電達を先に食堂に向かわせ、今は萱野さんと2人きりになっている。場を和ませるためお茶を汲み直し、「ほうっ」と息を吐いていた
……これじゃ老夫婦だ
哲也「えっと、それで2人きりで話したいことってなんでしょうか?」
紗彩「ああ、そうだったね……単刀直入にいうけど、黒木君うちに来ない?」
哲也「萱野さんのところにですか?」
俗に言うヘットハンティングというやつだろうか
紗彩「うん、君の力は今日見させてもらった。私も君がしている活動は応援してるよ」
哲也「ありがとうございます」
紗彩「でね、君の力はとても有能で皆の役に立っている。だからもっと上のところに来て艦娘達のサポートを受けながらだったら活動が楽になるんじゃないかなって思ってね。どうかな?」
哲也「上、ですか」
紗彩「うん、練度の高い優秀な艦娘がいるし君の活動も効率が上がるかなって。1人でずっと活動っていうのも寂しいでしょ」
哲也「……」
上層部の方につけば練度の高い艦娘もいるし轟沈する可能性は低い、艦娘達の索敵があれば深海棲艦の捜索も楽になるだろう
しかし、俺としては自分の選択で艦娘達の安否が決められるのなら鎮守府に待機していて欲しい。戦いになれているからと言っても多少なりとも被弾はする、できるなら無傷でいてほしいのが本音である
哲也「ありがたいお誘いなのですがお断りします」
紗彩「……理由を聞いていいかな?」
哲也「萱野さんのお誘いはもちろん嬉しいです。けど、俺は出来ることなら艦娘には戦って欲しくないです」
紗彩「なるほど……」
戦うために生まれて来たのかもしれないが、どう言おうと中身はやっぱり女の子で、心がある人間なのだ
哲也「不純な理由かもしれないけど、やっぱり女の子には楽しそうに笑ってて欲しいんです。いつ死ぬかわからず気が休まらない日々より、毎日笑って幸せでいて欲しいです」
紗彩「……」
哲也「まぁ、俺が低能なせいで今も艦娘は轟沈してしまってますが……でも、俺が思ってることは本気です」
紗彩「そっか…」
哲也「はい」
紗彩さんはしばらく考える仕草をした後、決心がついたかのように「よし」っと言ってこちらに向き直った
紗彩「黒木君の気持ちはよくわかった。じゃぁ、この話は終わりにしよう」
哲也「はい、すみませんでした」
紗彩「いいよ、謝らなくて。黒木君の気持ちが1番だよ」
哲也「ありがとうございます」
紗彩「よし、堅苦しいのは終わったから何か楽しい話しよう」
萱野さんが煎餅の袋を開けながら言ってくる。この人の切り替えの早さはすごいと思う
哲也「楽しい話って何話すんですか?」
紗彩「そうだね〜、恋バナとか」
修学旅行かよ……
紗彩「あ、そうだそうだ哲也君に聞きたいことがもう一つあったんだ」
哲也「なんでしょうか?」
煎餅を貪りながら萱野さんが聞いてくる
紗彩「ぶっちゃけ電ちゃんとはどこまで行ったの?もう、しっぽりまでイった?」
この人はいきなり何を聞いてくるのだろう……電とはなんともないのだが
哲也「なんの話してるんですか…」
紗彩「またまたぁ、電ちゃんとの性活のこと聞いてるのよ〜。あんだけイチャラブしてるんだから夜は激しそうよねぇ」
ニヤニヤしながらそんな遥か未来に起こるかどうかさえ怪しい話をしてくる。それとイチャラブした覚えはない
哲也「あの、電とはなんでもありませんよ?」
紗彩「うんうん恥ずかしがらなくていいのよ自分の愛に正直になりなさい。で、結局はどこまで進んだの?」
哲也「だから、進む前にスタートにすらいませんよ」
鼻息を荒らげ始めた萱野さんに呆れながら伝える。今度はしっかり伝わったのか急に真顔になった
紗彩「……もしかして、本当に何もないの?」
哲也「はい」
紗彩「キスは?」
哲也「してないです」
紗彩「手を繋いだりは?」
哲也「ないです」
紗彩「ケッコンカッコカリは?」
哲也「練度に達してる子がいないです。というか指輪すらないです」
紗彩「ジュウコン…」
哲也「ケッコンカッコカリも出来てないのにできるわけないじゃないですか。てか不純なんでジュウコンはしません」
紗彩「黒木君のことただのプレイボーイかと思ってたわ…」
哲也「どんな偏見ですか」
さっきまでの真面目な空気はどこいったんだろう…
紗彩「よし、わかった質問を変えましょう。黒木君好きな子いる?電ちゃんとか電ちゃんとか電ちゃんとか」
どんだけ電推してくるんだよ……可愛いけどさ
哲也「今のところはいません」
紗彩「じゃぁ、女の子って言われて真っ先に思いつくのは?」
無意識に考えてしまう、そこに真っ先に出てきたのは……
哲也「電ですね」
紗彩「そっかそっか、じゃあ結婚してきなさい」
哲也「なんでですか…」
ものすごい話の飛び具合に思わずツッコンでしまう
紗彩「黒木君、君どう見ても電ちゃんに好意持ってるよ?電ちゃんと何か思い出でもあるの?」
哲也「電との思い出ですか…」
出会った時から今までを思い返す………うん、いい思い出だ。7割方プロポーズもどきとハグしてる
哲也「電は元帥さんの次に会った俺と同じ考えを持ってる子でしたね。女の子では初めてです」
紗彩「そこまで運命的な出会いをしておきながら何故くっつかない……」
そんなこと聞かれても……
紗彩「はぁ……まあ、いつか自分で気づく時が来るでしょ。でも、気をつけなよ」
哲也「何をですか?」
紗彩「色々、選択肢間違えると最悪刺されるよ」
なにそれ怖い…まぁ、内にそんな狂暴な子はいないから大丈夫なはず
紗彩「じゃ、私もそろそろ打ち上げいこ~っと。黒木君も一緒に来るでしょ?」
哲也「あ、はいご一緒します」
紗彩さんが扉を開け1人で先に行ってしまう。俺も後を追い、部屋を出る
紗彩「あ、そうだ。最後に一つ」
哲也「はい、なんでしょうか?」
紗彩「君は低能なんかじゃないよ。もっと自分がしてることに胸を張りなさい」
紗彩さんの誘いを断ったときに言ったのを思い出す。あの時は人からの誘いを断った罪悪感もあって少しネガティブになっていた
哲也「はい」
紗彩「うん、いい顔だ」
あんなこともあったがこの人の根は、きっと優しさに満ち溢れてるのだろう
食堂
紗彩「やっほー!さっき黒木君の嫁になりました!萱野紗彩でーす!」
電「!?」
山風「!?」
イムヤ「……」アタマカカエ
前言撤回、この人やっぱ変人だわ……
皆さん覚えているでしょうか。球磨ちゃんの『提督に1日2人きりで甘える権利』を……次回からそれを書いていきます。ガチシリアスが書けない……