破軍学園の劣等生(偽) 作:ニッパー界の劣等生
劣等生の再放送を見てたら書きたくなってしまいました。
神様とのやり取りの描写はありません。
[0]
破軍学園。
国際魔導騎士連盟の認可を受けた高等魔導機関として知られている。
それは同時に、優秀な魔導騎士(略称「騎士」)を輩出しているエリート校ということでもある。
魔導騎士教育に、教育機会の均等などという建前は存在しない。
この国にそんな余裕は無い。
それ以上に、使える者と使えない者の間に存在する歴然とした差が、甘ったれた理想論の介在を許さない。
徹底した才能主義。
残酷なまでの実力主義。
それが、魔導騎士の世界。
この学校に入学を許されたということ自体がエリートということであり、入学の時点から既に伐刀者ランクが存在する。
同じ入学生であっても、平等ではない。
例え、血を分けた兄妹であっても。
[1]
日課のランニングを終え、黒鉄達也が学生寮の自室に戻ると、そこには半裸の美少女がいた。
燃え盛る炎が如く巻きがかかった緋色の髪。
異国系の整った顔の中央で、埒外の侵入者への驚愕で丸くなっている
漆黒の生地に包まれた起伏の大きい処女雪のような肢体。
そんな、神々しさまで醸し出す少女の美しさに
そして、少女の後ろに垣間見える部屋の内装から自分の部屋であることを達也が確認したあたりで、少女の口から小さな悲鳴が漏れる。
続いて少女が息を吸い込む音が聞こえ、
「いやぁあああああ!!!!ケダモノぉぉおおおおお!!!!」
絹を裂くような悲鳴をあげて頬を引っぱたこうと手を伸ばしてきた少女を達也は反射的に取り押さえて関節を極めて拘束した。
少しして、かなり犯罪的な絵面になっている事に気付いた達也はやれやれとため息をついた。
[2]
破軍学園理事長室。そこに、達也は悲鳴を聞き付けた寮の警備員によって、痴漢及び暴行の現行犯として連行されていた。
「なるほど。下着姿を見られてビンタしようとしたステラを反射的にサブミッションしたと」
咥え煙草にスーツ姿の麗人、破軍学園理事長・新宮寺黒乃は一連の騒動の経緯を聞き終えてドン引きした表情で言い放つ。
「やりすぎだろお前」
「自覚は有りますが、こちらも些か動揺していましたので」
「お前に動揺って似合わないにも程があるな」
「仮にも教師が随分な言い種ですね。事情から見ると、こちらに理があると思いますが」
「とは言ってもな黒鉄。彼女の立場になって考えてみろ。春休みで人気の無い学生寮で着替えていたら、突如見知らぬ男が入ってきて、おもむろに関節技。どうだ?」
「絵面の犯罪性は自覚していますが……」
少し前の自分の姿が凶悪犯のそれであると自覚している達也は言葉を詰まらせた。
「ところで、やはりあの少女はステラ・ヴァーミリオンですか?」
「なんだ。黒鉄はヴァーミリオンの事を知っているのか」
「知らないわけが無いでしょう。尤も、先程は動揺で気付きませんでしたが」
ステラ・ヴァーミリオン。
欧州の小国であるヴァーミリオン皇国の第二王女。
彼女がその出自と才能から日本では華々しく報道され、人気を博していた。
そんな相手との揉め事という自分の身に降りかかった不幸から達也は米噛の辺りに疼痛を覚えた。
「本物のお姫様で主席入学。それもぶっちぎりのすべての能力が平均値の上方、最重要な資質である≪
「自分にはどうしようもない事ですので」
欠片も表情を変えずに流す達也を気にせず黒乃は続ける。
「しかし困った事になった。初日からこんな調子では下手すると国際問題にもなりかねん。だから黒鉄に非は……無くもないか。まあ、責任をとってもらう。理不尽に感じるだろうが男の度量を見せてくれ。」
「都合良く利用されてるだけに思われますが……」
達也がため息混じりに呟くと、理事長室のドアが開いて件のステラ・ヴァーミリオンが入室してきた。
先程とは違い、(当たり前の事だが)しっかりと衣服を着ている。
ステラは赤く腫れ、先程まで泣いていた事が窺えるめで恨みを込めた視線を達也に向けてきた。
「すまない。出来る限りの責任は取ろう。」
達也は不承不承に(そうであることはおくびにも出さないポーカーフェイスで)謝罪をした。
「……潔いのね。これがサムライの心意気なのかしら」
「そんなたいそうな物じゃない」
達也がそう言うと、ステラは表情を和らげて微笑んだ。
「ふふ……正直、来日早々こんな目に会うなんて、どんな最低なくにだと心底嫌悪しかけたし、国際問題にしてやろうかしらとも思ったど、貴方のおかげで少し気が変わったわ。皇族として貴方の心意気に相応の寛大な精神で応じなくてはならないわね」
事態が終息するのを感じて、達也はほっと一息をついた。
「タツヤ。貴方の潔さに免じてこの一件、――ハラキリで許してあげるわ!」
「はぁ?」
面倒な事まで拗れなくて良かったと脱力していた達也の口から、ステラのあまりの言葉に間抜けな声が漏れてしまった。
再発した頭痛に顔を顰めながら達也は抗議の声を上げる。
「ちょっと待ってくれ。ハラキリと言ったか?」
「それはまあ、姫であるアタシにあれだけの事をしでかしたんだから死刑は当然でしょ?本来は丸太に縛り付けて国民全員で一発ずつ石打ちにするところを、名誉死にしてあげるんだから本当に特別なんだからね」
なんて前時代的な処刑なんだと戦慄している達也を他所に話は進んでいく。
「黒鉄。お前の命一つで日本と皇国の恒久的な平和が手に入るんだ。安い買い物だとは思わないか?」
「俺の意思はどうなるんですか?わざと言っているでしょう」
達也にしてみればぼったくりも甚だしい。いや、
「他に解決手段は無いのか?」
「何が不服なのよ。日本男児にとってハラキリは名誉なんでしょ?」
「いつの時代の話だ……」
達也の様子を見て、ステラは再び表情を険しくした。
「なによ!さっきは責任をとるって言ったじゃないの!男なら自分の言葉に責任を持ちなさいよ!」
「俺は出来る限りとも言ったが?」
「言い訳も言い逃れもしまくりだな黒鉄」
命の危機に言い訳も言い逃れも無いだろう。
「とは言え理事長、これぐらいの事で命を支払えるわけが無いでしょう」
「こ、これぐらいの事ですって!?し、ししし信じられないわこの変態ッ!!嫁入り前の皇女の肌を視姦しておいてなんて言い種なのッ!?お父様にも見せたことないのに!!」
達也の言葉に反応を示したのは黒乃ではなくステラだった。
室温が上昇し、肌に熱が伝わってくる。
ステラの周りの大気は高熱でゆらゆらと揺らめいている。
「もう許せない!アンタみたいな変態・痴漢・無礼者のスリーアウトな平民はこの私が直々に灰塵にしてやるわ!!傅きなさい!≪
魔導騎士は、杖や魔導書、呪文や印契の代わりに、魂の具現たる
魔導騎士は魔力の良導体である肉体を通じて
何処からともなく射し込んだ熱を帯びた極光と共に炎の大剣がステラの手に握られる。
「覚悟しなさいこの変態……!この世から塵一つ残さずに蒸発させてやるわ……ッ!」
「灰塵にするんじゃなかったのか?」
「うるさいッ!!」
振り下ろされる大剣を達也は体術だけで捌く。
斬撃自体は避けたものの、大剣が帯びている熱がチリチリと達也の肌を灼いた。
「アタシの
「そんな物を室内で振り回しているのか……」
「何を言っても無駄よ!すぐに消し炭にして貴方の存在ごと嫁入り前に辱しめられた事実をこの世から抹消してやるわ!」
「いや、落ち着いてくれ。言っていることも解らなくはないが、間違えて俺の部屋で着替えをしていたヴァーミリオンさんにも非があるだろう」
「ハア?」というステラの返答に達也は違和感を覚える。口調からして、ステラは本気で達也の言葉を承服していない様子だ。
「何をワケわかんないことを言ってるのよ!あそこは理事長先生から貰った鍵で入った私の部屋よ!間違えたのは貴方の方でしょッ!」
「待て。理事長から貰ったと言ったか?」
黒乃に目を向けると、彼女は敵役じみた黒い笑みを浮かべていた。
「く、くくく……いやいやすまない。なにやら面白いことになっていたのでつい悪戯心が働いてしまった。いやなに、どうということはない。簡単な話……君たちはルームメイトなんだよ」
「え、ええええええええええええええ!?」
◇ ◇ ◇
「ど、どういうことですか理事長先生!アタシが、こ、この変た、ヒイッ!」
ステラが感情のままに発露した不平は小さな悲鳴と共に中断させられた。
横から放たれた達也の怒気に、ステラは向けられた当事者でないにも関わらず、口元と頬を痙攣させていたのだ。
「神宮寺黒乃理事長」
「なんだ?」
「事前の取り決めと相違が有るようですが」
「それは私が理事長に就任する前だった去年に交わされた物だ。黒鉄。お前には既に話しただろう。私の方針を」
黒乃も鋭い目付きで対抗し、張り詰めたような剣呑な空気が漂う。
数時間とも感じられる体感時間が過ぎ、先に矛を収めたのは達也の方だった。
「……完全な実力主義。徹底した実戦主義でしたか」
「そう。それが私の方針だ。力の近い者同士を同じ部屋にしている。――同格の存在を近くに設置することで競争を誘発させ、互いに切磋琢磨させ合うためにな。この部屋割りもその工夫というわけだ――とは言え、己の運命を剣で切り拓くのが騎士道、だろう?」
黒乃の思惑を察した達也は喉元まで込み上げてきた深いため息を鋼の自制心で――というと大袈裟かもしれないが――とにかく、呑み込んだ。
「ヴァーミリオンさん、俺と模擬戦をしよう。神宮寺理事長はそれがお望みのようだ」
ため息の代わりに、多少当て付けのような発言が飛び出したのは、仕方のないことだろう。
黒乃は全くこたえた様子なく笑みを浮かべたままだが。
「ふふふ。ふふふふふ。いいわ。わかった。わかりました。受けてやるわよその試合。ただし賭けるものはもう部屋のルールなんて小さなモノじゃ許さないわよ!負けた方は勝った方に一生服従!どんな屈辱的な命令にも犬のように従う下僕になるのよッ!いいわねッッ!」
「別に奴隷など欲しくはないのだが……」
「いいわねッ!」
「……了解した」
鬼気迫る、を体現したようなステラの様子を受けて、達也は了承を余儀なくされた。そこには、勝ってから権利を放棄すればいいだけだという後ろ向きな打算も少なからず含まれていた。
「話はまとまったようだな。ならば第三訓練場を使え。許可は私が出す」
黒乃が宣言すると、ステラは「覚悟しなさいよね!フンッ!」と、鼻をならして理事長室を出ていった。
そのあまりにお約束な態度に達也は毒気を抜かれかけたが、思い直して模擬戦の準備を始めた。
達也にはこの戦いに負けられない理由がある。このような些事に気を取られて勝率を下げる訳にはいかなかった。
◇ ◇ ◇
「それではこれより模擬戦を始める。双方、
「傅きなさい。≪
幻想形態は人間に物理的な損傷を与えず、体力のみを削る形態だ。
今回もその例に漏れずこちらが採用されている。
ステラは黒乃の宣言に従い自身の
「よし。……では、
「えっ?」
達也が未だに
慌てて消失した敵を探すステラを側面から激しい「波」が揺さぶった。
連続して三波。
別々の波動がステラの体内で重なり合い、大きなうねりとなって、彼女の意識を刈り取った。
勝敗は一瞬で決した。
秒殺、という言葉があるが、今の試合には五秒とかかっていない。
達也がいつの間にか取り出していた銃状の物を向けられた先で、ステラの身体が崩れ落ちる。
「そこまで!勝者、黒鉄達也ッ」
黒乃が勝ち名乗りを上げるが、勝者の顔に喜悦はない。
ただ淡々と為すべき事を為した顔だった。
軽く一礼して、第三訓練場の出口へ向かう。
ポーズではなく、自分の勝利に興味を持っていないことが明らかだった。
模擬戦を観戦していた生徒達は、目の前で起きた想像の埒外の出来事に、ただただ達也の後ろ姿を呆然と見詰めるだけだった。
[3]
「…………ん、っ」
「目が覚めたか。ヴァーミリオン」
目を開けたステラの横には、生徒のすぐ近くで煙草をふかすという教員にあるまじき姿を見せている黒乃がいた。
しかも、学生寮は禁煙だ。
「理事長先生……ここは?」
「君の部屋だ。倒れた原因は身体を揺さぶられた錯覚による酔いだからな」
「……酔い、ですか?」
黒乃は唇から紫煙を吐き出した。
繰り返すが、教員が生徒の――それも先程までの倒れていた療養中の――すぐ横で見せる姿ではない。
「黒鉄はな、少々特殊なんだ」
◇ ◇ ◇
「……タツヤ」
自室で何やらプログラムを組んでいた達也はかけられた声に、キーボードを叩いていた手を止めて振り向いた。
「ヴァーミリオンさん。俺に何か用か?」
「……タツヤのこと、聞いたわ。理事長先生から」
「俺の?」
「タツヤが、これまで実家や学校にどういう扱いをされてきたか、ってこと」
「……あの人はプライバシーという言葉をしらないのか?」
デリケートな家庭事情をむやみやたらに吹聴されるのは達也とていい気はしない。
内心で恨みがましい感情を向ける。
尤も、たとえ直接述べたとしても黒乃は「言葉の意味なら知っている」などと言って悪びれもしなさそうではあるが。
「どうしてタツヤは、そんな目に遭いながら、まだ騎士を目指そうとするの?」
「どういうことだ?」
「どうして、自分の努力を周りに、家族にさえ否定されてまで頑張るのかってことよ!」
「いったいあの人はどこまで口を滑らせたんだ」と呆れさえ湧いてきた。
実際、現在の法に照らし合わせると(照らし合わせるまでもないが)完全にアウトである。
黒乃への抗議の方法に思考を伸ばしかけた達也は、ステラとの会話の最中であった事を思い出して返答した。
「そのレベルの悩みなら、俺はもう卒業済みだ。騎士にはやはり魔力が必要で、その総量が劣っていることに対して相応の評価を受けるのは仕方の無いことだと納得している」
無愛想にそう言うと、ステラは何故か何かを理解したように笑っていた。
何処かに大きな計算ミスがあったような気持ちの悪い違和感を達也は覚えた。
そして、その計算ミスはすぐに、誤った演算結果を達也に示した。
「そう。卒業済みってことは、達也にも悩んだ時期があったのね」
得心したように頷いて、ステラが妙に心の距離感を詰めてくる、という形で。
「はっ?」
「ええ、そうね。他人にどう評価されようが諦めない。叶うとか、叶わないとか、そんなこと考える必要もない。やるだけやってダメなら、それはもう仕方ない。でも、やらないでダメだって決めつけることが
あれ?俺も同じ括りにされてない?と達也はこの時思ったのだが、ステラの勢いに圧されてそんなツッコミを入れる余裕はなかった。
「そうよね。諦めない。大ヤケドしたって諦めてやるもんですかっ!」
ステラの独演会は彼女の気が済むまで続いた。
達也から向けられる白い眼差しも気付かず、ステラは嬉しそうに笑い声をあげて、両手を上に上げた。
「……あーあ。……負けたわ。アタシの完敗よ。まさか、私以上の負けず嫌いがいるとは思わなかったわ。色々あったけど、これからルームメイトとしてよろしくね」
ステラの最後の言葉に、達也は違和感を覚えた。
ステラも達也の様子がおかしいことを察して、知らぬ間に冷や汗が流れる。
言い様の無い気まずい空気の中で、先に口火を切ったのは達也だった。
「……あの人は、人の家の事情は放しておいて肝心なことは伝えてないのか」
「……肝心なことって?」
緊迫した空気が流れ、ステラの喉が鳴る。
達也はそんなステラを気にかけず、淡々と事実を述べた。
「ヴァーミリオンさんの部屋は変更になった。すぐに通知が来ると思うから、荷物の準備をした方がいいだろう」
「……えっ?えええええええええええええええッ!?」
それは、理事長室で達也のルームメイトとなったことを告げられた時よりも、さらに大きな絶叫だった。
お気づきになった方もいらっしゃると思いますが、地の文の大部分を魔法科高校の劣等生の引用、書き方のトレスにしています。
魔法科高校の劣等生の雰囲気を出せたらと思い、始めた試みです。おかしな事をするヤツが現れたと生暖かく見守ってください。
時話投稿は明日お昼頃を予定しています!
右も左も分からない新米ですので、ぜひ、ご意見やアドバイス、ご感想をお願いします!