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午前の授業が終わり、一夏は学食で昼食を取っていた。IS学園には売店はあるが、お菓子などの軽いものしか置いていないため自炊する者以外は学食を利用する。一夏は普段は自炊をしているが、初日ということもあり材料や調理器具が無いため、しばらくは学食を利用することになるだろう。
一夏の隣には箒が座っており、他のクラスメイトは2人より少し離れた位置に座っている。理由は2つあり、1つは3限目のセシリアとのやりとりがあったからだ。殺気はセシリア以外には感じなかったが、クラスメイトは一夏がセシリアの首を締め上げている姿を見ており、一夏に近寄り難い感じになってしまったのだ。兵器の扱いを学ぶ学園といってもクラスメイトはつい一月前までは中学校に通う一般の学生だったのだ。一夏の姿を見て近寄り難くなってしまっても無理は無いだろう。
2つ目の理由は隣に座っている箒に理由がある。4限目の授業で千冬が箒がIS開発者である篠ノ之束の妹であることを生徒たちに暴露してしまった。そのことに騒ぎ出したクラスメイトに箒は「あの人は関係ない!」と怒鳴ってしまったのだ。そのことが原因でクラスメイトとは気まずい雰囲気になってしまった。
この2つが原因で2人はクラスメイトから敬遠されてしまっているのだ。
本来なら一夏は、箒が当たり前のように隣に座っていることに文句を言ってもおかしくないのだが、学食中は生徒たちで溢れており、席が埋まってしまっている状況なので今から移動しても席を見つけられる保証が無いためだ。
「一夏、オルコットとの決闘だが何か勝算はあるのか?」
「勝算も何も負ける要素が無いだろう」
「しかし、相手は代表候補生だぞ?こちらもなんらかの対策をとっておくべきだろう?」
「必要ない。あの程度の覚悟しか持っていない奴に負けるほど俺の腕は腐っていない。というか『こちら』ってなんだ?まるでお前が俺の仲間みたいな言い方だな?」
「当たり前だろう?私はお前の幼馴染なのだぞ?」
その言葉に一夏は深い溜息をついた。幼馴染というだけでここまで『自分がそばにいるのが当たり前』と思える箒の頭が理解できない。一夏は口を開こうとした時、1人の生徒が自分の席の前で立ち止まっていることに気がついた。リボンの色からして上級生だろう。
「ねえ、ちょっといいかな?」
「…なにか?」
「君が例の男の子だよね?イギリスの候補生と戦うことになったっていう」
「そうですが、それが?」
「君ってISの稼働時間ってどのくらい?」
「ISに乗ったのは2回だけですね。時間で言うと30分程度かと」
「それじゃ候補生には勝てないよ。候補生はどの国でも最低3桁は乗っているはずだから」
そのことを聞いて一夏はそれがどうしたと思った。たかだか3桁兵器を扱ったからといって兵器を完全に操れるはずがない。大事なのは時間ではなく、訓練の質であり、実戦経験であり、それに臨む覚悟の大きさなのだから。操縦時間だけで勝敗が決すると思っている時点でこの上級生の底が知れる。
「なんなら、私がISについて教えてあげようか?」
「結構です。私が教えることになっていますから」
一夏が上級生の誘いを断ろうと口を開こうとした瞬間、箒が口をはさんだ。上級生は怪訝そうな目で箒を見る。
「でも、あなたも1年生でしょ?そしたら上級生の私が教えたほうが「私は!篠ノ之束の妹ですから」っ!?」
篠ノ之束の名が出た瞬間、上級生は驚いた顔をしていた。ISの生みの親の妹が入学しているとは知らなかったのだろう。分が悪いと判断したのか上級生は去っていった。
「さて、早速放課後…」
「その前に1つ質問がある」
「なんだ?」
「何故お前は今篠ノ之束の名前を口にした?」
「何を言っているのだ?」
「お前は前の時間、自分と姉は関係ないと言った。なのに今、自分は篠ノ之束の妹だと言い、あの上級生の邪魔をした。ずいぶん都合がいいんだな」
一夏の言うことは最もだろう。箒は自分は篠ノ之束とは関係がないと言い放ったのだ。にも拘らず、それから1日も経っていないのに自分は篠ノ之束の妹だと言い上級生の誘いの邪魔をした。
自分の都合が悪い時は妹であることを否定し、都合のいい時は妹であることを利用する。あまりにも自分勝手ではないか。一夏はそんな事をしない。今の一夏は織斑千冬の弟の織斑一夏ではなく、沢田綱吉の義弟の沢斑一夏なのだ。例え如何なる場合においても、決して一夏は織斑千冬の血の繋がっている弟であるという事実を盾にしないだろう。もう家族ですら無いのだから……
「う、うるさい!貴様には関係ないだろう!?」
「関係あるだろう、当事者なんだから」
「くっ!そ、そんなことより貴様の腕が鈍っていないか見てやる。放課後剣道場まで来い」
「格下が格上に随分偉そうだな」
「なんだと!?私は剣道で全国制覇している!それに、貴様は今まで私に勝ったことはないだろう!?」
「6年も前のことだ。少なくとも剣道で全国制覇した程度で偉そうにしているお前に負けるわけないだろう」
「そんなに言うのなら勝負だ!負けたら放課後は私と訓練をしてもらうぞ!」
「いいぜ、そのかわり俺が勝ったら俺に付き纏うのをやめてもらう」
一夏の言葉に箒は二つ返事で了承する。大方自分が負けるはずがないと思っているのだろう。
(なら、見せてやるよ。お遊びじゃない、本物の剣術を)
一夏は箒に魅せつけることにした。自分のツナたちに出会ってから徹底的に鍛え上げた力の集大成の一部を‥‥‥‥‥‥