皆さん覚えていますでしょうか、ナニカのハジマリ冒頭に登場した???を…
--???
この世界の怨念を集め始めてからしばらくの時が経ち、今は棲装0号も大分大きくなった。
それはいい、これならあいつにもそう簡単にやられることはないだろう…しかし不満……ではないが、なんというか言いたいことが1つある。
???「少し大きくなり過ぎじゃない?」
0号「……」
人間の体を基準に考えると、おそらく3倍以上の大きさがある。これに足が生え口が付き、陸を行き海を泳ぐのだ……どこのホラー映像だろうか。
0号「マスター、シジヲ」
???「取り敢えず待機で」
0号「リョウカイ」
そして更に喋るようになったのだ。カタコトではあるが話し、自分のことをマスターと呼ぶ。人口知能を積んだロボットみたいで面白い。
???「あー、でもマスターって言うのは少し気に入らないなー……私のことはガルゼでお願い」
0号「ガルゼ?」
ガルゼ「うん、私の名前はガルゼ」
あだ名でもなんでもない、この世に何千何億生きてきた私の名前……
0号「ジョウホウ、テイセイ。ガルゼサマ」
ガルゼ「あぁー、様はいらないけど…ま、いっか」
私の名前はガルゼ、深海棲艦の生みの親であり、怨みや怒りなどを司る負の感情の神様、ガルゼである。
さぁ、皆恐れ称えるがいい。
--哲也
土曜、ついにやってきましたこの日が。山風とデートに行く日である。
デートプランはしっかり立てた、財布も忘れてないしお金もしっかり持って来た、そして財布の中には諭吉さん十数人ほど。
服装の方だが、ジーパンに白の無地のTシャツ、その上に黒パーカーというおしゃれのおの字もない格好をしている。
山風「て、提督…お待たせ。それと、おはよう」
哲也「うん、おはよう。待ち合わせ十分前に来るとはいい心掛けだ」
山風「そういう提督は、いつ来たの?」
いつもの細々とした声で尋ねて来る。声に曇りもないしどうやら元気そうだ。
そして山風の質問に答えるとすると、59分と50秒前……つまり約1時間前からいた事になるが、こんなこと正直に話したら山風に呆れられそうなので言わないでおく。
哲也「20分ぐらい前かな?」
山風「そっか、待たせてなくて安心した…」
哲也「はは、あまり早くは来ないよ。そんなに早くいそうに見えるか?」
山風「提督のことだから、1時間ぐらい前には来てそうだなって…」
哲也「……」
山風「?」
不覚にも言い当てられ黙り込んでしまう。山風は「どうしたの?」というように首を傾けていた。しかしバレてはいなかったので、ここはセーフとしよう。
そんなことはさておき、早速出発する。山風は行きたいところは特にないと言っていたので、プランどおりにいく。
山風「提督は、どこか行きたい…?」
哲也「今日は遊園地に行こうと思ってな。山風はどうだ?」
山風「提督に、任せる…」
山風もいつもより元気な声で応答してくれる。
それからバスに乗り、最寄りの駅から電車に乗りで出発してから約五十分、目的に到着。
目的の遊園地はここら辺では1番大きな場所で、よくテレビのCMでもPRしていた。
ちなみにここを選んだ理由は、楽しいことを共有すれば早く仲直りできるかもという期待と、単に俺が来たかったからである、文句は受け付けない。
山風「すごい、大きい…」
哲也「おぉ…」
お城の門のような入口と城内を囲む大きな壁、外見だけで圧倒されてしまった。
哲也「取り敢えず入ろっか」
山風「うん…」
入場料金を2人分払い、中に入る。電の時とは違い何故か1発目からカップルと見間違われてしまう。体格的には同じぐらいのはずなのだが、何故だ……
哲也「それにしても、まさか強引にカップル割を勧められるとは」
山風「結局、押し切られたし、ね…」
受け付けのお姉さんに何度も勧められ、結局そのまま割引料金で入ってしまった。詐欺とかで捕まらないか心配である。
そして一応これでも鎮守府の最高責任者なのに、ここまで推しに弱くて大丈夫なのかと自分を心配してしまう。
哲也「それにしても人が多いな」
山風「まぁ、今日休日だから、ね。仕方ない……」
哲也「それもそうか…じゃぁ、山風手出して」
山風「?、はい…」
山風が差し出してきた右手を強すぎない程度に握る、山風は一瞬体をビクッとした後顔を高揚させる。
山風「て、提督…これは?」
哲也「ん?手を繋いでるだけだが」
山風「な、なんで…」
哲也「だって迷子になりそうだし」
山風「は、恥ずかしいよ…」
哲也「でも、迷子になったら迷子放送かけられて余計に恥ずかしい思いするぞ?」
山風「………このままで、いい」
哲也「了解」
手を繋ぐのと迷子放送では圧倒的に迷子放送の方が恥ずかしいらしい。
山風は俺が握るよりも更に強く力を込めて握ってきた。何か迷子に嫌な思い出でもあるのか…
哲也「取り敢えず、何する?」
山風「ジェットコースター、乗りたい」
哲也「いきなりハードだな」
山風「提督は、嫌?」
哲也「そんなわけないよ、じゃぁ行こっか」
山風「うん」
それから移動を開始しジェットコースターの乗り場まで到着。やはり休日のせいか混んでおり待機列に三十分近く並んだ。
係員の人にチケットを渡しいざ搭乗、パソコンで調べたがここのコースターは日本で1番距離が長いらしい。
安全バーを下げた後、係員の発車前アナウンスが鳴り響きコースターが動き出す。山風を見るとここに来る前より目を輝かせていた。
哲也「山風はジェットコースター好きなのか?」
山風「うん、乗ったことなかったから…1回乗ってみたかった」
哲也「そっか。かなり速いからバーに掴まっとけよ」
山風「わかった」
両手で安全バーを握りしめ、来たる衝撃に備える。そしてコースターは1番高くまで上り詰め一気に急降下する。体に当たる風圧とジェットコースター特有の急カーブ、一回転での圧力がかかる。
山風の方を見てみると目をこれでもかと言わんばかりに閉じ、圧力に耐えていた。
そして、1周が終わり最初の地点に戻って来る。ジェットコースターからおり出口専用のゲートから出ていく。
哲也「大丈夫か?」
山風「うん、少し怖かったけど楽しかった…」
山風は元気良くニっと子供のような笑みで笑って見せる。たまらず頭をなでてしまう。
哲也「楽しめたなら良かった。次は何乗るか」
山風「提督、お昼……もう、12時」
哲也「ん、もうそんな時間か。じゃぁ昼にするか」
ジェットコースターの行列に時間を取られたか午前中は1個しか
乗れなかった。まぁ、午後に楽しめばいっか。
哲也「取り敢えず、向こうにフードコートあったからそこに行くか」
山風「うん」
入口からまっすぐ進んだところにフードコートがあったためそこを目指す。
目的の場所には数分でついたが案の定というかなんというか席は家族ずれやカップルでうまっていた。
哲也「仕方ない、食べ歩きできるもので済ませるか。山風はどうする?」
山風「あたし、あれ食べたい」
山風が指さした先には、ここのマスコットキャラクターの顔を模した鉄板焼きのお菓子があった。
哲也「あれでいいのか?」
山風「うん」
注文どおりキャラクター焼きを買ってあげた、山風は顔をほくほくさせながらそれを頬張っておりとても満足そうだった。
哲也「それにしても本当に混んでるな今日、もうちょっとゆっくりできると思ったんだが」
ちょうどお昼時のため押し寄せて来る人の波をかき分けながら人が少ない場所を見つけるまで進んでいく。
こんなに人が多いと迷子も多そうだ。それより山風とはぐれないようにしないと……
哲也「山風、はぐれるなよ……?」
山風の手を握ろうと手探りで山風の手を探すが、それらしきものに触れなかったため一旦立ち止まり振り返る。
しかし、そこには山風の姿はなくフードコートに押しかける人達しかいなかった。
哲也「マジか……」
山風とはぐれてしまった。
--山風
提督とはぐれてしまった。
最初の方はしっかりついていけてたのだが、途中靴が脱げてしまい履き直した時にはもう既にこの様だった。
迷子放送をかけられてしまう、あれは恥ずかしいのでどうしても避けたかった。
山風「どうしよう…」
あたりを見回しても提督らしい影はない、何か提督と通信できる方法あれば良かったのだが、生憎どうせ鎮守府から出ることはないだろうと常日頃から思っていた自分にとってそんな物持ってるはずがなかった。
山風「提督、どこ…」
迷子の不安からくる孤独感と恐怖が自分に押し寄せる。目には涙が溜まって来ており気を抜いたらこの場で泣き出してしまいそうだった。一刻も早く提督を見つけなければ……
???「お嬢さん、お困りですか?」
山風「?」
そんなことを考えていると突然後ろから声をかけられる。振り向いてみると、そこにはよくわからない石が並べてある出店があった。こんな店、園内マップにあっただろうか。
???「迷子、ですか?」
山風「うん…」
???「そうですか…取り敢えずお連れの方が来るまで一緒に待ちましょう」
山風「ありがとう…」
???「いえいえ」
小さく会釈をする女の人、見た目は二十代前半くらいで占い師のような格好をしている。おそらくこの店の店主なのだろう。
店の中から持ち運びができる簡易椅子を出し自分用の席を作ってくれた。
???「もう、ぬるくなってしまってますが良かったらお茶、どうぞ」
山風「あ、ありがとう…」
渡されたお茶を一口…確かに温いけど、それでも美味しかった。それから、お菓子をくれたり店の商品を触らせてくれたりと何から何まで親切な人だった。
???「そういえばお名前を聞いてませんでしたね。私は希実です。あなたは?」
山風「白露型駆逐艦、8番艦…山風」
希実「駆逐艦、ということは艦娘の方ですか」
山風「うん」
希実さんは少し驚いた顔をしていた。艦娘と言えど普通に街には行ったりするのでそこまで珍しくはないと思うのだけど…
山風「珍しい?…」
希実「ああ、いえ。つい最近にも艦娘に出会ったので…つい」
山風「前あったのはどんな子、だったの?」
希実「そうですね、身長は山風ちゃんと同じくらいで名前は電と言いますね」
電…ここら辺の鎮守府は提督のところだけだけど、偶然出張してきた他所の提督の秘書艦の可能性もある。
希実「それと、男の人も連れていましたね。おそらく提督でしょうか…2人でネックレスを買って行きました」
山風「……」
間違いない、希実さんが以前あった艦娘、電だ。ネックレスと言うとおそらくあの不思議な石のものだろう。そうなると、この人も提督の顔を分かる可能性が高い。
山風「多分、あたしの探してる人、その人…」
希実「あらそうでしたか、では私も探して見ましょう……あ、その前に山風ちゃんにこれあげます」
山風「?」
ひし形をしたエメラルドグリーンの透き通った石を渡される。良く雑誌とかで見るような細かい磨きがかかった高そうなものだった。こんなもの貰っていいのだろうか……
山風「綺麗…」
希実「その石は磨くと光沢が強くなって月の光でも明るく反射するんです、なので良く目印などに使われています。そしてそれにちなんでこの石自体に『どこにいても必ず見つけ出す』という言葉があるんです」
山風「へぇ…」
石を空にかざしてみると、太陽の光を強く反射し石自体が光ってるようだった。
そしてそんな自分をニコニコ顔で眺めている希実さん、どうしたのだろう…
山風「どうしたの?」
希実「いえ、嬉しそうに笑っていたので。気に入って貰えて何よりです」
希実さんに指摘され口元に手をやってみると確かに笑っていた。無意識に笑うというこの感覚はとても不思議なものだが、なんとなく笑ってしまった理由がわかった気がした。
それは、この石だ。感触は冷たいのだがどことなく暖かい。
山風「なんでか、わからないけど…これ、見てると提督を思い出す…」
希実「きっとその石が提督を連れて来てくれますよ」
山風「うん…」
貰った石をポケットにしまっておいてく。
そして、それからしばらくもしないうちに提督がきた。石を貰ってからすぐ来たので本当に効果があるのかと信じてしまいそうだった。
--哲也
園内を懸命に探すこと1時間、急にここにいるんじゃいかという勘が働き行ってみたら本当にいた。しかもそこは以前行ったアクセサリーショップ、なんという偶然。
当の山風は俺を見つけるなり目に涙を浮かべながら抱きついてきた。どうやら寂しい想いをさせてしまったようだ。
哲也「ごめんな、山風」
山風「提督は…悪くない」
店主さんも小さく微笑みながら山風を見ていた。今までのことの礼を言わないと……
哲也「すみません、山風が世話になりました」
希実「いえいえ、こちらも楽しい時間を過ごせたので。それよりもう山風ちゃんと逸れないで下さいね?」
哲也「はい、ありがとうございました」
小さくお辞儀をした後 、山風の手を引きながらその場を後にする。そういえばまた名前聞き忘れた…
時刻は2時前になってしまったがまだ時間はあるため、取り敢えず近くの観覧車に乗ることにした。
山風の涙をハンカチで拭いてあげながら泣き止むのを待つ。
哲也「落ち着いたか?」
山風「うん、ありがとう提督…」
哲也「お礼はいいよ、元々は俺がはぐれたのが原因なんだし。取り敢えず山風に大事がなくて良かった」
山風の見える部分には怪我は1つも無かった。あの人ごみの中だったから膝でも擦りむいていたらなどと考えていたが心配なかったようだ。山風本人も特に痛いところはなさそうだった。
そして今度は山風が俺の隣に座り、あの日と同じように頬にキスをしてきた。頬をカウントに入れると俺のファーストキス相手が山風になるんだがそれは……
山風「提督は、提督だね」
哲也「俺は俺だぞ」
山風は笑いながらそんなことを言ってくる。俺が俺とはどういうことだろうか。
山風「なんで、あんな気まづく…なってたんだっけ…」
哲也「主に俺がチキってたからです。本当にごめんなさい」
山風「まぁ、あたしも、部屋に篭ってたけど…」
哲也「そうだったのか、どうりで会わないわけだ」
そういえば萱野さんが山風は引きこもりになりやすい子って言ってたけど、そう考えるとうちの山風って結構アクティブなのか。まぁ、今はどうでもいいけど。
哲也「まぁ、冗談はさておき……山風ごめんな、俺が中途半端な態度取っちゃって。その、あの日から山風との距離感がうまく掴めなくて…」
山風「うん、あたしも同じ…ごめんね提督。これからはちゃんと部下として頑張るから…」
山風から恋愛云々を抜くと部下と上司になっちゃうのか……もう少し親密な方がいいな。
哲也「山風、俺から1ついいか」
山風「なに?」
哲也「その、上司と部下じゃなくてさ……」
山風「?」
哲也「親友じゃ、ダメかな?」
山風「……」
俺の提案を良く捉えたか悪く捉えたかわからないが黙り混んでしまった。
それから少し考えた後、不安そうな顔で尋ねてくる……
山風「いいの、親友で?」
哲也「ああ、もちろん」
山風「部下と上司の方があまりあたしと関わらないから、電とゆっくりできるよ?」
哲也「電とは一日中いるから大丈夫だ。それに今までよく一緒にいた山風がいきなり会えなくなったら色々困る」
山風「寂しい?…」
哲也「ああ」
山風「浮気、疑われるよ?…」
哲也「何する気なの?」
山風「何もしないけど、恋人以外の女の子といると浮気を疑われるって本に載ってた」
哲也「鎮守府の中で女の子と一緒にいなことなんてないから多分大丈夫」
山風「本当にいいの?」
哲也「ああ、いいよ」
山風は何を戸惑っているのかわからないけど、取り敢えず了承してくれそうだった。
山風「……わかった、提督の親友になる。かわりに……」
哲也「?」
山風「ときどき名前で呼ぶよ?お友達、だから」
哲也「ああ、それくらいどうってことないよ」
山風は聞きたいことをあらかた聞き終えたという顔をしていた。そして、最後にと確認するように尋ねてきた…
山風「……仲直り?…」
哲也「…できたな」
あまりにもあっけなく仲が元通りになってしまう。
今のが最後の質問だったのか、それから山風は質問をしてこなかった。
そのかわり、顔を若干高揚さえながら小さく深呼吸を数回し、何か心の準備をしているようだった。
そしてこの光景には見覚えがあり、いつの日か暁をお子様に戻した日に「お兄ちゃん」と呼んできたあれに似ている。
山風「こ、これから、改めて…よろしく…て、哲也……」
言い終えてから恥ずかしくなったのか、準備段階よりも更に顔を赤くしてしまう山風。
されど、意を決して言ってくれたこの言葉、返事はしっかり返す……
哲也「こちらこそ、よろしくな山風」
山風との関係修繕…仲直り完了。
これで本当に本当の意味で山風との1件に示しがついた。
こんにちは、はつひこです。今回頑張りました、こう言ってはあれですがサブキャラのストーリーに6000文字で書きました。そして更に夏休みが終わりなんやかんやでモチベーションがダダ下がりの中で6000文字書きました、正確に6641文字書きました。誰が僕を崇め讃えやがれ下さい(崩壊)。
次回「電的ピンチ」