「ああー、暇だな〜」
俺こと、辰河 龍太は今、絶賛暇をしていると思うだろう?
実は今、丑蔵家の鬼退治の手伝いをしてるんだ。
ん?なんで、手伝いをしてるかって?
それは――――ッ……!?
「おわぁ!?……危ねぇー」
危ねえ〜。今の俺じゃなかったら、喰われたぞ。マジで…。このクソ鬼が!!
よくも俺の足を喰おうとしたな!
「おらっ!!」
俺の気を纏わせた鋭いパンチが鬼の頭に炸裂する。
鬼は俺のパンチをくらい、そのまま消滅した。
ふぅ、これで何体目だよ?
あっ、なんで、手伝いをしてるかというと……じいちゃんの頼み。
普通はここ――――丑蔵家の当主や分家の人たちが相手をしているんだけど、今日はじいちゃんに言われて来たわけってわけだ。
もともとこの十二家とは、家ごとに別れてそれぞれの土地を管理している地主だ。
ここは、俺が管理している辰家の管轄の外だ。
ここは丑蔵家の管轄だからな。
そして、丑の方角には鬼門と呼ばれ、鬼たちが現れる門がある。その鬼門から現れる鬼を退治するのを任されたのが、闘いに長けている丑蔵家なのだ。
丑の刻は、俗に言う『丑三つ時』。
午前2時から午前2時半までの間、草木が眠ることとして有名な時間帯だ。その間に魔物や妖怪が現れると言う話もある。
それを毎日やっている丑蔵家はすげぇと思うんだよな。
ま、そんなわけで俺も今、絶賛鬼退治中ってわけだ。
ドッ!
ん?あっちの方は確か……朱華の方か?
終わったみたいだし、ちょっと覗いてみるか。
「はぁ…はぁ…はぁ…っ、こんで終わりですかね…?」
朱華は斧を杖代わりにして、肩で息をしていた。
「お風呂に入りてぇです……」
お前な、こんな時に何いってんだよ……ッ!?
朱華の背後に、鬼がいた。
「くそっ!?」
俺は瞬時に、鬼に対処するため気を身体に送って強化する。
鬼が朱華に襲いかかろうした時……、
ズパンッ!
前方からの一閃。
鬼は、そのまま斬られた。
「おわっ!?」
朱華は驚いた声を出した。
「さ、さすが咲直ちゃん。助かっちまいましたよ」
鬼を斬り裂いたのは、咲直だ。
な、ナイスだ咲直!お前、本当に最高だよ!
俺は朱華と咲直の元に向かおうとした時、咲直が口火を切った。
「……なんで、なんだって、先輩はそう気を抜くんですか!戦場でいきなりお風呂入りたいと申すなどなんたるフヌケ発言!妖怪退治は、家路に就くまでが妖怪退治ですよ!」
咲直がクドクドと朱華に向かって小言言ってるな〜。
まぁ確かに、俺も、“トイレ行きてぇ”とかうっかり零したら、ほぼ面目丸つぶれだな。
というか、“家路に着くまで”って。遠足か!!
なんだ!?お菓子は三百円まで的な奴!!
「もう少しシャンと致しましょうよ…」
「そうだな。朱華?シャンとしろよ」
俺は朱華たちの元に着き、そういった。
「いいじゃねえですか?私が大ざっぱにのして、咲直ちゃんが脇をシめ、龍太が後ろを守るってのでうまくやってんですから」
朱華は胸を張っていった。
「あのな、俺は今回だけだぞ?じいちゃんに頼まれてきたんだからな。次はねぇぞ」
「そうですけど…。それは棚上げと言いませんか……?」
咲直はそういった時、
「それにほら」
「「……!」」
俺と咲直が朱華が示した場所に目を向けるとそこには、首を半分切られた巨大な鬼が倒れていた。
「……よくも、まぁ。こんな…」
咲直はそう零した。
「やるな、朱華は。 俺はこれの小さいやつかな?」
「そうなんですか?」
「ああ」
俺の相手した鬼は中ぐらいの大きさで、結構気性が荒かったな。
でも、この拳で一発で沈めてやったよ。
「そういえば……」
「ん?」
不意に朱華が俺に聞いてきた。
「恨み猫はその後、どうですか?」
「ああ、探してんだが、今のとこなかなか見つけられねぇんだよ」
「そうですか……」
すまんな、朱華。
恨み猫の――――確か、名前が……えっと、ああ、夏歩っていうやつは恭一と一緒だよ。
「あっ、龍太。明日はわかってるですか?」
「ん?……ああ、そういえばそうだったな。了解。時間は夕方か?」
「はい」
それからは、妖怪たちはあんま出なくなって、俺たちは帰ることになったんだ。
朝
「ふぁ……、あぁ寝みぃ」
はい。いつものお決まりパターン。
俺の暇な時間でございます。
まあ、時間になるまでどっか散歩でもすっかな?いつもしてるけど……。
「公園でも行くか。腹も減ったし…」
俺は公園にてたい焼きの屋台を見つけ、二つほど買って食おうとした時――――
「あーーん…?」
すぐ側のベンチで、高校生二人が女の子に声をかけていた。
「ああ、あれか。ナンパだな、ありゃあ」
まあ、よく見れば可愛い……って、あれって恨み猫じゃねぇか!?
ナンパされている少女が恨み猫の子と俺は気づいた。
どうすっかな。……よし、助けてやるか。
俺はそのままたい焼きを頬張りながら、向かおうとした時――――
「あのーカンベンしてもらえませんか?こいつ俺の連れなんで」
えっ?恭一?……あ、そうか。今は恭一が保護してるんだっけ。
俺も行こう。
「うぃーす、恭一」
「あっ、龍太?なんでここに?」
「散歩」
「納得」
俺がそれだけ告げると、恭一はすぐに理解したようだった。
「すっすんません。おいほら、行くぞ」
黒髪の少年よ。物分かりが良くて助かるよ。
少年たちは、そのまま立ち去って行った。
立ち去った時、小声が聞こえてきた。
「お前何慌てての?」
「だって、あの二人は子国家と辰河家の当主だろ?下手な事できねぇよ」
「マジか。辰河家はわかるけど、子国は…ああ。当主っても、あいつ『なりそこない』だろ?ビビんなくていいって」
二人の少年はそうった。
あいつ。なんった?恭一が、『なりそこない』……だと?恭一のことを何も知らないくせに言ってんじゃあねぇよ。
怒りを通り越して、殺意が湧いてくるぜ。
あいつら……コロスぞ?
「待て、龍太」
俺の肩を恭一が掴んだ。
「離せ、恭一。あいつら、殺してくる」
「そんなことしなくていい。本当のことだから」
恭一はそういった。
「ちっ」
「えっーと?今のは?」
夏歩ちゃんが、聞いてきた。
「『なりそこない』って、奴?」
「う、うん」
「十二家の当主たちが、それぞれ能力を受け継いでいるのは知ってるか?」
「ッ……!?」
あっ、驚いちゃった。
「夏歩、大丈夫だ。龍太は何もしないから」
「ほ、…本、当に?」
夏歩ちゃんは、俺を見てそう言ってくる。
「ああ、何もしないよ」
俺はにっこりと笑って言った。
「あ、そういえば能力の話だっけ?俺は能力を持ってないんだ。そりゃ、当主の『なりそこない』って、言われてもしょうがないってこと」
恭一はそういった。