哲也「……」
電「……」
心地よい朝日が窓辺から入ってくるなか、ここにいる男女二人はただ沈黙を作っていた。
女…いや、幼女の方は全裸に自前の制服を肩にかけただけの、ラフ…という言葉に纏めていいのかわからない色々危なすぎる格好。
男の方は、上半身半裸に下は病衣という、なんかもうよくわからない格好。目覚めた幼女に「はわわ///」という反応をされ急いで隠したようだ。
お互い喧嘩したわけでもなく、はたまた別れ話をしているわけでもない。ただ、気まずそうに顔を背けあっているのだ。
そう、この二人……事後である。
哲也「……」
電「……」
ヤっちゃったよ…ヤっちまったよ……
鮮明に覚えてるよ昨日のこと、電が艶かしい声で鳴いてたよ……なんだろう罪悪感がすごい。
恋人を抱いた……ただそれだけ、それだけなのだが、なんというのだろうこの法に触れた感じは……やっぱり電のようs…
よし、謝ろう。まずはそこからだ……
哲也「マジすいませんでした」
電「///」
決断してから0,3秒、手を八の字にし正座の前で合わせ、全身全霊で頭を下げた。
過去にしてここまで見事な、素早く、そして綺麗なフォームの土下座があっただろうか……
哲也が口を開くと同時に昨晩の、鮮明には思い出せないが、今までに感じたことのない快楽が体に走っていたことは覚えていたため、「あ、自分抱かれたんだ…」と悟った電は何も言わず頬を赤く染める。それはもうプシューと蒸気が出そうな程に……
哲也「せ、責任はとる……というか恋人だしもとよりそういう予定はあったわけで……」
電「あ、あぅ///」
電の思考はショートしていた。
やはり言葉が発せない…恥ずかしさは極まるとこうなるのか…
自分は抱かれた、ちゃんと恋人と……しかも当回しにプロポーズされている。
これを幸せと呼ぶのか、と
電「あ、あの司令官さん、謝らないで欲しいのです。そ、その電も、嬉しかったですし……///」
哲也「しかしだな、電よ。俺、酔っ払ってるお前に手を出したんだぞ?やっぱり初めては記憶に残したいとかそういうの、あったんじゃないか?」
電「うーん…」
唇に人差し指をあて、首をキョトンとかしげ可愛らしいポーズで考える。
そして、しばらく考え1つの答えにたどり着いた。
電「多分そういうのもなくはないと思います。ただ、やっぱり司令官さんとよ、夜を共にできたって事実が電は嬉しいですし、そ、その司令官さんも電の身体でこうふんしてくれんだなーって……えへへ///」
哲也「……」
顔を赤くしつつ、しかししっかり哲也の方を向き、二ヘラっと緩みきった笑みを作って見せる。
今ならもう1ラウンド行けるのではないかという、邪念は1度捨て、この愛くるしい恋人(嫁)をそっと撫でる。
電「司令官さん、電…今とても幸せなのです」
哲也「…あぁ、俺もだよ。すげぇ幸せだ」
電「司令官さんと同じ気持ちなのです!」
電は思う、大好きな人との心の共有、艇だった時には味わえなかった嬉しさを。
申し訳なさそうにしかしどこか満ち足りたような表情で自分の頭を撫でる恋人。自分もとても満ち足りている
こんな幸せがいつまでも続いて欲しいと願ってしまう。
哲也「…でもまぁ、そろそろちゃんと服着ようか、電」
電「…そうですね」
半裸の男とほぼ裸の女性が、ほのぼの笑いあっても何の違和感も感じないこの空気…
……賢者タイム恐るべし……
二人は服を着用したあと、何をするわけでもなくただぼーっとしていた。
電を膝の上に乗せながら。
哲也「……朝食作るかって思ったけど、俺入院中だし皆が持ってきてくれるんだった…」
電「…なんか、寝込みを襲ったみたいで申し訳ないのです……」
そういえば、電が俺の布団に潜り込んで来たんだっけ……
酔っ払った電、可愛かったなー。
哲也「まぁ、最終的に襲ったのは俺だし…」
電「でも電も誘惑したんですよね。きっと……」
哲也「……電の誘惑は可愛すぎた、多分あれをやられたら次は3秒で襲う……」
電「そ、そんなにですか…///」
デレデレでデロンデロン、にゃーにゃー鳴いてて、可愛いったらありゃしない。
あの時は、まだ初めてということもあり遠慮体勢をとっていたが、今度電が酔ったら持たないだろう…
哲也「一言で纏めると、猫」
電「ね、猫さんですか…」
電本人には昨晩の事は何も覚えていない。最後に覚えているのは、響にたくさんウォッカを貰ったくらいだ。
本当に何をしたのかわからない……黒歴史的な意味で、自分の存在が危うくなった電は哲也に尋ねる。
電「え、えっと、具体的にどんな感じになっていたのです?」
哲也「えっとね……」
哲也は全てを語った。
酔っ払った電がいつの間にかベッドに潜り混んでいたこと。
呂律が回らない口で、哲也は自分のだと叫んでいたこと。
頭をグリグリし、頬をスリスリしてきたこと。
電の本気を見るのです…と言いながら、全裸になり、襲おうとしたこと。
その全てを語り尽くした。
電は話しを聞き終わるや否や、スっとベッドから降り…
電「電、ちょっと解体されて来るのです♪」
と、お日様の様に眩しい、しかしその顔をする理由がこんな残念なことでいいのか、という笑顔を作り部屋を出ていこうとしていた。
無論哲也はそれを止める。まぁ、当然であろう、自分の恋人がいきなり死んでくると言っているようなものなのだから。
哲也「い、電…解体は流石に……」
電「離してください!こんな破廉恥極まりない姿晒しておいて、司令官さん大好きーとか言える立場じゃないのです!一回生まれ直してもっと清い子になるのです!」
自分はえっちい、だから生まれ直してくる。
そう謎理論を唱え始める電。耳まで赤くなっており大分混乱しているようだった。
哲也「落ちつこう電、俺と電はただ……恋人同士いつかしなければいけないことをしただけだ。OK?」
電「いつか、しなければいけない事……」
恋人ならこういう事もするだろう。そう電に言い聞かせ、工廠にその足を引き止める。
哲也「むしろここまで来るのが遅かったくらいだ。こういうのは俺がもっと積極的にいかなきゃいけないんだが…」
電「そう、なのでしょうか……」
哲也「そうなんだと思う……だから、グッジョブだ電」
親指をたて、グッドポーズをとり、ニカッと笑って見せた。
どこか満足いかなそうな顔をしている電だったが、なんとなく、それでいいのかもと、無理矢理納得した。
電「…電にはまだよくわかりませんが、司令官さんが言うなら……」
哲也「まぁ、その…次からはなるべく俺から誘う様にするよ……」
電「は、はい……」
お互い照れくさそうに目をそらしあいながら、ポリポリと頬を書く。
二人は思った、あの最初の幸せいっぱいの空気はどこに行ったのか、服を着る前と後で何故こんなに違うのか、と……
哲也「そういえば、おはよう、電」
電「あ、おはようなのです、司令官さん」
そう言えば朝の挨拶してなかったと、思い出しお互いにおはようと言い合う。
いつもはお互い幸せそうな笑顔をしているのに、今回に限っては事が事なので、愛想笑いのような微妙な挨拶になってしまった。
場所は変わって……変わると言っても医務室の入口前。戦艦、駆逐、駆逐というミスマッチな並びでそこに佇んでいた。
長門「幸せそうで何よりだ」
山風「……」
時雨「///」
長門は実の息子の成長した姿を見るような優しい笑みをしながら。
山風は、自分の親友二人が事に至ったため、年齢的に止めるべきか、素直に喜ぶべきか迷い。
時雨は、本で見た程度の知識があったが、いざ目の前で起こるとあまりの衝撃と破廉恥さで直立不動になった。
3人が3人別々の反応をしながら、哲也の着替えや朝食、ベッドの換えのシーツを掲げ部屋に入れずにいた。
山風「…これ、どうするの?」
時雨「こ、こんなんじゃ入れないね……///」
別に盗み聞きをしたいわけじゃない、居合わせたタイミングが悪かった……ただそれだけだ……それだけなのだが、やはり一歩の勇気が踏み出せない……
長門「まぁなに、あの気まずそうな空気を壊してやろうと言う優しさを持てば躊躇う事もない」
時雨「ぼ、僕にはその空気も恥ずかしさの原料になっちゃうかな///」
山風「なんで長門さんは、平気なの…」
二人の視線を他所についには、「提督、失礼するぞ!」と言いながら堂々と部屋に入っていった。
「あっ」という二人が抜けた声をだし、扉の先の光景が見えてしまう。
哲也「な、長門か、どうした?」
長門「なに、提督の着替えや食事を持ってきただけだ。あ、電の分もちゃんとあるから心配しなくていい」
電「あ、ありがとうなのです」
時雨「……」
山風「……」
普段、第3者視点から見ていた山風と時雨はわかってしまう。
…違う、と。
基本電と哲也が一緒にいる時はべったりくっついて離れない。膝の上に座っていたり、膝まくらし合ってたり……とにかく離れない。
しかし今はどうだろう、羞恥と遠慮からかお互い一歩分離れているではないか。
もどかしい……そしてそんな空気ですら甘く感じる。
時雨「提督のヘタレ…」
哲也「えっ」
山風「電のおたんこなす…」
電「…」
長門「二人ともどうした……」
そんな電と哲也を見た二人が言い放った言葉がこれだった。
羞恥も迷いも今はもうどうでも言い、この一瞬にして湧き上がったむず痒いイライラの元を、直ちに治したかった。
……端的に言うと、ただの八つ当たりである。
時雨「二人はいつもどおりでいてくれないかな」
山風「一夜共にしただけで、そんなになってるようじゃ…やっていけないよ?……」
哲也「うっ」
電「ご、ごめんなさい」
長門「本当にどうした…二人とも」
山風、時雨の八つ当たりを電、哲也はただただ正座で説教を貰う子供のような姿勢で聞いていた。
ここに来るまでとは明らかに態度が変わった白露型二人を目に長門はわけがわからかった。
それから数十分間二人(山風、時雨)の説教を受けた二人(電、哲也)は、もう元に戻っていった……
哲也「電は可愛いなぁ〜」
電「なのです〜」
時雨「よし」
山風「ふぅ…」
長門「いや、二人とも目が死んでないか……」
元に戻ったのではなく、壊れただけだった……
何を言われたのかはわからないが、艦隊が認めるバカップルが精神を病んでしまう程に危ない会話だったらしい。
哲也「さて、朝ごはん食べようか」
電「はい!」
時雨「その前に提督は着替えなきゃね」
山風「シーツも変える…」
長門「……」
仲良さげにしているいつものカップル、しかし、その早すぎる回復に長門はそれが無理矢理やらされているような気さえした。
本当に何を言ったんだろう……
長門「やぁ、時雨、山風。あいつらになんて言ったんだ?」
時雨「?…えっとね、ちゃんとしないと提督と電を引きはがすよーって」
山風「あたしも、電がそんなのだったら提督のこと奪っちゃうよって言ったら、ああなった……」
長門「……」
駆逐艦は怒らせてはいけない、そう心に刻んだ長門だった。
そしてよく見るとこちらの目からもハイライトが消えている…こっちもこっちで壊れていた。
恐怖で病んだカップルは砂糖で壊れた鬼二人の監視の元、仲良くイチャついた。
そして、我に帰った駆逐二人が哲也と電に謝り倒したのはまた別の話。
こんにちは、はつひこです。寒いです。凍え死にそうです。以上