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神様「君が……邪神…」
容姿、体格ともに若い女のそれだったが、体を黒い煙のようなもので包み、頭も含め至るところから角のような突起物が出ている。
邪神「うーん、その呼び方は嫌かな〜。ルーゼって読んでよ」
おちゃらけた様子で長く付き合ってきた友人と接するかのような物言い。だが、この雰囲気が逆に神様の中に警戒を生み出していた。
ルーゼ「ふふ、警戒してるねぇ。いいよ~その顔、たまらない」
神様「……君は、何者なんだ?目的は?」
唐突に現れたかと思えば、自然災害を起こし人々を混乱に陥れるこの存在に警戒だけでなく純粋な疑問が湧いて来る。
そしてルーゼは光ない目と妖しげな笑みを浮かべながらそれに答えた。
ルーゼ「私は、人の恨みから生まれた神だよ。目的は…ないかな、私は存在が役割、私がいる限り災いは降り続け人間はずっと狂ったままさ」
神様「……そんなこと、許すとでも?」
人の命を脅かし、自然を壊す。そんなことを当然と言うように語るルーゼに怒りを覚える。
その顔を見てルーゼは更に妖しく笑う。そして1つの質問をしてくる。
ルーゼ「君は、人間のどこがいいの?神である私達にはおもちゃ同然の物だろう?力を使うどころかほんのひと撫でで灰になる種族だよ?」
神様「人は、優しさに満ち溢れた生き物だ。おもちゃなんかじゃない」
人間はおもちゃじゃないという答えに不思議そうに首を傾けるルーゼ。
自分よりはるかに劣っていて簡単に壊れてしまうおもちゃと言う考えと、人は尊く慈愛に満ちた生き物という考えの違いが互いに辛辣とした空気を呼ぶ。
ルーゼ「……まぁ、いいや。元々君とは仲良くなる気なかったし。むしろ邪魔だし…」
神様「…何?」
ルーゼはその場から立ち上がり、ゆっくりとこちらに近づいてくる。そして残り2メートルあたりを過ぎたところで急加速、懐に接近してきた。
ルーゼ「……消えてくれるかな?」
神様「!」
手先から黒色の刃を発生させ突きをしてくる。そしてギリギリのところでそれを交わした。
腹部に少しかすり、傷が出来てしまう。神様も負けずと力を発動する。
ルーゼ「もー、避けないでよ。君のことを消せないじゃないか」
神様「なんのために消すんだ?」
想像以上の邪神の力に内心警戒をしつつ、できるだけそれを悟られないようにする。
ルーゼ「決まってるじゃん、君がいるせいで私の能力が打ち消されちゃう、だから君には消えて貰わなきゃいけないの。私が自由にできないじゃん」
不機嫌そうにふくれっ面をするルーゼ、そしてもう片方の手から先ほど出した刃と同じようなものを作る。
再び突進攻撃を仕掛け神様の胸元めがけて刃を突き立てきた。
神様は手に自分の変換の力を乗せる、すると両手が光だし拳状になる。その手で刃に触れた瞬間刃は煙となり消えて言った。
ルーゼ「…っ……不快だなー、ああ…もう……!」
自分の思い通りにいかず、怒りをあらわにしだすルーゼ。体に纏った黒煙を変形させ九つの刃を作り出す。
ルーゼ「ふふ、私のこれ耐えられるかな?」
神様「くっ……」
それぞれの刃が連続して攻撃をくりしていた。ルーゼの勢いに押され、徐々に体の傷が増えていく神様。そして刃の1本が肩を貫く。肩が射抜かれたことで左腕が丸々1本地面に落ちた。
神様「ぐっ…!」
想像にしない痛みが走る。
なんとか刃を避けきり、ルーゼから離れたところで膝をつく。
ルーゼ「ふふ、痛いだろう?私と君は真逆の性質…つまり君に痛みを与えられることもできるのさ」
神様「ああ、そうかい……だったら、俺の力もお前に効くよな…!」
ルーゼ「!」
光の砲弾を精製し、ルーゼにめがけ発射する。腹部に大きな穴を開け、後から来た痛みにルーゼは悶絶した。
神様も、先ほどの傷の回復に努めようと力を使う。怪我の再生具合から1時間はかかると判断し、撤退しようとした。
ルーゼ「……よくも…よくも、私の体に傷を…!」
神様「あれで動けるのか……」
怒りに髪が逆立ち、腹に大穴を開けたまま急速飛行で接近してくる。怪我のせいか本来の力が発揮できない神様、そしておそらく恨みの神特有の能力なのだろう、怒りによってルーゼ自信の力は増していた。
力不足の神様では勝ち目はないと確信し、ある決断をする
神様「……仕方ない…俺の負けか……」
ルーゼ「消えろ!」
九つの刃が、胸、足、右腕、片目を貫く。能力のせいか徐々に刃自体の全長が大きくなっていき、神様の体を引き裂いていった。
ルーゼ「これで、終わりだ!」
神様「……」
ルーゼの渾身の一撃により、ついに神様は、四肢がバラバラになった。それぞれのパーツが宙を漂い、光の粒子が散漫してする。
そんな光景の中でルーゼは子供が笑うように無邪気にゲラゲラと笑っていた。
ルーゼ「これで…私の……勝ち…!」
神様「いや、引き分けだ」
ルーゼ「!?」
歓喜の念に浸っているなか、唐突にその場に響き渡る神様の声。声の方に振り返ってみると、そこには頭だけで喋っている神様がいた。
ルーゼ「な、なんで、私がこの手で…」
神様「まぁ、これでも君と同じ神だから。そんなことより君には少し眠って貰うよ……」
ルーゼ「!?……こ、これは!」
四肢をバラバラにした時に飛び散らかっていた光の粒子がルーゼに集まって来る。その粒子は恨みの力を変換していき閉じ込めていった。
急速に減少していく己の力に焦りを覚え、闇雲に暴れまわる。白い世界を切り裂いていき黒く染める。
神様「封印…自分の体を器にし相手をそこに閉じ込める。これが今の俺の精一杯だ」
ルーゼ「お前の役目が果たせなくなるな!」
最後の反乱と言うべきか、やけくそと言うべきか神様に脅しと暴言を吐く。
「生憎、後任がいるんでね」と返し神様はルーゼの封印を続ける。
ルーゼ「覚えていろ、いつか必ず君を……」
神様「その時は全力で君を倒すよ……」
神様は最後の力を使い、ルーゼを封印しました……
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哲也「…そして、神様は世界を救う代償に長い眠りにつきました。しかし世界を救った神様は誰にも崇められません。神様の世界で起こったことを人は知るすべがないからです。この神話を知っているのは、天使様…そしてこれを読んだあなただけ……おしまい」
電「……」
取り敢えず読める部分は1通り読み終えた。
纏めると人を愛していた神が人間の恨みの感情から生まれた神から世界を救うという物語。まぁ、あらすじだけ聞けばファンタジージャンルの絵本として迎え入れて貰えそうだが……内容が重すぎるよこれ…。バトルシーンに入って次のページで神様の腕が落ちるって、これ絶対子供向けじゃねえよ、むしろ大人向けだわ!……そう叫びたくなるぐらい濃い内容だった。
電も、最初は「この神様は素敵なのです」などニコニコしながら見ていたが、もうこのシーンになる頃には真顔の中の真顔だった。両神様消滅シーンとかもう絶望をあらわにしてたよ……
哲也「電、作り話だから、な?きっとこれ書いた人も今はハッピーエンドな作品書いてると思うから今度探しに行こう、ね?」
電「はい…なのです……」
そっと後ろから抱きついてあげる。電も抱きついた腕にギュッとしがみついていた、どうやら相当答えたらしい。
一旦本を入っていた箱の中に戻し電を慰めることに専念することにした。
取り敢えずこんな本を所持していた昔の俺を殴りたい…
電「司令官さん、神様…死んじゃったのです」
哲也「…死んだんじゃなくて眠っただけだよ……」
ついには大粒の涙を流して泣き出してそまうほどだった。子供のように泣きわめくのではなく、小さくすすり泣くように。
哲也「大丈夫、大丈夫……」
電「司令官さん……」
泣き続ける電を抱きしめながら心の奥底で誓う。
捨てよう、この本を焼却処分にしよう、と……電を泣かせるもの誰であろうと、例え物であっても処分しようと……
哲也「ほら、電こっち向いて」
電「はい…」
こちら側に向かせ、電の頭をそっと胸に迎え入れる。なんとなく選んで読んだ、たった1冊の絵本でまさかこんなことになろうとは…しかし、逆にいえば絵本でここまで人を泣かせられるならそれはそれで見事なものだと……
電「…うぅ……」
哲也「いや、やっぱないわ。電泣かせた時点でこの本アウトだ」
早急に処分を決行するため、近くにあるゴミ箱を引き寄せる。
哲也「この本はもう捨てちゃうかページの飛びも酷いし……」
電「……待って下さい…」
哲也「?」
本を捨てようとゴミ箱の目の前まで持っていったところ電にストップをかけられる。見ると大切な物だから捨てないで欲しいというような目をしていた。
電「あの、この絵本電にくれませんか?」
哲也「……」
どういうわけか先ほど自分を泣かせて来た相手を欲しいと言ってくる。
電はこの本に何の思い入れを持ったのだろうか……
哲也「大丈夫?辛くなったりならない?」
電「はい…辛く、なるかも知れませんが電が持っていたいのです。それにこの神様は司令官さんに似てるので捨てちゃうのは嫌なのです」
哲也「はぁ……」
確かに似てるところは多いかもしれない、主に能力とか…時々自分と重なる時あるし。とは言ったものの俺は物語の最後のような自分の四肢をばらされたまま相手を無力化などという芸当はできないし、そもそもこの人とは能力の本質が違うし。
しかし、俺も能力はあるしもしかしたら何かの神様だったりするのだろうか……
哲也「いや、作り話だしあるわけないか」
電「?、どうしたのです?」
唐突な俺の台詞に困惑した様子の電になんでもないと返した。
でも、神様はないとしてやっぱり俺の力も何か秘密があったりするのだろうか……
O(:3 )~