お風呂上がりの海風と山風に説教をくらった。
どうやら海風は体を洗ってる途中で目が覚めたらしくここに来るまでの事は全て聞いたそう。
それにしても、二人して文月とイチャつくなって内容の話をしてくるもんだから耳が痛くなる。
海風に至っては「私にもしてください」とよくわからない事を口走り、山風に睨まれていた。ちなみに俺もデコピンしておいた。
説教が終わり、時計を見れば深夜の1時。時間も時間なのでその日は俺の部屋に皆を泊めることにした。
というか海風に至っては部屋がジ〇リの森になっており、帰る場所がないので必然的にこうなってしまう。
ちなみに配置は俺を真ん中にし、右に海風、左に山風、上に文月。もう俺はツッコまない。
…ツッコむ(意味深)とか考えたやつ後で屋上な?ハ〇エースぶつけてやんよ。
しかしまぁ、折角布団4枚引いたのに何故俺の布団に皆寄ってくるのか。
文月に至ってはもうこの際仕方がない、寝てるのに俺の服離そうとしないし、てか離れない。なんでこんな力強いの?
だけど、海風と山風は別ね?起きてるんだからちゃんと自分の布団行こ?寝たフリしてるの気付いてるからね?
「…二人共、自分の所で寝てくれないか?」
「「嫌(です)」」
「なんでさ……」
「それは、責任を取ってもらうために……」
「責任?」
一体何の事だ?
俺、海風を襲ったりなんかしてないよ?てか、山風とずっと一緒だったからそんな隙がない。
それともあれ?こっそり夜に忍び込んで、俺から静かに搾り取ってたとか……
「私はそんな淫乱な子じゃありません、怒りますよ?」
「ごめんなさい。でも、人の心読むのはやめようね?」
「わかりやすい提督が悪いです」
「理不尽…」
俺の心はそんな読みやすい物なのか……もしかしてあれかい、マンガとかにある心の中の吹き出し、それが俺の頭上にもあるの?
まぁいっか、そんな事より今は俺に課せられた責任とやらを教えてもらわなければ。
「で、俺の責任って?」
「その、提督が私を見つけた時……その、えっと」
「壊れてたな」
海風は毛布を顔から被った。おそらく恥ずかしかったのだろう。
反対側の山風から二の腕をつねられる。どうやら「余計な事言うんじゃない」との事らしい。
でも、少しつねる力を緩めて頂きたい。引きちぎれそうな程痛いから……
「で、でですね…私がその、壊れた理由なんですけど…」
「山風の家出だろ?」
「いえ、それもあるんですけど…他にありまして…」
あれ、他にあったのか。一体何だろう。
「提督の記憶喪失もなんです」
「…」
俺じゃねーか。
「ちなみに比率にすると、家出3割提督7割です」
「…」
ほとんど俺のせいじゃねーか。
先に心の中で土下座しておく、マジすみませんでした。
「…すまん、今日は何でも言うこと聞くよ」
「はい♪」
満足いったように俺の腕により強く抱きつく海風。
その表情は誰が誰が見てもわかるご機嫌なモノだった。
不気味なほどにニマニマとした笑みで頬を擦り寄らせ、スンスンと匂いを嗅がれている。
そして、その光景を殺気全開で見つめる山風。その目はもう実の姉を見るそれとはかけ離れていた。
「山風、落ち着け。ほらっ…」
「んっ…」
そっと頭を撫でてやると、いつもの山風に戻る。それと同時、反対側から袖をクイッと引っ張られる。
引っ張れた方を見ると、海風が期待の眼差しをこっちに向けてきていた。おそらく撫でろという事だろう。
二人とも、そろそろ寝ない?
というか俺に乗っている文月の体温が思いのほか熱くて苦しいんだが。
せめて二人が離れてくれれば…
「ふみぃ…トイレ〜司令官一緒に行こ〜」
おっとここでチャンス到来。うまく行けば文月を睦月型宿舎に戻せるかも。
「わかった、一緒に行こう。二人とも少し待っててくれるか?」
「うん…」
「わかりました」
二人の許可も得たところで、俺は文月の手を引いてトイレを目指す。
結論から申し上げると文月を部屋に返すことは出来ませんでした。はい。
睦月型の部屋は俺の部屋とは反対方向にあるのだが、そちらに誘導しようとすると回れ右してこっちに戻ってきてしまうのだ。寝ぼけているようだったが、この子本当は起きてるんじゃないの?
そんな事を数回繰り返してる間に、気づいたら背後に睦月がいた。
どうやら文月が帰ってこない事に心配していたらしく今までずっと1人で探していたらしい。
文月を見つけると、「はぁ〜、文月ちゃん見つかったにゃしぃ…」と1言。そしてそのまま「司令官と一緒なら安心だね!文月ちゃんの事よろしくにゃしぃ」と言い残し、自分の部屋に戻っていった。いや、待って文月も連れてって…
「…」
「司令官、お部屋〜」
「…あぁ、そうだな」
文月の姉によろしくされてしまったんだ、もう諦めよう。
再び文月の手を引き、俺は自分の部屋に戻っていった。
そして、部屋に戻ると海風と山風が手を取り合って寝ていた。どうしてこうなったのか経緯は知らないが、尊いから良し。
二人が布団3枚分を占領していたため、文月を残りの1枚に寝かせ俺はソファーで夜を明かした。椅子の寝心地も案外良いものだ。
夜が明ける。
昇る太陽は世界の象徴の如く、終わる夜は平和の目覚めを呼び覚まし暗きこの世に光を灯す。
ちょっと何言ってるか分からない。
目覚めた俺はそんな自問自答を繰り広げる。
「あー、首痛てぇ」
そう言えば昨日はソファーで寝たんだっけ。
皆はしっかり眠れただろうか。
そう思いながら布団の方を見ると、既に畳まれた四組の布団が綺麗に重ねられていた。
しかし、部屋を見渡しても皆の姿は見当たらない。俺の部屋はワンルームだし、食堂にでも言ったのか?
今の時刻は午前7時、朝食を取りに行っててもおかしくはないか。
「さてと、朝食は何にしようかねー」
台所にある菓子なら惣菜パンやらが置いてある場所へ向かう。そこから気ままに数種類選び、冷蔵庫の中から紙パックの牛乳を取り出しストローを指す。
「やっぱ朝はこれだろ」
先程まで寝ていたソファーに腰掛け、パンを1口牛乳1口を交互に繰り返す。忙しないと思う人もいるかもしれないが、これが俺の食べ方だ。
「あれ、司令官?」
「ん?」
「あっ、提督起きてる…」
「おはようございます提督」
なんとなく窓も方を見ていると、食堂に行っていたと思っていた3人が出てきた。ベランダから。
カーテンを閉めてたから全く気付かなかった、てかそんなところで何してるの?
あと文月、寝癖ついてるよ。
「何してたんだ」
「んとね〜、作戦会議〜」
「作戦会議」
「えっと、提督と響さんの仲を取り戻そうって言う内容で進めてたんですけど…」
「あぁ、そういう」
皆に記憶喪失を明かす前、俺が目覚めた日でもあるな。その時山風と一緒にいた子、その子が響だったよな確か。
それで、俺が記憶喪失になったって聞いた瞬間走り去ってしまった。あれから何も話せてないし、まず会うことすら出来ていない。
暁や雷も特に何も言ってこないが元気にしてるだろうか。
おそらく電の消滅も、俺の記憶喪失もあの子が一番詳しいはず。
てなわけで会いに行ってみよう。
「提督、どこ行くの?」
「ちょっと響に会いに行ってくる」
そう言った瞬間、海風と山風に引っ張られ進行を妨げられる。
何故止める、手っ取り早く敵陣に乗り込めば話は収まるというのに。
こういう時は思い切りが肝心なのだ。
ねちねちと作戦だのなんだの理由を付けて先延ばしにするとやらなくなるって本に書いてあったぞ?
「そんなコンビニ行ってくるみたいなノリでいかないでください。響ちゃんにだって色々あるんですから」
「でも、響の様子がわからないとまず仲直りの手段を立てても実行できないし。なんとかわからない?」
「うーん…」
俺、海風、山風の三人が首を捻る。その横で話をよく理解していない文月が「ふみぃ…」と一緒に首を傾げていた。可愛い。
…そういえば文月って今第六駆逐隊の制服来てるよな。
もしかして、部屋に入れたのか?
「なぁ、文月」
「ん?なぁに〜」
「その制服着る時、暁達の部屋に入ったか?」
「うん、入ったよ〜」
「「「……」」」
「?」
文月がよくわからないと首を傾げる中、俺たち三人は互いに顔を合わせ合う。
「文月、暁達の部屋にいた時響見たか?」
「うん、見たよ〜」
「どんな感じだった?」
「えっとね〜、普通に元気そうだったよ〜。この制服も響ちゃんのだし……あっ、でも響ちゃんの目の下に少しだけクマがあった」
「「「……」」」
再び沈黙。
どうやら響の容態は寝不足を除いて特に問題はなさそうだ。これなら乗り込める。
「おっし、じゃぁ行くか」
「あっ、待って提督」
「ん?まだ何かあるのか?」
「特攻はダメ……響、多分提督の事避けてるから、普通に言ったら無視される」
「…」
山風にさらっと傷つく事を言われる。どうやら響は俺を避けてるらしい。
あぁ、なんとなくわかってたよ。だって合わないし、俺以外の奴(良い例が文月)には普通にしてるっぽいし。出来ることなら気付かずにいたかった。
だがしかし、そっちがその気ならこちらにも考えがある。
「文月、出番だ」
「まっかせて〜!」
おそらく何をするのかわかってないであろう文月がその場に立ち上がる。
作戦としてはこう、まず文月が響に制服を返しに来たという名目で部屋に訪れる。尚、俺も同伴。
そして、響が直接出てきてくれるよう文月に誘導してもらい、扉が開いた所で税金Gメンの如く強行的に俺が部屋に突っ込む。
以上。
「それで、部屋に突っ込んだ後俺はどうすれば良い?」
今の俺の作戦を粗方皆に説明した後、この作戦唯一の問題点を相談する。
それは、部屋に入ったあとどうするか、だ。
生憎、俺に塞ぎ込んだ女の子の心を開くなんて言うコミュスキルは持ちあわしていない。そこで、響同様女の子で尚且つ同じ駆逐艦である皆の意見を拝借したい。
「作戦立ててるようで、何も立ててませんね。提督」
「うん、ごめんね海風。これしか思い浮かばなかった」
だからそんな呆れたような顔しないでね?割と心に響いてるから…
「あの、提督。良い…?」
「うんいいぞ山風」
恐る恐ると言うように山風が手を上げる。
「萱野さんが仲直りするならデートが手っ取り早いって言ってた…」
「デート…浮気にならないの?」
「あたしの時は平気、だった…」
あっ、そう言えば前に俺とデートした事あるんだっけ山風は。確かその時も萱野さんにデートしろって言われたんだっけ。
あの人デートしか選択し持ってないんじゃないのか。
しかし、デートする事自体は浮気にならないのか。キスとかアレとかしなければセーフって事?手つなぎはおk?
「まぁ、山風が大丈夫だったなら響も行けるか?」
「多分…」
「よし、じゃぁ文月行くぞ!」
「司令官〜私自分で歩けるよ〜」
文月を脇腹に掲げダッシュで部屋から出ていく。
途中文月が何か言っていたが気にしないでおこう。
それより、今は響だ。
場所は移り変わり第六駆逐隊宿舎。
艦娘達と同じ宿舎に泊まってるとこういう時便利だから助かる。
取り敢えず文月を所定の位置(扉の前)に配置、響を呼び出すために作ったカンペを渡す。
一応、ここに来るまでの間にこれの通りに言ってくれと教えてあるから失敗はしないはず…
扉を2回コンコンと叩き、スウ…ハァと深呼吸をした後文月はカンペを読み始める。
「雪だるまつくーろ〜♪」
あっ、やべ渡す紙間違えた。
俺は急いで文月の口を塞ぐ。
傍から見ると完全に誘拐犯に連れ去られそうな幼女の図になってしまっているがこの際仕方がない。
急いで文月の手からカンペを抜き取り、正しい方の紙を渡して「こっちを読んでくれ」と伝える。
「えっと、響ちゃんいる〜?」
『…文月かい、どうしたんだい?』
「えっとね〜響ちゃんに借りた制服返しに来たんだ〜」
『あぁ、その事か』
文月は順調にカンペを読んでくれている。
一応雷か暁が対応した場合のカンペも準備したが必要なさそうだ。
それにしても、寝不足とは聞いていたが随分気だるげな声をしている。本当に寝不足だけなのか?
俺がそんな事を考えてる中、部屋の扉が開く。
扉を開いて行くと次第に俺の姿が目に映る。その瞬間、響の表情が見てはいけないモノを見てしまった…そんな顔になる。
いや、色々あったのは知ってるけどもうちょっと抑えて。
俺のヒットポイントそんなに0にしたいの?
「やっほー響、おひさー」
「しれい…かん……」
ダメだこれ、挨拶軽くしてみたけど顔がもう絶望に染まっちゃってるわこれ。
話しが無理そうだし仕方ない、要件のメモだけ渡して帰ろう。
「響、後でこれ読んでくれ」
「……」
そう言いながら響に紙を渡す。
何も言わず受け取ってくれるが、何かおかしい。俺をじっと見つめているがどうしてか違和感がある。
「…」
あ、違和感の招待がわかった。
瞬きだ……響は俺の顔を見てから一度も瞬きをしていなかった。それほど俺がこの場にいる事が嫌だったのだろうか?
取り敢えずこれは早急に退散した方が良さそうだ。
「文月この場は頼んだ」
「え?…うん、わかった!」
そして、俺はその場から立ち去る。
響は俺のメモを見てくれるだろうか?読んでくれたとしてメモ通りにしてくれるだろうか。
もしかしたら、来ないかもしれない。その場合ずっとその場所で待つことになる。
でもいいさ、それくらいの事で弱音吐いてたら『俺』に戻る事なんか夢のまた夢だろう。どんな無茶も通してやる、いままでずっとそうして来たんだから。
響の幸せのためだ。無茶してやろうじゃねーか。
俺はそう意気込みながら自分の部屋へと戻った。
待ってろ響、絶対
こんにちは、はつひこです。
取り敢えず一言、暑いんだよクソが。
家族には内緒で書いてるこの小説、もちろん自室で書いている。クーラーがあるのはリビングと寝室の2室のみ。
扇風機で頑張ってます。ぶっちゃけ死ぬ…