任せします。