祝★50艦目
ここまでご愛読頂きありがとうございます。
新たな敵への警戒と対抗として大規模な演習作戦が始まってから2ヶ月近くたった。
この鎮守府は艦娘達の幸福をモットーにし、艦娘を出撃や遠征をさせずできる限りの執務をやってもらうが俺のやり方だったが、今は皆演習に向かっているため久々に執務仕事に手をつけている。
改めて思うが、1日でかなりの量の書類を消費しなきゃいけない。
夕立「提督さん!夕立、帰還したっぽい!」
そんな中、執務室の扉をノックもせず元気に飛び込んで来る夕立。サイドに生える犬耳のような髪の毛をそれぞれピコピコさせながら、渾身の勢いを込めて抱きついて来た。よく見ると目をキラキラ光らせながらこちらを見ている。
哲也「どうした?」
夕立「夕立、MVPとったっぽい!」
哲也「あぁ…そういうことか」
ようするに褒めてくれということらしい。さらに言えば頭も撫でろと目と言葉で訴えかけて来る。
そういうわけで、俺に抱きついたままの夕立の頭をそっと撫でてみる。先ほどの髪の毛をよりピコらせながら更に強く抱きしめてきた。どうやら気持ちいいの合図らしい。
そして、それを夕立から数歩離れたところで羨ましそうに眺めている時雨がいた。
哲也「時雨もおいで」
時雨「僕はいいよ。夕立にかまってあげて…」
哲也「遠慮するな、時雨も頑張ったんだから」
夕立「そうっぽい、時雨今日もたくさん活躍したっぽい」
それとなく誘ってみると、夕立の後押しもあってか観念したように素直に撫でられてくれた。本人は少し恥ずかしそうだったが、俺は気にせず撫でまくっていた。もちろん夕立の方の手は休めない。
夕立「そういえば今日時雨が練度60になったぽい。改二になれるっぽい」
哲也「お、そうかおめでとう時雨。それで改二って?」
あまり聞きなれない単語のため聞き返してしまう。改があるのは知っている、しかしその先があるのは初耳だった。
夕立「時雨が更に強くなるっぽい!」
哲也「改二になったら何か変わることとかあるの?」
時雨「夕立と同じように横の髪の毛が跳ねる、ぐらいかな…あと、装備スロットの追加」
ということは、時雨を改二にすると髪の毛がピコるようになると……それは中々可愛くていいじゃないか。
哲也「時雨はなりたい?改二に」
時雨「提督の役に立てるなら、お願いするよ」
哲也「わかった、早速明石のところ行くぞ」
時雨「うん」
夕立「ぽい!」
工廠
時雨の了承も受け、その後直ちにここへとやってきた。明石とも久しぶりに会ったため少し驚いたような顔をされたが、事情を話したらそんなことなかったかのように準備を始めてくれた。
明石「後はこの部屋に時雨ちゃんが入ってくれれば改造は終わりです」
哲也「というわけでだ、時雨。準備はいいか?」
時雨「うん、いつでもいいよ提督」
哲也「じゃぁ、明石頼む」
明石「了解です」
明石が時雨を誘導していく。今思えば初めて工廠を工廠らしい使い方をしたと思う。今まではもう雑貨屋気分で来てたし……
改造が始まり数分、文字からいえば改造というのだから機械がウィンウィンガシャコンする音が聞こえると思ったのだが、部屋の中から聞こえてくるのは高校の女子更衣室から聞こえるキャッキャと言う賑やかそうな声だった。もちろん女子更衣室の中など見たことはない……
時雨「提督、終わったよ」
哲也「おぉ…」
髪の毛は夕立同様サイドがはね上がり、装備も説明どおりスロットと同時に増えていた。
哲也「うん、かわいいよ時雨」
時雨「あ、あまり褒めないで欲しい、恥ずかしいから……」
時雨は頬をポリポリ書きながら若干赤面していた。
しかし、こうやって髪がはねているとピコピコするのか気になってしまう……
試しにそっと時雨を撫でて見る。
時雨「て、提督どうしたの?」
哲也「いや、なんとなくだ。気にしなくていい」
時雨「わ、わかったけど、そんなまじまじ見つめられると照れるよ…」
そこはまぁ、我慢していただきたい。
当の時雨の髪は一向にピコる気配がなさそうだった。なので、時雨の頭から手を離す。少し残念そうにしていたが、ここは次の機会にと言うことで……
そして時雨から離れたと同時に夕立が勢いよく飛びついて来た。こちらはもう既にピコっている。
夕立「提督さん、夕立もなでるっぽい」
哲也「あぁ、わかったよ」
夕立はそっと撫でるよりかは少し強めの方がお気に入りらしい。その証拠に適度な力加減で撫でると両サイドが物凄い勢いでピコる。
夕立「ん〜、気持ちいっぽい」
時雨「ほら夕立、そろそろ行くよ。次も演習もあるんだから」
夕立「ぽいー」
少しだるそうな雰囲気のぽいを返しながら夕立は時雨に引っ張られて行った。心做しか時雨の髪が動いていた気がする。新しい力を試すのが楽しみなのだろう。
××
時雨達と別れ、仕事の間に出来たちょっとした暇な時間を休息に使っていた。休息と言ってもほんの数分海を眺めるだけだが。
そんな風にしていると後ろから艦装をつけたままの響がやってきた。
響「おや、司令官かい?」
哲也「ん?響か。こんなところで何してるんだ?」
響「少し休息さ。司令官は?」
哲也「響と同じだ」
響はそうか、と返して俺の隣に座る。そして、そっと肩に寄り掛かって来た。
哲也「どうした、具合悪いのか?」
響「ううん、そうじゃない。ただ、落ち着くんだ。暁達といる時とは別にね」
哲也「そうか」
響「うん……」
瞳を閉じながらそっと微笑む響、眠そうではなく親に甘える子供のようだった。
響「それにしても、司令官も休憩するんだね」
哲也「さすがに年中無休で動き続けるのは無理かな〜」
響「司令官ならできそうだね」
哲也「よしてくれ……」
クスッと笑いながら遠くに目を見やり、より深く寄り掛かって来る。おそらく電が見たら浮気を疑われる光景になっているだろう。見つかったらなんて言おうか……
哲也「まぁ、でも…電がいなかったら本当に年中無休で働いてたかもしれないなぁ…」
響「ふふ、電に感謝しなきゃだね」
哲也「俺が無理した時、怒るんじゃなくて泣くんだよな。そこが弱る」
いつかに俺が大怪我した時も怒られるより先に泣かれてしまったことがあった。慰めるの大変だったんだよな、あれ……
響「それぐらいに司令官を心配しているのさ。浮気なんかしたらあばら骨6本より辛い精神攻撃が来るかもね」
哲也「俺は電一筋で生きていくつもりだから大丈夫」
響「熱いねぇ」
いたずらするような目で俺を見つめてくる響。これはもしかしたら危ない状況というものになっていたりするのだろうか。それともただの思い過ごしか。俺としては後者であってくれるとありがたい限りなのだが。
響「司令官…」
そんな願いも虚しく砕け散り、俺の方に向けて無防備に唇を差し出してくる。
哲也「やめなさい」
響「あぅ……」
響の頭にチョップを入れる。
大して力は入れていないが、頭をおさえ涙目になっている響。そしてどこか不満そうである。
響「冗談でも女の子のキスの要求に、まったくどうじず拒否するっていうのもどうかと思うなぁ、私は…」
哲也「今さっき言っただろ、俺は電一筋だって。だから撫でる以上のことはしません」
響「膝の上に座るのは?」
哲也「それはいい」
響「ならいいや」
いいのかよ……
響「じゃぁ、私はそろそろ行くよ。暁が待ってる」
哲也「人待たせてたのかよ」
響「司令官と話すのが楽しくてつい」
反省はしてる、だが後悔はしてないと言った目で俺を見ていた。
心の中で若干呆れながらも響に別れの挨拶をする。
哲也「まぁ、次からは気をつけろよ。また今度な」
響「ああ、またね。司令官」
響はこちらには振りかえらず手だけを振って、来た道を戻って行った。
哲也「さてと、俺もそろそろ戻るか」
気づけば三十分あまり時間が過ぎていた。早く戻らないとサボりだと思われてしまう。
俺はその場を離れ、執務室に戻る。そこにはちょうど帰還したのか電がおり、机の上の書類を整理していた。
電「あ、おかえりなさいなのです。司令官さん」
哲也「うん、ただいま。電もおかえり」
電「はい、ただいま帰還しました、なのです」
敬礼を1つし、演習の結果報告書を手渡してくる。
内容に不備はなく、問題もなかったため電にそう言い渡し今日の業務を終わりにさせる。
電「では司令官さんのお仕事を手伝うのです」
哲也「いや、休んでよ…」
朝から午後に入るまでの間に演習を数回こなし、疲労もさぞ溜まっていることだろう。
俺としてはなんでそんな元気そうなのかを聞きたいくらいである。
電「まだまだ動けますよ?」
哲也「俺が心配だから休んでくれ」
電「……」
電が首をキョトンと傾けながら手伝いができないことに疑問を持っているようだった。
というかその仕草可愛いな、こんなことする子だったっけ電って……
電「電、司令官さんと一緒にいたいだけですよ?だから手伝いたいです」
哲也「おぅ……」
なんか、物凄いナチュラルにデレられた……
以前ならこういうことを言う時は顔を赤くしながら、小声でモジモジして言ってきたのに、どうしてここままで変わってしまったか……まぁ、可愛いからいいんだが
哲也「無理はするなよ?」
電「大丈夫です、司令官さんと一緒ならいくらでも頑張れます」
哲也「ありがとな」
電「いえいえ」
嬉しそうに声を上ずらせながら小さく微笑んでいた。
この後、電に補佐をしてもらいながら執務を行った。前まで執務を任せていたせいか妙に手際がよく、その事務レベルの高さに思わず驚いてしまった。
こんにちは、はつひこです。今回で五十話目(1艦の方からカウントしてます)です読者の皆さん本当にありがとうございます。
これからのストーリーですが、以前要望…というか質問にあった、哲也君の暴走を書いてみようかなと思います。
自分の文才でどこまで書けるかわかりませんが、どうか暖かい目で見てくれると助かります。